ダブルバーレル質問とは、1つの質問文に2つ以上の論点を含めてしまう質問です。「二重質問」「並列質問」とも呼ばれます。「この製品の価格と品質に満足していますか」と聞くと、価格には不満で品質には満足という人はどちらにも答えられず、集まった「いいえ」がどちらへの不満なのかも後から分かりません。この記事では、総務省統計局の定義、顧客満足度・研修・従業員調査などの場面別の例文と分割後の設問、選択肢に潜むケース、設問リストから候補を抽出するPythonスクリプトの実行結果、ワーディング上の別問題である誘導質問や多重質問との違い、研究であえて使われる例外までを扱います。
まとめ:ダブルバーレル質問の要点
- 定義:1つの質問文の中に2つ以上の論点を含むこと(総務省統計局 Data StaRt)
- 別名:二重質問、並列質問、二連発質問、ダブルバレル、ダブルバーレル式質問、ダブルバーレル項目。英語は double-barreled question
- 何が困るか:一方に賛成・もう一方に反対の人が答えられず、回答がどちらの論点を指すのか集計後に切り分けられない。片方だけで答える人もいて、回答時間には表れにくい(Menold 2020)
- 直し方:論点ごとに設問を分割する。設問数に上限があれば、測りたい論点を1つに絞る
- 見つけ方:「と」「や」「〜たり〜たり」「〜し、」「迅速で丁寧」のような評価語の重ね。選択肢の側にも潜む
- 機械チェックの限界:接続表現の検索は候補出しまで。「家族と同居」の「と」は誤検出し、接続語のないトリプルバーレルは拾えない
- 例外:探索的な資料収集を目的に、あえてダブルバーレル項目を使った査読論文がある
ダブルバーレル質問の定義・別名・語源
総務省統計局とブリタニカの定義
総務省統計局の解説サイトData StaRt「質問文の作成」(執筆・監修:東京大学社会科学研究所 教授 三輪 哲)は、ダブルバーレル問題を「1つの質問文の中に2つ以上の論点を含むことをいい、明らかに避けるべき問題をはらみます」と説明しています。理由は、一方に賛成し、もう一方には反対という異なる立場をとる人にとって回答しにくくなるため。結論は「1つの質問文では論点は1つだけに絞るほうがよいでしょう」です。
同サイトはワーディングの問題を「使用する単語の問題」「誘導的な質問の問題」「質問形式の問題」の3つに整理し、ダブルバーレルを3つ目の「質問形式の問題」に置いています。あいまいな言葉や誘導表現とは原因の場所が違う、という位置づけです。
辞書では、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「ダブルバレル質問」が「普通二連発質問と呼ばれているもので,社会調査の質問紙法のなかで質問文が2つ以上の論点を含んでいるような質問の仕方」と定義し、「一質問文一論点が正しい調査の質問の仕方で,このような質問文は用いてはならない」と言い切っています。
別名・表記ゆれと英語表記
表記は統一されていません。「二重質問」、論点を並べる形から呼ばれる「並列質問」、ブリタニカの「二連発質問」のほか、ダブルバレル、ダブル・バーレル、ダブルバーレル式質問、ダブルバレル質問が併存します。心理学の尺度づくりでは設問を「項目」と呼ぶため、ダブルバーレル項目という言い方も使われます。英語表記は double-barreled question(英国式の綴りは double-barrelled)。社内資料や論文検索で当たらないときは、これらを切り替えて探すと見つかります。
語源の「二連銃」と法廷での呼び名
double-barreled は銃身(barrel)が2本ある銃、つまり二連銃を表す英語です。1つの文に2つの問いが同時に入っている状態を、この銃にたとえた呼び名です。barrel は樽ではなく銃身を指します。
調査の外では、米国の法廷実務で同じ形の質問が compound question(複合質問)と呼ばれ、異議の対象になります。証人が「はい」と答えても、並べられた問いの全部に肯定したのか判然としないためで、答えは返ってきたのに、どの問いへの答えか確定できないという壊れ方は調査票と同じです。
場面別のダブルバーレル質問の例文と直し方
公的機関・大学の教材が挙げる例文
前掲の Data StaRt は、次の設問をダブルバーレル質問文の例に挙げています。
問 ネイティブ・スピーカーによる外国語のみを使用した授業を行うことや、少人数の能力別クラス編成によって、大学における外国語教育が効果的になると思いますか?それとも思いませんか?
論点は「外国語による授業」と「能力別クラス編成」の2つ。2つの施策が「や」でつながっているだけなので、一読すると「外国語教育の改善策」という1つの問いに見えてしまいます。
甲南大学の社会調査教材「社会調査工房オンライン」は、質問文作成上の注意に「ひとつの質問では、必ずひとつのことを聞く」を挙げ、例として「あなたは、タバコを吸ったり日本酒を飲んだりしますか。」を示し「タバコのことか、日本酒のことかわからない」と説明しています。「と」ではなく「〜たり〜たり」で二重化している点が、この例の要です。
顧客満足度・研修・従業員調査の例文と分割後の設問
業務アンケートで頻出する形を、混ざっている論点と分割後の設問にまとめました。例文は統計局の「1つの質問文では論点は1つだけに絞る」という原則に沿った本記事の作例で、後半のスクリプトの検証にも同じ文面を使っています。
| 場面 | ダブルバーレルな設問 | 混ざっている論点 | 分割後 |
|---|---|---|---|
| 顧客満足度 | この製品の価格と品質に満足していますか | 価格/品質 | Q1 価格に満足していますか/Q2 品質に満足していますか |
| 店舗評価 | スタッフの対応や店内の清潔さに満足しましたか | 接客/清掃 | Q1 対応に満足しましたか/Q2 清潔さに満足しましたか |
| サポート評価 | サポートの対応は迅速で丁寧でしたか | 速度/態度 | Q1 対応は迅速でしたか/Q2 対応は丁寧でしたか |
| 再購入・推奨 | この商品を今後も購入し、友人にも勧めたいと思いますか | 再購入意向/推奨意向 | Q1 今後も購入したいですか/Q2 友人に勧めたいですか |
| 研修評価 | 研修の内容は分かりやすく、業務に役立ちましたか | 理解度/有用度 | Q1 内容は分かりやすかったですか/Q2 業務に役立ちましたか |
| 従業員調査 | 職場の環境と人間関係は良好ですか | 物理環境/人間関係 | Q1 作業スペースの広さに満足していますか/Q2 人間関係は良好ですか |
| 利用実態 | 通院の頻度と1回あたりの時間は | 頻度/所要時間 | Q1 月に何回通院しますか/Q2 1回に何分かかりますか |
とくに見落とされやすいのが再購入と推奨の組み合わせです。推奨意向と再購入意向は別の指標で、両者が一致するとは限りません。1問にまとめると、どちらの指標としても使えない数字が残ります。
選択肢に潜むダブルバーレル
設問文が正しくても、回答選択肢が二重化していれば同じことが起きます。「パソコンを利用する主な目的」の選択肢に「情報収集や情報発信」があれば、情報収集だけの人と情報発信だけの人が同じ選択肢に合流し、区別できなくなります。「このツールを選んだ理由」の選択肢に「価格が安く導入が早いから」とある場合も同じです。
選択肢は1つの意味だけを持ち、互いに重ならないように分解します。単一回答か複数回答かは、主なものを1つ選んでもらうのか、該当するものをすべて選んでもらうのかで決めます。選択肢が多い場合は、調査目的を保ったまま分類や設問の分割を検討します。
論点が3つあるトリプルバーレル
3つの論点を含む質問はトリプルバーレル(triple-barreled)と呼ばれます。「あなたは節約のために毎週まとめ買いをしていますか」は、行動(まとめ買いをするか)・頻度(毎週か)・目的(節約のためか)を同時に尋ねています。月に2回だけまとめ買いをする人や、家計ではなく買い物の手間を省くためにまとめ買いをする人は「いいえ」を選ぶしかなく、集計後には「まとめ買いをしない人」と区別できません。節約の目的まで測る必要がない調査なら、目的を外して行動と頻度の2問に分ければ足ります。接続語が1つもないのに3論点が入っているため、後述の「Pythonによる設問リストからの候補抽出」の正規表現では見つかりません。
ダブルバーレル質問が回答の解釈・集計・時系列比較に与える影響
被害は回答者が困る段階で終わらず、集計後にデータを読む段階と、翌年以降に比べる段階で表に出ます。
どちらの論点への回答か判別できない集計結果
「この製品の価格と品質に満足していますか」に「いいえ」が40%集まったとします。この40%が価格への不満なのか、品質への不満なのか、両方なのかを事後に切り分ける方法はありません。単純集計でも、属性別のクロス集計でも復元できず、どちらの改善に予算を割くべきかという、その調査で最も知りたかった判断材料が失われます。
片方の論点だけで答える回答者と回答時間の研究
答えにくい設問なら回答に時間がかかり、画面上の挙動から見つけられそうに思えます。実際、Bassili と Scott(1996、Public Opinion Quarterly 60巻3号)は、ダブルバーレル質問は問題を直したほぼ同じ設問より回答に時間がかかったと報告しています。ところが、ドイツの成人を対象に2016年12月のオンラインパネルで2つの無作為化実験(497人と435人)を行った Menold(2020、Journal of Official Statistics 36巻4号)では、ダブルバーレル版と片方の論点だけを残した版とで回答時間に差がないか、むしろダブルバーレル版のほうが短い結果でした。一方で平均値は版によって異なり、版の間で測定の等価性も成り立ちませんでした。著者の結論は、回答者が2つの論点を人によって違うように受け取り、片方だけに反応してもう片方を無視している可能性がある、というものです。
回答者は迷わず、片方の論点だけで答えてしまうことがある。回答時間や離脱率に異常が出ないまま、どちらの論点の評価か分からない数字が集計に混ざるので、回答時間だけで問題を見つけるのは困難です。実査前に設問文を点検し、必要に応じて予備調査で回答者の解釈を確かめます。
論点ごとに立場が分かれる人は、単一の選択肢では意見を十分に表せません。無回答・中央の選択肢・片方の論点だけでの回答のどれに流れたのかは、集計結果からは分かりません。いずれも標本の取り方とは無関係に生じる回答誤差なので、サンプル数を増やしても消えません。なお、統計局が誘導的な質問の問題として挙げる黙従傾向(どのような質問にも肯定的に答える傾向)はダブルバーレルとは別の原因で、誘導表現の有無は別に点検します。
設問の修正で途切れる過去との比較
実施後にダブルバーレルに気づいて分割すると、測っているものが変わり、以前の数字とそのまま比べられなくなります。内閣府の世論調査 長期時系列データも、利用上の注意に「質問事項によっては、質問文や選択肢の記述に変更を伴っているものがある」と明記し、郵送法に切り替えた令和3年9月調査からは、個別面接聴取法だった令和元年9月以前の調査と「単純な比較は行えません」としています。設問や調査方法を変えたら、過去の数字と並べてよいかを先に確かめる。定点調査でのやり方は次章で扱います。
直し方:分割・絞り込み・定点調査での切り替え
原則は論点ごとの分割
例文の表のとおり、1問を論点の数だけ分けるのが原則です。設問数は増えますが、片方だけ評価が低い論点を特定できます。分割した結果、同じ尺度で評価する設問が並ぶ場合は、回答端末での見やすさを確認したうえで、マトリクス形式にまとめると回答画面の縦の長さを抑えられます。マトリクスやリッカート尺度を使っても、各項目に複数の論点が含まれていればダブルバーレルになります。表示形式や回答尺度とは別に、各項目を1論点に整える必要があります。
設問数に上限があるときの絞り込み
設問数に上限がある調査では、分割ではなく絞り込みを選びます。「サポートの対応は迅速で丁寧でしたか」で本当に知りたいのが対応速度なら「サポートの対応は迅速でしたか」に言い換えます。丁寧さは今回の測定対象から外し、必要なら別の調査で尋ねます。捨てる論点を意識して決めるのが絞り込みで、なんとなく片方を消すのとは違います。統計局の「論点は1つだけに絞る」を、設問数の制約の下でそのまま当てはめた形です。
定点調査の設問変更と比較可能性
時系列の比較を主目的にしている定点調査では、分割すると新旧の設問を単純には比べられなくなる可能性があります。そのため、変更前に比較方法を決めます。移行する回に限って回答者を無作為に2群に分け、一方に旧設問、もう一方に新設問を、ほかの調査条件をそろえて聞けば、文言の変更で数字がどれだけ動いたかを標本誤差と見比べてから切り替えられます。Pew Research Centerも2019年1月の調査で、回答者の半数に「good jobs」、残り半数に「jobs」と尋ねる版を無作為に割り付け、文言の違いの影響を測っています。変更を見送る回の報告書には「2論点を含む設問のため、どちらへの評価かは特定できない」と注記します。実施後に気づいた場合も、回収済みのデータは直せないので、この注記で対処します。
設問レビューの手順と自動チェックの限界
人が読むときの5つの観点
接続表現の検索だけでは判定しきれません。きちんと組み立てた設問でも「と」や「や」は普通に使うためです。次の順に当てます。
- 接続表現を洗い出す:「と」「や」「および」「かつ」「〜たり〜たり」「〜し、」「〜く、」。設問文と選択肢の両方が対象
- 2文に割ってみる:割った両方が意味の通る設問になるなら、それは2論点
- 逆の立場の人を想定する:「片方は賛成・片方は反対」の人が選べる選択肢があるか
- 評価語の重なりを見る:「迅速で丁寧」「安くて速い」のように評価軸が2つ並んでいないか
- 作成者以外に読ませる:作成者は意図を知っているので二重性に気づきにくい
最後の観点だけは作成者ひとりでは代えられません。作成者自身の点検に加えて、別の人にも「何を尋ねていると理解したか」を説明してもらい、意図とのずれを確認します。
Pythonによる設問リストからの候補抽出
設問が数十〜数百ある調査票では、人が読む前に候補の一覧を作っておくと、どこから読むかを決められます。次のスクリプトは、2つの論点をつなぐ典型的な表現を正規表現で探し、該当した設問に印を付けます。引用の「と思いますか」「と感じますか」、比較の「と比べて」、「やや」の「や」は除外しています。
import re
# 2つの論点をつなぐ表現。設問文と選択肢の両方に当てる
JOINERS = [
(r"(?<!ま)と(?!(?:思|考え|感じ|比べ|いう|して|なる|め))", "と"),
(r"(?<!や)や(?!や|す|め|っ|る)", "や"),
(r"および|ならびに|かつ|又は|または", "および・かつ・または"),
(r"[ただ]り.+[ただ]り", "〜たり〜たり"),
(r"[しく]、", "〜し、/〜く、"),
(r"・", "中黒"),
(r"で(?:丁寧|迅速|分かりやす|使いやす|安全|快適)", "評価語の重ね"),
]
def candidates(text):
"""該当した接続表現の一覧を返す。空なら候補なし"""
return [label for pat, label in JOINERS if re.search(pat, text)]
for q in ["この製品の価格と品質に満足していますか",
"このサービスを友人に勧めたいと思いますか",
"あなたは、タバコを吸ったり日本酒を飲んだりしますか"]:
print(candidates(q) or "候補なし", q)
このスクリプトを Python 3.9.6 で設問16件に当てました。ダブルバーレルの9件は、例文の表のうち通院を除く6件の設問文、甲南大学の「タバコ」の例文、選択肢「情報収集や情報発信」、トリプルバーレルの「まとめ買い」の例文で、いずれも本文と同じ文面です。該当しない7件は「このサービスを友人に勧めたいと思いますか」「昨年と比べて残業時間は増えましたか」「最も重視する点を1つ選んでください」「価格に満足していますか」「ご家族と同居していますか」「やや満足している」「この記事は役に立ったと感じますか」。比較のため、「と」「や」を単純に検索した場合も並べました。
| 方法 | ダブルバーレル9件の検出 | 該当しない7件の誤検出 |
|---|---|---|
| 「と」「や」の単純検索 | 7件(うち3件は偶然の一致) | 5件 |
| 上のスクリプト | 8件 | 1件 |
単純検索は「まとめ買い」の「と」、「分かりやすく」の「や」、「勧めたいと思いますか」の「と」にも反応しており、7件のうち接続を正しく捉えたのは4件でした。誤検出の5件は「と思いますか」「と比べて」「と同居」「やや」「と感じますか」です。
除外規則を入れたスクリプトでも、誤検出は「ご家族と同居していますか」の1件が残りました。相手を示す「と」は、並列の「と」と文字列では区別できません。見逃しはトリプルバーレルの「あなたは節約のために毎週まとめ買いをしていますか」で、このコードが検索する接続表現を含まないため、掲載した正規表現では拾えません。このスクリプトは人のレビューの代わりではなく、読む順番を決める道具として使うのが妥当な位置づけです。
誘導質問・多重質問の誤謬との違い
ダブルバーレルは「1つの設問に論点が2つある」という形式の問題です。次の概念は別の原因で回答を歪めるもので、直し方も違います。
| 概念 | 何が起きているか | ダブルバーレルとの違い |
|---|---|---|
| 誘導質問 | 権威や世間の見解を前置きし、回答が偏る | 論点数とは別の問題。両方が併存する場合もある |
| 多重質問の誤謬 | 認められていない事柄を前提に埋め込む | 並列ではなく前提の押し付け |
| キャリーオーバー効果 | 前の設問が後ろの設問の回答に影響する | 設問の「間」の順序の問題 |
| 否定疑問文 | 「〜しませんか」で賛否の向きが読み違えられる | 文の向きの問題 |
最も紛らわしいのが多重質問の誤謬(complex question)です。前掲の Menold(2020)も、前提を含む設問(presupposition)はダブルバーレルとは別物として扱っています。「いつから遅刻をやめたのですか」は論点こそ「やめた時期」の1つですが、遅刻していたという前提を相手に押し付けています。「テレワークで運動不足だと思いますが、何かスポーツをしていますか」のように前提と問いが同居する設問は、ダブルバーレルとして紹介されることもありますが、直し方で見ると違いがはっきりします。ダブルバーレルは分割すれば直り、前提の押し付けは前提を設問から外さなければ直りません。前提を別の設問(「運動不足を感じますか」)として先に聞くと、両方の性質をまとめて解消できます。
あえてダブルバーレル項目を使う研究の例外
用語集の多くは「絶対に使ってはならない」と書きますが、探索的な資料収集を目的とする研究では、意図して使った例があります。
伊藤正哉・小玉正博(2006)「自分らしくある感覚(本来感)に関わる日常生活習慣・活動と対人関係性の検討」(健康心理学研究 第19巻第2号、36〜43ページ)は、脚注でこう明記しています。
本研究は仮説検証というよりも探索的資料収集を目的としている。そのため、項目の一義性よりも網羅性を優先し、あえてダブルバーレル項目を用いている。
読み取るべきは、一義性を捨てて網羅性を取るという交換を、目的に照らして自覚的に選び、その理由を論文に書いている点です。これは1本の研究が自らの設計理由として書いたもので、探索目的なら使ってよいという一般的な基準ではありません。意思決定に使う調査では一義性が要るので、分割が原則のままです。実務でこの例外を持ち出すなら、論文と同じく「なぜ一義性を捨てたのか」を調査設計書に残しておく必要があります。
設問の作り方からWebアンケートの配信・集計までを自社の業務フローに合わせて組みたい場合は、アンケート管理システム開発も扱っています。
よくある質問
ダブルバーレル質問と二重質問・並列質問は同じものですか?
同じものを指します。呼び名は出典によって違い、総務省統計局の Data StaRt は「ダブルバーレル問題」、ブリタニカ国際大百科事典は「二連発質問」、心理尺度を扱う論文では「ダブルバーレル項目」が使われます。調査会社の用語集では「二重質問」、論点を並べる形から「並列質問」とも呼ばれます。どの呼び名でも、1つの設問に論点が2つ以上ある状態を指す点は変わりません。
ダブルバーレル質問と多重質問の違いは何ですか?
ダブルバーレルは論点が2つ並んでいる状態で、「価格と品質に満足ですか」がその形です。多重質問(多重質問の誤謬・complex question)は論点こそ1つですが、まだ認められていない事柄を前提として埋め込みます。「いつから遅刻をやめたのですか」が典型例です。前者は設問を分割すれば直り、後者は前提を設問から外さなければ直りません。
アンケートで避けるべき質問にはどんな例がありますか?
ダブルバーレルのほかに、甲南大学の社会調査教材は「長すぎる文章」「意味がとりにくい文章」「否定疑問文(…しませんか?)」「誘導的な質問」を挙げています。統計局の Data StaRt は、あいまいな言葉・難しい言葉・ステレオタイプのかかった言葉を質問文で用いてはいけないとしています。いずれも回答者によって解釈が分かれ、集計した数字の意味が揺らぐ点で共通しています。
誘導的な質問にはどんな例がありますか?
甲南大学の教材は「携帯電話のマナーの悪さが指摘されていますが…」と前置きしてから意見を聞く形を例に挙げています。統計局は、権威や世間の見解を示して回答を偏らせる威光暗示効果と、一方の立場だけを強調すると強調されたほうの回答が増える黙従傾向を誘導的な質問の問題として整理しています。論点が1つでも起きる点で、ダブルバーレルとは別の問題です。
ダブルバーレル質問は英語で何と言いますか?
double-barreled question です。英国式の綴りでは double-barrelled question になるため、英語の論文や教科書を探すときは両方の綴りで検索すると取りこぼしが減ります。英語の設問では接続詞 and が手がかりになりますが、and は正しく組み立てた設問にも普通に出てくるので、日本語の「と」と同じく、検索で見つかるのは候補までです。