控除とは、収入や税額などから一定の金額を差し引くことです。所得税の控除は、所得から差し引く「所得控除」16種類と、税額から差し引く「税額控除」に分かれます。給与明細の「控除」欄に並ぶ社会保険料や所得税は給料からの天引きで、税金を減らす控除とは意味が違います。
使える控除は会社員と個人事業主でほぼ同じで、違うのは受け方です。年末調整の対象となる会社員は多くの控除を勤務先で申告でき、個人事業主は原則として確定申告で申告します(給与収入が2,000万円を超える会社員などは年末調整の対象外)。令和8年分は基礎控除が最大104万円になり、扶養親族の所得要件は合計所得62万円以下(給与収入だけなら年収136万円以下)に上がりました。年末調整の対象になる会社員は、改正額が令和8年12月の年末調整でまとめて精算されます。この記事では16種類の所得控除と主な税額控除を「令和8年分の控除額」と「会社員・個人事業主それぞれの受け方」で一覧にし、年末調整では受けられない控除、控除を足しても負担が減らない場面まで整理します。
まとめ:控除の種類と会社員・個人事業主の受け方
- 控除は一定額を差し引くこと。税金の控除は課税の元になる所得や税額を小さくする仕組みで、給与明細の「控除」欄(社会保険料・所得税などの天引き)とは別物。ただし天引きされた社会保険料は、年末調整で社会保険料控除として所得から差し引かれる
- 控除は所得控除16種類(令和7年分から特定親族特別控除が加わった)と、住宅ローン控除・配当控除などの税額控除に分かれる。同じ10万円でも、所得控除は税率分しか税金を減らさず、税額控除は所得税額の範囲内なら10万円がそのまま減る
- 令和8・9年分の基礎控除は合計所得489万円以下なら104万円。扶養親族・同一生計配偶者の所得要件は合計所得62万円以下(給与のみなら年収136万円以下)に上がった
- 会社員は16種類のうち医療費控除・寄附金控除・雑損控除の3つを除く13種類を年末調整で受けられる。この3つと住宅ローン控除の初年度、配当控除は確定申告が必要
- 個人事業主には給与所得控除が無く、代わりに青色申告特別控除(最大65万円)がある。国民健康保険料・国民年金・小規模企業共済・iDeCoは自分で全額を計上する
- 所得控除は所得税・住民税を減らしても、国民健康保険料の計算には入らない。所得税がゼロの人は所得控除を足しても所得税は減らない
- 申告し忘れた控除は、確定申告をしていなければ翌年1月1日から5年以内の還付申告で取り戻せる。申告済みなら更正の請求を使い、期限は原則として法定申告期限から5年(還付申告を出した人は提出日から5年)
控除の意味と所得控除・税額控除が差し引く位置
控除は「差し引く」という意味の言葉で、税金の話では、条件に当てはまる人の所得や税額から一定額を差し引いて税金を軽くする仕組みを指します。所得控除は税率を掛ける前の所得(課税所得)を減らし、税額控除は計算した税額そのものを減らします。どちらも納める税金を少なくする制度で、お金が振り込まれるわけではありません。お金が戻る「還付」は、源泉徴収などで納めすぎた税金を返してもらう手続きで、控除を申告した結果として起きるものです。
所得控除と税額控除で減る税額の違い
所得税は「収入 → 所得 → 課税所得 → 税額」の順に計算します。所得控除は所得から差し引いて課税所得を小さくし、税額控除は税率を掛けた後の税額から直接差し引きます。差し引く場所が違うので、同じ金額でも効き目が違います。
所得控除による所得税の減少額は、控除前後で同じ税率区分に収まり、控除額を全額差し引ける場合には「控除額×適用税率」で求められます。所得税の税率は課税所得に応じて5%から45%の7段階で、復興特別所得税(所得税額の2.1%)も同じ割合で減ります。
| 控除前の課税所得(例) | 所得税率 | 所得控除10万円で減る所得税 | 税額控除10万円で減る所得税 |
|---|---|---|---|
| 150万円 | 5% | 5,000円 | 75,000円 |
| 250万円 | 10% | 10,000円 | 100,000円 |
| 400万円 | 20% | 20,000円 | 100,000円 |
| 800万円 | 23% | 23,000円 | 100,000円 |
| 1,000万円 | 33% | 33,000円 | 100,000円 |
※令和8年分の所得税だけの比較で、復興特別所得税と住民税は含まず、ほかの税額控除は無いものとする。課税所得150万円の人は所得税額が75,000円しかないため、税額控除10万円のうち75,000円までしか使えない。
税額控除の計算方法と控除率の詳細は税額控除とは?所得控除との違いと種類一覧で扱っています。収入と所得の違い、給与所得控除の段階表は基礎控除と給与所得控除の違いを参照してください。
給与明細の「控除」欄は税金を減らす控除とは別の天引き
給与明細の「控除」欄に並ぶ健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税は、給料から差し引かれた天引きの額です。労働基準法24条1項は、賃金は全額を支払うのが原則としたうえで、法令に別段の定めがある場合や労使の書面協定がある場合は「賃金の一部を控除して支払うことができる」と定めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。「給料から控除される」はこの天引きのことで、総支給額から控除額の合計を引いた残りが手取り(差引支給額)です。
二つの控除はつながっています。給与から天引きされた健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料は、年末調整で全額が社会保険料控除として所得から差し引かれ、所得税と住民税を減らします。毎月天引きされる所得税は1年分の税金の前払い(源泉徴収)で、年末調整で所得控除を反映した年税額と比べ、納めすぎた分が戻ります。12月や翌年1月の給与で所得税が戻るのはこのためです。
所得控除16種類の令和8年分の控除額と会社員・個人事業主の受け方
所得控除は所得税法72条(雑損控除)から86条(基礎控除)までに定められています。令和7年分から84条の2の特定親族特別控除が加わって16種類になりました(85条は扶養親族の判定時期の規定で、控除ではありません)。「15種類」と書いた解説はそれ以前の数え方です。各控除の概要は国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」でも確認できます。下の表は、令和8年分の控除額と、会社員・個人事業主がどこで申告するかをまとめたものです。
| 所得控除 | 令和8年分の控除額 | 会社員 | 個人事業主 |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 最大104万円(所得に応じ逓減) | 年末調整 | 確定申告 |
| 配偶者控除 | 最大38万円(老人48万円) | 年末調整 | 確定申告 |
| 配偶者特別控除 | 最大38万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 扶養控除 | 38万〜63万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 特定親族特別控除 | 最大63万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 障害者控除 | 27万〜75万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 寡婦控除 | 27万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| ひとり親控除 | 35万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 勤労学生控除 | 27万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 社会保険料控除 | 支払った全額 | 年末調整 | 確定申告 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 支払った全額 | 年末調整 | 確定申告 |
| 生命保険料控除 | 最大12万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 地震保険料控除 | 最大5万円 | 年末調整 | 確定申告 |
| 医療費控除 | 最大200万円 | 確定申告 | 確定申告 |
| 寄附金控除 | 対象寄附金と総所得金額等の40%の少ない方-2,000円 | 確定申告 | 確定申告 |
| 雑損控除 | 損失額から算出 | 確定申告 | 確定申告 |
控除の種類そのものに会社員専用・個人事業主専用の区別はありません。違いは申告の窓口と、会社員なら勤務先が計算してくれるかどうかです。人的控除(基礎・配偶者・扶養など)は所得要件を満たすかの判定が、物的控除(社会保険料・保険料・医療費など)は支払額の証明が要点になります。
令和8年度改正で金額が動いた控除
令和8年度税制改正のうち、基礎控除・給与所得控除の引上げと扶養親族等の所得要件の改正は、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」に基づく改正額は次のとおりです。
| 項目 | 令和8・9年分 | 改正前 |
|---|---|---|
| 基礎控除(合計所得489万円以下) | 104万円 | 95万〜68万円 |
| 基礎控除(489万円超655万円以下) | 67万円 | 63万円 |
| 基礎控除(655万円超2,350万円以下) | 62万円 | 58万円 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 74万円 | 65万円 |
| 扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 | 62万円以下(給与136万円以下) | 58万円以下(123万円以下) |
| 特定親族の所得要件 | 62万円超123万円以下 | 58万円超123万円以下 |
| 勤労学生の所得要件 | 89万円以下(給与163万円以下) | 85万円以下(150万円以下) |
給与収入だけの人は、基礎控除104万円と給与所得控除74万円の合計178万円までなら所得税がかかりません。生命保険料控除にも令和8年分・令和9年分の特例があり、23歳未満の扶養親族がいる人は一般生命保険料控除(新契約)の上限が4万円から6万円に上がります。合計の上限12万円は変わりません。
ひとり親控除は令和9年分から38万円に上がり、令和8年分は35万円のままです。扶養や配偶者の判定ラインを年収ベースで比べたい場合は年収の壁の一覧と手取りの分岐点、配偶者控除と扶養控除で対象となる家族の違いは扶養控除と配偶者控除の違いで整理しています。
税額控除の種類と確定申告が必要な理由
個人が使う税額控除は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)、配当控除、外国税額控除、寄附金の税額控除3種類が中心です(国税庁「No.1200 税額控除」には、このほか住宅の耐震改修や青色申告者向けの事業税額控除なども並びます)。ここで紹介する税額控除は、住宅ローン控除の2年目以降を除いて年末調整では処理できません。寄附金の税額控除には、対象寄附金額や所得税額に応じた上限があり、表の算式だけで控除額が確定するわけではありません。
| 税額控除 | 控除額の目安 | 会社員の受け方 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 年末残高×0.7% | 初年度は確定申告・2年目から年末調整 |
| 配当控除 | 国内法人の対象配当等は原則10%・5%(投資信託等は別率) | 確定申告(総合課税を選ぶ) |
| 外国税額控除 | 控除限度額の範囲内 | 確定申告 |
| 政党等寄附金特別控除 | (寄附金-2,000円)×30% | 確定申告 |
| 認定NPO法人等寄附金特別控除 | (寄附金-2,000円)×40% | 確定申告 |
| 公益社団法人等寄附金特別控除 | (寄附金-2,000円)×40% | 確定申告 |
住宅ローン控除は令和8年度改正で入居期限が令和12年12月31日まで延長され、既存住宅でも省エネ性能によって控除期間13年になりました。借入限度額と要件は住宅ローン控除の仕組みと適用要件で確認してください。
会社員が年末調整で受けられる控除と確定申告が必要な控除
会社員の控除は、勤務先に申告書と証明書を出せば年末調整で完結するものと、自分で確定申告しないと受けられないものに分かれます。年末調整で扱える控除は制度上決まっており、医療費控除・寄附金控除・雑損控除は対象外です。勤務先を通さず支払った保険料でも、生命保険料控除や社会保険料控除などは年末調整で申告できます。
年末調整で完結する13種類と提出書類
基礎控除・配偶者控除・配偶者特別控除・特定親族特別控除・所得金額調整控除は「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」1枚で申告します。扶養控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除は年初に出す「扶養控除等(異動)申告書」、生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金は「保険料控除申告書」です。
給与から天引きされる健康保険料・厚生年金保険料は勤務先が自動で計上します。自分で払った国民年金保険料や、生計を一にする家族のために本人が支払った国民健康保険料、iDeCoの個人払込分は、保険料控除申告書で申告します。国民年金とiDeCoには証明書類の提出・提示等が必要ですが、国民健康保険料には証明書の添付は不要です。国民健康保険料の扱いは国民健康保険料は確定申告・年末調整で全額控除、iDeCoはiDeCoの確定申告と年末調整はどっち?にまとめています。
確定申告でしか受けられない控除
医療費控除・寄附金控除・雑損控除の3つは年末調整の対象外です。税額控除では、住宅ローン控除の初年度と配当控除も確定申告が必要です。年末調整を済ませた会社員がこれらを使う場合は、源泉徴収票の数字に追加の控除を足して確定申告(還付申告)します。副業などの所得がある場合は、20万円以下でも併せて申告する必要があります。
- 医療費控除:支払った医療費から保険金の補填額と10万円(総所得金額等が200万円未満なら5%)を引いた額。通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は、その年ごとにどちらか一方を選ぶ。セルフメディケーション税制は対象医薬品の購入に加え、健康診断・予防接種などの取組が要件。詳細は医療費控除とは?対象・計算・申告方法
- 寄附金控除:ふるさと納税は寄附先が5自治体以内などの条件でワンストップ特例を使えば確定申告が要らない。医療費控除など別の理由で確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になり寄附金控除も申告書に書く必要がある。詳細は寄附金控除は年末調整でできない
- 雑損控除:災害・盗難・横領による資産の損失が対象。詐欺や恐喝の被害は対象外
令和8年分の改正を12月の年末調整で精算できない人
令和8年11月までの給与の源泉徴収は改正前の税額表のままで、引き上げ後の基礎控除と給与所得控除は12月の年末調整で1年分まとめて反映されます。このため、令和8年11月30日以前に最後の給与を受けて年末調整を終えた人(年の途中で退職した人、海外転勤で非居住者になった人など)は、改正後の控除額を受けるために確定申告が必要です。
扶養親族の所得要件の改正(62万円以下)は令和8年12月1日以後の給与から適用されます。改正で新たに扶養控除の対象になった親族がいる場合は、扶養控除等(異動)申告書を出し直すと年末調整で反映されます。年金受給者で新たに要件を満たす親族がいる人は年金受給者の確定申告を確認してください。
個人事業主の控除が会社員と違う3つの点
個人事業主が使える所得控除は会社員と同じ16種類で、すべて確定申告書の第一表に自分で記入します。会社員との違いは、所得の計算段階で使える控除と、自分で計上する社会保険料の範囲です。
事業所得に適用する青色申告特別控除の金額と要件
個人事業主には給与所得控除がありません。代わりに青色申告者は、事業所得から青色申告特別控除を差し引けます。令和8年分は、複式簿記で記帳し貸借対照表と損益計算書などを添付して期限内に申告すると最高55万円、さらにe-Taxで申告するか優良な電子帳簿で保存すると最高65万円、それ以外は最高10万円です。
令和9年分からは制度が変わり、55万円の区分が無くなって65万円はe-Taxでの申告が必須要件になり、優良な電子帳簿の保存などを満たすと75万円に上がります。給与所得控除が無い理由と代わりの控除は個人事業主に給与所得控除はない理由、経費と所得控除の線引きは個人事業主の経費と控除の違いで詳しく扱っています。
社会保険料・小規模企業共済・iDeCoの申告額
会社員の健康保険料・厚生年金保険料は勤務先が天引きして計上しますが、個人事業主は国民健康保険料・国民年金保険料を自分で集計して社会保険料控除に入れます。生計を一にする家族の分を本人が払った場合も、本人の控除にできます。
小規模企業共済の掛金(月7万円まで)とiDeCoの掛金(自営業者は国民年金基金と合わせて月6万8,000円まで)は、支払った全額が小規模企業共済等掛金控除になります。iDeCoの上限は2026年12月分の掛金から月7万5,000円に上がりますが、12月分は2027年1月に引き落とされるため、増額分が控除されるのは令和9年分からです。どちらも事業の経費ではなく所得控除なので、帳簿で経費に入れると二重計上になります。
事業専従者と配偶者控除・扶養控除の併用制限
配偶者や親族を事業に専従させて青色事業専従者給与を払う、または白色申告で事業専従者控除(配偶者86万円、その他の親族50万円が上限)を受けると、その家族は配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の対象から外れます。青色事業専従者給与が月数万円の少額でも同じです。専従者にするかどうかは、労務の実態と給与の相当性を確認したうえで、事業主の税額だけでなく、家族側の税金や世帯の保険料まで含めた負担額を比べて決めます。
控除を足しても税金や保険料が減らない場面
控除の一覧だけを見ると、使える控除を全部積めば得に見えます。実際には、控除が効く税金・効かない負担があり、次の3つの場面では期待したほど負担が減りません。
所得税がゼロの場合の所得控除の効果
課税所得が既にゼロなら、医療費控除や生命保険料控除を足しても所得税は1円も減りません。令和8年分では、給与以外の所得がなく、居住者として基礎控除104万円を適用できる人は、給与収入178万円までがこれにあたります。ただし住民税は基礎控除が43万円で所得税より低いため、所得税がゼロでも住民税の所得割が残り、控除が住民税を減らすことはあります。
税額控除も、所得税額を超える分は戻りません。住宅ローン控除は所得税から引ききれなかった分を一定の範囲で住民税から差し引けますが、令和8年入居分の上限は所得税の課税総所得金額等の5%(最大9万7,500円)です。過去の入居分には、入居時期や取得条件により7%(最大13万6,500円)の上限が適用される場合もあります。
住民税と所得税の控除額の違い
住民税にも所得控除がありますが、金額は所得税と別に決まっています。基礎控除は合計所得金額2,400万円以下なら43万円、一般の配偶者控除は最大33万円(老人控除対象配偶者は最大38万円)、生命保険料控除の上限は合計7万円です。生命保険料控除の6万円特例(23歳未満の扶養親族がいる場合)も住民税には無く、所得税の控除額に住民税率10%を掛けて「戻る住民税」を計算すると過大になります。住民税の計算は住民税はいくら?年収別早見表と均等割・所得割の内訳で解説しています。
国民健康保険料の算定に反映されない所得控除
国民健康保険料の所得割は、原則として前年の総所得金額等から基礎控除額を引いた算定基礎額で計算します。基礎控除額は前年の合計所得金額2,400万円以下なら43万円で、それを超えると段階的に減ります。社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・iDeCo・生命保険料控除などの所得控除は、この計算に入りません。小規模企業共済やiDeCoで所得税・住民税は減っても、国民健康保険料は変わらないということです。
一方、青色申告特別控除は所得控除ではなく事業所得を計算する段階の控除なので、総所得金額等そのものが小さくなり、翌年度の国民健康保険料の所得割を下げる効果があります。ただし、控除後も賦課限度額に達する場合や、既に所得割がゼロの場合などは保険料が下がりません。個人事業主が節税策を比べるときは、この差を数字に入れてください。保険料の計算方法は個人事業主の国民健康保険はいくら?にまとめています。
申告し忘れた控除を取り戻す方法と期限
年末調整で生命保険料控除を出し忘れた、医療費控除を申告していなかったといった場合でも、期限内なら取り戻せます。手続きは確定申告をしたかどうかで変わります。
| 状況 | 手続き | 期限 | 令和8年分の期限 |
|---|---|---|---|
| 年末調整のみで確定申告していない | 還付申告 | 翌年1月1日から5年 | 令和13年12月31日 |
| 確定申告済みで、申告期限後に控除漏れに気づいた | 更正の請求 | 原則、法定申告期限から5年 | 原則、令和14年3月15日 |
| 控除申告書の提出漏れに気づいた | 勤務先で年末調整の再計算 | 翌年1月の源泉徴収票交付時まで | 令和9年1月の源泉徴収票交付時まで |
還付申告は1月1日から受け付けているので、確定申告期間(令和8年分は令和9年2月16日〜3月15日)を待つ必要はありません。e-Taxならマイナポータル連携で、生命保険料・社会保険料(国民年金)・医療費通知・ふるさと納税の寄附金受領証明などを自動で取り込めます。
よくある質問
給料から控除されるとはどういう意味ですか?
給料の総支給額から、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税などが差し引かれる(天引きされる)という意味です。労働基準法24条1項が、法令や労使協定に基づく場合に賃金の一部を控除して支払うことを認めています。天引きされた社会保険料は、年末調整で社会保険料控除として所得から差し引かれます。
所得控除は全部で何種類ありますか?
令和8年分は16種類です。以前は15種類でしたが、令和7年分から19歳以上23歳未満の親族を対象にした特定親族特別控除が加わりました。会社員は16種類のうち医療費控除・寄附金控除・雑損控除を除く13種類を年末調整で受けられます。
個人事業主の基礎控除はいくらですか?
会社員と同じ基準で、令和8年分は合計所得金額489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円、655万円超2,350万円以下なら62万円です。事業所得だけの個人事業主は、売上などの総収入金額から必要経費と適用できる青色申告特別控除を引いた金額で判定します。給与所得や不動産所得などもある場合は、それらを含む合計所得金額で判定します。
会社員と個人事業主は控除の面でどっちが得ですか?
使える所得控除は同じ16種類なので、所得控除の数では差がつきません。差が出るのは所得を計算する段階です。会社員は給与収入に応じた給与所得控除(令和8年分は最低74万円)が自動で引かれ、個人事業主は実際にかかった必要経費と青色申告特別控除(最大65万円)を引きます。年収400万円の個人事業主の税金はいくら?の試算(東京23区・単身・40歳未満、売上400万円・経費ゼロ・青色申告特別控除65万円の個人事業主と年収400万円の会社員)では、会社員の手取りが約14万円多くなりました。必要経費を計上すれば税負担は減りますが、その支出が新たに増えるなら手元に残るお金が増えるとは限りません。自宅家賃の事業使用分のように会社員でも払う支出を家事按分で経費にできる場合は、同じ試算で年49万円を超えると個人事業主の手元残りが上回ります。
年末調整で控除を出し忘れたらどうすればいいですか?
控除申告書の提出漏れは、翌年1月に勤務先が源泉徴収票を交付する時までなら、申告書を提出して年末調整の再計算を依頼できます。源泉徴収票を受け取った後は、自分で還付申告をします。令和8年分なら令和13年12月31日まで申告できます。