リッカート尺度とは、同じ概念を測る複数の意見文への同意度を段階で回答してもらい、その得点を合計または平均する尺度です。アンケートの5段階評価としておなじみの形式で、リッカート法・リッカートスケールとも呼ばれ、選択肢を5つにした回答形式は5件法と呼びます。ただ、選択肢を4段階にするか5段階にするか、「どちらともいえない」や「わからない」を置くべきか、集計で平均値を出してよいのかといった実務の判断になると、解説記事ごとに答えが違って迷うところです。この記事では1932年の原典と実証研究の数字をもとに判断基準を整理し、選択肢のラベル例とExcelでの集計式まで示します。
まとめ:リッカート尺度と5段階評価の要点
先に結論です。リッカート尺度は1932年にレンシス・リッカートが提案した形式で、選択肢に1から5の連番を振り、複数の項目を合計または平均して1人分の得点にします。この単純な配点は原典の時点で、統計的に手の込んだ配点法との相関が+.99あることが確認されています。原典の比較結果は、1から5の連番を振って足す簡便な得点化を支持しています。
段階数は、信頼性や弁別力の指標が7段階あたりまで上がることが実験で示されているため、5段階か7段階が無難です。「どちらともいえない」の有無で回答の分布が変わることがあり、日本の郵送調査の実験では、中間選択肢を置いた5件法のほうが肯定寄りに分布しました。「わからない」は全設問に付けず、経験や知識が無い人が確実にいる設問にだけ尺度の外に置きます。
集計では「わからない」を9などのコードで分け、ExcelではAVERAGEIFで1〜5だけを平均します。上位2つの割合(TOP2Box)を数えるときは、COUNTIFの「4以上」だけでは9まで数えてしまうので、COUNTIFSで「4以上かつ5以下」を指定してください。
リッカート尺度の定義と得点化
1932年の原典が定めた形式
提唱者はアメリカの心理学者レンシス・リッカートです。1932年6月に『Archives of Psychology』第140号として発表された論文「A Technique for the Measurement of Attitudes」が原典です。
原典で使われている選択肢は、国際主義に関する尺度では「Strongly approve(強く賛成)」から「Strongly disapprove(強く反対)」までの5段階、戦争に関する尺度への適用では「strongly agreed, agreed, was undecided, disagreed, or strongly disagreed」の5段階です。日本語の「非常にそう思う」から「まったくそう思わない」という言い回しは、この形式の訳にあたります。
配点についても原典は具体的に指定しています。5つの選択肢を使う場合は1から5の値を割り当て、真ん中の「undecided」に3を置くこと、そして態度の一方の極を1、もう一方を5とし、これをすべての項目で一貫させることです。
リッカート項目と尺度得点の違い
混同されやすいのですが、設問1問はリッカート項目(Likert item)であって、リッカート尺度そのものではありません。原典は個人の得点について「その人がチェックした選択肢の数値の平均または合計を求めて決定した」と書いており、尺度とは複数項目をまとめたものを指します。
この区別は分析方法に直結します。1問だけの回答は「1と2の差」と「4と5の差」が同じ大きさとは限らない順序データですが、同じ概念を測る項目を得点の方向をそろえて合計すれば、取りうる値が増えて連続量に近い振る舞いになるためです。もちろん、合計しただけで尺度の妥当性が保証されるわけではありません。後述の分析の節でもう一度触れます。
4段階・5段階・7段階の選択基準
段階数の選択には実験的な根拠があります。プレストンとコールマンが2000年に『Acta Psychologica』104巻1号1〜15ページに発表した研究では、149名が直前に利用した店や飲食店のサービスを、段階数だけが違う複数の尺度(2段階から11段階まで)と101段階の尺度で評価しました。
結果は明快で、信頼性・妥当性・弁別力のいくつかの指標において、2段階・3段階・4段階の尺度は相対的に成績が悪く、指標は選択肢数が多いほど有意に高くなりました。ただし、その改善はおおむね7段階までです。内的一貫性には尺度間で有意差がなく、再テスト信頼性はむしろ10段階を超えると低下する傾向がありました。回答者自身の好みがもっとも高かったのは10段階で、7段階と9段階がわずかの差で続いています。
| 段階数 | 信頼性・妥当性・弁別力 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 2〜4段階 | 一部の指標が相対的に低い | 回答負荷を最優先する短い調査 |
| 5段階 | 2〜4段階より高く7段階の手前 | 設問数が多い一般的なアンケート |
| 7段階 | 指標が頭打ちになる付近 | 尺度得点の精度を重視する調査 |
| 10段階超 | 再テスト信頼性が低下傾向 | 採用時は再テスト信頼性を確認 |
日本語の文献でも見解は近いところに落ち着きます。増田真也氏と坂上貴之氏が2014年に『心理学評論』57巻4号472〜494ページへ寄せた総説は、一般に回答カテゴリ数は5以上が良いとされると整理したうえで、クロスニックとプレッサーが多くの場合7件法を最適としていることを紹介しています。設問数が多くて回答者の負担が気になるなら5段階、尺度得点の精度を優先するなら7段階、という選び方が実務的です。
中間選択肢「どちらともいえない」の設置判断
中間選択肢の有無によって、回答の分布が変わることがあります。
4件法と5件法をランダムに割り当てた日本の実験
小川和孝氏が2020年に『理論と方法』35巻1号33〜44ページへ発表した論文は、2010年に富山県で実施された「教育と社会保障についての意識調査」を使っています。この調査は県内4市2町の選挙名簿にもとづき市町・投票区・個人の三段抽出で5,000人を選び、郵送法で有効回答2,172(回答率43.4%)を得たもので、同じ設問の選択肢を対象者の半数には4値、残る半数には5値とランダムに割り当てていました。中間選択肢の有無だけが違う2群を比べられる設計です。
医療・介護について「税金を増やしてでも政策を拡充すべきか」を尋ねた結果は次のとおりです。
| 回答 | 4件法 | 5件法 |
|---|---|---|
| 賛成 | 23.1% | 17.8% |
| どちらかといえば賛成 | 53.5% | 49.0% |
| どちらともいえない | 選択肢なし | 21.1% |
| どちらかといえば反対 | 16.7% | 7.4% |
| 反対 | 4.8% | 2.8% |
| 無回答 | 1.9% | 1.8% |
ここで比べているのは別々の回答者群の分布であって、中間を選んだ21.1%の人が4件法なら何を選ぶかを追跡したデータではありません。それでも、5件法では賛成側も反対側も比率が下がり、単一のカテゴリでもっとも落ち込んだのは「どちらかといえば反対」の16.7%から7.4%(9.3ポイント減)でした。
同論文はさらに、4件法と5件法の選択肢を共通の尺度に置き直して平均値を比べています。4件法の3.466、あるいは両端の意見は不変とみなす置き方で3.621に対し、5件法は3.731でした。5件法のほうが有意に肯定寄りで、効果量はCohenのdで0.308または0.111です。つまり中間選択肢を置いたほうが高福祉・高負担へ肯定的に分布したという結論で、同論文はこれを社会的望ましさによるバイアスとして解釈できる可能性を論じています。単純に賛成の比率を足し上げた数字とは向きが逆になる点に注意してください。
もうひとつ、この設問の項目無回答率は4件法1.9%、5件法1.8%でほとんど変わらず、中間選択肢を外した群で答えない人が目立って増えてはいません。ただし、この比較だけで調査への不参加や途中離脱への影響までは判断できません。
高校生の国際比較で見られた中間選択傾向
「日本人は『どちらともいえない』を選びやすい」という話は、国際比較の研究で数字が出ています。チェン、リー、スティーブンソンが1995年に『Psychological Science』6巻3号170〜175ページへ発表した論文は、仙台・台北・カナダ・米国の11年生(日本の高校2年生に相当)に同じ7段階のリッカート型項目57問へ答えてもらい、中央の4と両端の1・7を選んだ回数を比べました。
| 地域 | 人数 | 中央(4)の平均回数 | 両端(1と7)の平均回数 |
|---|---|---|---|
| 日本(仙台) | 944人 | 17.0回 | 13.0回 |
| 台湾(台北) | 1,357人 | 15.0回 | 12.4回 |
| 米国 | 2,174人 | 11.7回 | 15.0回 |
| カナダ | 687人 | 12.7回 | 12.9回 |
57問のうち日本の生徒は平均17回、米国の生徒は11.7回中央を選んでおり、米国の生徒は逆に両端をもっとも多く選んでいます。ただし著者らは、この回答スタイルの差は小さく、項目ごとの平均値の国際比較を変えるほどではなかったと書いています。日本で実施した調査の平均値が海外より中央に寄っていても、それだけで「評価が低い」とは読めません。一方で、同じ設問を国をまたいで比べるときは、平均値だけでなく中央と両端の比率も並べて見る必要があります。
中間選択肢を置くかどうかの結論
前掲の増田氏らの総説は、中間が選ばれる理由が「本当に中立である」場合と「わからない・決めかねている・意見がない」場合の2通りあり、後者が混ざると結論の妥当性が損なわれると指摘しています。そのうえで是非に一般的な合意は得られていないとしつつ、中立の意見を持ちうる内容なら該当する選択肢が無いのは不適切であり、事前に影響を判別するのは難しいことから、中間カテゴリを設けないのではなく、反応バイアスとしての中間選択を減らす対策を講じる方が通常は望ましいと結論づけています。
つまり実務の順序は、まず中間選択肢を置いたうえで、設問文をわかりやすくして「判断できないから真ん中」を減らす、となります。ワイタース、カボーテル、スキレワールトが2010年に公表した研究(1,207人のオンライン調査)も、中間を置くと逆転項目への誤答が減ったことから、特段の理由がない限り中間のない尺度は避けるよう勧めています。4段階を検討する場合は、中立の回答を認めず賛否の方向を選ばせる目的を明確にし、その制約が回答に与える影響を予備調査で確かめてください。回答者側の要因で生じるずれ全般については回答誤差と標本誤差の違いもあわせて確認してください。
設問文の作り方:原典が挙げた5つの条件
リッカート尺度の設計手順は原典に書かれています。リッカートは項目文が満たすべき条件を5つ挙げており、現在の調査票づくりの注意点とほぼ重なります。
| 条件 | 原典の指示 |
|---|---|
| 1. 事実でなく態度を問う | 事実の真偽ではなく望ましい行動を述べる。shouldを使うと書きやすい |
| 2. 明快で簡潔に書く | 最も平易な語彙で書き、二重否定を避ける。ダブルバーレルは必ず2つに分ける |
| 3. 中央に寄る表現にする | 最頻の反応が選択肢のほぼ中央に来るような表現にする |
| 4. 半数の項目で向きを反転 | 約半数の項目は態度の極を逆側に配置し、機械的な回答を防ぐ |
| 5. 選択肢は1変数だけ | 多肢選択なら、選択肢が扱う態度の変数はひとつに限る |
2番目の条件で原典が挙げている例は「平和を保つため、アメリカは関税を撤廃し、国際連盟に加盟し、世界最大の陸海軍を維持すべきである」という文です。賛成したい部分と反対したい部分が同居しているため、ひとつの回答を求めても意味をなさない、として3つ以上の設問に分けるよう指示しています。この論点はダブルバーレル質問の例文と直し方で詳しく扱っています。設問文の言い回しそのものの注意点はワーディングで避けるべき言葉にまとめました。
4番目の反転項目は、いまも「逆転項目」として使われている手法です。すべての項目を同じ向きで並べると、内容を読まずに同じ位置を選び続ける回答が紛れ込むため、原典は空間的な位置による誤りと紋切り型の回答を避ける目的で、項目の半数程度を反転させて散らばらせるよう求めています。
ただし、この4番目だけはそのまま採用しにくくなっています。ファン・ソンデレンらが2013年に『PLoS ONE』8巻7号(論文番号e68967)へ発表した研究は、逆転項目を含む疲労感尺度MFI-20の回答700人分を使い、10個の逆転項目が反応バイアスを防いだ証拠は見つからず、むしろ回答者の不注意と混乱によって得点が汚染されていたと報告しました。同論文は、向きをそろえた10項目の尺度のほうが誤りが少なく、疫学研究にも臨床研究にもそちらが望ましいと結論づけています。半数を機械的に逆転させるのではなく、予備調査で理解と回答の一貫性を確かめてから採否を決めてください。
なお原典は、最終的に使う数より多めに項目を作っておき、対象集団の一部に実際に答えてもらってから不適切なものを外す手順も示しています。パイロット調査は後から追加された作法ではなく、当初からの前提です。
5段階評価の選択肢ラベル例
同意度・満足度・頻度・重要度のラベル
実際の調査票では、測りたい内容に合わせてラベルを選びます。同意度や満足度のように賛否や好悪の両極がある軸では、中央に中立を置いて左右を対称にします。頻度や重要度のように程度を測る軸では、程度の順に選択肢を並べ、中央は中立ではなく中程度を表す語にします。頻度を尋ねるときは「この1か月で」のように対象期間を設問文で決めておかないと、思い浮かべる期間が人によって変わります。下表は高い側から低い側へ並べた例です。
| 測る内容 | 5段階のラベル例 |
|---|---|
| 同意度 | 非常にそう思う/ややそう思う/どちらともいえない/あまりそう思わない/まったくそう思わない |
| 満足度 | 非常に満足/やや満足/どちらともいえない/やや不満/非常に不満 |
| 頻度 | いつも/よくある/ときどきある/めったにない/まったくない |
| 重要度 | 非常に重要/かなり重要/ある程度重要/あまり重要でない/まったく重要でない |
顧客満足度調査で「この製品は期待どおりだった」に同意度で答えてもらう、従業員意識調査で職場環境への同意度を測る、研修後に内容の満足度を尋ねる、といった使い方が典型です。設問が10問20問と続く場合は、同じ選択肢を並べた表形式にまとめる方法があります。採用する前に、実際の端末での読みやすさと回答の負担を確かめてください。この形式の設計上の注意点はマトリクス回答形式の作り方と行列数の目安にまとめています。
4段階・7段階のラベル例
4段階は5段階から中央を抜き、左右2つずつを残します。下表の7段階例では、肯定側を「非常に・かなり・ややそう思う」、否定側を「あまり・かなり・まったくそう思わない」とし、中央に中立を置いています。
| 位置 | 4段階 | 5段階 | 7段階 |
|---|---|---|---|
| 1 | そう思う | そう思う | 非常にそう思う |
| 2 | ややそう思う | ややそう思う | かなりそう思う |
| 3 | あまりそう思わない | どちらともいえない | ややそう思う |
| 4 | そう思わない | あまりそう思わない | どちらともいえない |
| 5 | – | そう思わない | あまりそう思わない |
| 6 | – | – | かなりそう思わない |
| 7 | – | – | まったくそう思わない |
7段階すべてに長い言語ラベルを付けると、スマートフォンの表示幅によっては横一列に収まりません。7段階を採るなら、回答比率を説明する用途では全段階への言語ラベルを検討し、表示幅が不足する場合は縦配置にします。ラベルの範囲と配置方向は、それぞれ分析目的と端末表示に合わせて決めてください。
中央ラベルと全段階ラベルの効果
ラベルの付け方そのものが回答の分布を動かします。前掲の増田氏らの総説は、中央のラベルを何にするかで中間が選ばれる割合が変わる実験を紹介しています。死刑制度の賛否を尋ねた調査では、中央のラベルを「両価的」としたときのほうが「はっきりしない」としたときより有意に多く中央が選ばれました。また、総説が紹介する別の実験では、11段階の項目で中央に「どちらともいえない」というラベルを付けた場合に、ラベルを付けなかった場合より中央がよく選ばれています。
一方で、すべての選択肢に言語ラベルを振ると項目の曖昧さが下がり、信頼性が高いという結果も多く報告されています。ただし用途によって推奨は分かれます。前掲のワイタースらの研究は、平均値やTOP2Boxなど回答そのものを報告するなら全段階にラベルを振った5段階を、相関や回帰で変数間の関係を推定するなら両端だけにラベルを振った5段階か7段階を勧めています。両極型では左右の語を対応させ、中央には「どちらともいえない」のように中立を素直に表す語を使ってください。
「わからない」の置き方と選択肢の並び順
「わからない」を付ける設問と付けない設問
「わからない」「意見はない」を選択肢に足すと、意見を持たない人が無理に答えずに済み、データがきれいになると考えがちです。この想定を確かめたのが、クロスニックらが2002年に『Public Opinion Quarterly』66巻3号371〜403ページへ発表した研究です。3つの世帯調査で行った9つの実験で、「意見なし」に引かれやすかったのは、学歴の低い人、口頭でなく人に知られない形で答えた人、調査の後半の設問、回答に労力をかけなかった人でした。「意見なし」を外しても、時間をおいた回答の一貫性などで測った回答の質は下がっておらず、同論文は、態度を測る設問に「意見なし」を加えてもデータの質が上がるとは限らず、実際にある意見の一部を測れなくする可能性があると結論づけています。
そこで「わからない」は全設問に機械的に付けず、使ったことがない機能の満足度や、知らない制度への賛否のように、答えようのない人が確実にいる設問にだけ置きます。置くときは5つの段階の右端に続けず、線や余白で区切って尺度の外にあることがわかる位置にし、集計用のコードも1〜5とは別の9などにします。「わからない」と無回答をどう区別して扱うかは無回答バイアスと無回答・未回答の違いで詳しく説明しています。
選択肢の肯定先行・否定先行による回答差
選択肢を「非常にそう思う」から並べるか、「まったくそう思わない」から並べるかでも結果は変わります。困るのは、変わる向きが研究によって一致しないことです。
| 研究 | 尺度 | 結果 |
|---|---|---|
| Krebs・Hoffmeyer-Zlotnik 2010 | 仕事の重要度・8段階 | 肯定から並べた版の回答がより肯定的 |
| Wöhner・Franzen 2024 | 生活満足度・11段階 | 肯定から並べた版の平均が0.7ポイント低い |
クレブスとホフマイヤー=ズロトニクの実験(『Methodology』6巻3号118〜127ページ)は、仕事の特性の重要度を8段階で尋ね、「非常に重要」から始まる版で回答がより肯定的になったと報告しています。ただし同論文は、回答の差が尺度の向きをそのまま反映したものではなかったとも書いています。ヴェーナーとフランツェンの研究(『Journal of Happiness Studies』25巻6号)は、3,138人のオンライン調査で11段階の生活満足度の向きをランダムに割り当て、肯定から並べた版のほうが平均で0.7ポイント低く、否定から並べた版のほうが幸福感などの関連指標との相関が強かったとして、否定から肯定へ並べる形を勧めています。同じ研究では、選択肢を横に並べるか縦に並べるかでは有意な差が出ませんでした。
どちらの向きが正しいかは研究でも決着していないため、回答を比べられるよう、ひとつの調査票の中と、毎年くり返す調査の回をまたいで並び順をそろえてください。並び順を途中で変えると、前回との差が意識の変化なのか並び順の違いなのか区別できなくなります。
リッカート尺度の分析方法と平均値の扱い
リッカート尺度でもっとも意見が割れるのが集計方法です。1から5は順序を表すだけで間隔が等しいとは限らないため、平均値を出したりt検定にかけたりしてよいのか、という論点になります。
まず原典の立場を確認しておきます。リッカートは統計的に手の込んだ配点法(シグマ法)と、単純に1から5の連番を振る方法を比較し、後者が「本質的に同じ信頼性係数をもたらし、相関が+.99と非常に高かったため、通常の目的のすべてにおいて簡便法を用いることが正当化されると思われる」と結論しました。両端に少し重みをつけた1・3・4・5・7という配点でも同じ結果が得られたと記しており、配点の振り方で結果はほとんど動かない、というのが原典の実測です。
現代の統計学からの回答もあります。ジェフ・ノーマンが2010年に『Advances in Health Sciences Education』15巻5号625〜632ページへ発表した論文は、「リッカート尺度のデータは順序尺度だからパラメトリック統計は使えない」という査読でよく見る批判を取り上げ、1930年代までさかのぼる多くの研究が、パラメトリック統計はこうした前提の違反に対して頑健であることを一貫して示していると論じました。同論文は、こうした批判には根拠がなく、誤った答えを得る心配なくパラメトリック手法を利用できると結論づけています。
実務では次のように使い分けると整理しやすくなります。
| 対象 | 推奨する見せ方 | 理由 |
|---|---|---|
| 1問単位(リッカート項目) | 選択肢ごとの回答数と比率、積み上げ棒グラフ | 間隔が等しい保証がなく、平均値だけでは分布の形が消える |
| 複数項目の合計・平均(リッカート尺度) | 平均値と標準偏差、群間比較 | 原典が想定した使い方で、連続量に近い振る舞いをする |
| 他の変数との関係 | 順位相関を併記 | 順序データにピアソン相関を当てると関係を過小・過大に見せうる |
平均値だけを見せると、賛否が両端に割れている分布と全員が中央に集まっている分布が同じ数字になってしまうため、少なくとも1問単位では分布の図を添えるのが安全です。1問ずつの回答比率をどう表にまとめるかは単純集計(GT集計)の作り方を、順序データに相関係数を当てるときの注意点はカテゴリカル変数の相関分析で生じる課題を参照してください。
Excelでの5段階評価の集計:度数・平均値・TOP2Box
回答のコード化と度数の数え方
Excelで集計するときは、回答を1列に数値で入れます。ここでは「非常に満足」を5、「非常に不満」を1、「わからない」を9とし、無回答は空欄のままにします。テキストのまま入れると選択肢の表記ゆれで数え漏れが起きるため、数値コードにそろえてから集計するのが基本です。以下の式は、セルに入るのが1〜5の整数と9、空欄だけという前提です。0や負の値が混ざりうるデータでは、COUNTIFSやAVERAGEIFSで「1以上」の条件も足してください。以下はB2からB21に20人分の回答(5段階の回答17人、「わからない」2人、無回答1人)が入っている例で、右側が計算結果です。
=COUNTIF($B$2:$B$21,5) 「非常に満足」の人数 4
=COUNTIF($B$2:$B$21,4) 「やや満足」の人数 7
=COUNTIF($B$2:$B$21,9) 「わからない」の人数 2
=COUNTIF($B$2:$B$21,"<=5") 有効回答数 17
=AVERAGEIF($B$2:$B$21,"<=5") 平均値 3.65
=COUNTIFS($B$2:$B$21,">=4",$B$2:$B$21,"<=5")/COUNTIF($B$2:$B$21,"<=5")
TOP2Box 64.7%
B2からB21には上から順に5、4、4、3、5、2、4、9、3、4、1、5、4、3、9、4、2、5、4、空欄が入っており、この6式をLibreOffice 26.8で計算させた結果を、平均値は小数第2位、割合は小数第1位に丸めて載せています。MicrosoftのCOUNTIF関数の説明には「Excel は空白の値と文字列値を無視します」とあり、無回答の空欄は有効回答数にも入りません。
「わからない」を除いた平均値の出し方
よくある誤りは、列全体に=AVERAGE($B$2:$B$21)をかけてしまうことです。この例では9が2つ混ざるため、結果は4.21になります。正しい平均の3.65より0.56ポイント高く、満足度を実際より良く見せてしまいます。AVERAGEIFに条件"<=5"を付ければ1〜5だけが平均の対象になり、MicrosoftのAVERAGEIF関数の説明にあるとおり空白のセルも無視されます。
手元に生データがなく選択肢ごとの人数しかない場合は、人数に点数を掛けて合計し、有効回答数で割ります。E1からE5に5点から1点の順で人数が入っていれば、=SUMPRODUCT(E1:E5,{5;4;3;2;1})/SUM(E1:E5)で同じ3.65が出ます。いわゆる加重平均で、計算の中身は1人ずつの平均と変わりません。
TOP2Box(上位2つの割合)の計算
TOP2Boxは、5段階のうち上位2つ(「非常に満足」と「やや満足」)を選んだ人の割合です。平均値が同じ3.5でも、満足と不満に割れているのか、中央に集まっているのかはTOP2Boxと下位2つの割合(BOTTOM2Box)を並べると見分けられます。
ここで=COUNTIF($B$2:$B$21,">=4")と書くと、4と5だけでなく「わからない」の9まで数え、結果は13人になります。この13人を有効回答17人で割ると、誤った割合の76.5%になります。COUNTIFS関数で同じ範囲に「4以上」と「5以下」の2条件を付けると、正しい64.7%になります。BOTTOM2Boxは=COUNTIF($B$2:$B$21,"<=2")を有効回答数で割れば済み、この例では17.6%です。満足度スコアとしてTOP2Boxを継続的に追う場合の集計方式の違いはCSATの計算方法と5段階評価の集計で扱っています。
毎回の調査でこの集計を手作業で繰り返している、回答数が多くExcelが重い、といった段階に来たら、回答の受付から集計までをまとめて扱うアンケート管理システムの開発も選択肢になります。
SD法など他の尺度との違い
リッカート尺度と混同されやすいのがSD法(セマンティック・ディファレンシャル法)です。違いは提示するものにあります。リッカート尺度は意見文を1つ示して同意の度合いを尋ねるのに対し、SD法は「明るい/暗い」のような対になる形容詞を両端に置き、対象がどちら寄りかを答えてもらいます。得られるデータも、リッカート尺度は複数項目を合計した1本の得点になりやすく、SD法は複数の形容詞対から印象のプロフィールを描くのに向きます。手順や形容詞対の選び方はSD法のやり方と形容詞対の選び方で解説しています。
このほか、賛成する項目が累積的に並ぶよう設計するガットマン尺度、専門家の判定で各項目に尺度値を与えるサーストン法があります。リッカート尺度が広く使われるのは、判定者を使わずに済み、より少ない項目数で同じ信頼性が得られるという原典の利点がそのまま実務の利点になっているためです。
よくある質問
リッカート尺度は何尺度ですか?
1問単位では、選択肢の間隔が等しい保証がないため順序尺度として扱うのが基本です。複数の項目を合計した尺度得点については、ノーマンの2010年の論文のように、パラメトリック手法を当てても差し支えないという立場が示されています。1問なら回答分布を、合計得点なら尺度の構成と分布を確かめたうえで平均値を使ってください。
リッカート尺度とSD尺度の違いは何ですか?
提示するものが違います。リッカート尺度は意見文への同意の度合いを尋ね、SD法は対になる形容詞のどちら寄りかを尋ねます。前者は態度の強さを1本の得点にまとめる用途、後者は対象の印象を多面的に描く用途に向きます。
7段階評価のリッカート尺度とは?
選択肢を7つにした形式で、同意度などの両極型では中央の1つが中立、その左右に3段階ずつが並びます。信頼性や弁別力の指標が7段階あたりまで改善するという実験結果から、精度を優先する調査で選ばれます。設問数が多いと回答負荷が上がり、スマートフォンでは横一列に収まりにくい点に注意してください。
リッカート尺度のデメリットは?
回答が中央に寄る中心化傾向、内容にかかわらず肯定側を選ぶ黙従傾向、社会的に望ましく見せようとする偏りが起きやすい点です。中間選択肢の有無や選択肢の並び順だけで分布が動くことも、ランダム割り当ての実験で確認されています。設問文を明快にし、並び順を調査の中と回の間で固定するのが対策の基本です。
4段階と5段階はどちらを選べばよいですか?
中立の立場がありうる内容なら5段階です。中間選択肢の有無で回答の分布は動くため、中立を認めず賛否を選ばせる明確な目的があり、その影響を予備調査で確認できる場合に4段階を検討し、それ以外は5段階にしたうえで、設問文をわかりやすくして「わからないから真ん中」を減らしてください。
5段階評価の平均値の出し方は?
回答を1〜5の数値にして合計し、有効回答数で割ります。「わからない」を9などのコードで入れている場合は、Excelなら=AVERAGEIFS(範囲,範囲,">=1",範囲,"<=5")で1〜5だけを平均してください。値が1〜5と9しかないデータなら=AVERAGEIF(範囲,"<=5")でも同じ結果です。選択肢ごとの人数しかないときは、人数に点数を掛けた合計を人数の合計で割れば同じ値になります。平均値は分布の形を隠すので、TOP2Boxや選択肢ごとの比率と並べて報告します。