確定申告

年収500万円の個人事業主の税金は59万7,000円|令和8年分の手取りと489万円の崖

年収500万円の個人事業主の税金は59万7,000円|令和8年分の手取りと489万円の崖

売上500万円・経費0円・青色申告特別控除65万円で申告した場合、令和8年分に納める所得税・住民税・個人事業税の合計は59万7,000円、国民健康保険料と国民年金保険料を含めた手取りは370万6,151円になります。この帯で効いてくるのは、令和8年度の税制改正で基礎控除が104万円に引き上げられたことと、その適用が合計所得489万円で切れることの2点です。東京23区・単身・40歳未満・第1種事業の前提で、内訳と計算の順序を1円単位まで示します。

まとめ

年収(売上)500万円・経費0円・青色申告特別控除65万円のとき、令和8年分の負担は税金59万7,000円と社会保険料69万6,849円で、手取りは370万6,151円(手取り率74.1%)です。内訳は所得税16万7,200円、住民税32万4,800円、個人事業税10万5,000円、国民健康保険料48万1,809円、国民年金保険料21万5,040円。

この帯で最も金額が動くのは基礎控除です。令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下なら104万円ですが、489万円を1円でも超えると67万円まで落ちます。売上554万円のところにこの段差があり、売上を1円増やすと手取りが5万4,699円減ります。同じ理由で、売上500万円・経費0円のまま青色申告特別控除を10万円しか取れないと合計所得が490万円になって崖を越え、65万円控除の場合より手取りが21万2,990円少なくなります。

会社員の年収500万円(手取り394万2,152円)との差は23万6,001円ですが、その差は社会保険料ではありません。社会保険料はむしろ個人事業主のほうが2万6,299円安く、差を作っているのは税金です。以降の章で、5段階の計算手順、489万円の崖、会社員との差の内訳、この帯で効く節税と効かない節税の順に見ていきます。

年収500万円の個人事業主にかかる税金と社会保険料の内訳

前提は、東京23区在住・単身・40歳未満(介護保険第2号被保険者に該当しない)・第1種事業で税率5%・青色申告特別控除65万円・所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみ、とします。売上500万円から必要経費0円と青色申告特別控除65万円を引いた事業所得435万円が出発点です。

数字は年換算モデルである点を先に断っておきます。所得税は令和8年分、住民税と国民健康保険料は前年も同じ所得だったと仮定した令和8年度の額、国民年金保険料は令和8年度の月額17,920円を12倍したものです。住民税と国保は前年所得を基礎に翌年度課税されるため、令和8年の暦年に実際に口座から出ていく金額とは一致しません。

売上500万円・経費0円・青色申告65万円のときの手取り370万6,151円

項目 金額 計算の根拠
売上 5,000,000円 必要経費0円
事業所得 4,350,000円 青色申告特別控除65万円控除後
国民健康保険料 481,809円 医療341,992+支援127,360+子育て12,457
国民年金保険料 215,040円 月17,920円×12
所得税・復興特別所得税 167,200円 課税所得2,613,000円×10%−97,500円
住民税 324,800円 所得割319,800+均等割5,000
個人事業税 105,000円 (435万+65万−290万)×5%
手取り 3,706,151円 手取り率74.1%

国民健康保険料は3つの区分を別々に計算します。算定基礎額は事業所得435万円から基礎控除43万円を引いた392万円で、医療分は392万円×7.51%+均等割47,600円、支援金分は392万円×2.80%+17,600円、子ども子育て支援金分は392万円×0.27%+1,873円。3つを合計して48万1,809円です。新宿区が公表している令和8年度の概算早見表は総所得金額等430万円で47万6,519円と1円単位で示しており、この式で計算した金額と一致します(賦課額の端数は1円未満切捨て)。40歳以上なら介護分(均等割17,800円/所得割2.43%)が加わり、11万3,056円増えます。料率は東京都保健医療局が公表している令和8年度の特別区統一料率で、23区のうち20区がこの数値です(中野区・目黒区・江戸川区は一部独自)。

個人事業税で見落とされやすいのが、青色申告特別控除を足し戻す点です。東京都主税局は「個人の事業税には青色申告特別控除の適用はありませんので、所得金額に加算します」と明記しており、事業所得435万円ではなく500万円から事業主控除290万円を引いた210万円が課税標準になります。業種によっては税率が3%だったり、そもそも法定70業種に入らず非課税だったりするため、個人事業税がかからない業種は?法定70業種の一覧と税率3〜5%・290万円控除の計算で自分の事業区分を先に確認してください。

経費100万円・200万円を入れたときの税額と、必要経費1万円あたりの効き幅3,358円

必要経費 事業所得 所得税 住民税 個人事業税 税金計 手取り
0円 4,350,000円 167,200円 324,800円 105,000円 597,000円 3,706,151円
1,000,000円 3,350,000円 87,700円 235,300円 55,000円 378,000円 3,030,951円
2,000,000円 2,350,000円 42,000円 145,900円 5,000円 192,900円 2,321,851円

経費を100万円計上すると税金は21万9,000円減ります。ただし、その100万円は実際に支払った現金です。手取り欄の数字が経費に応じて下がるのはそのためで、節税額だけを見て経費を増やす判断をすると現金が減ります。

意味があるのは、家賃や電気代のようにどのみち支払っている生活費のうち事業使用分を按分して経費にできる場合です。必要経費を1万円増やすと、所得税10.21%・住民税10%・個人事業税5%が減り、さらに国民健康保険料が10.58%下がります。ただし国保料が下がると社会保険料控除も同額減って税が押し戻されるので、単純合算の3,579円にはならず、実際の効き幅は3,358円です。経費として認められる範囲と按分の考え方は個人事業主の経費と控除の違い|1万円で減る税金と令和8年分の所得控除16種にまとめています。

収入から税額を出す5段階と、年収500万円帯で使う速算表の行

税額は5段階で決まります。売上から必要経費と青色申告特別控除を引いて事業所得を出し、そこから所得控除を引いて課税所得を出し、速算表で所得税を出し、復興特別所得税を上乗せする、という順序です。順序を入れ替えると答えが変わります。

事業所得435万円から課税所得261万3,000円を出す差し引きの順序

事業所得435万円から差し引くのは、社会保険料控除69万6,849円(国保48万1,809円+国民年金21万5,040円)と基礎控除104万円です。435万円−69万6,849円−104万円=261万3,151円となり、課税所得は1,000円未満を切り捨てて261万3,000円になります。この切り捨ては所得税・住民税それぞれで行い、税額の側は100円未満を切り捨てます。

基礎控除104万円は令和8年度の税制改正後の金額です。国税庁「令和8年度の税制改正(源泉所得税関係)」の表は、合計所得132万円超489万円以下の3行が結合されているため、うっかり改正前の88万円や68万円を拾ってしまいます。改正後の値は104万円・99万円・67万円・62万円の4つしかなく、令和8・9年分で合計所得489万円以下なら一律104万円です。改正前後の関係は基礎控除と給与所得控除の違い|令和8年分は104万円と74万円で年収178万円まで所得税ゼロで整理しています。

速算表の10%の行と、復興特別所得税2.1%の上乗せ

課税所得261万3,000円は、速算表の「1,950,000円から3,299,000円まで」の行に入り、税率10%・控除額97,500円です。261万3,000円×10%−97,500円=16万3,800円が基準所得税額。ここに復興特別所得税として2.1%(3,439円)を乗せ、100円未満を切り捨てて16万7,200円が納付額になります。

年収400万円帯との違いがここです。売上400万円・経費0円・青色65万円だと課税所得は171万8,000円で税率5%の行に収まりますが、500万円帯では10%の行に上がります。所得控除を1万円積んだときの節税額が、400万円帯の1,510円から2,000円へ増えるのはこのためです。所得税の納付額が15万円を超えるので、同じ水準の所得が続けば翌年は個人事業主の予定納税|令和8年分の納期限・15万円基準・減額申請と仕訳の実務のとおり7月と11月に予定納税の対象になります。

売上554万円を1円超えると手取りが5万4,699円減る基礎控除の崖

令和8年分の基礎控除は合計所得金額で段階的に決まり、489万円以下は104万円、489万円超655万円以下は67万円です。段階の間に緩やかな逓減はなく、1円超えた瞬間に37万円分の控除が消えます。年収500万円台の個人事業主は、この段差のすぐ手前にいます。

売上 合計所得 基礎控除 所得税 税金計 手取り
5,540,000円 4,890,000円 1,040,000円 216,500円 721,600円 4,064,419円
5,540,001円 4,890,001円 670,000円 271,200円 776,300円 4,009,720円

売上が1円増えただけで所得税が5万4,700円増え、手取りは5万4,699円減ります。落差が大きいのは、控除が37万円減ることに加えて、課税所得が309万6,000円から346万6,000円へ動き、速算表の10%の行から20%の行(3,300,000円以上)へ移るからです。2つの段差が同じ場所で重なっています。住民税の基礎控除は令和8年度も43万円で据え置かれているため、崖は所得税だけに現れます。

実務上の結論を書きます。12月時点で合計所得が489万円をわずかに超えそうなら、その年のうちに事業所得を489万円以下へ収める手当てを打つべきです。使えるのは、年内に業務へ供用した少額減価償却資産や、年内に役務の提供が終わって債務が確定した外注費のように、当年の必要経費になることを確認できる支出です。代金を先に払っただけの前払費用、まだ使っていない資産、期末在庫として残る仕入は当年の経費になりません。小規模企業共済やiDeCoの掛金は所得控除で合計所得金額そのものを下げないため、この崖の回避には使えません。数万円から数十万円の調整で5万円超が戻ります。逆に、合計所得が500万円台後半まで確実に届く年は、この崖を意識して所得を圧縮しても効果が薄く、通常どおりの節税判断でかまいません。効くのは489万円のすぐ上に着地しそうな年だけです。

青色申告特別控除の取り方でも同じ崖に落ちます。65万円控除の要件は、複式簿記による記帳と貸借対照表の添付・期限内申告(ここまでが55万円控除の要件)に、e-Tax送信または優良な電子帳簿の保存が加わったものです。e-Taxを使わず55万円控除にとどまった場合、合計所得は445万円なので基礎控除104万円は維持され、手取りは367万7,571円で2万8,580円下がるだけです。崖に落ちるのは複式簿記をやめて10万円控除になったときで、合計所得が490万円となり基礎控除は67万円へ、手取りは349万3,161円まで落ちます。65万円控除との差は21万2,990円。控除額の差55万円に加えて基礎控除37万円を同時に失うため、ここだけ落差が跳ね上がります。帳簿を簡易簿記に落とす判断は、控除額の差だけでなくこの崖まで含めて見積もってください。

会社員の年収500万円との差23万6,001円はどこから出るのか

同じ年収500万円の会社員(東京都・協会けんぽ・標準報酬月額41万円・賞与なし・40歳未満)の手取りは394万2,152円です。個人事業主の370万6,151円との差は23万6,001円。この差の出どころを分解すると、通説とは逆の姿が出てきます。

社会保険料は個人事業主のほうが2万6,299円安い

項目 個人事業主 会社員
医療保険+子ども子育て支援金 481,809円 247,968円
年金 215,040円 450,180円
雇用保険 — 25,000円
社会保険料計 696,849円 723,148円
税金計 597,000円 334,700円
手取り 3,706,151円 3,942,152円

会社員側は健康保険料24万2,310円に、令和8年4月分から徴収が始まった子ども・子育て支援金の本人負担分5,658円(標準報酬月額41万円の折半額471.5円×12か月)が乗ります。国保にも同じ支援金分が入っているので、条件を揃えて比べます。国民健康保険料はそれでも23万3,841円高いのですが、国民年金保険料が定額21万5,040円で厚生年金より23万5,140円安いため、医療と年金だけの差引きでは個人事業主が1,299円下回ります。会社員側にはさらに雇用保険料2万5,000円がかかるので、社会保険料の合計では個人事業主のほうが2万6,299円少なくなります。「個人事業主は社会保険を全額自己負担するから重い」という説明は、この年収帯では成り立ちません。手取り差23万6,001円の正体は、税金で個人事業主が26万2,300円多く払い、社会保険料で2万6,299円少なく済んだ差引きです。

税金差の内訳は、給与所得控除144万円と青色申告特別控除65万円の79万円差、そこに個人事業税10万5,000円が乗る形です。年収400万円帯では給与所得控除124万円と青色65万円の59万円差・個人事業税5万5,000円で差は約14万円でしたから、年収が100万円上がると差はさらに9万円ほど開きます。控除差が広がるのは、給与所得控除が年収に比例して増える(360万円超660万円以下は収入×20%+44万円)のに対し、青色申告特別控除が定額だからです。年収400万円時点の内訳は年収400万円の個人事業主の税金はいくら?手取り303万円と会社員との14万円差で確認できます。

家事按分できる経費が年71万円を超えると会社員の手取りを上回る

差の正体が控除額なら、事業経費で埋められます。自宅兼事務所の家賃・電気代・通信費のように、事業をしていなくても支払う支出の按分は、現金を追加で出さずに所得を減らせます。比べるときは、会社員も同額の家賃等を負担している前提に立ち、その共通支出を差し引く前の金額(売上から社会保険料と税金だけを引いた額)を並べます。売上500万円で家事按分できる経費が年71万円に達すると、この比較可能額が394万5,069円となって会社員の394万2,152円を上回ります。実際に71万円を支払った後の残高は323万5,069円で、会社員側から同じ71万円を引いた額と対応します。

年収400万円帯での逆転ラインは49万円でしたから、500万円帯では22万円分ハードルが上がります。家賃15万円の住居で3割を事業按分すれば年54万円、これに電気代・通信費・車両費を合わせれば71万円は現実的な水準です。逆に、按分できる支出がほとんどない業態で年収500万円を続けるなら、手取りだけを見れば会社員のほうが有利という結論になります。この場合に個人事業主を選ぶ理由は税負担以外に求めるべきで、節税策を積んで逆転を狙うのは筋が悪い判断です。

年収500万円帯で効く節税と、効かない節税

この帯では、所得控除を積む策と事業所得そのものを減らす策で効き幅が約1.7倍違います。所得控除を1万円増やすと減るのは約2,000円(所得税10.21%+住民税10%)。必要経費を1万円増やすと減るのは3,358円で、所得税・住民税に加えて個人事業税5%と国民健康保険料10.58%が動くぶん差がつきます。

ここで混同されやすいのが国民健康保険料の扱いです。国保料の算定基礎は所得控除を引く前の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額なので、iDeCoの確定申告と年末調整はどっち?判断表と書き方・還付額の出し方で扱うiDeCoの掛金も、個人事業主の退職金は小規模企業共済|7万円20年の受取額と元本割れの節目の小規模企業共済も、国民健康保険料を1円も下げません。「iDeCoと小規模企業共済で国保料も安くなる」という説明は誤りです。国保料に効くのは必要経費・青色申告特別控除・経営セーフティ共済の掛金だけで、料率と軽減の判定は個人事業主の国民健康保険はいくら?令和8年度の早見表と安くする方法にまとめています。

それでも所得控除を積む価値があるのは、合計所得が489万円をまたぐときです。iDeCoや小規模企業共済の掛金は所得控除であって合計所得金額そのものは減らさないため、基礎控除の崖には効きません。崖を回避したい年に選ぶべきなのは、経費計上や少額減価償却資産のように事業所得を直接減らす手段です。この優先順位を取り違えると、掛金を払ったのに基礎控除37万円を失う、という結果になります。

よくある質問

年収500万円の個人事業主の税金は結局いくらですか?

売上500万円・必要経費0円・青色申告特別控除65万円・東京23区・単身・40歳未満・第1種事業という前提で、令和8年分は所得税16万7,200円、住民税32万4,800円、個人事業税10万5,000円の合計59万7,000円です。これに国民健康保険料48万1,809円と国民年金保険料21万5,040円が加わり、手取りは370万6,151円になります。必要経費が100万円あれば税金は37万8,000円まで下がります。

売上500万円ではなく事業所得が500万円のときはいくらですか?

青色申告特別控除65万円を引いた後の事業所得が500万円だと、合計所得が489万円を超えるため基礎控除が67万円に下がります。税金は所得税29万1,200円・住民税38万2,900円・個人事業税13万7,500円の合計81万1,600円(社会保険料は76万5,619円)で、手取りは407万2,781円です。売上500万円のケースより所得が65万円多いだけで税金は21万4,600円増えます。「年収」を売上で見るか所得で見るかで答えが大きく変わるので、比較記事を読むときは前提を確認してください。

年収400万円や300万円だと税金はいくらになりますか?

売上400万円・経費0円・青色65万円なら税金は約37万8,000円で手取りは約303万円、売上300万円なら手取りは約232万円です。年収帯ごとの内訳は年収400万円の個人事業主の税金はいくら?手取り303万円と会社員との14万円差と年収300万円 個人事業主の手取りは約232万円|令和8年分の内訳と早見表にあり、後者に年収別の早見表を置いています。

課税所得の1,000円未満は切り捨てでよいですか?

課税される所得金額は1,000円未満を切り捨てます。売上500万円のケースでは261万3,151円が261万3,000円になります。この切り捨ては所得税と住民税それぞれの課税所得で行い、算出した税額の側は100円未満を切り捨てます。所得税16万3,800円に復興特別所得税3,439円を足した16万7,239円が16万7,200円になるのが後者です。

年収500万円だと予定納税は発生しますか?

前年も同じ水準の所得があったなら発生します。予定納税の判定は、その年の5月15日時点で確定している前年分の所得・税額(予定納税基準額)で行うため、その年に初めて年収500万円になっただけでは対象になりません。前年分の申告納税額がこのケースと同じ16万7,200円なら15万円の基準を超えるので、第1期は7月、第2期は11月に、それぞれ基準額の3分の1を納めます。注意したいのは、国税庁が「令和8年度税制改正における基礎控除の見直しについては、予定納税額の計算上、考慮されていません」と明記している点です。令和8年分の予定納税額は改正前の基礎控除で計算された前年分の税額をもとに決まるため実際より多めになり、翌年の確定申告で精算されます。資金繰りが苦しいときは減額申請ができます。

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