育休中の社会保険料は、事業主が育児休業等取得者申出書を出すと、会社負担分も本人負担分も免除の対象です。毎月の保険料は「月末に育休中か」に加えて「同じ月に14日以上休んだか」で判定し、賞与の保険料は「賞与月の末日を含む連続1か月超の休業か」で判定します。この記事では、健康保険法159条と日本年金機構の資料をもとに、免除になる保険料の範囲、休日と就業日の数え方、分割取得の合算、申出書と終了届の出し方を整理し、給与システムで休業の履歴をどう持てば判定を誤らないかまでを解説します。
まとめ:育休の社会保険料免除は月末・同月14日・賞与1か月超の3つの物差しで判定
免除されるのは健康保険料・介護保険料・子ども・子育て支援金・厚生年金保険料で、会社負担分も含みます。雇用保険料と住民税は対象外です。免除された期間は、将来の年金額の計算で保険料を納めた期間として扱われます。
毎月の保険料は、育休を始めた月から、終了日の翌日が属する月の前月までが免除です。開始と終了が同じ月に収まる短い育休は、休日を含み就業日を除いて14日以上あればその月が免除になります。賞与は、賞与を払った月の末日を含んで連続1か月を超える育休に限り免除です。
手続きは育休中か終了後1か月以内に申出書を出します。男性の短期育休や分割取得、産後パパ育休中の就業が増えると、月額と賞与で物差しが違う判定を手作業で回すのが難しくなります。休業を1件ずつの履歴として持ち、判定を給与計算の前に自動で済ませる仕組みを用意してください。
育休中に免除される社会保険料の範囲:支援金を含む4種類と対象外の雇用保険料
まず、どの保険料が免除され、誰が対象になるかを確認します。保険料の計算方法そのものは社会保険料の計算方法:標準報酬月額×料率と端数処理、令和8年度の料率と給与システムでの自動化で扱っています。
健康保険・介護・支援金・厚生年金は労使とも免除、雇用保険料と住民税は別扱い
日本年金機構の育児休業等の手続きページによると、免除は被保険者負担分と事業主負担分の両方に及びます。令和8年4月分から加わった子ども・子育て支援金(協会けんぽの支援金率のページでは0.23%)も免除の対象です。健康保険法156条が支援金率を一般保険料率と合算して「一般保険料等額」と定め、159条が育休中の「保険料」を徴収しないと定めているためです。介護保険料も同じ156条の保険料額に含まれます。
雇用保険料は賃金にかかる保険料なので、育休中に賃金を払わなければ発生せず、休業中に就業して賃金を払えばその分にかかります。住民税は前年の所得に課税されるため、育休中も納付が続きます。
3歳未満の子の育児休業等が対象、役員と事業主は申出できない理由
対象は、育児・介護休業法に基づく、3歳未満の子を養育するための育児休業と、それに準じる休業です。特別養子縁組の監護期間中の子や、養子縁組里親に委託された子も含まれます。日本年金機構の申出のページは、育児・介護休業法の育児休業等を取得できない人、たとえば労働者にあたらない役員や事業主は申出ができないとしています。
日本年金機構の免除制度のページは、免除期間を将来の年金額の計算で「保険料を納めた期間」として扱うと定めています。本人に不利益がないので、育休を取る従業員には申出を前提に手続きを進めて構いません。
毎月の保険料の免除要件:月末を含む月と同月内14日以上の2つの判定ルール
毎月の保険料は、2つの基準のどちらかを満たす月が免除になります。令和4年10月1日以降に始まった育休が対象です。
開始月から終了日の翌日が属する月の前月まで:月末基準で6例を判定
基本の基準は、育休を始めた日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までです。月末に育休中であれば、その月は免除になると読み替えられます。
| 育休期間 | 終了日の翌日 | 免除される月 |
|---|---|---|
| 6月25日〜8月31日 | 9月1日 | 6月・7月・8月 |
| 6月1日〜6月30日 | 7月1日 | 6月 |
| 6月20日〜7月10日 | 7月11日 | 6月 |
| 6月3日〜6月20日(18日) | 6月21日 | 6月(14日以上) |
| 6月3日〜6月12日(10日) | 6月13日 | なし |
| 6月30日の1日だけ | 7月1日 | 6月 |
6月30日の1日だけでも、終了日の翌日が7月になるため6月分は免除です。逆に月末の前日に復帰すると、その月は月末基準では免除されません。
同じ月に始まり終わる育休は14日以上で免除、休日は含めて就業日は除く
開始日と終了日の翌日が同じ月にある育休は、その月の育休日数が14日以上なら免除です。厚生労働省と日本年金機構のチラシは、土日などの休日も日数に含め、休業中に就業予定日がある場合はその日を除くとしています。
産後パパ育休を6月1日から6月16日まで16日取り、そのうち3日就業すると、育休日数は13日で14日に届きません。14日要件は開始月だけに使う規則で、月をまたぐ育休の翌月以降には使いません。
同じ月の分割取得は日数を合算し、連続する育休は1つの育休とみなす
日本年金機構の改正説明資料は、同じ月に複数回取得した場合は合算した日数を書くよう求めています。記入例では、10月3日から12日まで(10日のうち就労2日で8日)と、10月17日から28日まで(12日)を足して20日です。1回ごとに14日未満でも、合算で14日以上なら免除になります。
健康保険法159条2項は、連続して2つ以上の育休を取った場合、全部を1つの育休とみなすと定めています。産後パパ育休から間を空けずに通常の育休へ移るケースがこれにあたり、月額と賞与の判定はつないだ期間で行います。
賞与の保険料の免除要件:賞与月の末日を含む連続1か月超の休業に限る基準
賞与の保険料は毎月の保険料より条件が厳しく、月末をまたぐだけでは免除されません。
6月20日から7月10日の育休は月額だけ免除、賞与は1か月以下で対象外
健康保険法159条1項は、育休期間が1か月以下の人について、免除を標準報酬月額にかかる保険料に限ると定めています。日本年金機構の申出のページも、賞与月の末日を含む連続した1か月を超える育休に限り賞与の保険料を免除するとしています。1か月を超えるかの判断は暦日によるもので、休日も含めた期間が対象です。
6月10日に賞与を払い、育休が6月20日から7月10日までなら、6月の月額保険料は月末基準で免除されますが、期間は1か月以下なので6月の賞与には保険料がかかります。育休が6月1日から7月15日までなら、6月末を含み1か月を超えるため、6月の賞与も免除です。賞与の支給日に合わせて育休を短く区切る取り方は、この要件で免除されなくなりました。
賞与が免除されても標準賞与額は決まり、賞与支払届と年度累計は残る
賞与の保険料が免除されても、標準賞与額は決まり、賞与支払届は出します。健康保険の年度累計573万円にも数えるため、年度内に復帰して賞与を受け取る人の上限は、免除分を含めた賞与の累計で判定する扱いです。累計の持ち方は賞与の社会保険料:標準賞与額の計算と573万円・150万円の上限、令和8年度の料率と給与システムでの管理で解説しています。
支払届の期限は支払日から5日以内です。書き方と提出先は賞与支払届の提出期限と提出先:5日以内の手続き、書き方、賞与不支給報告書と電子申請の出し方にまとめています。
育児休業等取得者申出書の出し方:提出時期・終了届・延長と電子申請の手順
免除は自動では始まらず、事業主の申出があって初めて適用されます。
申出は育休中か終了後1か月以内、同じ月の分割取得は最後の休業時にまとめる
使う様式は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」です。日本年金機構の手続きページによると、提出は育休期間中か終了日から1か月以内で、提出先は事務センターか管轄の年金事務所、添付書類はありません。改正説明資料は、終了後1か月以内の提出なら遅延理由書は不要とし、同じ月の分割取得はその月の最後の育休の届出時にまとめて出せるとしています。
開始日と終了日の翌日が同じ月になる場合は、「育児休業等取得日数」と「就労予定日数」の欄を必ず書きます。提出方法として選べるのは、電子申請・郵送・窓口のいずれかです。e-Govの電子申請やAPI連携の要件は労務管理システムの電子申請対応とは:義務化の範囲とAPI連携・GビズID運用の判断で整理しています。
予定より早い復帰は終了届、延長は再申出、産休から育休へは様式を切り替え
育休を予定より早く終えたときは、同じ様式の「終了」欄で終了届を出します。終了日が変わると免除される最後の月も変わるため、出し忘れると免除が続いたままになり、後から保険料の追加徴収が起きます。育休を延長するときの申出に使うのは、同じ様式の「延長」欄です。
産前産後休業は出産予定日の42日前(多胎は98日前)から出産後56日までが対象で、様式は産前産後休業取得者申出書です。産休から育休へ続けて入る人は、産休の免除が終わる月から育休の申出書で免除を引き継ぎます。復職後に給与が下がったときの報酬月額変更は、育児休業等終了時報酬月額変更届を扱う別の記事で詳しく解説します。
給与システムで育休の免除判定を誤らない設計:休業履歴と就業日数換算の持ち方
免除の要件は条文で決まっていますが、給与計算で誤りが出るのは、休業の情報を1本の開始日と終了日しか持っていないときです。
休業を1件ずつ履歴で持ち、月額判定と賞与判定を別の処理に分ける構造
分割取得と連続取得を扱うには、育休を1件ずつの履歴として持ちます。
| 項目 | 使う判定 |
|---|---|
| 休業の開始日・終了日(1件ごと) | 月末基準、連続取得の結合 |
| 就業予定日数(1件ごと) | 14日要件の日数 |
| 休業の種類(育休・産後パパ育休・産休) | 申出書の様式、就業の可否 |
| 申出書・終了届の提出日 | 1か月以内の期限管理 |
判定は、間を空けない休業を1つに結合し、月額は「月末基準または同月14日以上」、賞与は「賞与月の末日を含み暦日で1か月超」で別々に行います。同じ休業から月額は免除、賞与は対象外という結果が出るため、1つのフラグで両方を表すと誤ります。
産後パパ育休の就業は合計時間÷所定労働時間で日数に換算し切り捨てる
改正説明資料は、就業日数を日単位ならその日数、時間単位なら合計時間を1日の所定労働時間で割り、1未満を切り捨てて数えるとしています。所定8時間の人が合計20時間就業すれば2.5日で、2日として扱います。
勤怠システムから就業時間を受け取り、この換算を休業1件ごとに行ってから14日を判定します。産後パパ育休中の就業上限と労使協定の管理は出生時育児休業(産後パパ育休)とは?育児休業との違いと就業上限・申出期限の管理方法で扱っています。
前月分を当月に引く会社で起きる控除ずれと、申出の遅れによる返金
前月分の保険料を当月の給与から引く会社では、6月に免除される保険料は7月の給与で引かないことになります。6月中に14日の短期育休を取って6月末に復帰した人は、7月の給与計算の時点で6月の免除判定が済んでいないと、免除される保険料を引いてしまいます。
申出が遅れて引きすぎた場合は、次の給与で本人へ返す処理が要ります。復帰月も同じで、終了日の翌日が属する月から保険料がかかるため、復帰月分を翌月の給与から引き始めます。給与システムには、控除する月と保険料の対象月を別々に持たせてください。
表計算で足りる会社と、給与システムや個別開発で育休判定を組む会社の境界
育休の免除判定は、件数と取り方の多様さで手作業の限界が決まります。
育休が年に数人で月末をまたぐ長期取得だけなら手作業と表計算で足りる条件
育休を取るのが年に数人で、全員が数か月以上の長期取得なら、月末基準だけで判定でき、14日要件も賞与の1か月超もほぼ迷いません。申出書を出し、給与システムの控除停止を手で設定して足ります。
見落としやすいのは、予定より早い復帰の終了届と、復帰月から保険料を引き始める設定です。賞与計算に対応したクラウド型の給与計算システムを使えば、休業期間を入力するだけで控除停止を任せられます。製品の選び方は給与計算システムとは?機能・種類・比較の観点から個別開発の判断まで解説で整理しています。
男性の短期育休・分割取得・休業中就業を扱う会社が個別開発を検討する条件
男性の育休取得が進み、2週間前後の短期育休、同月内の分割取得、産後パパ育休中の就業が毎月のように出る会社では、判定の組み合わせが増えます。パッケージで足りるのは、休業を複数件で持てて、就業日数を差し引いた14日判定と賞与の1か月超判定を自動で行える製品です。
個別開発や既存システムの改修を検討するのは、勤怠システムの就業時間を時間単位で取り込んで換算したい、複数の健康保険組合で申出の出し方が違う、申出書の作成から電子申請まで1つの流れにしたい、という条件が2つ以上重なる会社です。一創の人事・労務管理システム開発では、休業履歴の持ち方、免除判定、申出書データの出力を、既存の給与計算と勤怠の間に組み込むところから設計します。育休が年に数人なら、個別開発は過剰です。
よくある質問
育休中の社会保険料免除でよく出る質問です。
育休の社会保険料免除は月末に休んでいれば1日だけでも対象になりますか?
なります。月の末日に育休を取れば、終了日の翌日が翌月になるため、その月の毎月の保険料は免除です。ただし賞与の保険料は、賞与月の末日を含む連続1か月超の育休が条件なので、1日だけの育休では免除されません。月末の1日だけ休む取り方は、育児・介護休業法上の育休として取得しているかを就業規則と申出の記録で確認してください。
14日の数え方に土日や祝日は含まれますか?
含まれます。日本年金機構と厚生労働省の資料は、土日などの休日も期間に含めるとしています。一方で、休業中に就業予定日がある場合は、その日を日数から除く扱いです。時間単位で就業した場合は、合計時間を1日の所定労働時間で割り、1未満を切り捨てた日数を除きます。同じ月に複数回取得した育休は、日数を合算して14日以上かを判定します。
育休中に支給した賞与の社会保険料はいつ免除されますか?
賞与を払った月の末日を含んで、連続して1か月を超える育休を取っている場合です。1か月を超えるかは暦日で判断し、休日も含めます。免除される場合でも標準賞与額は決まるため、賞与支払届は出し、健康保険の年度累計573万円にも数えます。
育休中に免除された期間は将来の年金額に影響しますか?
影響しません。日本年金機構は、免除期間を将来の年金額を計算する際に保険料を納めた期間として扱うとしています。免除は本人負担分と会社負担分の両方に及ぶため、会社にとっても本人にとっても負担が減るだけで、年金額が下がる仕組みではありません。
育児休業等取得者申出書を出し忘れたらどうなりますか?
申出がないと免除は適用されません。提出期限は育休期間中か終了日から1か月以内で、それ以降に出す場合は遅延理由書の添付が求められます。気づいた時点で申出書を出し、すでに引いた保険料は免除が適用されたあとに本人へ返す処理が必要です。給与システムで休業の登録と申出書の提出日を紐づけておくと、出し忘れを防げます。
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