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子ども・子育て支援金の給与明細:記載義務の有無と3つの表示例、端数処理と給与システムの控除項目設定

子ども・子育て支援金の給与明細:記載義務の有無と3つの表示例、端数処理と給与システムの控除項目設定

子ども・子育て支援金は、令和8年4月分の保険料から健康保険料とあわせて徴収が始まり、翌月徴収の会社では5月支給の給与明細から控除欄の金額が変わりました。給与明細に支援金の行を設けるかどうかは会社が決めることで、法令で分けて書く義務はありません。この記事では、こども家庭庁と協会けんぽの資料、健康保険法の条文をもとに、明細に載る時期と金額、別行・注記・合算の3つの記載例、別行にすると1円ずれる端数処理の扱い、給与システムで直す箇所までを整理します。

まとめ:子ども・子育て支援金を給与明細にどう載せるかの結論と対応の順番

支援金を健康保険料と分けて給与明細に書くことは、法令上の義務ではありません。こども家庭庁は内訳を記載する取組への協力を求めており、従業員からの問い合わせを減らす意味でも、別行か注記で金額を示すほうが運用は楽になります。

金額は、標準報酬月額×0.23%の半分です。協会けんぽの東京支部なら標準報酬月額26万円で月299円、賞与にも同じ率がかかります。別行で示すときは、健康保険料と支援金を別々に丸めると、合算して丸めた場合より1円少なくなる等級があります。控除の合計を先に決め、支援金の行を求めてから健康保険料の行を差額で出す順番にすると、明細の2行と納めるべき額が食い違いません。

給与システムでは、控除項目マスタ・料率マスタ・明細レイアウト・賃金台帳の4か所を、支給月ではなく保険料の対象月で揃えます。料率は令和10年度に向けて上がる見込みのため、率を固定値で持たず、適用開始月つきの履歴で管理してください。

給与明細に子ども・子育て支援金が出てくる理由と、記載義務の有無を法令で確認

まず、支援金がなぜ給与から引かれ、明細にどこまで書く義務があるのかを条文と国の資料で確かめます。

健康保険料とあわせて徴収される支援金と、令和8年度の0.23%の労使折半

支援金は、医療保険の仕組みを使って全世代から集める子育て支援の財源です。こども家庭庁の制度ページは、会社員などが加入する被用者保険について、令和8年度の一律の支援金率を0.23%とし、令和8年4月保険料(5月に給与天引き)から拠出すると説明しています。支援金額の半分は会社が負担します。

条文上も、支援金の扱いは健康保険料の一部という位置づけです。健康保険法156条は、一般保険料率と子ども・子育て支援金率を合算した率で一般保険料等額を計算すると定めています。こども家庭庁の資料も、支援金は医療保険の保険料とあわせて徴収すると説明しています。

法令の義務は控除額の通知まで、内訳の表示はこども家庭庁の協力依頼

健康保険法167条3項は、保険料を報酬から控除した事業主に、控除に関する計算書を作成して控除額を被保険者に通知するよう求めています。義務になっているのは「控除した保険料の額」を知らせることで、その内訳までは条文に書かれていません。

この点について、こども家庭庁の事業主向けリーフレットは「給与明細で分けて記載しないといけないの?」という問いに、保険料額の内訳として支援金額を示すことは法令上の義務ではないと答えています。そのうえで、社会全体で子育て世帯を支える制度の趣旨から、給与明細に内訳を記載する取組への理解と協力を求めています。

健康保険料の内訳を示す取組は、今回が初めてではありません。協会けんぽは平成20年4月から、後期高齢者医療制度への支援の理解を深める目的で、一般保険料率の内訳として特定保険料率と基本保険料率を定めています。この内訳は額表の列になっていませんが、支援金は額表に別の列で載るため、明細へ転記するだけで分けて書ける仕組みです。明細の他の記載項目と交付義務の根拠は、給与明細の記載項目と交付義務の根拠を整理した記事で確認できます。

支援金が給与明細に載る月と金額:翌月徴収なら5月支給分から変わる控除欄

明細に支援金が初めて出る月は、会社が保険料を翌月徴収しているか当月徴収しているかで1か月ずれます。

4月分の保険料を5月支給の給与から引く翌月徴収と、4月支給から載る当月徴収

協会けんぽの支援金率のページでは、一般被保険者の支援金は令和8年4月分(5月納付分)からです。健康保険法167条1項は、事業主が報酬から控除できる保険料を「前月の標準報酬月額に係る保険料」としているため、4月分の支援金は5月に支払う給与から引くのが原則になります。

当月の給与から当月分を引く運用をしている会社では、4月支給の明細から支援金の行が出ます。どちらの方式でも、1人あたりの年間の控除回数は変わりません。富士通健康保険組合の2026年度保険料率の通知も、徴収開始は2026年4月、従業員の給与控除は5月分からと分けて書いています。

標準報酬月額26万円で299円、41万円で471円になる額表の支援金の列

協会けんぽの都道府県別の保険料額表は、令和8年度から支援金を健康保険料とは別の列で載せています。東京支部の令和8年度保険料額表から、本人負担(折半額)を抜き出すと次のとおりです。

標準報酬月額 健康保険(9.85%) 支援金(0.23%) 明細の支援金
150,000円 7,387.5円 172.5円 172円
260,000円 12,805.0円 299.0円 299円
300,000円 14,775.0円 345.0円 345円
410,000円 20,192.5円 471.5円 471円

表の「明細の支援金」は、給与から控除するときの規則(50銭以下は切り捨て、50銭を超えると1円に切り上げ)を支援金の列だけに当てた値です。40歳から64歳の介護保険第2号被保険者は、健康保険の列が11.47%(標準報酬30万円で17,205.0円)に変わりますが、支援金の列は年齢にかかわらず同じです。健康保険料率は都道府県で違うものの、支援金率は全国一律の0.23%なので、支援金の行の金額はどの支部でも標準報酬月額が同じなら一致します。

賞与明細にも支援金が載る:標準賞与額×0.23%と年度累計573万円の上限

事業主向けリーフレットは、賞与からも支援金を拠出すると明記しています。賞与の支援金は、賞与額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に0.23%をかけて折半します。賞与60万円なら全額1,380円、本人負担は690円です。

上限は健康保険と同じ扱いです。額表の注記では、健康保険・介護保険・支援金の標準賞与額の上限は4月から翌年3月までの累計573万円で、厚生年金の月150万円とは数え方が違います。累計の管理と同月2回払いの扱いは、賞与の社会保険料と573万円の上限を扱った記事に詳しく書いています。賞与明細にも月給の明細と同じ行名で支援金を載せておくと、従業員が2つの明細を見比べたときに迷いません。

給与明細への支援金の記載例:別行・内訳注記・健康保険料に合算の3パターン

記載方法は大きく3つです。実務では、まず別行表示ができるかを給与システムで確かめ、できない場合に注記、それも難しい場合に合算と説明文の組み合わせを選ぶ順番で考えます。

東京都の給与明細見本と同じく「子ども・子育て支援金」を独立した行にする方法

東京都の労働情報サイトが公開している「会社の給与明細の見方」の見本は、2026年4月分の控除欄に、健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金を1行ずつ並べています。標準報酬月額26万円の例で書くと、控除欄は次の形になります。

控除項目 金額
健康保険 12,805円
介護保険 0円
子ども・子育て支援金 299円
厚生年金 23,790円
雇用保険 1,328円

別行にすると、従業員は額表と1対1で照合できます。行の名称は額表と同じ「子ども・子育て支援金」にそろえてください。「子育て支援金」「支援金」と略すと、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金(厚生年金の標準報酬に0.36%)と混同する問い合わせが出ます。拠出金は本人負担がないため、明細には載りません。

健康保険の行に「(うち子ども・子育て支援金299円)」と注記する方法

明細の控除項目の数に上限がある給与ソフトや、紙の明細の様式を変えたくない会社では、健康保険の行の金額を13,104円のまま示し、行名か備考欄に「うち子ども・子育て支援金299円」と添える方法があります。

この方法の利点は、控除額の合計と行数が4月以前と変わらないことです。欠点は、健康保険の行の金額が額表の健康保険の列(12,805円)と一致しなくなり、額表で検算する従業員には分かりにくい点です。注記にするなら、備考欄に「健康保険には子ども・子育て支援金を含みます」と一文を添えます。

合算表示のままにする場合に従業員へ渡す説明文と、問い合わせの多い3項目

システムの改修が間に合わず合算のまま出す場合は、5月支給の明細と同時に説明文を配ります。合算表示を選ぶ会社でも、説明文がない状態は避けてください。「健康保険料が上がった」という問い合わせが、料率改定の誤りと区別できなくなります。

説明文に入れる項目は、問い合わせが集中する順に次の3つです。

  1. 4月分の保険料から子ども・子育て支援金(標準報酬月額×0.23%の半分)が加わり、健康保険料と一緒に引いていること
  2. 本人の金額の目安(標準報酬月額26万円で月299円など、額表の支援金の列の値)
  3. 賞与からも同じ率で引かれ、育休中は健康保険料と同じく免除されること

3点目の免除はこども家庭庁のQ&Aにも書かれています。説明文の末尾に国のコールセンター(0120-303-272)を載せておくと、制度そのものへの質問を社内で抱えずに済みます。

別行表示で1円ずれる端数処理と、明細の2行を控除合計に合わせる計算順序

別行表示を選んだ会社で、システムの設定時に最も迷うのが端数処理です。額表の列ごとに丸めるか、合算してから丸めるかで、控除額が1円変わる等級があります。

標準報酬15万円で健康保険7,387.5円と支援金172.5円を別々に丸めると1円減る

額表の折半額は銭の単位まで載っています。標準報酬月額150,000円(東京支部・39歳以下)で比べると、次のようになります。

丸め方 健康保険の行 支援金の行 合計
列ごとに丸める 7,387円 172円 7,559円
合算して丸める 7,388円 172円 7,560円

健康保険7,387.5円と支援金172.5円は、どちらも50銭ちょうどで切り捨てになります。合算すると7,560.0円で端数が出ません。両方の列の端数が50銭になる等級では、丸め方の違いで本人負担が1円変わります。標準報酬26万円や30万円のように、どちらかの列が整数になる等級では差は出ません。

2026年10月時点で、協会けんぽの額表の注記は控除時の50銭基準と、事業主と被保険者の特約による処理を認める旨を示していますが、列ごとに丸めるか合算後に丸めるかの指定はありません。どちらの方式にするかを会社で1つに決め、給与規程と給与システムの設定の両方に残しておきます。月額の計算手順と事業主負担の求め方は、社会保険料の計算方法と端数処理を扱った記事で解説しています。

合算して丸める会社は、支援金を先に丸めて健康保険の行を差額で出す

合算して丸める方式を選んだ会社が明細を2行に分けるときは、行ごとに計算し直さず、次の順番で求めます。

  1. 健康保険と支援金の折半額を足し、50銭基準で丸めて控除合計を決める(15万円なら7,560円)
  2. 支援金の折半額だけを50銭基準で丸めて、支援金の行にする(172円)
  3. 控除合計から支援金の行を引いた額を健康保険の行にする(7,560円-172円=7,388円)

この順番なら、明細の2行の合計は必ず控除合計と一致します。支援金の行は額表の支援金の列と同じ値になるため、従業員が額表で確認したときに支援金側で食い違いが出ません。1円のずれは健康保険の行に寄せます。支援金は全国一律の率なので、従業員が額表やこども家庭庁の資料で最も検算しやすい行であり、そちらを額表どおりにしておくのがこの順番を選ぶ理由です。

この方式は、列ごとに丸める会社では不要です。列ごとに丸める会社では、明細の2行は額表の各列を丸めた値そのものになり、差額の計算は入りません。

健保組合で健康保険料の負担割合が違っても、支援金は折半になる例

協会けんぽ以外では、健康保険料の負担割合が折半でない場合があります。富士通健康保険組合の2026年度の通知では、健康保険料率88‰のうち被保険者負担は39.16‰、事業主負担は48.84‰です。一方で支援金率2.30‰は、被保険者1.15‰・事業主1.15‰の折半になっています。

この場合、健康保険料の本人負担額に一定の比率をかけて支援金を割り出す計算は使えません。給与システムには、健康保険料率と支援金率を別の項目として持ち、それぞれに本人負担率を設定する必要があります。複数の健保組合に加入する会社や、出向者で保険者が変わる会社では、保険者ごとに率と負担割合の組を登録しておきます。

給与システムで支援金を明細に出す改修箇所と、設定変更で済む範囲の見分け方

クラウド型の給与ソフトには、令和8年4月に向けて支援金の控除項目を標準で追加した製品があります。それでも、自社の設定や連携先によって直す箇所が残ります。

控除項目・料率・明細レイアウト・賃金台帳の4か所を対象月で揃える

支援金の追加で確かめる箇所は次の4つです。どれか1つだけ直すと、明細と台帳、明細と納付額のどこかで金額が合わなくなります。

箇所 確かめる内容
控除項目マスタ 支援金の項目と非課税区分
料率マスタ 0.23%と適用開始の対象月
明細レイアウト 行の位置と賞与明細の行
賃金台帳・仕訳 預り金の科目と集計列

表の非課税区分は、支援金を社会保険料控除の対象として所得税の計算から差し引く設定を指します。料率の登録基準は、「4月支給から」という支給月ではなく「4月分の保険料から」という対象月です。支給月で登録すると、翌月徴収の会社では支援金を1か月早く引いてしまいます。Web明細を外部サービスで配信している会社では、給与計算側だけでなく配信側の項目定義にも行の追加が必要です。給与データが明細として従業員に届くまでの流れは、Web給与明細の配信の仕組みを解説した記事で確認できます。

育休免除・退職月・40歳到達月で支援金の行が0円や2か月分になる月

支援金の行は、健康保険料と同じ条件で金額が動きます。次の3つの月は、明細を出す前に必ず確かめます。

  • 育休・産休で健康保険料が免除される月:支援金も0円になる(判定の要件は育休の社会保険料免除の要件と判定方法を整理した記事を参照)
  • 月末に退職する人の最終給与:健康保険法167条1項により前月分とその月の分を引けるため、支援金も2か月分になることがある
  • 40歳に達した月:健康保険の行に介護保険料が加わるが、支援金の行は変わらない

このうち40歳到達月は、注記方式や合算表示の会社で誤りが出やすいところです。健康保険と介護保険をまとめて1行にしている明細では、支援金を含めて3つの保険料が1行に入るため、注記の金額も含めて検算します。

令和10年度に向けた料率引き上げへの備えと、個別開発に進む会社の条件

支援金率は今後上がる見込みです。こども家庭庁の支援金の試算資料は、令和10年度に被用者保険で拠出する9,000億円を令和4年度の総報酬227兆円で割ると0.4%になるとして、本人分を0.2%で計算しています。この試算では年収400万円の人で月650円です。率が毎年変わる前提で、料率マスタは適用開始月つきの履歴として持ち、過去月の再計算では当時の率を引けるようにしておきます。

給与パッケージの設定変更で足りるのは、協会けんぽ1つに加入し、翌月徴収で、明細をパッケージの標準様式で出している会社です。一方、複数の健保組合や出向者の保険者切替がある、健康保険料の負担割合が折半でない、明細や仕訳を独自の帳票や会計システムへ連携している、という条件が2つ以上重なる会社では、項目追加のたびに手作業の補正が残りがちです。この場合は、料率と負担割合を保険者・対象月ごとに持つ設計へ見直す価値があり、人事・労務管理システム開発として既存システムの改修から相談できます。

子ども・子育て支援金の給与明細への表示・控除額・設定についてよくある質問

給与担当者と従業員の双方から寄せられやすい質問をまとめました。

子ども・子育て支援金はいつの給与明細から引かれますか?

令和8年4月分の保険料から徴収が始まっています。前月分を当月の給与から引く翌月徴収の会社では、5月に支払う給与の明細から支援金が加わります。当月分を当月の給与から引く会社では、4月支給の明細からです。どちらの方式かは、就業規則や給与規程、または4月以前の健康保険料の切り替わり月で確かめられます。賞与については、令和8年4月以降に支払う賞与から標準賞与額×0.23%の半分が引かれます。

給与明細に支援金の項目が見当たらないのは誤りですか?

誤りとは限りません。支援金を健康保険料と分けて書くことは法令上の義務ではないため、健康保険の行に含めて表示している会社もあります。確認する際の比較対象は、健康保険の行の金額と、加入している保険者の額表にある健康保険の列の金額です。差がおおむね標準報酬月額×0.115%なら、支援金が含まれています。協会けんぽの東京支部なら、標準報酬月額26万円で健康保険12,805円に対し、行の金額が13,104円になっていれば含まれている計算です。

支援金は1人あたりいくら引かれますか?

本人負担は標準報酬月額×0.23%の半分です。協会けんぽの令和8年度の額表では、標準報酬月額15万円で172円、26万円で299円、30万円で345円、41万円で471円になります。支援金率は全国一律なので、健康保険料率が違う都道府県でも金額は同じです。賞与60万円なら標準賞与額60万円×0.23%の半分で690円です。率は今後上がる見込みで、こども家庭庁の試算では令和10年度に本人分0.2%程度とされています。

子ども・子育て拠出金と支援金はどちらも給与から引かれますか?

給与から引かれるのは支援金だけです。子ども・子育て拠出金は、厚生年金の標準報酬月額と標準賞与額に0.36%をかけて会社が全額を負担するもので、従業員の負担はありません。支援金は令和8年4月分から始まった労使折半の負担で、健康保険料とあわせて徴収されます。名前が似ているため、明細の行名は「子ども・子育て支援金」と正式名で書き、拠出金と区別できるようにしておくと問い合わせが減ります。

給与ソフトで支援金を設定するとき、最初に確かめることは何ですか?

最初に確かめるのは、料率が保険料の対象月で登録されているかどうかです。支援金は4月分の保険料から始まるため、翌月徴収の会社で「4月支給から」と登録すると、1か月早く控除してしまいます。次に、明細の行の位置と賞与明細への表示、所得税の計算で社会保険料控除に含まれる設定、賃金台帳と仕訳の集計先を確認します。健保組合に加入している場合は、健康保険料と支援金の負担割合が同じかどうかも、保険者の通知で確かめてください。

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