プロゴルファーが受け取る賞金は、支払の時点で主催者が所得税を源泉徴収します。税率は1回の支払のうち100万円までが10.21%、100万円を超える部分が20.42%で、賞金1,000万円なら1,939,900円が差し引かれて振り込まれます。ただし、これは前払いにすぎず、最終的な所得税は確定申告で経費や控除を差し引いて決まります。賞金500万円から4,000万円までの申告後の税額と手取り、副賞の自動車、アマチュアが賞品を受けた場合、海外ツアーの賞金までを、条文と国税庁の資料に沿って整理します。
まとめ:ゴルフ賞金にかかる税金の要点
- プロの賞金は所得税法204条1項4号の「プロゴルファーの業務に関する報酬」で、源泉徴収は100万円以下の部分10.21%・超える部分20.42%
- 賞金1,000万円の源泉徴収は1,939,900円。年間収入がこの1試合の賞金だけで、青色申告特別控除65万円と基礎控除のみを適用する試算では、経費ゼロでも所得税等は約140万円となり、差額が還付される
- 年間収入が1試合の賞金4,000万円だけで、経費3割・青色申告特別控除65万円・基礎控除のみという本文の試算では、所得税等の追加納付が生じる。賞金がそれより少なくても、1回100万円以下の支払が重なると源泉徴収が少なく、追加納付になることがある
- 住民税は源泉徴収されず、翌年6月以降に所得の約10%が請求される。還付があっても住民税の分は残しておく
- 副賞の自動車も報酬に含まれ、受け取った時の価額で事業収入に計上する。事業で使えば車両として減価償却し、家族に譲れば贈与税の対象になる
- アマチュアの賞品は、役務の対価に当たるか、継続して受けるものかで所得区分を判断する。国税庁のマラソン大会事例では、主催者への役務に伴う賞金は雑所得、役務の対価ではない単発の褒賞金は一時所得とされた。JGAのアマチュア資格規則では賞品の上限が1競技10万円で、自動車を受け取れるのは原則ホールインワン賞
- 米国の試合の賞金は、米国の非居住者でも原則30%が米国で源泉徴収される(CWAで軽減できる場合あり)。日本の居住者は日本でも申告し、外国税額控除で二重課税を調整する
源泉徴収額は1回の支払ごとに、申告後の税額は年間所得を基に計算します。賞金は年ごとの波が大きくても平均課税の対象にはならず、平均課税を使えるのは一定の契約金に限られます。
賞金額別の源泉徴収額と確定申告後の税額
賞金の源泉徴収税率と1回100万円の区分
所得税法施行令320条3項は、源泉徴収の対象となる職業運動家として「プロゴルファー」を明記しています。所得税法205条1号により、税率は支払額の10%、同一人に1回で支払う額が100万円を超える部分は20%です。これに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わり、実際の率は10.21%と20.42%になります。令和9年分からは防衛特別所得税が創設されますが、復興特別所得税が1.1%に下がるため合計の率は変わりません。
| 1回の賞金額 | 計算式 | 源泉徴収額 |
|---|---|---|
| 100万円 | 100万円×10.21% | 102,100円 |
| 300万円 | 102,100円+200万円×20.42% | 510,500円 |
| 500万円 | 102,100円+400万円×20.42% | 918,900円 |
| 1,000万円 | 102,100円+900万円×20.42% | 1,939,900円 |
| 2,000万円 | 102,100円+1,900万円×20.42% | 3,981,900円 |
| 4,000万円 | 102,100円+3,900万円×20.42% | 8,065,900円 |
100万円の判定は「1回の支払」ごとです。年間で同じ1,000万円を稼いでも、1試合100万円ずつ10回に分かれて支払われれば源泉徴収は合計1,021,000円で、1試合で1,000万円を受け取った場合のほぼ半分になります。源泉徴収の対象になる報酬の全体像は個人事業主の源泉徴収|10.21%の計算と対象の報酬で整理しています。
賞金1,000万円を確定申告で精算した後の所得税と住民税
確定申告では、年間の賞金から経費を差し引いた事業所得に課税します。年間収入が1試合の賞金1,000万円だけ、青色申告特別控除65万円を使い、ほかの所得控除は基礎控除だけと置いて、経費の額ごとに試算すると次のようになります(令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下104万円、489万円超655万円以下67万円、655万円超2,350万円以下62万円)。
| 経費 | 事業所得 | 所得税+復興税 | 源泉徴収との差 | 翌年の住民税(所得割) |
|---|---|---|---|---|
| 0円 | 935万円 | 1,400,709円 | 539,191円の還付 | 約89万円 |
| 300万円 | 635万円 | 723,378円 | 1,216,522円の還付 | 約59万円 |
| 500万円 | 435万円 | 239,424円 | 1,700,476円の還付 | 約39万円 |
経費がゼロでも還付になるのは、源泉徴収の20.42%が、事業所得935万円に対する所得税の実際の負担率(約15%)より高いからです。実際には国民年金・国民健康保険の保険料も所得控除になるため、還付はさらに増えます。
見落としやすいのは住民税です。事業所得の住民税は源泉徴収されず、翌年6月以降に納付書で請求されます。所得割は所得の約10%(住民税の基礎控除は43万円)なので、経費ゼロなら約89万円、これに均等割と国民健康保険料が重なります。還付金を受け取ったら、少なくとも翌年の住民税分は手を付けずに残しておくのが安全です。
賞金500万円〜4,000万円の申告後の税額と手取り
賞金額が変わると、還付になるか追加で納付するかが入れ替わります。年間収入が1試合の賞金だけ、経費は賞金の30%、青色申告特別控除65万円と基礎控除だけを適用する前提で比べると、次のとおりです(住民税は所得割の概算。国民健康保険料・国民年金保険料は含めていません)。
| 賞金 | 事業所得 | 源泉徴収 | 申告後の所得税+復興税 | 精算 | 翌年の住民税 | 手取りの目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 285万円 | 918,900円 | 92,400円 | 826,500円の還付 | 約24万円 | 約317万円 |
| 1,000万円 | 635万円 | 1,939,900円 | 723,378円 | 1,216,522円の還付 | 約59万円 | 約568万円 |
| 2,000万円 | 1,335万円 | 3,981,900円 | 2,720,862円 | 1,261,038円の還付 | 約129万円 | 約999万円 |
| 4,000万円 | 2,735万円 | 8,065,900円 | 8,315,024円 | 249,100円の追加納付 | 約274万円 | 約1,695万円 |
手取りの目安は、賞金から経費・所得税等・住民税所得割の概算額を引いた額です。消費税、住民税均等割・森林環境税、国民健康保険料・国民年金保険料は差し引いていません。4,000万円で追加納付になるのは、事業所得が2,500万円を超えて所得税の基礎控除がゼロになり、課税所得の一部に40%の税率がかかるためです。源泉徴収の20.42%は、所得がそこまで大きくなると実際の負担率に届きません。
「4,000万円の賞金でも半分も残らない」という見方は、賞金を分母にすると上の試算(約42%)に近い数字になります。ただし差のうち1,200万円は経費で、税金の負担は事業所得2,735万円に対して約40%です。経費の率が変われば手取りも大きく変わるので、自分の数字で計算し直してください。
この表は1試合でまとめて受け取る前提です。同じ2,000万円でも100万円ずつ20回に分かれて支払われると、源泉徴収は合計2,042,000円にとどまり、申告後の所得税等2,720,862円との差の678,862円を追加で納付することになります。還付か追加納付かは、賞金の総額より1回あたりの支払額で決まる面があります。
還付申告の時期と予定納税
賞金が源泉徴収されただけの年は、上の表のように還付になることが多くなります。還付を受けるための申告書は、確定申告の期間(翌年2月16日〜3月15日)を待たずに、翌年1月1日から提出できます。なお、本記事の試算で使う65万円の青色申告特別控除には、複式簿記による記帳・期限内申告などに加え、e-Taxでの申告または要件を満たす電子帳簿保存が必要です。
予定納税は、前年分の所得や税額から計算する予定納税基準額が15万円以上のときに、7月と11月に3分の1ずつ前払いする制度です。上の試算のように源泉徴収で還付になった年の翌年は、予定納税はかかりません。反対に、4,000万円の例のように追加納付が約25万円になった年の翌年は、15万円の基準を超えるため予定納税の通知が届きます。源泉徴収されないレッスン収入や海外賞金がある場合も、翌年の予定納税基準額が15万円以上かで判定します。外国税額控除を受けた場合などは、前年の追加納付額だけでは判断できません。
プロとアマチュアで変わる賞金の所得区分
賞金の所得区分は、事業との関係、役務の対価としての性質、継続性から判断します。次の表のアマチュア欄は、主催者からの賞金・賞品が役務に伴うもの、主催者以外からの褒賞が役務の対価ではない単発のものという前提です。
| 項目 | プロゴルファー | アマ:主催者からの入賞賞金・賞品 | アマ:主催者以外が贈る褒賞 |
|---|---|---|---|
| 所得区分 | 事業所得 | 雑所得 | 一時所得 |
| 差し引けるもの | 必要経費・青色申告特別控除 | 必要経費 | 直接要した費用・特別控除(最高50万円) |
| 課税される額 | 所得の全額 | 所得の全額 | 控除後の2分の1 |
| 赤字の扱い | 他の所得と損益通算でき、青色申告なら翌年以後3年繰り越せる | 通算できない | 通算できない |
アマチュアの区分は、国税庁の質疑応答事例「マラソン大会の賞金・褒賞金の課税関係」が線を引いています。会社員が主催者から受けた1位入賞賞金と記録更新賞金は「役務の対価又はその役務に付随して取得するもの」として雑所得、主催者以外の団体が記録を更新した選手に払った褒賞金は一時所得とされました。ゴルフ大会に当てはめると、アマチュアの入賞賞品が主催者への役務に伴うものなら雑所得、協賛企業からの賞品が役務の対価ではなく継続性もないものなら一時所得と考えられますが、交付者の違いだけでは断定できません。プロの賞金は業務に関して受けるものなので事業所得です。
給与収入が2,000万円以下で、1か所から給与を受けて年末調整を済ませている会社員は、給与以外の所得(一時所得は2分の1にした後の額)の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です(国税庁No.1900)。この20万円は収入ではなく所得で判定し、所得税の申告をしない場合でも住民税の申告は別に必要です。医療費控除や源泉徴収税額の還付などのために確定申告する場合は、20万円以下の所得も含めて申告します。
副賞の自動車にかかる税金
プロが受け取った自動車は受け取った時の価額で事業収入
所得税法36条は、金銭以外の物で収入した場合も、その物の価額を収入金額に入れると定めています。価額は「当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額」(同条2項)なので、後で売却した金額ではなく、受け取った時点の時価で売上に計上します。国税庁No.2792も、報酬・料金は「物品その他の経済的利益で支払う場合も」源泉徴収の対象に含まれるとしています。
誰が源泉徴収するかは、副賞を誰の名義で渡すかで変わります。国税庁の質疑応答事例「ゴルフ大会の協賛者が提供するプロゴルファーの賞金」は、主催者A社が協賛者B社から製品の提供を受けてA社の名で交付するならプロゴルファーの業務に関する報酬(源泉徴収義務者はA社)、B社が交付するなら事業の広告宣伝のための賞金(源泉徴収義務者はB社)と回答しています。どちらの扱いだったかは、翌年1月ごろに届く支払調書や支払明細で確認できます。
副賞車の事業使用と家族への贈与
プロが受け取った車を遠征や練習場への移動に使うなら、収入に計上した価額を取得価額として、車両の減価償却資産にします。耐用年数は普通自動車が6年、軽自動車が4年で、私用と兼ねる場合は走行距離などで事業分を按分します。
車を親や配偶者に譲ると、受け取った家族の贈与税の対象になります。暦年課税なら、その年に受けた贈与の合計が基礎控除110万円を超える部分が対象です。収入として計上する額は、受け取った後に家族へ譲っても減りません。
アマチュアのホールインワン賞の自動車と源泉徴収
アマチュアが自動車メーカーや販売店の協賛するホールインワン賞で車を受け取った場合、協賛者が自社の広告宣伝として渡す賞品であれば、広告宣伝のための賞金として源泉徴収の対象になります。国税庁No.2813によれば、協賛者は物品を「通常の小売販売価額(いわゆる現金正価)の60パーセント相当額」で評価し、50万円を差し引いた残額に10.21%を掛けて源泉徴収します。小売価格300万円の車なら、(180万円−50万円)×10.21%で132,730円です。
この60%評価は源泉徴収の計算方法として定められたものです。協賛者からの賞品が役務の対価ではなく継続性もないなど、一時所得に該当する場合、金額は所得税法36条2項に従い受け取った時の価額から計算します。ほかに一時所得がなく直接要した費用もなければ、(受け取った時の価額−50万円)×2分の1が他の所得に加算されます。会社員は、前の章の20万円の条件を超えると確定申告が必要です。
競技そのものの賞品で車を受け取るのは、アマチュア資格の面で難しくなります。日本ゴルフ協会(JGA)の2022年アマチュア資格規則は、スクラッチ競技でアマチュアが受け取れる賞品を「競技あたり 10 万円以下」としています。ハンディキャップ競技では賞金は受け取れず、賞金以外の賞品が同じ10万円以下に限られます。上限の例外には、通常のラウンド外で行うロングドライブ競技などの賞やホールインワン賞があり、競技外のホールインワンと、競技中でもショットの距離が50ヤード以上のホールインワンには10万円の上限が適用されません。R&Aの規則も同じ構造で、上限は1競技700英ポンドまたは1,000米ドルです。
海外ツアーで獲得した賞金の課税
米国非居住者の賞金に対する原則30%の源泉徴収
米国税務上の非居住外国人が独立した立場で競技を行って得る賞金には、原則として総額の30%の連邦税が源泉徴収されます。ただし、IRSとCWAを締結すると見込純所得に基づく軽減が可能で、源泉徴収額と最終的な税額は一致するとは限りません。日米租税条約16条1項は運動家の所得について、その年の総収入額が1万米ドル以下なら活動地国は課税しないと定めていますが、PGAツアーやLPGAツアーで上位に入る額なら1万米ドルを超えるため、米国での課税は免除されません。
「米国に183日以上いなければ米国では課税されない」という説明を見かけますが、これは米国居住者になるかどうかの判定(実質的滞在テスト)の話です。非居住者でも米国内の試合で得た賞金は米国源泉所得として課税されます。逆向きの例として、国税庁の質疑応答事例「米国人プロゴルファーに支払う賞金」は、日本の大会で米国居住者が獲得した賞金2,000万円と副賞(300万円相当の自動車)について、日米租税条約16条1項により日本で課税され、支払時に源泉徴収が必要と回答しています。非居住者への支払は所得税法212条・213条により賞金と副賞の合計額に一律20.42%で、居住者のような「100万円までは10.21%」の区分はありません。
海外賞金の日本での申告と外国税額控除
日本の居住者は、海外の試合の賞金も日本の事業所得に含めて申告します。そのままでは米国と日本で二重に課税されるため、所得税法95条の外国税額控除で、米国で納めた税額を日本の所得税から差し引きます。控除できるのは、日本の所得税額のうち国外所得に対応する部分(控除限度額)までで、控除限度超過額や控除余裕額は、所定の申告・明細書提出の要件を満たせば翌年以後3年間繰り越せます。その年の計算では、前年以前3年内からの繰越額を用いて調整します。控除の種類と計算の流れは税額控除とは?所得控除との違いと種類一覧で解説しています。
ドル建ての賞金は、所得税基本通達57の3-2により、原則として収入を計上する日の電信売相場と電信買相場の仲値(TTM)で円に換算します。換算日と使ったレートは、外国税額控除の明細書を作るときにも必要になるので、試合ごとに記録しておきます。
スポンサー契約金・レッスン料などの源泉徴収
賞金以外の収入も、ほとんどがプロとしての事業所得です。源泉徴収の根拠と税率は収入の種類で分かれます。
| 収入 | 源泉徴収の根拠 | 税率 |
|---|---|---|
| 賞金・出場料 | 所得税法204条1項4号 | 10.21%(100万円超は20.42%) |
| 専属契約の契約金 | 同7号(No.2810) | 10.21%(100万円超は20.42%) |
| レッスン・指導の報酬 | 同1号(施行令320条1項) | 10.21%(100万円超は20.42%) |
| 協賛者が直接渡す賞品 | 同8号(No.2813) | 50万円超の部分に10.21% |
施行令320条1項は「技芸、スポーツその他これらに類するものの教授若しくは指導」の報酬を源泉徴収の対象に挙げています。練習場やゴルフスクールの運営会社から受け取るレッスン報酬は、ここに当たります。一方、生徒個人が直接払うレッスン料は、給与を支払っていない個人には源泉徴収義務がないため差し引かれません。この部分は源泉徴収がない分、確定申告で納税額が増える原因になります。
スポンサー契約は、ロゴ入りウェアの着用や広告出演の対価として受け取るのが一般的です。契約時に一括で受け取る契約金は7号の契約金として源泉徴収されます。スポンサー側から見た契約の仕組みや費用の区分はスポンサーシップとは?広告・寄付との違いと権利・費用・契約の仕組みで扱っています。
大きな契約金を受け取った年は、平均課税を使えるかを確認します。所得税法施行令8条1号は、一定の者に専属して「三年以上の期間」役務を提供する(または他の者のために提供しない)約束で一時に受ける契約金のうち、金額が「報酬の年額の二倍に相当する金額以上」のものを臨時所得としています。ほかに変動所得がなければ、この臨時所得がその年の総所得金額の20%以上のとき、所得税法90条の平均課税を選べます。課税総所得金額から臨時所得の5分の4を差し引いた額(調整所得金額)で税率を決め、その平均の負担率を残りの部分にも当てる計算なので、契約金で一気に上の税率区分へ上がるのを抑えられます。プロ野球選手の契約金で平均課税を使った場合の試算はプロ野球選手はなぜ個人事業主?年俸の税金・社会保険と法人化できない理由にあります。
一方、賞金は平均課税の対象になりません。変動所得は施行令7条の2で漁獲・養殖、原稿・作曲の報酬、著作権の使用料に限られており、優勝した年に賞金が跳ね上がっても、その年の税率で課税されます。
プロゴルファーの経費とゴルフクラブの減価償却
経費にできるのは、試合や指導の収入を得るために直接かかった支出です。エントリーフィー、キャディへの報酬、試合会場までの交通費と宿泊費は、業務との関係が明らかなので全額を計上できます。迷いやすいのは道具とトレーニングです。
- ゴルフクラブ:減価償却資産の耐用年数省令の別表第一「器具及び備品」のスポーツ具に当たり、耐用年数は3年
- 取得価額10万円未満のクラブ:業務の用に供した年に取得価額を必要経費に算入できる(私用分を除く)
- 青色申告の中小事業者:措置法28条の2の特例で、令和8年4月1日以後に取得した40万円未満の資産も一括で経費にできる(令和11年3月31日まで・年合計300万円まで)
- トレーニングジムやパーソナル指導料:競技力の維持に必要と説明できる範囲で計上し、私生活の健康管理と区別する
10万円・20万円・40万円の3つの基準の使い分けと改正の時期は少額減価償却資産とは?40万円特例はいつからかで確認できます。
生計を一にする家族にキャディ料やマネージャー報酬を払っても、所得税法56条により経費にはなりません。家族への給与を青色事業専従者給与として経費にするには、期限内の届出に加え、原則として年齢15歳以上で年間6か月を超えて専ら事業に従事することや、給与額が労務の対価として相当であることなどの要件を満たす必要があります。
キャディに払う報酬は、所得税法204条1項の源泉徴収の対象に挙げられていないため、外部のキャディに業務として依頼する限り源泉徴収はしません。ただし、キャディを雇って勤務時間や指示の下で働かせる実態があれば給与になり、給与を払う選手は源泉徴収義務者として給与を払うたびの源泉徴収と年末調整を行います。
賞金が増えた年に確認する消費税・個人事業税・法人化
国内トーナメント賞金の消費税上の課税売上
消費税法基本通達5-5-8は、受賞者が「その受賞に係る役務の提供を業とする者」で、賞金の給付が予定された催物に参加して受け取る賞金を、資産の譲渡等の対価に当たるとしています。プロゴルファーがトーナメントで受け取る賞金はこの2要件を満たすため、国内の大会の賞金は課税売上になります。
そのため、前々年(基準期間)の課税売上が1,000万円を超えると、その年は消費税の課税事業者になります。判定には賞金だけでなくスポンサー料などの課税売上も合計します。特定期間(前年1〜6月)の課税売上高と給与等の支払額がともに1,000万円を超えた場合や、インボイス登録をした場合は、それより早く課税事業者になります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者になる場合、2割特例・3割特例は適用できません。インボイス登録によって免税事業者から課税事業者になった場合など、適用要件を満たす事業者には令和8年分まで2割特例があり、令和9年分と10年分は個人事業者に限って3割特例に移ります。課税事業者になった後の計算方法として、簡易課税を選ぶ余地があります。国税庁の質疑応答事例「プロスポーツ選手の事業区分」は、プロスポーツ選手を「第五種事業に該当するものとして取り扱います」と回答しており、みなし仕入率は50%です。遠征費や用具代などで実際に控除できる仕入税額が、売上に係る消費税額の半分に届かないなら、簡易課税のほうが納税額は小さくなります。使えるのは基準期間の課税売上高が5,000万円以下の年で、原則として適用を受けたい年の前年末までに届出書を提出します。ただし、2割特例・3割特例を適用した翌年に簡易課税へ移る場合などは、届出期限の特例があります。判定の流れは個人事業主が売上1000万円を超えたら消費税はいくら?にまとめています。
競技者としての賞金・出場料と個人事業税の対象範囲
個人事業税は、地方税法72条の2に列挙された法定業種にだけ課税されます。列挙された業種に競技者としての活動は含まれていないため、賞金や出場料の所得には個人事業税はかかりません。レッスン事業の割合が大きい場合は、第三種事業の「諸芸師匠業」に当たるかを都道府県が判断するので、開業届を出した都道府県税事務所に確認しておきます。業種の一覧は個人事業税がかからない業種は?法定70業種の一覧にあります。
法人化と賞金の帰属
所得が大きくなると、マネジメント会社を作って収入を法人で受ける方法が検討に上ります。ただし、トーナメントの賞金は出場した選手本人の業務に関する報酬として支払われ、主催者は所得税法204条1項4号により選手個人の報酬として源泉徴収します。受取口座だけを会社に向けても、所得税法12条(実質所得者課税)により、収益を実際に享受する選手本人の所得とされることがあります。
法人で受けやすいのは、スポンサー契約や出演料のように、契約の当事者を最初から会社にできる収入です。賞金を含めて法人化の損得を考えるときは、大会ごとの支払先の扱いと、役員報酬に移した後の所得税・社会保険料まで含めて、税理士と試算してから決めるのが確実です。
ゴルフ賞金の税金に関するよくある質問
賞金1,000万円で税金はいくら引かれますか?
支払時の源泉徴収は1,939,900円です。最終的な所得税は経費と控除で決まり、経費ゼロ・青色申告特別控除65万円・基礎控除のみの試算で1,400,709円なので、差額の約54万円は確定申告で還付されます。別に翌年の住民税が約89万円かかります。
賞金300万円の場合の税金はいくらですか?
1回の支払が300万円なら、源泉徴収額は102,100円+200万円×20.42%で510,500円です。年間の所得がこの賞金だけなら、確定申告で大半が還付される水準です。
賞金2,000万円の税金はいくらですか?
1回の支払が2,000万円なら、源泉徴収額は3,981,900円です。年間収入がこの賞金だけで経費が3割(600万円)、青色申告特別控除65万円と基礎控除だけを適用する試算では、申告後の所得税等は2,720,862円で、差額の約126万円が還付されます。翌年の住民税は約129万円です。
アマチュアがゴルフコンペで景品を受け取ったら申告が必要ですか?
景品が何の対価として渡されたかで区分が変わります。国税庁のマラソン大会事例では、主催者への役務に伴う賞金は雑所得、役務の対価ではない単発の褒賞金は一時所得でした。ゴルフコンペの景品も、交付者だけでなく役務対価性や継続性を確認します。一時所得なら、総収入から直接要した費用と特別控除(最高50万円)を引いて残らなければ課税されません。年末調整を受けている給与収入2,000万円以下の会社員は、給与以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告は不要です。
副賞の車がいらない場合、売れば税金は変わりますか?
賞品を受け取った時の収入額は、後日の売却だけでは変わりません。ただし、売却自体については、車の用途などに応じて譲渡所得や消費税の課税関係を別に判定します。
アメリカで獲得した賞金は日本でも申告が必要ですか?
日本の居住者なら必要です。米国で課された税のうち外国税額控除の対象となる額は、日本の確定申告で控除限度額の範囲内で差し引けます。米国で税額が還付・減額された場合は、日本側の控除額も調整が必要です。ドルの賞金は計上する日のTTMで円に換算します。