人事労務

障害者雇用の助成金一覧:月いくら・支給要件と申請書類を勤怠データで揃える方法

予約管理システム開発の重要性

障害者を雇い入れた企業が国から受けられる助成金は、特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、キャリアアップ助成金の障害者正社員化コース、そして高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の納付金関係助成金の4系統に分かれます。中小企業が重度障害者や精神障害者を雇えば、特定求職者雇用開発助成金だけで3年間に240万円、月に直すと約6.7万円です。この記事では、令和8年度時点の支給額を月額の目安とあわせて一覧にし、紹介経路や解雇の有無で不支給になる要件を整理します。後半では、令和8年4月から賃金台帳の添付が必須になった申請書類を勤怠・給与システムからどう出すか、人ごとにずれる申請期限をどう管理するかを、受託開発の立場で掘り下げました。

まとめ:障害者雇用の助成金4系統と申請の成否を分ける勤怠・賃金の記録

雇い入れの時点で使うのは特定求職者雇用開発助成金かトライアル雇用助成金、雇用形態を上げる時点で使うのがキャリアアップ助成金の障害者正社員化コース、設備や介助者に費用をかける時点で使うのがJEEDの助成金です。雇入れ時の2つは「ハローワーク等の紹介を受けてから雇う」、正社員化コースは「キャリアアップ計画書を転換より前に出す」という順序の要件があり、後から気づいても取り戻せません。

制度を知ったあとで企業がつまずくのは、書類の側です。支給額は支給対象期ごとの賃金額が上限になり、トライアル雇用では就労日数の割合で月額が下がり、申請期限は各期の末日の翌日から2か月で固定されています。出勤簿・賃金台帳・所定労働時間の記録が正しく出せなければ、要件を満たしていても受け取れません。

対象者が年に数人なら、専用システムは要りません。期限を並べた台帳と、勤怠・給与システムから必要な帳票を出せる状態にしておけば足ります。複数拠点で複数の助成金を並行して受給する企業だけが、勤怠と給与の連携改修を検討する価値があります。

障害者を雇ったときに使える助成金4系統と令和8年度の支給額一覧

厚生労働省の「障害者を雇い入れた場合などの助成」は、助成金を雇い入れ・施設整備や雇用管理・職場定着の3場面に分けて案内しています。かつての障害者雇用安定助成金は分割されて一部がJEEDへ移り、人材開発支援助成金の障害者職業能力開発コースもJEEDの障害者能力開発助成金へ移管されました。古い解説記事の制度名が現在の窓口と合わないのはこのためです。

特定求職者雇用開発助成金で中小企業に出る120万円と240万円の区分

中心になるのは特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)です。厚生労働省の支給要件ページによると、障害の程度と週の所定労働時間、企業規模で支給額が決まります。

対象労働者 中小企業 中小企業以外
身体・知的障害者 120万円(30万円×4期) 50万円(25万円×2期)
重度・45歳以上・精神 240万円(40万円×6期) 100万円(33万円×3期)
短時間(週20〜30時間) 80万円(20万円×4期) 30万円(15万円×2期)

1期は6か月です。中小企業以外で重度障害者等を雇った場合は第3期だけ34万円になり、合計100万円に揃います。発達障害者や難治性疾患の患者を雇う場合は別の発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースがあり、中小企業で120万円、それ以外で50万円です。

トライアル雇用助成金の月額4万円と精神障害者向け8万円の支給期間

本採用の前に3か月ほど試行雇用する場合は、障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースが使えます。障害者トライアルコースは1人につき月額最大4万円で最長3か月。精神障害者だけは最初の3か月が月額最大8万円、続く3か月が4万円で、最長6か月まで伸びます。

障害者短時間トライアルコースは、精神障害者と発達障害者が対象です。週10時間以上20時間未満から始めて、体調に合わせて20時間以上へ延ばすことを目指す雇用で、月額最大4万円が最長12か月出ます。試行雇用のあとに常用へ移行した場合、移行日を雇入れ日とみなして特定求職者雇用開発助成金の一部を受けられる場合があります。

障害者正社員化コースで有期から正規へ転換したときの最大120万円

すでに雇っている障害者の雇用形態を上げるときは、キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースです。令和8年4月1日現在のパンフレット(PL080401障01)では、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用へ転換すると、中小企業で120万円(60万円×2期)、大企業で90万円です。重度以外の身体・知的障害者と発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者は中小企業90万円、大企業67.5万円。有期から無期、無期から正規への転換は、重度等で中小企業60万円、それ以外で45万円になります。

令和8年度版では、高次脳機能障害と診断された者が対象者として明記されました。手帳の有無だけで対象外と判断していた企業は、診断書の扱いを確認し直す必要があります。

JEEDの納付金関係助成金8種類と施設整備・介助者配置の認定申請

設備や人の配置に費用がかかる場合は、JEEDの助成金一覧に並ぶ納付金関係助成金です。作業施設設置等助成金、介助等助成金、重度障害者等通勤対策助成金、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金、職場適応援助者助成金、障害者雇用相談援助助成金、障害者能力開発助成金、職場実習等支援事業の8つがあります。

財源は、法定雇用率を満たさない企業が納める障害者雇用納付金です。作業施設設置等助成金などは手続きが「認定申請」と「支給請求」の2段階に分かれており、様式もJEEDの各助成金ページで別々に用意されています。画面読み上げソフトや拡大表示の導入は作業施設設置等助成金の検討対象になり得る例です。システム側で必要な配慮の範囲は合理的配慮をWeb・システムの要件へ翻訳した整理が参考になります。

助成額を月額に割り直した目安と支払賃金額が支給の上限になる条件

「月いくら」と聞かれたときの目安は、合計額を助成対象期間の月数で割った数字です。中小企業の場合、身体・知的障害者は120万円÷24か月で月5万円、重度障害者等は240万円÷36か月で約6.7万円、短時間労働者は80万円÷24か月で約3.3万円になります。

ただし、どの助成金も支給対象期に実際に支払った賃金の額が上限です。週20時間で時給1,100円なら6か月の賃金は約57万円なので、30万円の支給は満額出ます。欠勤が続いて賃金が20万円にとどまれば、その期の支給は20万円まで下がります。

支給要件で不支給になりやすい紹介経路と採用前後6か月の離職の確認

助成金の不支給は、書類不備より先に「雇い方」で決まっていることが多いです。どれも採用の段取りに組み込まないと防げません。

ハローワーク等の紹介前に選考を始めた採用と求人サイト経由の除外

特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金は、ハローワーク、地方運輸局、同意の届出をした職業紹介事業者などの紹介で雇い入れた場合だけが対象です。厚生労働省の特定就職困難者コースのパンフレット(LL080305企01)は、求人サイトで直接募集して応募があった後に形式的な職業紹介を受けた場合も、ハローワークのオンライン自主応募も対象外だと明記しています。

紹介の前に面接を始めていた人も対象外です。採用担当が自社サイトの応募者をハローワークへ回すと、要件を満たせなくなります。助成金を使うつもりなら、募集の入口をハローワーク等の求人に一本化するのが確実です。

採用日前後6か月の事業主都合解雇と支給対象期の途中離職による不支給

事業主側の要件で見落とされやすいのが、採用日の前後6か月間に事業主都合の解雇(勧奨退職を含む)をしていないことです。障害者本人ではなく、同じ事業所の別の従業員の解雇でも不支給になります。倒産や解雇など特定受給資格者となる理由での離職が、採用日時点の被保険者数の6%を超えていないことも要件です(該当する離職者が3人以下ならこの要件は問われません)。

対象者本人が支給対象期の途中で離職した場合、その期の助成金は原則出ません。4期に分けて支給される助成金なら、3期目の途中で辞めれば3期目と4期目がまとめて消えます。トライアル雇用では、雇入れ日から支給対象期間の末日までに事業主都合で解雇すると不支給です。

申請書類を勤怠・給与システムから出すときの出勤簿と賃金台帳の要件

ここからは、要件を満たして雇い入れた後の話です。助成金の申請書類は、ほぼすべてが勤怠と給与のデータから作られます。システムがどこまで出せるかで、申請の手間と不支給のリスクが決まります。

令和8年4月以降は賃金台帳の添付がないと不支給になる申請の変更点

特定求職者雇用開発助成金の支給申請で出す書類は、支給申請書、賃金台帳等、出勤簿等、対象者であることの証明書類、雇用契約書または雇入れ通知書、雇用状況等の申立書、支給要件確認申立書です。厚生労働省は令和8年4月以降の申請分から、賃金台帳の提出が確認できない場合は不支給にすると告知しています。

給与計算を外部委託している企業では、賃金台帳が委託先のシステムにしかなく、6か月分を期ごとに取り寄せる手間が発生します。給与計算システムを自社で持っている場合も、対象者1人・対象期間6か月だけを切り出して出力できるかを確認してください。全従業員分の台帳をそのまま添付すると、他の従業員の賃金を労働局へ渡すことになります。

賃金締切日の翌日が起算日になる支給対象期と期末翌日から2か月の申請期限

支給対象期の数え方は、雇入れ日からではありません。同じパンフレットによると、賃金締切日が定められている場合、起算日は雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日です。4月1日に雇い入れ、賃金締切日が毎月15日なら、起算日は4月16日、第1期は10月15日まで、申請期間は10月16日から12月15日までになります。

申請期間は各支給対象期の末日の翌日から2か月以内で、パンフレットのQ&Aは期限を過ぎた申請をいかなる理由でも受け付けないと答えています。対象者ごとに雇入れ日が違えば、期限もばらばらです。締め日が拠点ごとに違う企業では、同じ日に雇った2人でも期限がずれます。

期限は、勤怠システムの締め日マスタと雇入れ日から機械的に計算することが可能です。勤怠管理システムの開発で締め日を拠点・雇用区分ごとのマスタとして持たせておけば、各期の末日と申請期限を対象者ごとに一覧で出せます。人が暦を数える運用だと、4期・6期と続く申請のどこかで必ず漏れが出ます。

トライアル雇用の就労予定日数と実就労日数の割合で月額が4段階に下がる算定

トライアル雇用助成金の月額は固定ではありません。支給要領(R8.4.8版)では、本人都合の休暇や会社都合の休業があった月について、就労を予定していた日数に対する実際に就労した日数の割合で月額を決めます。

就労日数の割合 通常の月額 精神障害者の最初の3か月
75%以上 4万円 8万円
50%以上75%未満 3万円 6万円
25%以上50%未満 2万円 4万円
0%超25%未満 1万円 2万円
0% 不支給 不支給

年次有給休暇は就労した日数とみなします。つまり勤怠データには、実際の出勤日だけでなく「その月に就労を予定していた日数」と「休暇の種別」が必要です。シフト制で予定日数を勤怠に登録していない企業は、申請のたびに紙のシフト表から数え直すことになります。支給申請はトライアル雇用の終了日の翌日から2か月以内、実施計画書は雇入れ日から2週間以内です。

最低賃金×30時間の減額判定と正社員化コースの転換前後賃金比較

特定求職者雇用開発助成金でも減額はあります。所定労働時間より実労働時間が著しく短い場合と、週当たりの賃金額が「最低賃金×30時間」を下回る場合です。週30時間以上で雇った人が体調不良で勤務を減らしたとき、所定と実績の差を勤怠データで示せないと減額の幅を判断できません。

障害者正社員化コースでは、転換後6か月の賃金を転換前の6か月より減らしていないことが要件です。比較は原則として所定労働時間1時間当たりの賃金で行います。有期雇用のとき週25時間・月給15万円だった人を週40時間・月給22万円の正社員にした場合、月給は増えていても時間単価が下がっていれば要件を満たしません。給与システムに所定労働時間の履歴がないと、この計算は手作業になります。申請は転換後6か月の賃金を支払った日の翌日から2か月以内です。

支給決定から5年間の書類保存と会計検査に耐える申請記録の持ち方

助成金を受けた事業主は国の会計検査の対象になることがあり、関係書類は支給決定から5年間の保存が求められます。不正受給と判断されれば全額返還に加え、5年間はほかの助成金も受けられません。

5年後に説明を求められたとき、勤怠データを上書き保存する設計では当時の出勤簿を再現できません。締めた月の勤怠と賃金は確定版として残し、修正したときは修正履歴を別に持つ。申請に使った帳票のPDFと、その元になったデータの両方を対象者・支給対象期ごとに保存しておくと、問い合わせに即答できます。

助成金管理を専用システムにしない規模と個別開発に踏み切る条件

助成金の管理機能を作るかどうかは、対象者数と助成金の種類の掛け算で決まります。多くの企業は作らなくて済みます。

対象者が年に数人の企業は申請期限台帳と帳票出力だけで足りる理由

障害者の雇入れが年に数人で、使う助成金が特定求職者雇用開発助成金だけなら、専用システムは過剰です。対象者ごとに起算日・各期の末日・申請期限を並べた台帳を作り、期限の1か月前に通知が届くようにすれば漏れは防げます。勤怠と給与のシステムから対象者・対象期間を絞った出勤簿と賃金台帳を出せれば、それ以上の開発は要りません。

中小企業が重度障害者1人で受け取る240万円に対して、管理機能の個別開発に数百万円をかけるのは割に合いません。助成金の要件は年度ごとに改定されるため、作った機能の改修費も毎年かかります。

複数拠点で複数の助成金を並行受給する企業が連携改修を回収できる条件

勤怠と給与の連携改修に踏み切る条件は2つです。1つ目は、拠点ごとに賃金締切日が違い、同時に10人以上の支給対象期が進んでいること。2つ目は、特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用・正社員化コースを並行して使い、就労日数の割合や時間単価の比較が毎月発生すること。両方に当てはまるなら、申請期限の自動計算と帳票出力を既存の勤怠・給与システムに足す価値があります。

その場合も、助成金専用のシステムを別に建てるのは避けてください。所定労働時間の履歴、就労予定日数、締め日マスタは、法定雇用率の算定にも納付金の申告にも使う同じデータです。助成金のために別の台帳を作ると、雇用率の報告と数字が合わなくなります。申請の順序の組み立て方は、人材開発支援助成金のコース選択と申請の順序で整理した型と共通しています。

よくある質問

障害者雇用の助成金について、問い合わせの多い5つの質問に答えます。

障害者雇用の助成金は1人あたり月いくらもらえますか?

中小企業が特定求職者雇用開発助成金を受ける場合、身体・知的障害者は2年間で120万円なので月5万円、重度障害者・45歳以上の障害者・精神障害者は3年間で240万円なので約6.7万円が目安です。週20時間以上30時間未満の短時間労働者は2年間で80万円、月約3.3万円になります。中小企業以外は金額と期間がともに短くなります。いずれも6か月ごとの後払いで、支給額はその期に支払った賃金額が上限です。

障害者雇用の助成金はいつ振り込まれますか?

毎月ではなく、支給対象期ごとの後払いです。特定求職者雇用開発助成金は6か月を1期とし、各期の末日の翌日から2か月以内に申請します。労働局の審査に一定の期間がかかり、支給決定後に振り込まれるため、雇入れから最初の入金までは少なくとも8か月以上かかると見ておくのが安全です。障害者トライアルコースは終了後にまとめて1回、正社員化コースは転換後6か月の賃金を支払った後に申請します。

自社の求人サイトで採用した障害者も助成金の対象になりますか?

特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金は対象になりません。ハローワークや同意の届出をした職業紹介事業者などの紹介で雇い入れることが要件だからです。求人サイトで直接募集した応募者に後から形式的な紹介を付けても対象外と、厚生労働省のパンフレットに明記されています。雇入れ時の助成金を逃した場合も、採用後に有期から正規へ転換する段階では、キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースの要件を別に確認する価値があります。

助成金を受けた障害者が退職したら返還が必要ですか?

厚生労働省のパンフレットが示しているのは、対象者が支給対象期の途中で離職した場合、その期の助成金は原則として支給されないという扱いです。辞めた日を含む期とそれ以降の期は申請できません。支給済みの期の扱いは離職の理由で変わり得るため、管轄の労働局に確認してください。注意すべきは事業主都合の解雇です。対象者本人に限らず、採用日の前後6か月に同じ事業所で事業主都合の解雇があれば不支給になります。偽りの申請で受給した場合は全額返還のうえ、5年間はほかの助成金も受けられなくなります。

障害者雇用の助成金と納付金の調整金は同時に受け取れますか?

制度が別なので、要件を満たせば両方を受け取ることが可能です。調整金は法定雇用率を超えて障害者を雇用している常用労働者100人超の事業主に、超過1人あたり月額29,000円が出る仕組みで、雇入れ時の助成金とは算定の基準が異なります。ただし、ほかの雇用関係助成金と同じ人・同じ期間で重複して受けられない組合せはあります。複数の制度を使う場合は、申請前に管轄の労働局とJEEDの窓口で確認してください。

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