出生時育児休業は、子の出生後8週間以内に最大28日を2回まで分割して取得できる休業で、通称を産後パパ育休といいます。2022年10月1日に始まった制度ですが、事業主の実務で差がつくのは制度の説明ではなく、申出期限の管理と休業中の就業の扱いです。この記事では育児休業との違いを整理したうえで、休業中就業の上限が労働法側と雇用保険の給付側で別々に決まっている点、2026年8月1日から給付申請で申告する賃金の範囲が変わった点を、厚生労働省と日本年金機構の資料で確認します。育児介護休業法の制度全体は育児介護休業法とは?事業主の義務と就業規則・人事システムの設定項目を解説で扱っています。
まとめ|出生時育児休業の要点と、事業主がシステムで押さえる管理項目
出生時育児休業は1歳までの育児休業とは別枠の休業です。申出期限は原則2週間前で、育児休業の1か月前より短く設定されています。2回に分けるときは最初にまとめて申し出る必要があり、撤回すると1回取得したものとみなされる扱いです。休業中の就業は、労使協定を結んだ会社で、本人が申し出て同意した範囲に限って認められます。
システム側で落としやすいのは就業の上限です。法律上の上限は休業期間中の所定労働日数と所定労働時間の2分の1以下。一方、出生時育児休業給付金は28日の休業で就業10日(超える場合は80時間)までという別の上限を持ちます。週6日勤務のように所定労働日数が多い従業員では、法律の範囲内でも給付の要件を外れることがあります。就業を認めるなら2つの上限を別々に判定する仕組みが要り、それを用意できない会社は就業の労使協定を結ばないほうが安全です。
出生時育児休業とは|出生後8週間以内に28日・2回まで取得できる休業の要件
厚生労働省の産後パパ育休制度の解説資料では、出生時育児休業を「男性の取得ニーズの高い子の出生直後の時期」に向けた、育児休業より柔軟な枠組みの休業と位置づけています。法律上は育児休業の一種ですが、取得できる期間と手続が別に定められています。
対象期間の起算点|出産予定日と出生日がずれたときの8週間の数え方
対象期間は原則として出生日から8週間後までです。ただし出産予定日と実際の出生日がずれた場合は、早い日から遅い日を基準にした8週間後まで広がります。資料の例では、出産予定日が4月1日で3月25日に生まれたとき、3月25日から5月27日までの間に28日以内の休業ができます。
28日は暦日で数えるため、休業期間に含まれる土日も日数に入ります。会社独自の育児目的の特別休暇を持っている場合、その休暇が日数以外の要件を満たしていれば、合算して28日を確保する形も認められています。その際は労働日で管理している特別休暇を暦日へ換算する規定を、就業規則にあらかじめ明記しておくことが必要です。
対象労働者と労使協定で除外できる範囲|入社1年未満・週2日以下の扱い
対象は日雇いを除く男女の労働者で、産後休業中の女性は取得できません。実際には男性が中心ですが、養子縁組の場合などは女性も対象になります。有期雇用の従業員は、出生日から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに契約が満了し、更新されないことが明らかでなければ取得できます。
労使協定で対象から外せるのは3類型だけです。継続雇用1年未満の労働者、申出から8週間以内に雇用関係が終わることが明らかな労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者。これより広い範囲を除外する協定は結べません。
出生時育児休業と育児休業の違い|申出期限・分割方法・休業中就業の比較
2つの休業は併用でき、同じ子について出生時育児休業を2回、育児休業を2回、合わせて最大4回に分けて休めます。違いは次の表のとおりです。
申出期限と取得期間の比較表|2週間前と1か月前で変わる受付の締め
| 項目 | 出生時育児休業 | 育児休業 |
|---|---|---|
| 取得できる期間 | 出生後8週間以内 | 原則子が1歳まで |
| 取得日数 | 最大28日 | 期間内で申出どおり |
| 分割 | 2回・まとめて申出 | 2回・都度申出 |
| 申出期限 | 原則2週間前 | 原則1か月前 |
| 休業中の就業 | 労使協定で可 | 臨時的なものに限る |
| 給付金 | 出生時育児休業給付金 | 育児休業給付金 |
受付の締めが2種類ある点に注意が必要です。申請フォームの入力チェックを育児休業の1か月前で一律にかけていると、出生時育児休業の適法な申出を弾いてしまいます。1歳以降の延長や両親で取得するときの特例はパパママ育休プラスとは?3つの要件と給付金をわかりやすく解説で整理しています。
2回分割は最初にまとめて申出|撤回1回で取得回数が1回減る扱い
育児休業は分割するたびに申し出ればよいのに対し、出生時育児休業は2回分をまとめて申し出るのが原則です。まとめて申し出なかった場合、事業主は2回目の申出を拒めます。拒まずに認めることは差し支えありません。
見落としやすいのが撤回の扱いです。休業開始の前日までなら撤回できますが、撤回した休業は1回取得したものとみなされます。2回撤回すると、その子についての出生時育児休業をそれ以降に取得することはできません。申請の履歴を上書き型で持っているシステムでは撤回の回数が残らず、残り回数を誤って表示します。
申出期限の原則2週間前と、労使協定で最長1か月に延ばすための3つの措置
申出期限は、労働者が希望どおりの日から休むための期限です。期限を過ぎた申出も無効にはならず、事業主が開始日を指定できるようになるだけです。
2週間前を過ぎた申出への開始日指定|申出翌日から3日以内の通知期限
申出が2週間前より遅れた場合、事業主は希望開始日から、申出の翌日から起算して2週間を経過する日までの間で開始日を指定できます。10月1日に申し出て10月5日から休みたいという例なら、指定できるのは10月5日から10月15日までです。指定する日は、原則として申出の翌日から起算して3日を経過する日、この例では10月4日までに通知します。
出産予定日より早く生まれた、配偶者が病気になったといった特別の事情があるときは、期限は1週間前まで短くなります。申出を受けたら、開始予定日と終了予定日をおおむね1週間以内に書面等で本人へ通知します。経営困難や繁忙を理由に拒むことはできません。
1か月前へ延ばす労使協定の要件|研修等2つ以上・数値目標・意向把握
申出期限は、労使協定で2週間超から1か月以内の範囲に延ばせます。ただし協定に書くだけでは足りず、次の3つをすべて講じることが条件です。
- 研修の実施、相談窓口の設置、自社の取得事例の提供、制度と方針の周知、業務の配分や人員配置の措置のうち2つ以上
- 育児休業の取得に関する数値目標の設定と、取得促進の方針の周知(少なくとも男性の取得状況の目標を含む)
- 本人の取得意向を確認したうえで、その意向を把握するための法定を上回る取組
業務の配分は、休業者の仕事を周囲へ引き継ぐだけでは措置にあたりません。引き継いだ側の負担が過大にならないよう調整したことが求められます。この条件を満たせない会社は、期限を延ばさず2週間前のまま運用したほうが、協定の不備を指摘されるリスクを避けられます。
休業中就業の上限と手続|所定労働日数・所定労働時間の2分の1以下の計算
休業中の就業は、事業主の都合で求めるものではありません。労使協定で就業させることができる労働者を定めたうえで、本人が申し出た範囲の中でだけ成り立ちます。
就業可能日の申出から同意・通知までの4段階と、事業主側の提示期限
流れは4段階です。本人が休業開始の前日までに就業可能日と時間帯を申し出る。事業主がその範囲内で就業させたい日を書面等で提示する。本人が同意する。事業主が同意を得た旨と就業日時を通知する。提示の期限は申出の時期で変わり、開始予定日の4週間以上前の申出ならおおむね2週間以内、2週間前から1週間前ならおおむね1週間以内が目安です。
本人は開始前日まで同意を撤回でき、休業開始後も配偶者の病気など特別の事情があれば撤回できます。就業の申出をしなかったこと、同意しなかったこと、撤回したことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
法律の上限と給付金の上限の比較|週6日勤務で10日を超える例
法律上の上限は3つの条件の組み合わせです。就業日の合計が休業期間の所定労働日数の2分の1以下(1日未満の端数は切り捨て)、労働時間の合計が所定労働時間の合計の2分の1以下、そして開始日と終了日に働くならその日の所定労働時間未満であること。これとは別に、育児休業等給付の内容と支給申請手続(令和8年8月1日改訂版)では、出生時育児休業給付金の要件として就業を28日の休業で最大10日(10日を超える場合は80時間)以下と定めています。休業が短ければ日数に比例して短くなり、14日の休業なら5日(40時間)です。
| 28日休業の例 | 週5日・8時間 | 週6日・8時間 |
|---|---|---|
| 期間中の所定労働日数 | 20日 | 24日 |
| 法律上の就業上限 | 10日・80時間 | 12日・96時間 |
| 給付金の就業上限 | 10日(超は80時間) | 10日(超は80時間) |
週5日勤務なら2つの上限はほぼ重なります。週6日勤務のシフト制では、法律上は12日まで働けるのに、11日目に入ると給付の要件を外れます。本人の同意があっても、給付を失う就業日を提示することは避けるべきです。
勤怠・人事システムに落とす設定項目|休業区分と就業日・賃金支払日の管理
ここからは制度をシステムの項目へ翻訳します。パッケージの勤怠システムでも休業区分の追加はできますが、就業上限の判定と賃金の抽出条件まで持っている製品は限られます。
申出レコードに持たせる項目|出生日・予定日・分割回数・撤回履歴
1回の申出に対して、子の出生日と出産予定日の両方、1回目と2回目の開始日・終了日、申出日、撤回日を持たせます。出生日と予定日を分けて持つのは、対象期間の起算点がどちらか遅いほうになるためです。撤回は取消フラグで消さず、1行として残します。撤回を回数に数える扱いは、この履歴からしか計算できません。
育児休業の申出とは区分を分け、受付期限のチェックを出生時育児休業は2週間前、育児休業は1か月前と別々に設定します。労使協定で1か月に延ばした会社は、その日数をマスタで持っておくと協定の改定時に画面を直さずに済みます。
就業日の2重チェック|法の2分の1と給付の10日・80時間を別に判定
就業日を登録する画面では、2つの判定を別々に走らせます。1つ目は休業期間の所定労働日数と所定労働時間から出す2分の1の上限で、勤務カレンダーから所定の日数と時間を取得する必要がある判定です。2つ目は休業日数を28で割って比例計算する給付の上限で、こちらは勤務カレンダーを見ず暦日だけで決まります。
給付の日数は端数を切り上げ、時間は端数処理をしないのが資料の計算方法です。10日の休業なら4日、時間なら約28.57時間が上限になります。2つの判定のうち厳しいほうを超えた時点で警告を出す作りにしておけば、人事担当者が給付要件を個別に計算する手間がなくなります。
2026年8月からの賃金申告の見直し|支払日基準で抽出する給与データ
厚生労働省の令和8年8月1日からの育児休業等給付の申請手続きの見直しにより、出生時育児休業給付金の申請で申告する賃金が変わりました。従来は「出生時育児休業期間を対象として支払われた賃金」でしたが、2026年8月1日以降に開始する休業からは「出生時育児休業期間中に支払日のある賃金」を申告します。分割取得した場合は、1回目と2回目の間の就労期間に支払日のある賃金も含みます。
給与システムから申告額を出している会社は、抽出条件を「計算対象期間」から「支払日」へ切り替える改修が必要です。月末締め翌月払いの会社では、休業月の賃金が翌月に支払われるため、2つの基準で拾う月がずれます。支払日と計算期間の持ち方は給与計算システムとは?機能・種類・比較の観点から個別開発の判断まで解説で整理しています。
社会保険料免除の14日判定|就業日を除いた日数で月内要件を数える
日本年金機構の育児休業等を取得・延長したときの手続きによると、2022年10月1日以降に始まった休業は、開始日の属する月に14日以上取得すれば、その月の月額保険料が免除されます。賞与の保険料は、賞与月の末日を含む連続した1か月超の休業が要件です。出生時育児休業は最大28日なので、賞与保険料の免除を受けられるのは育児休業と連続して取得したときに限られます。
14日の数え方には注意がいります。事業主向けの周知資料では、土日などの休日は日数に含める一方、休業中に就業する予定の日は除くとしています。月の途中で14日ちょうど休み、そのうち1日就業する設計にすると免除の対象にはなりません。就業日の登録と免除判定を同じデータから計算しておけば、この取りこぼしは防げます。
休業中就業を認めるかの判断|労使協定を結ばないほうがよい会社の条件
就業の労使協定は任意です。結ばなければ休業中の就業は一切できず、事業主の管理項目も減ります。結ぶかどうかは、上に挙げた2重チェックを運用できるかで決まります。
就業を認めるべき場面|代替要員のいない少人数部署で引継ぎを補う
協定を結ぶ価値があるのは、特定の人しか担えない業務があり、28日間まるごと空けると取得そのものをためらわせてしまう職場です。たとえば月次締めの承認者が1人しかいない経理部門や、顧客の定例会を1人で持っている営業担当なら、週1回・数時間の就業を認めることで、取得の心理的なハードルを下げられます。就業日と時間を勤怠システムで分単位に記録でき、2分の1と給付の上限を自動で判定できることが前提条件です。
見送るべき場面|勤怠が紙やExcelで就業時間を分単位で拾えない会社
勤怠を紙の出勤簿やExcelで管理している会社は、就業の協定を結ぶべきではありません。休業中の数時間の就業を正確に記録できず、給付の80時間や社会保険料免除の14日判定を後から証明できないからです。シフト制で所定労働日数が月ごとに変わる職場も、手計算で2つの上限を追うのは現実的ではありません。この条件に当てはまる会社は、まず28日間完全に休める体制を作り、就業の選択肢は勤怠の仕組みが整ってから加えるのが妥当な順序です。休業区分や就業上限の判定を勤怠システムへ組み込む場合は、勤怠管理システム開発のように法令の計算ルールを要件定義から扱える体制に相談すると、判定ロジックの抜けを防げます。
よくある質問
出生時育児休業について、人事・労務の担当者から挙がりやすい質問をまとめました。
出生時育児休業と育児休業は、同じ時期に両方取れますか?
それぞれ別の制度なので、両方の休業を取得することが可能です。出生後8週間以内に出生時育児休業を最大28日・2回、その後に育児休業を2回まで分けて取得でき、同じ子について合計4回に分けて休めます。ただし同じ日に両方の休業が重なることはなく、出生時育児休業の期間中に育児休業が始まると、出生時育児休業はその時点で終了します。女性は産後8週間が産後休業にあたるため、養子の場合などを除いて出生時育児休業は取得できません。
会社は出生時育児休業の申出を断れますか?
要件を満たした申出は断れません。経営が苦しい、繁忙期であるといった理由も拒否の理由になりません。断れるのは、労使協定で除外した継続雇用1年未満・申出から8週間以内に退職が明らか・週所定2日以下の労働者からの申出と、2回分をまとめて申し出なかった場合の2回目の申出だけです。期限を過ぎた申出も拒否はできず、事業主は開始日を一定の範囲で後ろへ指定できるにとどまります。
出生時育児休業給付金はいくら支給されますか?
休業開始時賃金日額×休業日数(28日が上限)×67%です。両親がともに14日以上の育児休業等を取得するなどの要件を満たすと、出生後休業支援給付金として13%が上乗せされ、合計80%になります。改正の経緯は育児介護休業法の改正内容【2026年最新】施行日別の変更点と人事システム改修の要否で扱っています。申請期間は出生日から8週間を経過する日の翌日から、2か月を経過する日の属する月の末日までです。
休業中に就業すると、給付金や社会保険料免除はどうなりますか?
給付金は、28日の休業で就業が10日(10日を超える場合は80時間)以下なら支給対象です。休業が短いと上限も比例して短くなります。就業に対して賃金を払った場合、その額が休業開始時賃金日額×休業日数の13%を超えると給付額が減り、80%以上では支給されません。社会保険料免除の14日判定では、就業予定日を日数から除きます。就業日を入れすぎると両方の要件を同時に外れることがあります。
就業規則に出生時育児休業の規定がなくても取得できますか?
就業規則に規定がなくても取得は可能です。出生時育児休業は法律上の権利で、要件を満たした申出によって労務提供の義務が消えます。ただし厚生労働省は、制度をあらかじめ導入し就業規則に記載しておくべきものとしています。規定がないまま申出を受けると、申出方法や通知の様式が決まっていないため受付が遅れがちです。休業中就業や申出期限の延長は労使協定がなければ使えないので、規定と協定は申出が来る前に整えておきます。
関連記事
- 勤怠管理システムとは?機能・種類・費用と失敗しない選び方を解説【2026年】:休業区分や就業日の登録を扱える製品を見分ける観点をまとめています
- 労務管理システムとは?機能・勤怠管理との違いと比較の観点・個別開発の判断軸を解説【2026年】:休業の申出受付と給付申請を一体で管理するときの比較軸を扱っています
- 労務管理システムの電子申請対応とは:義務化の範囲とAPI連携・GビズID運用の判断:社会保険料免除の申出書や給付申請を電子申請で出す仕組みを解説しています
- 勤怠管理とは?法律上の義務と管理項目・勤怠管理システム比較の観点を解説:休業中の就業時間を記録する前提になる労働時間の把握義務を整理しています
- 勤怠管理システム開発の費用相場は?機能別・規模別の内訳と外注先の選び方【2026年】:就業上限の判定を追加開発するときの費用感を機能別に示しています