復興特別所得税は、その年の基準所得税額に2.1%を掛けた税金です。個人事業主は確定申告で所得税と一緒に計算し、合計額をまとめて納めます。令和8年度税制改正で課税期間は2047年(令和29年)12月31日まで延び、2027年1月1日以後に生ずる所得からは「復興特別所得税1.1%+防衛特別所得税1%」の内訳に変わります。合計2.1%は変わらないため、報酬から天引きされる源泉徴収10.21%も据え置きです。この記事では、確定申告書第一表のどの欄で計算するか、課税所得別にいくらになるか、源泉徴収10.21%をどう精算するかを、国税庁の手引きとQ&Aに沿って整理します。会社員の給与天引きを中心に知りたい場合は東日本大震災を契機に創設された復興特別所得税の仕組みと対象者が対応しています。
まとめ:個人事業主の復興特別所得税の計算・期間・源泉徴収の要点
- 計算式は「基準所得税額×2.1%」で、1円未満は切り捨てます。基準所得税額は確定申告書第一表の「再差引所得税額」㊹の金額です。
- 住宅ローン控除などで基準所得税額が0円になれば、復興特別所得税も0円です。
- 課税期間は2013年分から2047年分まで。当初の2037年末から10年延長されました。
- 2027年分からは復興1.1%+防衛1%。合計2.1%なので、源泉徴収税額の計算方法と10.21%・20.42%の源泉徴収税率は変わりません。
- 報酬から源泉徴収された10.21%は、確定申告書第一表の「源泉徴収税額」㊾で差し引いて精算します。
復興特別所得税の仕組みと個人事業主が納める範囲
復興特別所得税は、平成23年12月2日に公布された「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(復興財確法)で創設されました。国税庁のあらましは「個人の方で所得税を納める義務のある方は、復興特別所得税も併せて納める義務があります」としています。独立した税目ですが、課税標準は所得税額そのもので、所得税に2.1%を上乗せする付加税として働きます。
会社員の多くは給与の源泉徴収と年末調整で済みます(医療費控除や副業収入などで確定申告が必要になる場合もあります)。これに対して個人事業主は確定申告書で所得税と復興特別所得税を併せて計算し、申告期限までに合計額を納付します。国税庁の確定申告の手引きが表紙から「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」と題し、本文で両者をまとめて「所得税等」と呼んでいるのはこのためです。確定申告の全体の流れは個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円で扱っています。
復興特別所得税がかからない人の条件
かからないのは、基準所得税額が0円の人です。所得控除で課税所得が0円になった場合のほか、住宅ローン控除や配当控除といった税額控除で所得税額が0円まで下がった場合も、2.1%を掛ける元がなくなるため復興特別所得税は0円になります。事業所得が赤字の年でも、給与所得など他の所得を合わせて基準所得税額が残れば、その2.1%はかかります。判断の基準は事業の赤字ではなく、全部の所得を合わせた基準所得税額が0円かどうかです。
このとき、報酬から天引きされていた源泉徴収税額(所得税と復興特別所得税の合計額)は、確定申告をすれば全額が還付の対象になります。国税庁のあらましは、控除しきれない源泉徴収税額と源泉徴収特別税額(復興特別所得税分)が還付されると明記しています。赤字だから申告しなくてよいと判断すると、この還付を取り逃がします。
2047年までの課税期間延長と2027年分からの税率内訳
令和8年度税制改正で、復興特別所得税の税率は2.1%から1.1%に下がり、課税期間は令和19年(2037年)12月31日から令和29年(2047年)12月31日まで10年延長されました。あわせて防衛特別所得税(所得税額の1%相当)が創設されています。国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」(令和8年5月)は「合計税率(2.1%)に変更はありませんので、改正前後で、源泉徴収税額の計算方法に変更は生じません」と説明しています。適用は令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得からです。
| 対象の所得 | 復興特別所得税 | 防衛特別所得税 | 合計 | 報酬の源泉徴収 |
|---|---|---|---|---|
| 2013年分〜2026年分 | 2.1% | なし | 2.1% | 10.21% |
| 2027年分〜2047年分 | 1.1% | 1% | 2.1% | 10.21% |
2026年分(令和8年分)の確定申告は2027年2月〜3月に行いますが、対象は2026年中の所得なので旧来どおり復興特別所得税2.1%で計算します。内訳が変わるのは2027年分の申告からです。預金利息や上場株式等の配当(大口株主等を除く)から引かれる20.315%も合計は同じで、内訳だけが組み替わります(預金利息の税金はなぜ引かれる?20.315%の内訳と申告不要の理由)。
「2037年まで」という説明がまだ多い理由
改正前に作られた資料が更新されずに残っているためです。令和7年分の確定申告の手引きは「平成25年分から令和19年分まで」と書いており、国税庁タックスアンサーNo.2260(令和8年4月1日現在法令等)でさえ、速算表の注記は「平成25年から令和19年まで」、その下の計算例の注記は「平成25年から令和29年まで」と、新旧の年が同じページに並んでいます。検索上位の解説記事にも「2037年まで」のままのものがあります。期間を確かめるときは、改正後に出た国税庁Q&A(令和8年5月)を基準にしてください。
延長前後の税率の累計と個人の負担額の違い
復興特別所得税の税率だけを年ごとに足し合わせると、延長の前後で同じ値になります。2013年〜2026年の14年×2.1%と2027年〜2047年の21年×1.1%の合計は52.5で、改正前の25年×2.1%=52.5と一致します。一方、新設の防衛特別所得税を含めると、所得税に上乗せされる税率は2013年〜2047年の35年間ずっと2.1%です。これは税率の単純合計の比較であり、実際に納める金額は各年の基準所得税額で決まります。自分の負担の変化を見積もるときは、年ごとの基準所得税額に改正前後の税率を当てはめて比べてください。
復興特別所得税の計算方法と確定申告書第一表の記入欄
計算は確定申告書第一表の「税金の計算」欄を上から順に埋める流れになります。欄番号は令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引きに基づき、2.1%で計算する方法は2026年分(令和8年分)の申告まで同じです。
- 課税される所得金額(1,000円未満切捨て)を速算表に当てはめて所得税額を出す
- 配当控除や住宅借入金等特別控除などの税額控除を差し引いて「差引所得税額」㊷を出す
- 災害減免額㊸を差し引いた「再差引所得税額(基準所得税額)」を㊹に書く
- ㊹に2.1%を掛け、1円未満を切り捨てた額を「復興特別所得税額」㊺に書く
- ㊹と㊺の合計を「所得税及び復興特別所得税の額」㊻に書く
- 外国税額控除等㊼〜㊽と「源泉徴収税額」㊾を差し引いて申告納税額を出す。黒字なら100円未満を切り捨て、赤字(還付)なら頭に「△」を付けてそのままの金額を書く
手引きは㊺について「『復興特別所得税額』欄の記入漏れにご注意ください」と特記しています。書面で申告するときは、㊹を書いたらすぐ㊺を埋めたか確認してください。e-Taxや会計ソフトでは自動で計算されますが、㊹×2.1%の端数を切り捨てた値になっているかを1回確かめておくと、手計算の検算にも使えます。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
速算表は国税庁No.2260(令和8年4月1日現在法令等)の所得税の速算表です。
課税所得500万円の計算例と端数処理
課税される所得金額が5,000,000円で、税額控除も源泉徴収もない場合です。
- 所得税額:5,000,000円×20%−427,500円=572,500円(㊹)
- 復興特別所得税額:572,500円×2.1%=12,022.5円→1円未満を切り捨てて12,022円(㊺)
- 所得税及び復興特別所得税の額:572,500円+12,022円=584,522円(㊻)
- 申告納税額:100円未満を切り捨てて584,500円
端数処理は2段階です。復興特別所得税額を出す段階で1円未満を切り捨て、最後の申告納税額が黒字なら100円未満を切り捨てます(赤字の還付額は切り捨てません)。所得税額に1.021を掛けて1円未満を切り捨てても㊻の合計は同じ値になりますが、申告書では㊹と㊺を別の欄に書くため、2.1%分を分けて計算しておく必要があります。
復興特別所得税に対する外国税額控除の適用条件
基準所得税額は外国税額控除(と分配時調整外国税相当額控除)を差し引く前の所得税額です。国税庁のあらましによれば、控除対象外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合、超えた分を復興特別所得税額から控除できます(国外所得に対応する部分が限度)。手引きでは㊼〜㊽欄の「区分」に、外国税額控除だけを適用し、それを復興特別所得税から控除した場合は「1」、分配時調整外国税相当額控除だけの場合は「2」、両方を適用してどちらかを復興特別所得税から控除した場合は「3」を書くよう求めています。海外のクライアントから受け取った報酬で現地の税金を天引きされていても、自動的に対象になるわけではありません。国外源泉所得に当たるか、天引きされた税が外国所得税に当たるか、控除限度額がいくらかを確かめる必要があります。
課税所得別の所得税と復興特別所得税の早見表
課税される所得金額ごとに、税額控除と源泉徴収がない前提で計算した金額です。課税される所得金額は売上ではなく、売上から必要経費・青色申告特別控除・所得控除を差し引いた後の金額です。
| 課税される所得金額 | 所得税 | 復興特別所得税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 25,000円 | 525円 | 25,525円 |
| 300万円 | 202,500円 | 4,252円 | 206,752円 |
| 500万円 | 572,500円 | 12,022円 | 584,522円 |
| 700万円 | 974,000円 | 20,454円 | 994,454円 |
| 800万円 | 1,204,000円 | 25,284円 | 1,229,284円 |
| 1,000万円 | 1,764,000円 | 37,044円 | 1,801,044円 |
| 1,800万円 | 4,404,000円 | 92,484円 | 4,496,484円 |
復興特別所得税は所得税の2.1%なので、経費や控除で所得税を1万円減らせば、復興特別所得税は210円減ります。基準所得税額を下げる以外に復興特別所得税そのものを減らせるのは、上で触れた外国税額控除の超過分に限られます。納めた所得税及び復興特別所得税は、国税庁の案内どおり必要経費になりません。住民税(所得割10%)は別枠でかかり、個人事業税も法定業種に当たり所得が事業主控除(年290万円)を超える場合にかかるため、手元に残る額を見積もるときは表の合計に加えて計算してください。
予定納税の要否も復興特別所得税込みで判定します。予定納税基準額は、前年分の所得税及び復興特別所得税の申告納税額を、譲渡所得・一時所得・雑所得などを除いて計算し直した額で、これが15万円以上だと予定納税が必要です。源泉徴収も除外所得も税額控除もない場合、課税される所得金額が2,445,000円だと、所得税147,000円+復興特別所得税3,087円=150,087円(100円未満切捨てで150,000円)となり、翌年に予定納税の通知が届く水準です。7月と11月の納付期限や減額申請は個人事業主の予定納税|令和8年分の納期限・15万円基準・減額申請と仕訳の実務にまとめています。
報酬の源泉徴収10.21%と復興特別所得税の関係
原稿料・講演料・デザイン料など所得税法204条1項1号に当たる報酬を法人や源泉徴収義務のある個人事業主から受け取ると、支払う側が1回の支払額のうち100万円以下の部分に所得税10%を源泉徴収します。これに復興特別所得税2.1%を上乗せした合計税率が10%×102.1%=10.21%です。同じ人に1回で100万円を超えて支払う場合、超えた部分は所得税20%×102.1%=20.42%になります(所得税法205条1号)。給与を払っていない個人が発注者の場合は源泉徴収されません(同法204条2項2号)。
国税庁Q&Aの計算例では、原稿料1,333,333円の源泉徴収税額は(1,000,000円×10.21%)+(333,333円×20.42%)=170,166.5986円→170,166円です。1円未満の切り捨ては、所得税と復興特別所得税を合計した額に対して1回だけ行います。
2027年分以後の10.21%の内訳は、所得税10%+復興特別所得税0.11%+防衛特別所得税0.1%です。請求書に書く源泉徴収額も、支払調書の源泉徴収税額も合計額のままなので、個人事業主側で書き方を変える必要はありません。源泉徴収の対象になる報酬の範囲は個人事業主が押さえるべき源泉徴収の基本的な仕組みと課税対象の全体像、給与・賞与との計算体系の違いは給与・賞与・報酬ごとに異なる源泉所得税の計算体系と実務上の使い分けで詳しく扱っています。
手取り額を決めて請求するときの逆算
「手取りで10万円」と決めて請求額を逆算する場合、国税庁Q&Aの算式は100,000円÷(100−10.21)%=111,370.976…→111,370円です。源泉徴収税額は111,370円×10.21%=11,370.877→11,370円で、差し引くとちょうど100,000円が振り込まれます。請求額を10万円×1.1021のように掛け算で出すと、源泉徴収後の手取りが10万円に届きません。
源泉徴収された10.21%の確定申告での精算
報酬から天引きされた額は前払いであって、最終的な税額ではありません。確定申告書第一表の「源泉徴収税額」㊾に、所得税と復興特別所得税を合わせた源泉徴収税額の合計を書き、第二表の「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄に支払者ごとの内訳を書きます。経費が多く所得税額が小さい年は、天引き額のほうが多くなり、差額が還付されます。たとえば報酬100万円(源泉徴収102,100円)で、経費と所得控除を引いた課税所得が50万円なら、所得税と復興特別所得税は25,525円なので、差額の76,575円が還付されます。
従業員や外注先に支払う側の実務:年末調整と令和9年以後の源泉徴収
従業員に給与を払う個人事業主や、外注先の報酬から源泉徴収する個人事業主は、源泉徴収義務者として復興特別所得税を預かって納める側にも立ちます。
年末調整の年調年税額の計算方法(年調所得税額×102.1%)
年末調整では、所得税と復興特別所得税を別々に計算しません。国税庁Q&Aによれば、年調年税額は源泉徴収簿の「年調所得税額」(算出所得税額から住宅借入金等特別控除額を控除した後の税額)に102.1%を掛け、100円未満を切り捨てた金額です。令和9年分も掛ける率は102.1%のままで、Q&Aは「令和8年分と令和9年分とで、年調年税額の求め方(年調所得税額に乗じる率)に変更はありません」と明記しています。
令和9年1月以後も変えなくてよい納付書と法定調書
防衛特別所得税が加わっても、源泉徴収義務者の事務はほぼ変わりません。国税庁Q&A(令和8年5月)で確認できる点は次のとおりです。
- 納付:所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の合計額を1枚の所得税徴収高計算書(納付書)で納める(Q4)
- 手元の納付書:「源泉所得税及び復興特別所得税」と印字された旧様式を、納期等の区分を補正せずそのまま使える(Q15)
- 源泉徴収票・支払調書:「源泉徴収税額」欄に3税の合計額を書く(Q16)
- 還付請求:3税を分けずに合計額で請求する(Q12)
給与については、Q&AのQ7が「必ずその年分の源泉徴収税額表を使用する」よう求めており、令和9年分の税額表は防衛特別所得税と復興特別所得税を含んだ表になります。2027年1月に向けては、給与ソフトが令和9年分の税額表に切り替わるか、報酬の10.21%・20.42%と年末調整の102.1%が変わらず設定されているかを確認してください。内訳を帳簿で分けて管理する場合も、3税の合計が納付書の金額と一致しているかを照合します。納付書の書き方そのものは国税納付書の書き方と税目番号一覧|令和8年9月の新様式と届かないときの入手先を参照してください。
よくある質問
復興特別所得税はいつまで払いますか?
2047年(令和29年)分までです。令和8年度税制改正で2037年分までから10年延長されました。2027年分以後は税率が1.1%に下がり、防衛特別所得税1%と合わせて2.1%になります。
復興特別所得税を払わなくてよい人はいますか?
基準所得税額が0円の人です。課税所得が0円の場合や、住宅ローン控除などの税額控除で所得税額が0円になった場合が該当します。源泉徴収されていた分は確定申告で還付を受けられます。
復興特別所得税の端数はどう処理しますか?
2026年分までの確定申告では、基準所得税額×2.1%の1円未満を切り捨て、最後の申告納税額が黒字なら100円未満を切り捨てます(還付になる赤字はそのまま)。源泉徴収では、所得税と合わせた合計額の1円未満を切り捨てます。
報酬の源泉徴収10.21%は2027年以降も同じですか?
同じです。内訳が所得税10%・復興特別所得税0.11%・防衛特別所得税0.1%に変わるだけで、合計の10.21%と100万円超部分の20.42%は変わりません。
個人事業主で課税所得700万円なら所得税はいくらですか?
税額控除がなければ、所得税974,000円に復興特別所得税20,454円を加えた994,454円です。売上700万円ではなく、経費と控除を差し引いた後の課税所得700万円での金額である点に注意してください。