勤怠管理とは?法律上の義務と管理項目・勤怠管理システム比較の観点を解説
勤怠管理とは、従業員の始業・終業時刻、労働時間、休憩、休日、有給休暇の取得状況といった就業状況を記録・管理する業務です。2019年4月施行の改正労働安全衛生法により、労働時間を客観的な方法で把握することは企業の法的義務になりました。本記事では、勤怠管理の定義と法律上の義務、管理すべき項目、タイムカード・Excel・勤怠管理システムの3方式の比較、システム選定の観点と費用感、テレワーク環境での運用までを企業の担当者向けに解説します。
目次
まとめ|勤怠管理は法的義務の履行と給与計算の起点データ整備の両輪
勤怠管理の位置付けは2つあります。第一に法的義務の履行です。労働安全衛生法第66条の8の3により、タイムカードやPCログなど客観的な方法での労働時間把握が義務付けられ、対象には管理監督者も含まれます。記録は原則5年(当分の間は3年)の保存が必要です。第二に、勤怠データは給与計算・割増賃金・36協定の遵守確認すべての起点になるという実務上の役割です。ここが不正確だと、後続の給与計算をいくら丁寧にやってもミスが再生産されます。
管理方式はタイムカード・Excel・勤怠管理システムの3つに大別され、従業員数十名を超えたら集計自動化と法改正対応の面でシステムが現実解になります。選定では製品名の人気よりも、打刻方法の適合・給与計算との連携・アラート機能・費用の4軸で比較するのが実務的です。本文では、既製システムで足りる場合と、基幹連携や個別開発を検討すべき場合の分かれ目まで踏み込みます。
勤怠管理の定義と法律上の義務|労働安全衛生法が定める客観的把握
まず、勤怠管理が「社内ルール」ではなく「法律上の義務」である根拠を確認します。ここを押さえると、管理項目と方法の要件が自然に決まります。
2019年4月から義務化された客観的方法による労働時間の把握
働き方改革関連法の一環で労働安全衛生法が改正され、2019年4月から、事業者は労働者の労働時間の状況を客観的な方法で把握しなければならないと定められました(同法第66条の8の3)。客観的な方法とは、タイムカード、ICカード、PCの使用時間の記録など。自己申告制は原則外の扱いで、採用する場合は実態との乖離を防ぐ措置が要件になります。対象は原則すべての労働者で、労働基準法上は労働時間規制の適用外となる管理監督者も、健康確保の観点から把握義務の対象です。「管理職だから打刻不要」という運用は、この改正以降は成立しません。
勤怠管理を怠った場合に連動する法規制|上限規制・割増賃金・年休義務
勤怠記録は、それ自体が目的ではなく、複数の法規制の遵守を証明する土台です。時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)、月60時間を超える時間外労働への50%以上の割増賃金(2023年4月から中小企業にも適用)、年10日以上の年休が付与される従業員への年5日の取得義務。いずれも、日々の始業・終業時刻の記録がなければ遵守状況を確認できません。記録の保存期間は2020年の労働基準法改正で原則5年(当分の間は3年)。未払い残業代の請求や労働基準監督署の調査では勤怠記録が第一の証拠になるため、保存体制まで含めて設計する必要があります。
管理すべき項目|始業・終業時刻から有給取得状況までの記録範囲
厚生労働省のガイドラインと関連法令を踏まえると、記録すべき項目は次のとおりです。
- 始業・終業時刻と労働時間(1分単位が原則)
- 休憩時間、時間外労働・深夜労働(22時〜翌5時)・休日労働の時間数
- 出勤日・欠勤日・遅刻早退
- 有給休暇の取得日数と残日数、代休・振替休日
賃金台帳には労働時間数を項目別に記録する義務があり(労働基準法第108条)、勤怠の集計区分は給与計算の割増区分とそのまま対応します。つまり勤怠管理の項目設計は、給与計算の設計と切り離せません。割増計算から支給・納付までの業務の流れは、給与計算とは?業務の流れと年間スケジュール・システム化の判断基準を解説で解説しています。
勤怠管理の3方式比較|タイムカード・Excel・システムの費用と限界
管理方式は大きく3つです。導入費用と運用の限界をセットで比較します。
方式ごとの特徴比較|導入費用・集計負荷・法改正対応・客観性の差
| 方式 | 導入費用 | 集計 | 法改正対応 | 客観性 |
|---|---|---|---|---|
| タイムカード | 数万円程度 | 手作業・転記 | 手動 | あり |
| Excel自己申告 | ほぼ0円 | 関数・手修正 | 手動 | 弱い |
| 勤怠システム | 月額課金 | 自動 | 自動更新 | あり |
タイムカードは打刻の客観性こそ確保できますが、月次の集計・転記が手作業になり、残業時間をリアルタイムで把握できません。Excelの自己申告管理は費用ゼロで始められる反面、客観的把握の要件を満たすには追加の運用措置が必要で、法改正のたびに計算式を手修正する負担も残るのが実情です。数名規模の会社が一時的に使う分には成立しますが、上限規制の管理が必要な規模では推奨しません。
勤怠管理システムの費用感|クラウド型の相場と中小企業での考え方
クラウド型の勤怠管理システムは、従業員1名あたり月額数百円の従量課金が主流です。仮に1名300円なら、従業員50名で月額15,000円前後、年間18万円程度がひとつの目安になります。中小企業にとって判断材料になるのは、この費用と「毎月の集計・転記に費やす担当者の時間」の比較です。集計に毎月10時間かけているなら、人件費換算でシステム費用を上回るケースが大半で、加えて集計ミス・法改正対応漏れのリスク削減が乗ります。無料プランを持つ製品もありますが、人数上限や機能制限があるため、有給管理や36協定アラートまで使うなら有償プラン前提で試算するのが実務的です。
勤怠管理システム比較の観点|打刻・給与連携・アラート・拠点対応の4軸
製品数が多い領域ですが、比較すべき軸は絞れます。人気ランキングではなく、自社の働き方との適合で選びます。
選定4軸|打刻方法の適合と給与計算への連携を最優先にする理由
第一に打刻方法です。オフィス勤務中心ならICカードやPCログ、店舗・現場ならスマートフォンやタブレットの打刻、直行直帰が多いならGPS付き打刻というように、働き方と打刻手段が合っていないと打刻漏れが常態化し、システム化の意味がなくなります。第二に給与計算ソフトとの連携で、勤怠データが自動で給与計算へ流れる構成にできるかどうかが、導入効果の大半を決めます。転記作業が残る構成では、ミスの発生点も残ったままです。第三が36協定の上限接近や打刻漏れを知らせるアラート機能、第四が複数拠点・変形労働時間制・シフト勤務など自社の勤務体系への対応可否です。この4軸で候補を2〜3製品まで絞り、無料トライアルで自社の就業規則どおりに設定できるかを確認する。この手順が、比較サイトのランキングを眺めるより確実です。
テレワーク勤怠の運用ルール|中抜け・隠れ残業への具体的な対処法
テレワークでは出社時のような現認ができないため、PCログやクラウド打刻による客観的記録と、運用ルールの両方が必要になります。実務で問題になるのは中抜け(私用による離席)と隠れ残業の2つ。中抜けは休憩扱いにするか時間単位年休を充てるかを就業規則で明確にし、打刻で区切る運用を徹底します。隠れ残業対策としては、PCのログオン・ログオフ時刻と打刻の乖離を定期的に突き合わせる方法が有効で、乖離チェック機能を持つシステムなら、この突き合わせの自動化が可能です。ルールなしでツールだけ入れても実態把握はできません。ルール設計とセットで導入するのが原則です。
勤怠データを給与・基幹システムへつなぐ設計|個別開発の判断基準
ここは競合記事があまり扱わない論点ですが、システム化の成否を分けるのは打刻の電子化ではなく、データの流れの設計です。判断を言い切ります。
既製システムで足りるケースと連携開発・個別開発を検討すべきケース
就業規則が標準的で、勤怠から給与への連携が既製の組み合わせで完結する会社は、クラウドの勤怠管理システムで足ります。就業規則側を一部見直せば標準機能に収まるなら、システムに合わせて規則を直す方が安く早い。この場合に個別開発を選ぶのは過剰投資です。一方で、工数管理・原価計算・生産管理など基幹システムへ勤怠データを渡す要件がある、複数の変形労働時間制と多拠点シフトが混在する、既存の人事システムとの人員マスタ連携が必須といった条件が重なると、既製品の標準連携では吸収できず、API連携の開発や勤怠を含む基幹業務システムの個別設計が本命になります。勤怠データの転記だけが問題なら、開発の前にRPAで自動化する選択肢もあります。判断材料はRPAとは?仕組み・できること・主要ツールと導入判断をわかりやすく解説に整理済みです。人事・給与・勤怠を含む基幹システムの連携開発は基幹システム開発サービスの対象領域で、自社の要件がどちらに該当するかの切り分けは業務システム開発の相談窓口で検討できます。
失敗パターン|承認フローを設計せずに打刻だけ電子化するケース
導入後によくある失敗は、打刻は電子化したのに、残業申請・休暇申請・打刻修正の承認フローが紙やメールのまま残るパターンです。承認が別経路にあると、勤怠データの確定が結局手作業の突き合わせになり、締め日の負荷が下がりません。勤怠システムの申請・承認機能を使うか、既存のワークフロー基盤と連携させるかを、導入前に決めておく必要があります。承認経路の設計そのものはワークフローとは?承認フローの仕組み・システム化の判断基準と選び方を解説で扱っているとおり、勤怠に限らず申請業務全般に共通する論点です。
よくある質問
勤怠管理について実務でよく検索される質問に回答します。
勤怠管理は法律で義務付けられていますか?
義務です。2019年4月施行の改正労働安全衛生法第66条の8の3により、事業者はタイムカードやPCログなど客観的な方法で労働者の労働時間の状況を把握しなければなりません。従業員を雇用するほぼすべての事業所が対象で、記録は原則5年(当分の間は3年)保存します。
管理監督者(管理職)も勤怠管理の対象になりますか?
対象になります。管理監督者は労働基準法上の労働時間・休憩・休日の規定は適用されませんが、労働安全衛生法に基づく健康確保のための労働時間把握は義務の対象です。深夜労働の割増賃金も管理監督者に適用されるため、時刻の記録自体は必要です。
Excelでの勤怠管理は違法ですか?
直ちに違法ではありませんが、自己申告制は原則外の方法とされ、実態と乖離しないよう十分な説明や実態調査などの措置が要件になります。数名規模なら運用できますが、時間外労働の上限管理や年5日の年休取得管理が必要な規模では、客観的記録が自動で残るシステムへ移行しておく方が、監督署の調査や未払い請求の場面でも立証に耐えます。
勤怠管理システムの費用相場はどのくらいですか?
クラウド型は従業員1名あたり月額数百円の従量課金が主流です。1名300円なら50名で月額15,000円前後が目安になります。初期費用が別途かかる製品や、有給管理・シフト機能がオプション扱いの製品もあるため、必要機能を含めた総額で比較してください。
勤怠管理システムはどう比較すればよいですか?
打刻方法が自社の働き方に合うか、給与計算ソフトへデータが自動連携できるか、36協定の上限接近を知らせるアラートがあるか、変形労働や多拠点など自社の勤務体系に対応できるかの4軸で絞り込み、無料トライアルで就業規則どおりに設定できるかを確認する手順が確実です。
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