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ガバメントクラウドの対応ベンダー5社と選定基準|認定要件と国産クラウドの位置づけ

ガバメントクラウドの対応ベンダーを調べると、Amazon Web Services(AWS)・Google Cloud・Microsoft Azure・Oracle Cloud Infrastructure(OCI)・さくらのクラウドという5つの名前が並びます。ところが自治体の調達現場で「対応ベンダー」と呼ばれるものは、この5社だけではありません。住民記録や税の標準準拠システムを納める事業者も同じ言葉で呼ばれ、契約の相手も選ぶ順序もまったく違います。この記事では、2026年8月時点の公表資料をもとに5社の公募年度別の適合状況を整理し、技術要件を満たしていることが前提になった今、何を軸に選ぶのかを示します。国産クラウドを選ぶ条件と、外資クラウドを選び続ける条件は、条件付きで切り分けました。

まとめ:認定5社の顔ぶれと自治体が選定で先に決めるべき順序

2026年8月時点で、ガバメントクラウドの対象クラウドサービスはAWS・Google Cloud・Microsoft Azure・OCI・さくらのクラウドの5つです。外資4社は2022年10月3日公表の令和4年度募集分で決まり、さくらのクラウドは2023年11月28日公表の令和5年度新規募集分で「2025年度末までに全技術要件を満たすこと」を条件に採択され、2026年3月27日に令和8年度募集分の公表とあわせて条件充足が確定しました。

選定の実務では、この5社の機能比較から入ると行き詰まります。305項目の技術要件を全社が満たしている以上、要件表の上では差がつかないためです。実際に選択肢を狭めるのは、住民記録や税の標準準拠システムを納めるアプリケーションベンダーがどのクラウドで動作保証しているか、という一点です。決める順序はアプリケーションベンダーが先、クラウドが後になります。

国産クラウドの位置づけも、円建て請求と国内保管という2点で語られがちですが、判断材料はそこだけではありません。マネージドサービスへの依存度が高い構成を既に組んでいるなら、さくらのクラウドへの切り替えは移行コストに見合いません。逆に、IaaS中心の素直な構成で為替の影響を抑えたい団体には現実的な選択肢になります。

対応ベンダーという語が指す2つの主体と自治体調達で混同が起きる場面

「ガバメントクラウドの対応ベンダー」という言い方には、性質のまったく異なる2つの主体が混ざっています。ここを分けないまま情報収集を始めると、調べた一覧がそのまま調達に使えません。

デジタル庁が公募で選ぶクラウドサービス提供事業者という第一の意味

1つ目は、デジタル庁が公募して選定したクラウドサービス提供事業者です。デジタル庁が各事業者と契約してガバメントクラウドの環境を整備し、地方公共団体はその上に自団体のシステムを載せます。自治体がAWSやさくらインターネットと直接クラウド利用契約を結ぶわけではありません。

この構造のため、5社のうちどれを使うかを決めても、自治体側の契約相手はデジタル庁を経由した経路になります。利用料の支払い経路と費用負担の考え方は、ガバメントクラウドの仕組みと費用負担を整理した解説で扱っています。本記事では提供者の顔ぶれと選び方に絞りました。

標準準拠システムを納めるアプリケーションベンダーという第二の意味

2つ目は、住民基本台帳・地方税・介護保険といった業務のパッケージを提供する事業者です。自治体が入札や随意契約で直接選び、契約書を交わす相手はこちらになります。デジタル庁は「基幹業務システムの統一・標準化推進のための事業者協議会」を設けて標準準拠システムの開発を支援していますが、事業者の指定制ではなく、複数事業者による競争環境の確保を方針としています。

調達現場で「ベンダーが決まらない」と言うとき、ほとんどはこちらを指します。クラウドは5社に絞られている一方、その手前の業務システム開発には従来どおり多数の事業者が関わる構造だからです。

2つを混同したまま情報収集を進めた場合に生じる自治体調達の停滞

混同が招く典型は、5社のスペック比較資料を作り込んだ後に、既存のパッケージベンダーが特定のクラウドしか対応していないと判明する展開です。比較検討に費やした時間がそのまま無駄になります。

もう一つは逆方向で、アプリケーションベンダーの提案書に書かれたクラウド構成をそのまま受け取り、自団体としてどのクラウドを使っているのかを庁内で説明できなくなる例です。運用の問い合わせ先や障害時の連絡経路がどちらの主体に属するのかも曖昧になります。最初に「この話はクラウド事業者の話か、業務システムの事業者の話か」を仕分ける癖をつけるだけで、この種の停滞は避けられます。

公募年度別に見た認定5社の要件適合状況と2026年度時点の顔ぶれ

5社は同時に決まったわけではありません。公募の年度が違い、採択の条件も違います。この経緯を押さえると、資料によって「4社」「5社」と数が食い違う理由も分かります。

令和4年度募集で決まった外資4社と各社の正式な提供サービス名

デジタル庁は2022年10月3日に令和4年度募集分の公募結果を公表し、AWS・Google Cloud・Microsoft Azure・OCIの4サービスが対象になりました。2023年より前の資料が「4社」と書いているのはこの時点の情報です。

サービス名 提供事業者 採択の公表時期 採択の形態
Amazon Web Services(AWS) アマゾン ウェブ サービス 2022年10月3日 令和4年度募集分
Google Cloud グーグル 2022年10月3日 令和4年度募集分
Microsoft Azure マイクロソフト 2022年10月3日 令和4年度募集分
Oracle Cloud(OCI) 日本オラクル 2022年10月3日 令和4年度募集分
さくらのクラウド さくらインターネット 2023年11月28日 令和5年度新規募集分(条件付き採択)

4社はいずれも国外に本社を置く事業者で、この構成が3年以上続きました。国産クラウドの参入がニュースとして扱われたのは、それだけ固定的な顔ぶれだったためです。

条件付き採択から全要件充足に至ったさくらのクラウドの位置づけ

さくらインターネットは2023年11月28日公表の令和5年度新規募集分で、「2025年度末までに提示されたすべての技術要件を満たすこと」を前提とする条件付き採択を受けました。この時点では、要件を満たせなければ対象から外れる立場にあります。

期限どおり要件を満たしたことは2026年3月27日に公表され、令和5年度および令和8年度の提供事業者として採択された旨がさくらインターネットから発表されました。同社によれば、国産事業者として初めて複数年度で採択された事例にあたります。「条件付き」という留保が外れているかどうかは、資料の日付で判断してください。2026年3月より前に書かれた記事は、まだ条件付きの状態を前提にしています。

305項目の技術要件とISMAP登録が前提に置かれている理由

ガバメントクラウドの対象となるには、2023年度調達時点で示された305項目の技術要件を満たす必要があります。認証・暗号化・ログ監査といった基本事項から、コンピュート・ストレージ・データベースの機能水準、IaC対応やAPI関連まで広い範囲に及びます。

あわせて、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)への登録が前提に置かれています。自治体が個別にセキュリティ審査を行わずに済む代わりに、参入できる事業者は限られます。5社という数字は、市場のシェアではなく、この二重の関門を通過した結果です。

技術要件の充足を前提にしたときに残る5社の実質的な比較軸を決める

305項目を全社が満たしている以上、要件表を並べても選定の決め手にはなりません。実務で差が出るのは、要件表に載らない次の観点です。

既存パッケージベンダーの対応クラウドという自治体調達で最も強い制約

自団体の住民記録や税のパッケージを提供している事業者が、どのクラウドで標準準拠システムの動作保証をしているか。これが選択肢を最も強く絞ります。対応が1つのクラウドに限られていれば、比較検討の余地はその時点で消えます。

20業務すべてを同一ベンダーが担っている団体は多くありません。業務ごとに事業者が分かれていれば、それぞれの対応クラウドの共通集合を取る作業が必要になります。共通集合が空になる場合は、クラウドを分けるか、パッケージの乗り換えを含めて検討する判断になります。

円建て請求と為替変動が中長期の運用経費に及ぼす差を比較する視点

外資クラウドの利用料はドル建てを基準とする料金体系のため、為替の変動が運用経費に直接効きます。5年程度の計画期間で見ると、機能差よりもこの変動幅のほうが金額として大きく出る場面があります。

さくらのクラウドは円建て請求で、データ転送料の扱いも外資勢と異なります。為替と料金構造の詳細はさくらのクラウドの技術要件達成とコスト構造を掘り下げた解説をご覧ください。予算査定の資料を作る段階では、単価表よりも為替前提の置き方を先に庁内で合意しておくほうが手戻りが少なくなります。

接続回線とネットワーク費用という見積もりで表に出にくい項目の確認

クラウド利用料そのものより、庁内からガバメントクラウドへ至る通信経路の費用のほうが見落とされます。従来の業務系ネットワークとの関係、閉域接続の構成、帯域の確保がここに含まれる費目です。自治体間を結ぶLGWAN(総合行政ネットワーク)の仕組みと役割を前提に経路を設計するため、選ぶクラウドによって接続ポイントの選択肢と回線費用が変わります。

見積書のクラウド利用料の欄だけを比べても、総額の順位は入れ替わります。回線費・保守運用費を含めた5年総額で並べ直してください。

国産クラウドを選ぶ条件と外資クラウドを選び続ける条件の切り分け

国産クラウドの参入をどう受け止めるかは、団体の構成によって答えが分かれます。ここは玉虫色にせず、条件を付けて言い切ります。

さくらのクラウドを選ぶ判断が成り立つ自治体の規模と構成の条件

次の3つが揃う場合、さくらのクラウドは有力な選択肢になります。第一に、標準準拠システムのベンダーが同社のクラウドでの動作保証を明示していること。第二に、システム構成がIaaS中心で、特定クラウド固有のマネージドサービスに依存していないこと。第三に、住民データの国内保管と円建て請求を庁内の説明責任として重く見ていること。

この3条件が揃う団体では、外資クラウドを選ぶ積極的な理由は薄くなります。逆に1つでも欠けるなら、参入したという事実だけで乗り換えを決めるべきではありません。

外資クラウドを選び続ける判断が自治体で合理的になる依存構成の条件

既にAWSやAzureのマネージドサービスを前提にした構成で先行移行を終えている団体は、切り替えません。データベースやコンテナ基盤のマネージドサービスに依存した設計を組み直す工数は、利用料の差額で回収できる規模を超えます。

もう一つ、庁内や委託先の技術者が特定クラウドの運用経験を蓄積している場合も、そのまま継続する判断が合理的です。クラウドの乗り換えは、料金表の比較ではなく人と運用手順の入れ替えを伴います。

マルチクラウド構成が過剰投資になる自治体の場面と採用を見送る基準

事業者依存を避ける目的で複数クラウドに分散する構成は、標準化対象20業務の規模では過剰になりやすい選択です。監視・権限管理・障害対応の手順が二重になり、限られた情報システム担当職員の負荷が増えます。人口規模が小さく、情報システム担当が兼務数名という体制の団体では採用しません。

採用が成り立つのは、業務ごとにベンダーが分かれていて、対応クラウドの共通集合がそもそも取れない場合に限られます。この場合は「分散を選んだ」のではなく「分けざるを得なかった」だけなので、運用手順の統一に別途予算を確保してください。

クラウド事業者より先にアプリケーションベンダーを決める調達順序

選定の失敗は、順序を誤ったところから始まります。決める順番を固定しておけば、比較資料の作り直しは起きません。

クラウドの一覧比較から着手した自治体の調達が停滞する失敗パターン

5社の一覧表を作り、機能・料金・データセンター所在地を並べて庁内会議に諮る。この進め方は、その後にパッケージベンダーの対応状況が判明した時点で振り出しに戻ります。305項目を満たした事業者どうしの比較では、決定的な差が出ないまま議論が長引く点も停滞の要因です。

着手すべきは、現行パッケージの提供事業者への照会です。標準準拠システムの提供予定、対応クラウド、移行時期の3点を先に確認すれば、比較すべきクラウドは1つか2つに絞られます。

20業務ごとに分かれるベンダー体制と自治体が調整工数を見積もる方法

標準化対象は政令で指定された20業務で、移行期限は原則として2025年度末に置かれていました。2026年3月末時点では対象34,366システムのうち10,013システム(29.1%)が特定移行支援システムに該当し、令和8年度以降の移行として扱われています。期限経過後の実務については自治体システムの標準化と20業務の移行を整理した解説で扱っています。

業務ごとに事業者が異なる団体では、ベンダー間の仕様調整とデータ連携の確認が工数の大半を占めます。移行スケジュールを引くときは、各社の作業期間の合計ではなく、社間の調整に充てる期間を別枠で置いてください。

庁内に体制が足りない場合に外部の開発事業者へ委ねる範囲の線引き

現行システムの機能洗い出し、標準仕様との差分の整理、データ移行の設計、移行後の運用手順の作成。この4つは自治体側の判断が要る作業でありながら、担当職員の人数では抱えきれない量になります。パッケージベンダーは自社製品の範囲しか見ないため、業務全体を横断して整理する役回りが空きます。

ここを外部に委ねる場合は、特定のパッケージやクラウドの販売に紐づかない事業者を選ぶほうが、判断が偏りません。当社では公共システム開発として、自治体の基幹業務システムの要件整理から移行後の運用設計までを支援しています。委託範囲を決める際は、成果物を「差分一覧」「移行計画書」のように具体的な文書名で契約に書き込んでおくと、認識のずれが起きません。

よくある質問

ガバメントクラウドの対応ベンダーについて、自治体の担当者や事業者から寄せられることの多い質問をまとめました。

2026年時点でガバメントクラウドの対応ベンダーは何社ありますか

クラウドサービス提供事業者としては、2026年8月時点で5つのサービスが対象です。AWS・Google Cloud・Microsoft Azure・OCIの4つが2022年10月3日公表の令和4年度募集分で決まり、さくらのクラウドが2023年11月28日公表の令和5年度新規募集分で条件付き採択を受け、2026年3月27日に条件充足が確定しました。一方、標準準拠システムを提供するアプリケーションベンダーは指定制ではなく、多数の事業者が競争する構造です。「何社か」を調べるときは、どちらの意味かを先に確かめてください。

さくらのクラウドは条件付き採択を経ていつ正式な対応事業者になったのですか

2023年11月28日の時点では「2025年度末までに提示されたすべての技術要件を満たすこと」を前提とする条件付き採択でした。305項目の技術要件を期限内に満たしたことが確認され、2026年3月27日に令和5年度および令和8年度の提供事業者として採択された旨が公表されています。2026年3月より前の資料は条件付きの状態を前提に書かれているため、日付を確認して読んでください。

ガバメントクラウドのクラウドは自治体が実務でも自由に選べるのですか

制度上、選択肢は5つのサービスです。ただし実務では、標準準拠システムを提供するパッケージベンダーが動作保証しているクラウドが事実上の選択肢です。業務ごとに事業者が分かれている団体では、各社の対応クラウドの共通集合を取ってから判断します。共通集合が取れない場合は、業務ごとにクラウドを分けるか、パッケージの乗り換えを含めた検討が必要です。

標準準拠システムのベンダー一覧は公的資料のどこで確認できますか

デジタル庁が公表する一元的な指定リストは存在しません。デジタル庁は「基幹業務システムの統一・標準化推進のための事業者協議会」を通じて開発を支援していますが、事業者を指定する仕組みではなく、複数事業者による競争環境の確保を方針としています。実務では、現行パッケージの提供事業者に標準準拠版の提供予定と対応クラウドを直接照会するのが確実です。

対応していないクラウドで動いている既存システムはどうなりますか

標準化対象20業務については、標準準拠システムへ移行したうえでガバメントクラウドを利用する前提が置かれています。移行が令和8年度以降になるものは特定移行支援システムとして扱われ、2026年3月末時点で対象34,366システムのうち10,013システム(29.1%)が該当しました。標準化対象外の業務システムは、この枠組みの外で従来どおり運用できます。対象業務かどうかで扱いが分かれる点に注意してください。

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