基礎控除と給与所得控除は、どちらも所得税を軽くする控除ですが、差し引く相手が違います。給与所得控除は「収入」から、基礎控除は「所得」から引きます。引く順番も決まっていて、給与所得控除が先、基礎控除が後です。令和8年度税制改正で、令和8・9年分は基礎控除が最大104万円、給与所得控除の最低額が74万円になりました。この記事では二つの控除の違いと令和8年分の金額、年金で暮らす人の合計所得金額の出し方までを、国税庁の資料と条文で確認します。
まとめ:基礎控除と給与所得控除の違いと令和8年分の控除額
給与所得控除は、給与収入から差し引く概算の経費です。給与をもらう人にだけ適用され、令和8・9年分は給与収入220万円以下なら74万円です。基礎控除は、給与・年金・事業などの所得を合計した後の金額(総所得金額など)から差し引く所得控除で、控除額は「合計所得金額」で決まります。令和8・9年分は合計所得金額489万円以下なら104万円です。給与だけの人は、この二つを足した年収178万円までは所得税がかかりません。
年金で暮らす人は、給与所得控除の代わりに公的年金等控除を使います。公的年金等控除は令和8年度改正で変わっておらず、65歳以上は最低110万円です。110万円と基礎控除104万円を足した年金収入214万円までは所得税がゼロで、親を扶養に入れられる上限は65歳以上で年金収入172万円です。
改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。11月までの毎月の源泉徴収は変わらず、12月の年末調整や年金の支払時にまとめて精算されます。
基礎控除と給与所得控除の違い=差し引く対象と計算の順序
給与所得控除とは=給与収入から差し引く概算経費(所得税法28条)
給与所得控除は、所得控除ではありません。所得税法第28条第2項は「給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする」と定めています。給与所得という所得区分の金額を出すための引き算で、事業所得の必要経費にあたる役割を、収入額に応じた定額で置き換えたものです。
会社員は原則として実際に使った経費を積み上げられない代わりに、この定額が自動で引かれます。例外は、通勤費や研修費などの特定支出が給与所得控除額の2分の1を超えたときに、超えた部分を差し引ける特定支出控除です。逆に、給与をもらっていない個人事業主には給与所得控除がありません。事業所得と給与所得の両方がある人は、給与の部分にだけかかります。個人事業主側の扱いは個人事業主に給与所得控除はない理由と、代わりに使える控除で整理しています。
基礎控除とは=総所得金額などから差し引き、合計所得金額で額が決まる所得控除(所得税法86条)
基礎控除は、所得税法第86条が定める所得控除です。所得控除は医療費控除・社会保険料控除・扶養控除、令和7年分から加わった特定親族特別控除など全部で16種類ありますが、基礎控除だけは支出も家族構成も問いません。合計所得金額が2,500万円以下の居住者なら、会社員にも個人事業主にも年金受給者にも適用されます。16種類の一覧と受け方の違いは控除の種類一覧にまとめています。
令和8年分の基礎控除は、所得税法86条の本体部分62万円(改正前58万円)に、租税特別措置法第41条の16の2の加算額を上乗せした金額です。国税庁のQ&Aによると、この加算は居住者だけに適用されます。1年を通じて非居住者だった人は加算がなく、合計所得金額2,350万円以下なら62万円で、それを超えると居住者と同じく48万円・32万円・16万円と下がり、2,500万円超はゼロです。
給与所得控除が先・基礎控除が後になる計算の順番
「給与所得控除と基礎控除はどちらが先か」は、収入と所得の違いを押さえると答えが出ます。収入は差し引く前の金額、所得は経費や給与所得控除を引いた後の金額です。給与収入300万円で、社会保険料が45万円の会社員なら、次の順に進みます。
| 段階 | 呼び名 | 金額 | 差し引くもの |
|---|---|---|---|
| 1 | 給与の収入金額 | 300万円 | (源泉徴収票の支払金額) |
| 2 | 給与所得 | 202万円 | 給与所得控除98万円 |
| 3 | 合計所得金額 | 202万円 | (他の所得があれば合算) |
| 4 | 課税所得 | 53万円 | 基礎控除104万円・社会保険料控除45万円 |
給与所得控除は1→2の段階、基礎控除は3→4の段階で引きます。二つとも「収入から引く」と考えて300万円から一度に引くと、合計所得金額を小さく見積もりすぎ、扶養や基礎控除の段階判定を誤ります。なお、非課税の通勤手当はそもそも1段階目の収入金額に入りません。課税所得から税額を出す手順は課税所得とは?収入・所得との違いと計算方法で詳しく扱っています。
給与所得控除と所得控除・税額控除の違い
名前に「控除」が付くものは三つの層に分かれます。給与所得控除は所得を計算する段階(上の表の1→2)、基礎控除を含む所得控除は課税所得を出す段階(3→4)、住宅ローン控除などの税額控除は税額が出た後の段階で引きます。同じ10万円でも、所得控除なら税率5%の人で5,000円(復興特別所得税を除く)しか税金が減りませんが、税額控除なら税額を上限に10万円が減ります。税額控除の種類は税額控除とは?所得控除との違いと種類一覧を参照してください。
令和8年分の基礎控除104万円が適用される合計所得金額
合計所得金額別の基礎控除額(令和8・9年分)
| 合計所得金額 | 給与収入だけの場合 | 基礎控除額 |
|---|---|---|
| 489万円以下 | 665万5,556円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 850万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 2,545万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超 2,400万円以下 | 2,595万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超 2,450万円以下 | 2,645万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超 2,500万円以下 | 2,695万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 2,695万円超 | 0円 |
給与収入の列は、給与所得控除額を当てはめて逆算した目安です。所得金額調整控除や特定支出控除を使う人は一致しません。年収850万円を超えて子育て世帯などに当たる人の調整は所得金額調整控除とは?で扱っています。
国税庁のタックスアンサーNo.1199「基礎控除」は[令和8年4月1日現在法令等]に更新され、令和7年分・令和8〜9年分・令和10年分以後の3列が並ぶ表になっています。調べるときに年分の列を取り違えないことが、いちばんの注意点です。
基礎控除95万円は令和7年分の金額
「基礎控除額は95万円ですか?」という疑問への答えは、年分によって変わります。95万円は令和7年分で合計所得金額132万円以下の人の金額です。令和7年分は132万円以下95万円、336万円以下88万円、489万円以下68万円、655万円以下63万円、2,350万円以下58万円の5段階でした。令和8年分は42万円の加算が合計所得金額489万円以下へ一本化され、上の3段階がまとめて104万円になっています。
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」の1ページにも改正前後の表があり、88万円・68万円は改正前の欄の数字です。改正後の加算額は、措置法第41条の16の2第1項第1号イが「合計所得金額が四百八十九万円以下である場合 四十二万円」と定めています。62万円+42万円で104万円です。
令和8年中に限った注意点もあります。年の中途で亡くなった人や出国する人の令和8年分を、令和8年12月1日から12月31日までに準確定申告する場合、使う様式は令和7年分の確定申告書で、国税庁Q&AのQ6-2によるとe-Taxソフトの「基礎控除」欄には95万円までしか入力できません。この場合は基礎控除欄を初期表示の「0,000」のままにし、雑損控除欄に改正後の基礎控除額を入れます。実際の雑損控除もあるときは、雑損控除額と基礎控除額を合計して入力します。あわせて送信票の特記事項欄に「基礎控除額●●●円」(雑損控除もあるときは「雑損控除額●●●円、基礎控除額●●●円」)と書きます。
令和8・9年分の給与所得控除74万円と給与所得の求め方
給与所得控除の速算表(令和8・9年分)
給与所得控除の最低保障額は65万円から74万円になりました。令和8年分と令和9年分に限る措置で、租税特別措置法第29条の4が定めています。給与収入が74万円に満たない場合は、収入金額と同額が控除額になり、給与所得はゼロです。
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円以下 | 74万円 |
| 220万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
220万円を超える区分は改正されていません。220万円ちょうどでは速算式でも74万円になり、境目で段差が出ない設計です。令和7年分は190万円以下が65万円だったので、給与収入74万円以上190万円以下の人は控除が9万円増えます。65万円以上74万円未満の人は増える幅が9万円より小さく、改正前後とも給与所得が0円になる65万円未満の人は変わりません。190万円超220万円以下の人も9万円より小さい幅で増えます。
給与収入69万1,000円以上220万円未満は給与所得が法定額
この帯では、速算表から引き算した金額ではなく、法律が直接決めた金額が給与所得になります。措置法第29条の4第2項が「所得税法第二十八条第二項から第四項までの規定にかかわらず」として定めたもので、タックスアンサーNo.1410にも同じ表が載っています。
| 給与等の収入金額 | 給与所得の金額 |
|---|---|
| 69万1,000円以上 74万1,000円未満 | 0円 |
| 74万1,000円以上 219万1,000円未満 | 収入金額−74万円 |
| 219万1,000円以上 219万3,000円未満 | 145万1,000円 |
| 219万3,000円以上 219万6,000円未満 | 145万3,000円 |
| 219万6,000円以上 220万円未満 | 145万6,000円 |
年収136万円や178万円は「74万1,000円以上219万1,000円未満」に入るので、給与所得は収入から74万円を引いた額で確定します。220万円以上660万円未満は、所得税法第28条第4項により別表第五(4,000円刻みの表)で求めます。年末調整では、国税庁が8月に公表した「令和8年分 年末調整のしかた」の47〜54ページにある「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使えば、この特例を含めた金額をそのまま引けます。
年収178万円まで所得税がゼロになる計算と、住民税・社会保険との違い
給与だけで暮らす人の所得税がかからない上限は、給与所得控除74万円と基礎控除104万円を足した178万円です。年収178万円なら給与所得は104万円、そこから基礎控除104万円を引いて課税所得は0円になります。令和7年分は65万円+95万円で160万円でした。
この178万円は、社会保険料控除などほかの所得控除がない場合の目安です。給与から健康保険料や厚生年金保険料が引かれていれば、その分だけ課税所得が減るため、年収が178万円を超えても所得税がゼロになることがあります。
178万円は所得税だけの線です。住民税は控除ごとに扱いが分かれます。仙台市の令和9年度税制改正の案内によると、給与所得控除の最低保証額は住民税でも令和9年度分・令和10年度分(令和8年分・9年分の所得が対象)は74万円です。一方で「基礎控除の改正は所得税のみ」とされ、住民税の基礎控除は43万円のまま変わりません。仙台市では、令和9年度分の住民税は給与収入119万円以下で非課税になると案内しています。非課税の線は自治体の区分によって違うので、お住まいの市区町村の案内で確かめてください。社会保険の扶養(年収130万円未満)や加入の判定も、所得税とは別の制度です。短時間労働者の加入要件のうち月8.8万円(年収106万円相当)の賃金要件は、2026年10月に撤廃されています。住民税の計算は住民税はいくら?年収別早見表と市町村民税所得割額の確認方法、年収ごとの線の一覧は年収の壁2026早見表で確認できます。
年収別に見た令和8年分の減税額(令和7年分との比較)
改正で所得税がいくら減るかは、年収によって大きく違います。同じ年収・同じ社会保険料のまま、令和7年分のルールと令和8年分のルールを当てはめて比べました。前提は、給与収入だけ、社会保険料は年収の15%、ほかの所得控除なし、所得税は復興特別所得税2.1%込みです。課税所得は1,000円未満を切り捨て、税額(復興特別所得税込み)は100円未満を切り捨てて、令和7年分と令和8年分の差を減税額としました。住民税は含みません。
| 給与収入 | 合計所得金額 | 基礎控除(令和7年分→8年分) | 所得税 令和7年分 | 所得税 令和8年分 | 減税額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 132万円→126万円 | 95万円→104万円 | 3,500円 | 0円 | 3,500円 |
| 300万円 | 202万円 | 88万円→104万円 | 35,200円 | 27,000円 | 8,200円 |
| 360万円 | 244万円 | 88万円→104万円 | 52,000円 | 43,900円 | 8,100円 |
| 400万円 | 276万円 | 88万円→104万円 | 65,300円 | 57,100円 | 8,200円 |
| 500万円 | 356万円 | 68万円→104万円 | 117,900円 | 90,300円 | 27,600円 |
| 600万円 | 436万円 | 68万円→104万円 | 184,200円 | 147,500円 | 36,700円 |
| 700万円 | 520万円 | 63万円→67万円 | 282,300円 | 274,100円 | 8,200円 |
| 800万円 | 610万円 | 63万円→67万円 | 435,400円 | 427,200円 | 8,200円 |
| 1,000万円 | 805万円 | 58万円→62万円 | 782,500円 | 774,400円 | 8,100円 |
減税額がいちばん大きいのは、給与収入でおよそ475万円から665万円の層です。合計所得金額336万円超489万円以下にあたり、基礎控除が68万円から104万円へ36万円増えたためで、年収600万円では約3万7,000円減ります。給与収入が665万5,556円を超えて合計所得金額が489万円を上回ると、令和7年分からの増加は4万円(63万円→67万円、58万円→62万円)にとどまり、表の年収700万〜1,000万円の例では減税額は8,000円台です。合計所得金額が2,350万円を超える人は、基礎控除の額が変わらず減税はありません。
合計所得金額132万円以下の層は基礎控除が9万円増え、給与収入190万円以下なら給与所得控除も最大9万円増えます(表の年収200万円は68万円→74万円で6万円)。ただ、もともとの税額が小さいので、減税額は数千円です。源泉徴収票の「源泉徴収税額」が0円の人は、改正後も戻ってくる税金はありません。
年収300万〜400万円の減税額がほぼ8,000円台で横並びなのは、どの年収でも基礎控除が16万円増え、税率5%の区分にとどまるためです。16万円×5%×1.021で約8,200円になります。税率の区分そのものは累進課税とは?所得税の税率7段階・速算表で確認できます。
年金収入から合計所得金額を求める方法と扶養に入れる上限
合計所得金額の定義(所得税法2条1項30号)
合計所得金額は、所得税法第2条第1項第30号が、純損失・雑損失の繰越控除を「適用しないで計算した場合における」総所得金額・退職所得金額・山林所得金額の合計額と定めています。前年からの繰越損失を引く前の金額で判定する点が要です。
基礎控除の段階、扶養親族の判定、配偶者控除の判定は、すべてこの合計所得金額で行います。「年収いくらまで」という言い方が広まっていますが、法令が見ているのは収入ではなく所得です。同じ「合計所得金額62万円」でも、給与の人と年金の人では対応する収入額が違います。
公的年金等控除の据え置きと、年金の源泉徴収で引き上げられる基礎的控除額
年金収入から所得を出すときは、給与所得控除ではなく公的年金等控除を使います。所得税法第35条第4項の計算式では、年金以外の合計所得金額が1,000万円以下なら、控除額は「40万円+(年金収入−50万円)×25%」(年金収入410万円以下の場合)で、60万円に満たなければ60万円です。65歳以上は措置法第41条の15の3でこの60万円が110万円に読み替えられます。年齢はその年の12月31日時点で判定します。
令和8年度改正で上がったのは基礎控除と給与所得控除で、公的年金等控除の額は変わっていません。変わったのは、年金から天引きする源泉徴収税額を計算するときの「基礎的控除額」で、こちらは令和9年1月1日以後に支払う年金から適用されます。国税庁のタックスアンサーNo.1600「公的年金等の課税関係」も[令和8年4月1日現在法令等]で更新されています。
年金収入別の合計所得金額と、所得税がゼロになる上限
年金以外に所得がない人を前提に、令和8年分の数字で整理します。
| 受給者の年齢 | 公的年金等控除(最低) | 所得税ゼロの年金収入 | 扶養に入れる年金収入 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上 | 110万円 | 214万円以下 | 172万円以下 |
| 65歳未満 | 60万円 | 175万3,333円以下 | 122万円以下 |
65歳以上の214万円は、公的年金等控除110万円と基礎控除104万円の合計です。年金収入330万円までは控除額が110万円で一定なので、この足し算がそのまま使えます。介護保険料や国民健康保険料が年金から天引きされていれば社会保険料控除になるため、実際の非課税ラインはこれより上になります。
65歳未満は計算が一段複雑です。最低額60万円が効くのは年金収入130万円までで、それを超えると「40万円+(年金収入−50万円)×25%」が動きます。合計所得金額が104万円になる点を解くと年金収入175万3,333円で、ここが所得税ゼロの上限です。「60万円+104万円=164万円」と足し算すると、164万円超175万円以下の人を課税と誤って判定します。
あらましPDFの「源泉徴収を要しない公的年金等の額」は、令和9年分で65歳以上214万円(2階部分のみの場合は137万円)、65歳未満164万円です。これは年金の支払いごとに源泉徴収をするかどうかの基準で、1年間の所得税がゼロになる線とは別物です。65歳未満の164万円を非課税ラインと読まないでください。
親を扶養に入れられる年金収入は172万円・122万円
令和8年度改正で、扶養親族・同一生計配偶者の所得要件が合計所得金額58万円以下から62万円以下(給与収入なら136万円以下)に上がりました。ひとり親の生計を一にする子も同じ62万円に上がりましたが、こちらは合計所得金額ではなく総所得金額等の合計額で判定します。国税庁の資料は給与収入への換算は示していますが、年金収入への換算は載せていません。
65歳以上の親は、年金収入から公的年金等控除110万円を引いた額が62万円以下ならよいので、上限は172万円です。令和7年分の58万円基準では168万円でした。65歳未満は60万円を引いて62万円以下なので122万円(令和7年分は118万円)です。遺族年金と障害年金は非課税なので、収入に含めません。
この所得要件の改正は令和8年12月1日以後に支払う給与から適用されるため、新しく要件を満たした親も自動では反映されません。会社員は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出し直す必要があります。年金受給者が新たに要件を満たした親族を扶養に入れるには、原則として確定申告が必要です。扶養控除と配偶者控除の要件の違いは扶養控除とは?税法上の扶養の条件・金額と配偶者控除との違いで整理しています。
令和8年12月の年末調整での精算と、確定申告が必要になる人
11月までの源泉徴収は変わらず12月にまとめて精算
国税庁の令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等については「令和8年11月までの源泉徴収事務に変更は生じません」と明記しています。12月の年末調整で、引き上げ後の基礎控除額と改正後の「給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って1年分の税額を計算し直し、それまでに天引きした税額との差額を精算します。多くの人は12月の給与で還付を受ける形です。改正後の源泉徴収税額表を毎月の給与に使うのは、令和9年1月以後に支払う給与からです。
年金受給者も同じ流れです。日本年金機構の案内のとおり、令和8年12月の年金支払時に、支払者が1年分の税額を計算し直して精算し、還付する金額があれば原則として支払者から還付されます。確定給付企業年金法に基づく年金などは、この精算の対象外です。
会社側では、年末調整を行う給与計算システムが改正後の基礎控除額・給与所得の表・扶養の所得要件に対応しているかの確認が、12月までの作業になります。自社開発の給与・人事システムを改修する場合は、人事・労務管理システム開発のように、税制改正の反映を前提にした設計が要ります。
基礎控除申告書に書く合計所得金額の見積額
年末調整で出す「給与所得者の基礎控除申告書」には、その年の合計所得金額の見積額と、それに応じた基礎控除額を書きます。国税庁の令和8年分の様式は令和8年12月1日以後に行う年末調整で使うもので、基礎控除の額の欄には104万円・67万円・62万円・48万円・32万円・16万円のいずれかを記載します。前年の控えを写すと95万円や88万円を書いてしまうので注意してください。見積額が489万円を超えるかどうかで104万円と67万円が分かれるので、給与収入が665万円前後で賞与の額が読みにくい人は特に気をつけてください。
配偶者に給与収入がある場合、配偶者の合計所得金額も小さくなります。配偶者の給与収入が74万円以上190万円以下なら、給与所得控除が65万円から74万円になった分、合計所得金額は9万円小さく計算されます。65万円以上74万円未満は差が9万円より小さく(給与所得は0円が下限)、65万円未満は改正前後とも0円です。190万円超220万円以下も差は9万円より小さく、220万円超では変わりません。一律に9万円を引いて記入しないでください。
年末調整で改正が反映されない人
国税庁Q&AのQ7-1によると、次の人は年末調整や12月の精算で改正後の控除が適用されないため、確定申告をしないと引き上げ分を受け取れません。
- 令和8年11月30日以前に最後の給与を受け取り、そのとき年末調整を受けた人(年の中途で非居住者になった人、死亡退職した人、年末までに復職していない休職者など)
- 令和8年の中途で退職し、年末調整を受けていない人
- 令和8年12月に年金の支払がなく、12月の精算が行われなかった年金受給者
- 所得要件の改正で新たに扶養親族の要件を満たした親族について、扶養控除を受けたい年金受給者
ただし、源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0円の人は、確定申告をしても還付される税金はありません。年金受給者が申告すべきかどうかの判断は年金受給者が確定申告しないとどうなる?で詳しく扱っています。
令和10年分以後の基礎控除と給与所得控除の見直し
令和8・9年分の104万円と74万円は、2年間に限った金額です。タックスアンサーNo.1199の表では、令和10年分以後の基礎控除は合計所得金額132万円以下が99万円、132万円超2,350万円以下が62万円に戻ります。給与所得控除の最低保障額は69万円です。
その先は物価に合わせて動きます。令和10年分以後は、基礎控除額と給与所得控除の最低保障額を2年ごとに、直近2年間の全国消費者物価指数の変化率を基準に見直すことが基本とされました。金額が固定ではなくなるため、年末調整の前にその年の金額を国税庁の資料で確かめる習慣をつけておくと安心です。
よくある質問
基礎控除と給与所得控除の違いは何ですか?
差し引く対象が違います。給与所得控除は給与収入から引いて給与所得を出すためのもので、給与をもらう人だけに適用されます。基礎控除は、所得を合計した後の総所得金額などから引く所得控除で、控除額は合計所得金額で決まり、会社員にも個人事業主にも年金受給者にも適用されます。令和8・9年分の金額は、給与所得控除が最低74万円、基礎控除が最大104万円です。
給与所得控除と基礎控除はどちらが先ですか?
給与所得控除が先です。給与収入から給与所得控除を引いて給与所得を出し、ほかの所得と合計します。損失の繰越控除がある人はそれを差し引いた後の総所得金額などから、基礎控除などの所得控除を引いて課税所得を求めます。基礎控除の額は繰越控除を引く前の合計所得金額で決まるので、給与所得控除を先に引かないと基礎控除の額も決まりません。
基礎控除額は95万円ですか?
95万円は令和7年分で、合計所得金額132万円以下の人の金額です。令和8年分は、合計所得金額489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円です。令和8年12月中に令和7年分の様式で令和8年分の準確定申告をe-Taxソフトで作る場合は、基礎控除欄に95万円までしか入力できないため、国税庁Q&Aは雑損控除欄に入力する方法を案内しています。
年金収入がいくらなら合計所得金額はいくらになりますか?
年金以外に所得がなければ、年金収入から公的年金等控除を引いた額が合計所得金額です。65歳以上は年金収入330万円まで控除が110万円なので、年金収入172万円で合計所得金額62万円、214万円で104万円です。65歳未満は年金収入130万円まで控除が60万円で、130万円超410万円以下は「40万円+(年金収入−50万円)×25%」で控除額を計算します(年金以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合)。
親を扶養に入れるには年金収入がいくら以下ならよいですか?
令和8年分から所得要件が合計所得金額62万円以下になったため、65歳以上の親なら年金収入172万円以下、65歳未満なら122万円以下です。令和7年分はそれぞれ168万円・118万円でした。改正は自動では反映されないので、会社員は扶養控除等(異動)申告書を出し直し、年金受給者は原則として確定申告で適用を受けます。遺族年金と障害年金は収入に含めません。