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個人事業主の消費税還付の条件と手続き|控除不足還付税額・選択届出書の期限・3年縛り

個人事業主の消費税還付の条件と手続き|控除不足還付税額・選択届出書の期限・3年縛り

個人事業主が仕入れの多さを理由に消費税の還付(控除不足還付)を受けられるのは、その年に課税事業者であり、かつ本則課税(一般課税)で申告して、仕入れにかかった消費税が売上で預かった消費税を上回ったときだけです。免税事業者のままでは、どれだけ設備投資をしても1円も戻りません。事業が赤字であることも、それだけでは還付の理由になりません。

この記事では、控除不足還付税額の計算と申告書の欄、還付が出る条件を消費税法と国税庁の資料で確認し、届出書をいつまでに出せば間に合うか、還付と引き換えに課される2年・3年の課税事業者の義務でかえって損をする条件を試算します。2027年4月から2年間の予定で国会に提出されている飲食料品の消費税率1%への引下げ案で設けられる、届出の特例も扱います。

まとめ:個人事業主が消費税の還付を受けるための要点

  • 還付されるのは、売上税額から仕入税額を引いた結果がマイナスになった「控除不足還付税額」(申告書第一表⑧欄)と、中間納付額が年税額を上回った「中間納付還付税額」(⑫欄)の2種類です。地方消費税分は⑧の22/78が⑲欄の還付額になります。
  • 控除不足の還付を受けられるのは課税事業者が本則課税で申告した場合だけです。簡易課税・2割特例・3割特例は売上税額を基に計算するため、控除不足の還付は生じません。
  • 還付を決めるのは利益ではなく課税仕入れの額です。給与・減価償却費・支払利息・保険料は課税仕入れに入らないため、赤字でも消費税は納付になることがあります。
  • 免税事業者が還付を受けるには、原則として還付を受けたい年の前年12月31日までに課税事業者選択届出書を出します。開業した年はその年中の提出で間に合い、期限が土日祝でも延長されません。
  • 課税事業者を選ぶと原則2年間はやめられず、その間に税抜100万円以上の調整対象固定資産を買って本則課税で申告すると、取得した年を含めて3年間は課税事業者が続きます。開業時の還付が後の納税で取り返されないかを先に試算してください。
  • 飲食料品の税率1%への引下げ案(2026年10月時点で衆議院で審議中)には、食料品を売る免税事業者が2027年中に選択届出書を出せばその年から課税事業者になれる特例が盛り込まれています。

消費税が還付される仕組みと2種類の還付

控除不足還付税額の計算と申告書⑧欄

消費税の確定申告では、売上に含めて預かった消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いて納付税額を出します。消費税法第45条第1項は、控除しきれなかった金額を申告書の記載事項としており、このマイナス分が「控除不足還付税額」です。国税庁の消費税及び地方消費税の確定申告の手引き(個人事業者用・一般用)では、一般用の申告書第一表の⑧欄に記入し、「⑦-②-③」で計算する欄として示されています。

たとえば課税売上が税抜300万円の年に、税抜500万円の内装工事と税抜200万円の経費を支払った場合、国税(7.8%)と地方消費税(2.2%)に分けると次のようになります。売上がすべて10%の課税売上で非課税売上がなく、仕入れはすべて事業用でインボイスを保存しているという前提の概算です。

区分 売上の税額 仕入の税額 還付額 申告書の欄
国税(7.8%) 23.4万円 54.6万円 31.2万円 ⑧控除不足還付税額
地方消費税(2.2%) - - 8.8万円 ⑲還付額
合計(10%) 30万円 70万円 40万円 ㉖合計税額

地方消費税の還付額は、国税の控除不足還付税額(31.2万円)を⑰欄に移し、22/78を掛けて求めます。31.2万円×22/78=8.8万円で、国税と合わせた40万円が戻る金額です。手引きは、⑪納付税額と㉒納付譲渡割額の合計から、⑧控除不足還付税額・⑫中間納付還付税額・⑲還付額・㉓中間納付還付譲渡割額の合計を差し引いた結果を㉖欄に書く手順を示しています。7.8%と2.2%の割り方は消費税10%の内訳と国税・地方税の割合|7.8%と2.2%を22/78で計算する理由で詳しく扱っています。

中間納付還付税額が出る場合

もう一つの還付は、前年の納税額が大きかった人が年の途中で納めた中間納付額が、確定した年税額を上回った場合の「中間納付還付税額」です。申告書第一表の⑫欄(⑩中間納付税額-⑨差引税額)に書きます。こちらは計算方法を問わないため、簡易課税で申告している人にも起こります。中間申告の納付日は消費税の引き落とし日はいつ?個人事業主の振替日一覧|令和8年分の予定納税(中間申告)と確定申告分で確認できます。

還付を受けられる個人事業主の条件と還付が出ない申告方法

免税事業者のままでは還付されない理由

基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主は、消費税法第9条第1項により原則として納税義務が免除されます。ただし特定期間(前年1月から6月)の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円を超えた年などは免除されません。免除されている年は申告そのものをしないため、仕入れの消費税を控除する計算も行われず、還付も受けられません。国税庁タックスアンサーNo.6613 免税事業者と仕入税額の還付も、還付を受けるには課税事業者を選択する必要があると説明しています。

免税事業者が課税事業者になる方法は2つあります。課税事業者選択届出書を出す方法と、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を受ける方法です。登録を受けている人は売上規模にかかわらず課税事業者なので、届出書を別に出す必要はありません。免除の要件そのものは個人事業主の消費税免除はいつまで?免税事業者の要件と令和8年度改正で扱っています。

簡易課税・2割特例・3割特例で控除不足の還付が出ない理由

簡易課税は、売上税額にみなし仕入率(卸売業90%から不動産業40%)を掛けた額を仕入税額とみなします。2割特例は売上税額の2割を、令和9年分と令和10年分の個人事業者に設けられる3割特例は3割を納付税額とします。いずれも売上税額が基準なので、実際の仕入れがどれだけ多くても納付税額はマイナスになりません。

扱いが異なるのは届出の要否です。簡易課税は選択届出書を出すと2年間はやめられず、やめるには不適用届出書をやめたい年の前年12月31日までに出す必要があります。これに対し2割特例と3割特例は、インボイス登録を機に課税事業者となった人など、各特例の適用要件を満たす場合に、事前の届出なしで申告書への付記によって選べます。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは対象外で、3割特例は個人事業者に限られます。

簡易課税制度選択届出書を出していない人なら、設備投資をした年だけ本則課税で申告して還付を受けることもできます。ただし本則課税の年に税抜1,000万円以上の高額特定資産や合計税抜200万円以上の金・白金の地金等を仕入れた場合や、課税期間を短縮している場合は、特例を使えない期間が生じます。また、簡易課税制度選択届出書の効力があり、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で簡易課税が適用される年は、2割・3割特例を使わない場合でも簡易課税での申告になり、本則課税には切り替えられません。2割特例は令和8年9月30日の属する課税期間、つまり個人事業主は令和8年分の申告が最後です。終了後の切替先はインボイス2割特例の終了後はどうなる?法人・個人別の切替先と簡易課税の届出期限、会計システムの設定変更【2026年10月】、特例の計算は個人事業主が売上1000万円を超えたら消費税はいくら?納税開始は2年後・2割特例は令和8年分までにまとめています。

非課税売上がある場合の課税売上割合95%の判定

本則課税で、課税売上げへの対応区分をせずに仕入税額を全額控除できるのは、その課税期間の課税売上高(1年未満なら年換算)が5億円以下で、かつ課税売上割合(売上全体に占める課税売上と輸出売上の割合)が95%以上のときです。国税庁タックスアンサーNo.6401 仕入控除税額の計算方法によると、5億円超または95%未満の年は、課税売上げに対応する部分だけを控除します。

個人事業主で影響が出やすいのは、住宅の家賃収入(非課税売上)がある人や、土地を売った年です。計算方法は2つあり、個別対応方式は仕入れを「課税売上げ専用」「非課税売上げ専用」「共通」の3つに区分した場合だけ使え、課税売上げ専用の税額と、共通の税額に課税売上割合を掛けた額を控除します。一括比例配分方式は仕入税額の全体に課税売上割合を掛ける方法で、選ぶと2年間は個別対応方式に変えられません。還付申告では付表2-3(課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表)でこの計算を行います。

赤字でも消費税が還付されない理由と還付が出やすい取引

所得税の赤字と消費税の控除不足の計算の違い

還付のケースとして「大幅な赤字」がよく挙げられますが、所得税の赤字と消費税の控除不足は別の計算です。消費税で差し引けるのは課税仕入れの税額だけで、事業の大きな経費のうち次の3つは課税仕入れに入りません。

  • 給与・賃金:消費税法第2条第1項第12号が「給与等を対価とする役務の提供」を課税仕入れから除いています(消費税法基本通達11-1-2)。
  • 減価償却費:減価償却費そのものは課税仕入れではなく、資産の購入代金を買った年の課税仕入れとして扱います。
  • 支払利息・保険料:利子や保険料は非課税取引です(タックスアンサーNo.6201)。

たとえば税抜経理で、課税売上が税抜800万円、商品仕入れがすべて当年の売上原価となり、次の経費を計上した年を考えます。売上と課税仕入れの税率はすべて10%で、課税仕入れは全額控除の要件を満たす前提です。

経費 金額(税抜) 消費税の扱い 控除できる税額
給与 400万円 課税仕入れでない 0円
店舗家賃 240万円 課税仕入れ 24万円
商品仕入 200万円 課税仕入れ 20万円
減価償却費(過年度取得) 100万円 課税仕入れでない 0円
支払利息・保険料 60万円 非課税 0円
合計 1,000万円 - 44万円

所得税では800万円-1,000万円で200万円の赤字ですが、消費税は売上の80万円から44万円を引いた36万円の納付になります。逆に、設備を買った年は購入代金の消費税をその年に全額控除し、所得税では減価償却で数年に分けて経費にするため、所得税が黒字でも消費税は還付ということが起こります。還付を見込むときは損益計算書の利益ではなく、控除対象となる仕入税額と売上税額を比べてください。

支払っても仕入税額控除の対象にならない支出

上の3つのほか、土地の購入と住宅家賃も消費税が課されない取引なので、仕入税額に入りません。注意が要るのは建物です。住宅の貸付けに使わないことが明らかな建物以外の建物で税抜1,000万円以上のもの(居住用賃貸建物)は、令和2年10月1日以後の取得から仕入税額控除ができません(消費税法第30条第10項)。アパートを新築しても、住宅として貸す部分の消費税は還付の計算に入りません。1階が店舗の併用住宅のように使い方を合理的に区分できる場合は、店舗部分は控除の対象になります。

還付が出やすい取引パターン

控除不足が生じるのは、売上税額が小さいか、課税仕入れが一時的に大きい年です。典型は次の5つです。

パターン 還付が出る理由 確認すべき点
開業時の内装・設備投資 売上が立つ前に大きな仕入れ 3年縛りの対象か
売上ゼロの開業準備年 売上税額がゼロ 開業年中に選択届出書
輸出売上が中心 輸出売上は0%の免税取引 輸出許可書等の保存
在庫の大量仕入れ 仕入れが売上より先行 翌年以降の納税額
2027年4月以降の食料品販売 食料品売上1%・家賃等10%の税率差 法案の成立

輸出は消費税法第7条で免税とされ、売上税額がかからない一方で、輸出に対応する国内の仕入れの消費税は控除できます。輸出売上は課税売上割合の計算で課税売上と同じ側に入るため、売上の大半が輸出でも全額控除の判定には影響しません。リース契約で設備を導入した場合は、所有権移転外ファイナンス・リースを取得時に一括で控除できるかどうかで還付額が変わります。判定はリースの消費税はいつ課税されるか|ファイナンス・リースの一括控除と分割控除、二重課税の誤解、リースバックまでを参照してください。

届出書の提出期限と効力が生じる年

課税事業者選択届出書の提出期限と開業年の例外

消費税法第9条第4項により、課税事業者選択届出書(第1号様式)は提出した日の属する課税期間の翌課税期間から効力が生じます。個人事業主が2027年分から還付を受けたいなら、2026年12月31日までに提出します。国税庁タックスアンサーNo.6501は、課税期間の末日が土曜日、日曜日、祝日でも「翌日等の平日に提出期限は延長されません」と書いています。

例外は事業を開始した年で、その年の12月31日までに出せば開業年から課税事業者になれます。消費税でいう事業開始の日は、売上が立った日や開業届の日付ではなく、店舗の賃貸借契約や資材の購入といった準備行為を行った日も含みます(国税庁「新たに事業を開始した方向けFAQ」)。年をまたいで開業準備をする人は、最初の準備行為をした年が開業年になります。内装工事の消費税を控除するのは、原則として工事の引渡しを受けた年の申告です。

提出先は納税地を所轄する税務署長で、国税庁の手続案内によると個人事業主はe-Taxソフト(WEB版)のマイページから電子提出できます。名前の似た「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」(第3-(1)号様式)は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者になったときに速やかに出す届出で、免税事業者が自ら課税を選ぶ選択届出書とは別物です。開業3年目から納税が始まる人(1年目の課税売上高が1,000万円超)が出すのは「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」で、還付のために選択届出書を出す必要はありません。

インボイス登録の経過措置で年の途中から課税事業者になる方法

令和11年9月30日の属する課税期間までは、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書に登録希望日(提出日から15日以後の日)を書いて出せば、その日から課税事業者になれる経過措置があります。登録希望日から課税事業者になる場合、控除できるのは原則としてその日以後の課税仕入れで、それ以前に購入した設備の消費税は対象になりません。登録日の前日に保有する商品・材料などの棚卸資産は、明細を記録した書類の保存などの要件を満たせば、登録前の仕入れでも控除対象になります。一方、新規開業者が開業年中に申請して課税期間の初日に遡って登録を受ける場合は、その課税期間中の設備投資も、帳簿とインボイスの保存等の要件を満たせば控除対象になります。経過措置で登録した人は、登録日から2年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者に戻れず、取引先の求めに応じてインボイスを交付する義務も負います。

課税期間の短縮による申告回数と2年間の継続義務

消費税法第19条の課税期間の特例を選ぶと、課税期間を3か月ごとまたは1か月ごとに短縮でき、還付の申告もその期間ごとに行えます。毎期還付が続く輸出中心の事業なら資金が早く戻りますが、効力が生じてから2年間はやめられず、申告は年4回または12回に増え、短縮中は2割特例・3割特例も使えません。単年の設備投資のために選ぶと負担のほうが大きくなりがちです。

2年縛り・3年縛りで還付より納税が多くなる条件

選択届出書の2年継続と調整対象固定資産の3年縛り

課税事業者選択届出書を出した人は、課税事業者になった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、選択不適用届出書を出せません(消費税法第9条第6項)。1年目に還付を受けて2年目に免税事業者へ戻ることはできない仕組みです。

さらに第9条第7項は、この2年の間に調整対象固定資産(棚卸資産以外の固定資産で、一の取引単位が税抜100万円以上のもの)を購入し本則課税で申告した場合、購入した年の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ不適用届出書を出せないと定めています。暦年で考えると、購入した年を1年目として3年目に提出でき、免税事業者に戻れるのは4年目からです。選択した2年目に購入すれば、選択から通算4年間は課税事業者が続きます。この間は簡易課税制度選択届出書も同じ時期まで出せないため(第37条第3項)、購入年を含む3年間は本則課税で申告することになります。なお、インボイス登録の経過措置で課税事業者になった人は選択届出書を出していないので、この第9条第7項の対象にはなりません。

高額特定資産と金地金を取得した場合の3年ルール

税抜1,000万円以上の棚卸資産や調整対象固定資産(高額特定資産)を本則課税の年に購入した場合は、課税事業者になった経緯を問わず、購入した年の翌年から2年間は免税事業者になれません(消費税法第12条の4、国税庁No.6502)。インボイス登録で課税事業者になった人も対象です。No.6502は、金または白金の地金等を合計税抜200万円以上仕入れた場合にも同じ制限がかかると説明しています。

開業1年目の還付40万円が3年間の納税で逆転する試算

冒頭の例(1年目に税抜500万円の内装工事)で、2年目以降の課税売上が税抜600万円に増え、課税経費は税抜200万円のままとします。内装工事は調整対象固定資産なので、3年目まで本則課税が続きます。

年 売上税額 仕入税額 課税事業者を選択 免税のまま
1年目 30万円 70万円 40万円の還付 0円
2年目 60万円 20万円 40万円の納付 0円
3年目 60万円 20万円 40万円の納付 0円
3年間の合計 - - 40万円の負担増 0円

この売上規模でインボイス登録もしなければ、1年目から3年目までは何もしなくても免税事業者です(基準期間の売上が無いか1,000万円以下)。還付のために課税事業者を選ぶと、この3年間の免税を手放し、消費税の納付・還付だけを比べると差し引き40万円の負担増になります。この比較は、課税・免税のどちらでも顧客から受け取る税込売上額と仕入先への支払額が同じであることを前提とし、所得税等への影響や申告費用は含みません。

判断の基準は、1年目の還付額が、縛りの期間に免税なら払わずに済んだ納税額の合計を上回るかどうかです。上回りやすいのは、2年目と3年目も仕入税額が売上税額に近い事業(輸出中心、薄利の物販、続けて設備投資がある事業)です。取引先の要請でいずれにせよインボイス登録をする場合は、比較の相手が「免税」ではなく、要件を満たす年なら「2割特例・3割特例」になります。経過措置による登録なら第9条第7項の3年縛りもかからないため、簡易課税制度選択届出書を出していなければ、投資年だけ本則課税を選ぶ判断が成り立ちます。

2027年4月開始予定の飲食料品の税率1%への引下げ案と還付の特例

政府は2026年9月15日の大綱を経て、10月9日に飲食料品の消費税率を2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、8%から1%(国・地方合計)に引き下げる法案を閣議決定し、国会に提出しました。衆議院の議案の経過情報では、法案(租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案)は10月20日に財務金融委員会に付託され、10月25日時点で衆議院を通過していません。以下は国税庁の飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(令和8年9月)が「法案が国会に提出され、審議を経た上で可決・成立した場合のもの」として示した内容です。対象は、現在8%の軽減税率がかかっている飲食料品と同じ範囲です。

食料品を売る事業者は売上税額が1%に下がる一方、包装資材や店舗家賃には10%の消費税を払い続けるため、本則課税なら還付になる年が出てきます。Q&Aが示す届出の特例は次のとおりです。

  • 飲食料品を売る免税事業者は、2027年中に課税事業者選択届出書を出せば、2027年1月1日から課税事業者になれる。届出書の参考事項欄に「飲食料品特例」と書く。1月から3月の食料品の売上には8%がかかり、2027年と2028年の2年間は課税事業者が続く。
  • 簡易課税を選んでいる食料品の事業者は、2027年中に簡易課税制度選択不適用届出書を出せば2027年分から本則課税で申告でき、2年間の継続適用の要件も適用されない。
  • 簡易課税で申告する場合は、食料品の売上税額と同額を仕入税額として控除する計算に変わる。2割特例・3割特例でも同様で、食料品の部分は納付額がゼロになるが還付にはならない。

選択届出書の特例を使うと2027年1月から3月も課税期間に含まれます。引下げ期間だけを課税にしたいなら、2027年3月17日までに登録希望日を4月1日とした登録申請書を出す経過措置の方法もあり、Q&Aはさらに課税期間の特例を組み合わせて2029年3月31日で課税期間を区切る手順も示しています。

還付申告の手続きと必要書類

申告期限と還付申告書を出せる年

個人事業主の消費税の確定申告期限は、通常は翌年3月31日です。課税期間を短縮している場合は、各期間の末日の翌日から原則2か月以内が期限になります。期限の日が土日祝日に当たるときは翌平日まで延びます(前述の選択届出書の期限とは扱いが違います)。国内の課税売上がある年は、結果が還付でも第45条の確定申告書として期限内に出します。輸出免税取引等を除く国内の課税売上と、申告対象となる特定課税仕入れのいずれもなく、納付税額もない年は申告義務がありませんが、第46条により還付を受けるための申告書を出せます。法人の場合も控除不足なら還付という条件は同じで、申告期限は事業年度終了の日の翌日から原則2か月以内、選択届出書の期限は前事業年度の末日です。

還付申告明細書と本人確認書類

申告書第一表⑧欄に控除不足還付税額がある人は、申告書と付表に加えて「消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)」を必ず提出します。明細書には還付となった主な理由(設備投資、輸出取引など)、税抜100万円以上の主な課税売上先、主な輸出取引、仕入金額、1件100万円以上の主な固定資産の取得(上位5件)、特殊事情を書きます。確認が必要と判断された場合は、ここに書いた取引の証拠書類の提出を求められます。

自宅などからe-Taxで還付申告を送信する場合は、本人確認書類の提示や写しの提出は不要です。一方、書面で控除不足還付税額のある申告書を提出する場合は、番号確認書類の提示や写しの添付を省略できません。手引きは、省略できるのは⑧欄に金額を書いた還付申告書「以外」の確定申告書としています。マイナンバーカードがあれば、その両面の写しを添えます。

帳簿とインボイスの保存期間

仕入税額控除を受けるには、原則として帳簿と適格請求書(インボイス)の両方を保存する必要があります(消費税法第30条第7項)。仕入税額控除のための保存期間は、帳簿を閉鎖した日または請求書等を受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。ただし、この保存要件では6年目と7年目は帳簿または請求書等のいずれか一方の保存で足ります。インボイスのない免税事業者からの仕入れは、区分記載請求書等と同様の事項を記載した請求書等と、経過措置の適用対象である旨を記載した帳簿を保存するなどの要件を満たせば、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは仕入税額相当額の70%を控除でき、その後は50%、30%と段階的に下がります。

還付金の受取方法・入金時期と仕訳

還付金の受取方法と口座の指定

受取方法は、申告書第一表の「還付を受けようとする金融機関等」欄に書いた本人名義の預貯金口座への振込みか、ゆうちょ銀行・郵便局の窓口での受取りです(e-Taxのよくある質問)。マイナポータルで公金受取口座を登録済みなら、第一表の「(個人の方)公金受取口座の利用」欄に○を付けるだけで、金融機関欄の記入は要りません。口座名義に屋号が含まれる場合や旧姓のままの場合は振込みできないことがあり、一部のインターネット専用銀行も振込先にできません。

還付金の入金時期と保留される場合

国税庁の確定申告期に多いお問合せ事項Q&Aは、2月・3月の所得税と消費税の確定申告期間中は、還付金の支払手続に「おおむね1か月から1か月半程度」かかるとしています。自宅などからe-Taxで出した還付申告は3週間程度で処理されますが、書類不備や書面での別送書類がある場合は対象外です。

国税庁は消費税還付申告に関する国税当局の対応についてで、必要があると認められる場合は「還付金の支払いをいったん保留」し、証拠書類の提出を求めたり税務調査を行ったりすると公表しています。求める書類の例は、輸出なら輸出許可通知書やインボイスの写し、設備投資なら契約書や請求書の写しと取引実態を確認できる資料です。取引先と連絡が取れない場合や金銭の授受が確認できない場合は保留が長期化するとも書かれているため、明細書に書いた取引ごとに契約書・請求書・振込記録をそろえてから申告してください。

税抜経理と税込経理での還付金の勘定科目と計上時期

国税庁タックスアンサーNo.6901によると、税抜経理では還付を受ける税額を「未収消費税等」として計上し、所得税の計算には影響しません。税込経理では還付額を雑収入として総収入金額に算入し、計上時期は原則として申告書を提出した日の属する年です。申告期限前に未収入金として計上した場合は、その計上した年の収入にできます。

よくある質問

売上がゼロでも消費税の還付は受けられますか?

課税事業者で、本則課税で申告すれば受けられます。開業準備の年に内装工事や備品の購入があり売上がゼロなら、帳簿とインボイスの保存など仕入税額控除の要件を満たした課税仕入れの消費税が還付の対象になります。選択届出によって開業年から課税事業者になる場合は、その年中に届出書を提出します。売上ゼロでも申告対象となる特定課税仕入れがあれば確定申告が必要で、申告義務がない場合は消費税法第46条に基づいて還付申告を行います。

消費税の還付金はいつ振り込まれますか?

確定申告期間中の申告は、おおむね1か月から1か月半程度です。e-Taxで出した還付申告は3週間程度ですが、設備投資や輸出による還付は確認のため保留されることがあります。

赤字なら消費税は還付されますか?

赤字だけでは還付されません。還付になるのは、課税仕入れの税額が売上税額を上回ったときです。給与・減価償却費・支払利息・保険料は課税仕入れに入らないため、人件費が大きい事業でも、控除できる仕入税額が売上税額を下回れば、赤字でも納付になります。

インボイス登録をしている個人事業主は課税事業者選択届出書が必要ですか?

不要です。登録を受けている間は課税事業者なので、本則課税で申告すれば還付を受けられます。2割特例や3割特例を使っている人も、簡易課税制度選択届出書を出していなければ、設備投資をした年だけ本則課税で申告できます。

簡易課税を選んでいても還付されることはありますか?

中間納付額が確定した年税額を上回った場合の中間納付還付税額は還付されます。一方、仕入れが多いことによる控除不足の還付は簡易課税では生じません。控除不足の還付を受けたい年の前年12月31日までに簡易課税制度選択不適用届出書を出す必要があり、この届出書は適用を開始した年の翌年(2年目)から出せるため、本則課税に切り替わるのは早くても3年目です。

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