確定申告

年収400万円の個人事業主の税金はいくら?手取り303万円と会社員との14万円差

年収400万円の個人事業主の税金はいくら?手取り303万円と会社員との14万円差

「年収400万円の個人事業主は税金をいくら払うのか」を調べると、税率だけを並べた記事か、年収と所得を混ぜた概算しか出てきません。実際には、売上400万円なのか利益400万円なのかで税額は10万円単位で変わりますし、会社員との差の正体も一般に言われている社会保険料ではありません。この記事では令和8年分(2026年分)の確定した制度で、国民健康保険料・国民年金・所得税・住民税・個人事業税を1円単位まで計算し、同じ年収400万円の会社員と並べます。

まとめ:年収400万円の個人事業主の手取りと会社員との差

  • 売上400万円・経費ゼロ・青色申告特別控除65万円の個人事業主の手取りは303万1,060円(手取り率75.78%)です。
  • 年収400万円の会社員の手取りは317万2,340円(79.31%)で、差は14万1,280円になります。
  • 差の正体は社会保険料ではありません。社会保険料の合計は会社員59万4,260円に対し個人事業主59万840円で、むしろ個人事業主のほうが3,420円安いです。国民健康保険が17万円高い分を、国民年金が厚生年金より15万円安いことで打ち消しています。
  • 14万円差は全額が税金です。会社員の税金23万3,400円に対し個人事業主は37万8,100円。原因は給与所得控除124万円と青色申告特別控除65万円の59万円差と、会社員にはない個人事業税5万5,000円です。
  • 家事按分できる経費(自宅家賃や通信費のうち事業使用分)が年49万円を超えると、実質的な手元残りは会社員を上回ります。
  • インボイス登録している場合、消費税の納付が令和8年分は2割特例で8万円、令和9年分からは3割特例で12万円に上がります。

以下の試算はすべて、東京23区(統一保険料率が適用される20区)・単身・扶養なし・40歳未満(介護保険分なし)・青色申告特別控除65万円・第1種事業(個人事業税率5%)を前提にしています。所得税は令和8年分、住民税は令和8年分の所得にかかる令和9年度分、国民健康保険料と国民年金は令和8年度の料率です。

売上400万円と利益400万円で10万円単位に開く税額の差

会社員の年収は勤務先が支払う給与の総額ひとつしかありませんが、個人事業主の「年収」には売上(収入)と利益(所得)という別々の数字があります。「個人事業主 400万 税金」と検索する人が売上400万円を指しているのか利益400万円を指しているのかは、人によって分かれます。両者は同じ400万円でも税額がまったく違います。

税金と国民健康保険料の計算に使うのは、売上ではなく事業所得です。事業所得は次の式で求めます。

事業所得 = 売上(収入金額) - 必要経費 - 青色申告特別控除額

つまり売上400万円で経費が80万円なら、青色申告特別控除65万円を引いた事業所得は255万円です。一方「利益400万円」と言う場合は経費を引いたあとの数字を指すので、青色控除後の事業所得は335万円になります。この80万円の差が、そのまま所得税・住民税・国民健康保険料・個人事業税の4つに効いてきます。

本記事ではまず、比較の基準がはっきりする売上400万円・経費ゼロのケース(=青色控除前の利益がちょうど400万円)を1円単位で計算します。経費がある場合は後半の早見表で扱います。収入と所得の区別そのものを詳しく確認したい方は、基礎控除と給与所得控除の違いの解説もあわせてご覧ください。

令和8年分の税金と社会保険料の内訳(売上400万円・経費ゼロ)

納める順に、実際の料率と条文上の計算式で積み上げます。

国民健康保険料は37万5,800円(東京23区・40歳未満・単身)

国民健康保険料は所得控除を引く前の総所得金額等から基礎控除43万円だけを差し引いた「算定基礎額」に料率をかけます。青色申告特別控除65万円は総所得金額等を計算する段階で引かれているので、算定基礎額は335万円-43万円=292万円です。

区分 均等割 所得割 年額
医療分 47,600円 292万円×7.51%=219,292円 266,800円
後期高齢者支援金分 17,600円 292万円×2.80%=81,760円 99,300円
子ども・子育て支援金分 1,873円 292万円×0.27%=7,884円 9,700円
合計(区分ごとに100円未満切捨て) 67,073円 308,936円 375,800円

子ども・子育て支援金分は令和8年度に新設された区分です。これにより賦課限度額は医療67万円・支援金26万円・介護17万円・子育て3万円の合計113万円となり、令和7年度までの3区分109万円から変わりました。40歳から64歳の方はこれに介護分(均等割17,800円・所得割2.43%)が上乗せされ、この試算より約8万円増えます。保険料の額そのものを詳しく確認したい方は、個人事業主の国民健康保険はいくらかを扱った早見表を参照してください。

注意したいのは、この算定基礎額に所得控除がまったく効かない点です。iDeCo・小規模企業共済・生命保険料控除・扶養控除・ふるさと納税は所得税と住民税を下げますが、国民健康保険料は1円も下げません。国保料を下げられるのは必要経費・青色申告特別控除・経営セーフティ共済だけです。

国民年金は21万5,040円

令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円で、12か月分で215,040円です。会社員の厚生年金と違って所得に比例しないため、年収が上がるほど負担率は下がります。付加保険料(月400円)を納めれば将来の老齢基礎年金が「200円×納付月数」だけ増えますが、この試算には含めていません。

所得税は8万7,700円

令和8年分の基礎控除は、合計所得金額489万円以下であれば104万円です(489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円)。国税庁のタックスアンサーには令和7年4月1日現在の内容が残っている箇所があるため、令和8年分の申告では改正後の金額で計算します。

項目 金額
事業所得(400万円-青色控除65万円) 3,350,000円
社会保険料控除(国保375,800円+年金215,040円) 590,840円
基礎控除 1,040,000円
課税所得金額(1,000円未満切捨て) 1,719,000円
所得税額(195万円以下は税率5%) 85,950円
復興特別所得税(2.1%)を加算し100円未満切捨て 87,700円

令和9年分からは復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がり、代わりに防衛特別所得税1%が創設されます。合計の上乗せ率は2.1%のまま変わらないので、この計算式は令和9年分以降も同じです。内訳の組み替えを「増税」と説明する記事がありますが、納付額は動きません。

住民税は23万5,400円

住民税の基礎控除は令和8年度改正でも43万円に据え置かれています。所得税の104万円との差は61万円あり、この差が「所得税はゼロなのに住民税だけ届く」現象の原因です。

項目 金額
事業所得 3,350,000円
社会保険料控除 590,840円
基礎控除(住民税) 430,000円
課税所得金額 2,329,000円
所得割(都民税4%+区市町村民税6%) 232,900円
調整控除 △2,500円
均等割(都民税1,000円+区民税3,000円+森林環境税1,000円) 5,000円
年税額 235,400円

調整控除は、合計課税所得金額が200万円を超える場合「人的控除額の差の合計額-(合計課税所得金額-200万円)」の5%で、計算結果が2,500円未満のときは2,500円が下限です。基礎控除の人的控除額の差は5万円で固定されているため、課税所得232万9,000円ではこの下限に張り付きます。

個人事業税は5万5,000円

個人事業税でつまずきやすいのが、青色申告特別控除を足し戻してから計算する点です。青色控除は所得税の特例であって事業税には及びません。

課税標準 = 事業所得335万円 + 青色申告特別控除65万円 - 事業主控除290万円 = 110万円
税額 = 110万円 × 5%(第1種事業) = 55,000円

事業主控除290万円があるため、青色控除前の利益が290万円以下なら個人事業税はかかりません。また課税されるのは法定業種に限られ、第1種37業種・第2種3業種・第3種30業種の合計70業種が対象です。この一覧に無い業種、たとえば文筆業は課税されません。自分の業種が請負業などに当たるかどうかは都道府県税事務所に確認してください。なお個人事業税は納付した年の必要経費になるため、2年目以降は所得税・住民税がわずかに軽くなります。上の試算にはその効果を織り込んでいません。

会社員との14万円差の正体は社会保険料ではなく税金

年収400万円の会社員(東京・協会けんぽ・40歳未満・単身・賞与なしで毎月同額、標準報酬月額34万円)と並べます。健康保険料率9.85%・厚生年金保険料率18.300%はいずれも労使折半、雇用保険の労働者負担は令和8年度の一般の事業で5/1,000です。

項目 会社員 年収400万円 個人事業主 売上400万円 差
健康保険/国民健康保険 200,940円 375,800円 +174,860円
厚生年金/国民年金 373,320円 215,040円 △158,280円
雇用保険 20,000円 0円 △20,000円
社会保険料 小計 594,260円 590,840円 △3,420円
所得税 57,400円 87,700円 +30,300円
住民税 176,000円 235,400円 +59,400円
個人事業税 0円 55,000円 +55,000円
税金 小計 233,400円 378,100円 +144,700円
手取り 3,172,340円 3,031,060円 △141,280円
手取り率 79.31% 75.78% △3.53pt

ここが多くの解説と食い違うところです。「個人事業主は社会保険を全額自己負担だから重い」という説明は、年収400万円帯では成り立ちません。国民健康保険が17万4,860円高い一方で、定額の国民年金が報酬比例の厚生年金より15万8,280円安く、雇用保険2万円も不要なので、社会保険料の合計はほぼ同額(個人事業主が3,420円安い)に着地します。

手取り差14万1,280円は、したがって全額が税金の差です。その内訳は明快で、給与所得控除124万円(400万円×20%+44万円)に対して青色申告特別控除は65万円しかなく、控除額の差が59万円あること、そして会社員には存在しない個人事業税5万5,000円がかかることの2つで説明がつきます。

ただし社会保険料が同額でも、受け取る側は同額ではありません。会社員の厚生年金37万3,320円には会社が同額を上乗せして納めており、将来の老齢厚生年金として戻ります。傷病手当金・出産手当金・障害厚生年金・遺族厚生年金も個人事業主にはありません。この差は手取りの表には出ないので、独立を検討する段階では別枠で見積もる必要があります。

経費率別の手取り早見表(売上400万円)

売上400万円のまま経費だけを変えた場合の一覧です。すべて青色申告特別控除65万円・東京23区・40歳未満・単身の前提です。

必要経費 利益 事業所得 国保 国民年金 所得税 住民税 事業税 手取り
0円 400万円 335万円 375,800円 215,040円 87,700円 235,400円 55,000円 3,031,060円
40万円 360万円 295万円 333,500円 215,040円 69,400円 199,600円 35,000円 2,747,460円
80万円 320万円 255万円 291,200円 215,040円 51,200円 163,800円 15,000円 2,463,760円
120万円 280万円 215万円 248,900円 215,040円 32,900円 128,100円 0円 2,175,060円
160万円 240万円 175万円 206,600円 215,040円 14,700円 92,300円 0円 1,871,360円

経費を40万円増やすと税と社会保険料は約11万円下がりますが、手元に残る現金は約28万円減ります。経費は税金を減らすために使うものではありません。「経費を積めば得」という説明が成り立つのは、その支出が私生活でもどのみち発生する場合だけです。

そこで、家事按分できる経費(自宅家賃・水道光熱費・通信費のうち事業使用分)に限って、手取りに経費額を足し戻した実質的な手元残りを計算すると、年49万円で会社員の317万2,340円を超えます。経費40万円のケースなら274万7,460円+40万円=314万7,460円で会社員にわずかに届かず、経費50万円なら267万6,560円+50万円=317万6,560円で逆転します。自宅の一部を仕事場にしていて家賃の3割を按分できる、といった条件が揃えば個人事業主が有利になる、というのがこの年収帯の実像です。家事按分は青色申告なら「業務の遂行上必要な部分」を合理的に按分でき、経費と所得控除の効き方の違いは個人事業主の経費と控除の違いの解説で整理しています。

インボイス登録で手取りが8万〜12万円下がる仕組み

売上400万円は基準期間の課税売上高1,000万円を下回るため、本来は消費税の免税事業者です。しかし取引先の求めでインボイス(適格請求書)発行事業者に登録していれば、売上規模に関係なく課税事業者になり消費税を納めます。

課税売上高400万円(税抜)で受け取った消費税が40万円の場合、納付額は次のとおりです。

年分 使える特例 納付する消費税 手取り
令和8年分 2割特例 80,000円 2,951,060円
令和9年分・令和10年分 3割特例 120,000円 2,911,060円

2割特例は令和8年分が最後で、令和9年分と令和10年分は納付割合が3割の3割特例に切り替わります。3割特例は個人事業者に限られ、法人は使えません。適用できるのは適格請求書発行事業者になったこと、または課税事業者選択届出書を提出したことによって課税事業者になった人で、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた年には使えません。確定申告書への付記も必要です。

年間4万円の負担増は、上で見た会社員との手取り差14万1,280円の3割近くに当たります。登録が本当に必要かどうかは、取引先が消費税の課税事業者かどうかで判断してください。制度全体の判定は個人事業主が売上1000万円を超えたら消費税はいくらになるかの解説にまとめています。

年収400万円で手取りを増やす順番

効き幅の大きい順に並べます。年収400万円帯では、所得控除を積むより事業所得そのものを下げる策のほうが効きます。iDeCoのような所得控除を1万円増やしても減るのは所得税と住民税だけで、1万円あたり1,510円(所得税5%+住民税10%+復興特別所得税)です。必要経費を1万円増やした場合は、これに国民健康保険の所得割10.58%と個人事業税5%が加わる一方、国保料が下がった分だけ社会保険料控除も減って所得税・住民税が押し戻されます。差引きの効き幅は上の早見表の実額から1万円あたり2,910円で、所得控除のおよそ1.9倍です。

1. 青色申告特別控除65万円を確実に取る。白色申告と比べた手取り差は17万4,500円で、会社員との差14万円を超えます。65万円控除にはe-Taxでの申告か優良な電子帳簿の保存、および期限内申告が必要です。青色申告承認申請書の提出期限は、その年の3月15日(1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内)です。

2. 令和9年分の改正は自動で有利になるわけではありません。控除額は現行の55万円が65万円、65万円が75万円に引き上げられますが、いずれも要件が上乗せされます。65万円にはe-Taxでの申告が必須要件化され、75万円にはさらに優良な電子帳簿の保存または電子取引データの保存が必要です。複式簿記で記帳していても紙で申告している方は65万円の枠に入れず、10万円控除まで落ちます。現在65万円を受けていても、優良な電子帳簿によって取っている場合は要件を満たし直さないと目減りします。要件を満たして75万円になれば、売上400万円・経費ゼロで手取りは305万5,260円となり令和8年分より2万4,200円増えます。

3. 家事按分できる支出を漏らさない。前章のとおり、年49万円を超えると実質的な手元残りが会社員を上回ります。

4. 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)を検討する。掛金が必要経費になるため、国民健康保険料と個人事業税にも効きます。ただし令和6年10月1日以後に解約した場合、解約日から2年間は再加入しても掛金を必要経費に算入できません。

5. iDeCo・小規模企業共済・ふるさと納税は所得控除にとどまります。所得税と住民税は下がりますが、国民健康保険料も個人事業税も1円も下がりません。「国保が安くなる」と説明する記事は誤りです。

申告そのものの手順や期限は個人事業主の確定申告のやり方で確認できます。前年の所得税額が15万円以上になると翌年から予定納税も始まるので、資金繰りの計画に入れておいてください。

よくある質問

年収400万円の個人事業主は確定申告が必要ですか?

必要です。事業所得から所得控除を引いた残額に所得税がかかる場合は申告義務があります。売上400万円・経費ゼロなら課税所得は171万9,000円で、所得税8万7,700円が発生します。申告しなければ青色申告特別控除も受けられません。

個人事業主は年収400万円と年収500万円のどちらが得ですか?

手取り額は年収が高いほど増えるため、金額で見れば500万円が有利です。ただし手取り「率」は下がります。累進課税と国民健康保険の所得割が効くためで、率のピークはもっと低い所得帯にあります。年収帯ごとの手取り率は年収300万円の個人事業主の手取りと年収別早見表で確認できます。

売上400万円なら消費税は払わなくてよいですか?

インボイス発行事業者に登録していなければ、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なので免税事業者です。登録している場合は納めます。令和8年分は2割特例で8万円、令和9年分と令和10年分は3割特例で12万円です。

個人事業税は年収400万円でもかかりますか?

業種によります。課税されるのは法定70業種のみで、それに該当し、かつ青色申告特別控除を足し戻した所得が事業主控除290万円を超える場合にかかります。売上400万円・経費ゼロなら課税標準110万円で税額5万5,000円です。経費が110万円を超えると事業税はゼロになります。

会社員を辞めて個人事業主になると手取りは減りますか?

同じ400万円を稼ぐという条件では、経費がなければ年14万1,280円減ります。家事按分できる経費が年49万円を超えれば逆転しますが、厚生年金の将来受給額や傷病手当金は戻りません。

国民健康保険料はiDeCoや小規模企業共済で下がりますか?

下がりません。国民健康保険料の算定基礎額は所得控除を引く前の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた金額です。効くのは必要経費・青色申告特別控除・経営セーフティ共済だけです。

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