育児休業等終了時報酬月額変更届は、育休を終えて3歳未満の子を育てる従業員が申し出たとき、復職後3か月の報酬の平均で標準報酬月額を改定する届出です。通常の月額変更届が2等級以上の差を求めるのに対し、この届出は1等級の差でも改定でき、4か月目の保険料から下がります。この記事では、健康保険法43条の2と日本年金機構の資料をもとに、17日未満の月を除く平均の取り方、改定月と適用期間、随時改定との違い、養育期間標準報酬月額特例との併用を整理し、給与システムで判定を自動化するときに持つべきデータまで解説します。
まとめ:育休終了時の月額変更は復職後3か月の平均・1等級差・本人の申出で決まる
対象は、育休の終了日に3歳未満の子を養育している健康保険・厚生年金保険の被保険者です。終了日の翌日が属する月から3か月の報酬を平均し、支払基礎日数が17日未満の月は外します。改定前と1等級以上の差があれば、4か月目から新しい標準報酬月額になります。
随時改定と違い、本人の申出がなければ改定は行われません。保険料が下がる一方で、傷病手当金や出産手当金の計算の元になる標準報酬月額も下がるため、厚生年金だけを守る養育期間標準報酬月額特例の申出とあわせて本人に説明してください。
時短勤務やパートでの復職が多い会社では、支払月ごとの日数判定、随時改定との分岐、翌月徴収のずれが同時に起きます。復職日と申出の記録を給与システムに持たせ、対象月の報酬がそろった時点で判定と届書データの作成まで済ませる流れを作ると、手作業の漏れを防げます。
育児休業等終了時報酬月額変更届の要件:3歳未満の養育・17日以上の月・1等級差
まず、誰がどの条件で改定を受けられるかを確認します。育休中の保険料免除と申出書は育休の社会保険料免除:月末・14日・賞与1か月超の要件と申出書、給与システムでの判定方法で扱っています。
終了日に3歳未満の子を養育する被保険者が対象、翌日に産休を始める人は対象外
健康保険法43条の2は、育児休業等を終えた被保険者が終了日に3歳未満の子を養育しているとき、事業主を経由した申出によって標準報酬月額を改定すると定めています。ここでの育児休業等には、育児・介護休業法の育休に加え、3歳までの子を対象に会社が設ける育休に準じる休業も含まれます。
同じ条文のただし書きにより、育休終了日の翌日に産前産後休業を始めている人は対象外です。第2子の産休に続けて入る人は、この届出ではなく、産休明けに産前産後休業終了時報酬月額変更届で改定を考えます。70歳以上で厚生年金の被保険者でない被用者には、「70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届」という別の様式があります。
3か月のうち17日以上の月だけで平均し、改定前と1等級以上の差があれば改定
日本年金機構の育児休業等終了時報酬月額変更届のページは、要件を2つにまとめています。改定前後の標準報酬月額に1等級以上の差があることと、3か月のうち少なくとも1か月の支払基礎日数が17日以上あることです。特定適用事業所で働く短時間労働者は11日以上で判定します。
平均を出すときに除外する対象は、17日未満の月です。パートなど短時間就労者で3か月とも17日未満の場合は、15日以上17日未満の月の報酬で平均します。平均した報酬月額を等級表に当てはめる手順は社会保険料の計算方法:標準報酬月額×料率と端数処理、令和8年度の料率と給与システムでの自動化で解説しています。
改定される月と適用期間:終了日の翌日が属する月から数えて4か月目の標準報酬月額
判定に使う3か月と、改定が効く月はどちらも機械的に決まります。
4月20日に育休を終えた人は4月・5月・6月の報酬で判定し7月分から改定
健康保険法43条の2第2項は、改定後の標準報酬月額を、終了日の翌日から2か月を経過した日の属する月の翌月から使うと定めています。4月20日に育休を終えると、翌日の4月21日が属する4月から6月までの3か月で判定し、7月分の保険料から改定です。
月の数え方は勤務した月ではなく報酬を支払った月です。月末締め翌月25日払いの会社では、4月25日の給与は育休中の3月分なので支払基礎日数が0日になり、平均から外れます。この場合は5月と6月の2か月で平均します。復職前に標準報酬月額30万円だった人が、時短勤務で報酬月額28万円前後になれば、標準報酬月額28万円への1等級の改定です。
7月から9月に改定される人は算定基礎届から外れ、翌年8月まで同じ等級を使う
日本年金機構によると、1月から6月に改定された標準報酬月額はその年の8月まで、7月から12月に改定されたものは翌年8月まで使います。健康保険法41条3項は、43条の2によって7月から9月のいずれかの月から改定される人には、その年の定時決定を適用しないと定めています。
上の例で7月に改定されると、その人は7月提出の算定基礎届の対象から外れ、7月改定の等級が翌年8月まで続きます。算定基礎届の対象者の判定は社会保険料は4月から6月の給与で決まる:定時決定の計算と算定基礎届をシステムで判定する要件で整理しています。
随時改定の月額変更届との違い:2等級差の義務と1等級差で申し出る任意の改定
育休から戻った従業員の給与が下がったとき、使える改定は1つではありません。
要件・対象月の日数・届出の義務で比べる随時改定と育休終了時改定の5つの差
日本年金機構の随時改定のページと育休終了時改定のページを並べると、違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 随時改定 | 育休終了時改定 |
|---|---|---|
| きっかけ | 固定的賃金の変動 | 育休の終了 |
| 等級の差 | 2等級以上 | 1等級以上 |
| 17日以上の月 | 3か月とも必要 | 1か月以上あればよい |
| 届出 | 要件を満たせば必須 | 本人の申出があるときだけ |
| 改定月 | 変動月から4か月目 | 終了翌日の月から4か月目 |
育休終了時改定は、基本給を変えずに残業がなくなっただけのケースでも使えます。随時改定は固定的賃金の変動がないと始まらないため、時短勤務を伴わない復職では育休終了時改定だけが選択肢です。
時短勤務で基本給が下がった復職者に両方の要件が重なるときの確認手順
短時間勤務制度で基本給が下がり、3か月とも17日以上出勤して2等級以上下がる人は、随時改定の要件も満たします。随時改定は本人の希望に関係なく届出が必要な手続きなので、本人が育休終了時改定を申し出なくても、月額変更届の要否は判定しなければなりません。
実務では、復職月の給与から変動があれば両方の起算月が同じになり、改定月もそろいます。ずれるのは、復職の翌月から時短に切り替えた場合や、復職月に17日未満の月がある場合です。どちらの届で出すかを判断しにくいケースは、提出前に管轄の年金事務所へ確認し、回答を従業員ごとの記録に残してください。
養育期間標準報酬月額特例との併用:年金額は守れても傷病手当金と出産手当金は下がる
標準報酬月額を下げると、保険料と一緒に給付の計算元も下がります。
厚生年金保険法26条の特例は育休開始で終わるため、復職時に申出し直す理由
厚生年金保険法26条は、3歳未満の子を養育する期間に標準報酬月額が下がっても、年金額の計算では養育開始月の前月の標準報酬月額を使える特例を定めています。同じ条文は、育児休業等を開始したときを特例の終了事由に挙げています。育休前に申し出ていても、復職して報酬が下がる時点で改めて申出が必要になる根拠です。
申出は被保険者が事業主を経由して行い、申出より前の月は申出月の前月までの2年間に限って認められる決まりです。日本年金機構の養育期間の申出のページの詳細説明では、事業主が身分関係を確認して確認済み欄にチェックするか、申出者と子の個人番号を書けば戸籍謄本の添付を省けます。住民票の写しは、育休終了の場合、終了日の翌日が属する月の初日以後に発行され、提出日から90日以内のものに限ります。
健康保険には同じ特例がなく、直近12か月平均で傷病手当金と出産手当金が減る点
健康保険法99条2項は、傷病手当金の日額を、支給開始日以前の直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2と定めています。出産手当金も同じ計算方法です。標準報酬月額を30万円から28万円に下げると、改定後の月が平均に入るほど日額が下がり、厚生年金のような救済の特例はありません。
保険料の差は、日本年金機構の厚生年金保険料のページにある料率18.3%を労使で折半すると、2万円の差で本人負担が月1,830円です。第2子の出産を1年以内に予定している人には、出産手当金の減り方と比べてから申し出るよう説明する運用が安全です。復職前後に事業主がハローワークへ出す給付の手続きは、育児休業給付金支給申請書:初回4か月の期限と2回目以降の書き方で整理しています。
届出の出し方:提出時期と提出先、電子申請で申請者の署名を省く2つの方法
届出の様式は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届」です。
3か月の報酬が確定したら速やかに事務センターへ、添付書類は原則不要
日本年金機構のページでは、提出時期は「速やかに」、提出先は事務センターか管轄の年金事務所、添付書類は原則不要です。3か月目の給与を支払った時点で平均が出せるため、4月21日復職の例なら6月の給与支払い後に作成できます。本人の申出を受けて、事業主が年金機構へ出す手続きです。
提出期限が日付で決まっていないため、申出を受けてから放置されやすい届出です。日本年金機構の報酬月額の届出のページが並べるとおり、定時決定・随時改定・産前産後休業終了時改定・育休終了時改定は様式が別なので、取り違えにも気をつけてください。
電子申請・郵送・窓口から選び、委任状の画像か届出意思の確認欄で署名を省く
提出方法は電子申請・郵送・窓口持参のいずれかです。被保険者本人以外が電子申請する場合は、申請者と代理人の双方の電子署名が原則必要です。事業主を代理とする委任状を画像で添付するか、電子申請様式の「届出意思の確認」欄にチェックを入れれば、申請者の電子署名を省けます。
給与システムから届書データを出してe-Govへ送る場合は、この確認欄の値を申出の記録と結びつけておく必要があります。e-Govの電子申請やAPI連携の要件は労務管理システムの電子申請対応とは:義務化の範囲とAPI連携・GビズID運用の判断で整理しています。
給与システムで育休終了時改定を判定する設計:支払月・支払基礎日数・申出の記録
判定式は単純でも、給与システムが必要なデータを持っていないと人の確認が残ります。
復職日・支払月ごとの日数・本人の申出日の3系統で持つ判定用データの項目
育休終了時改定を自動で判定するには、次の項目を従業員ごとに持ちます。
| 持つ項目 | 使う判定 |
|---|---|
| 育休の終了日・子の生年月日 | 対象月の起算・3歳未満の確認 |
| 終了翌日の産休開始の有無 | 対象外の除外 |
| 支払月ごとの報酬額と支払基礎日数 | 17日・11日・15日の判定と平均 |
| 短時間労働者・特定適用事業所の区分 | 日数基準の切り替え |
| 固定的賃金の変更履歴 | 随時改定との重なりの検出 |
| 本人の申出日・養育特例の申出日 | 届書の作成可否と説明の記録 |
判定は、終了翌日の月から3か月分の支払月データを集め、日数基準を満たす月だけで平均し、現在の等級と1等級以上違うかを見ます。同じ処理の中で随時改定の要件も計算し、両方に当てはまる人には確認待ちの印を付けます。
7月分の改定を8月支給から引く翌月徴収のずれと、申出遅れの差額精算
前月分の保険料を当月の給与から引く会社では、7月分から改定された保険料は8月支給の給与で初めて変わります。控除額を変える月と保険料の対象月を同じ項目で持っていると、7月支給の給与で先に下げてしまう誤りが起きます。
申出が遅れて届出が後になっても、改定月は終了日で決まります。7月分からの改定が9月に決まった場合は、7月分と8月分の差額を本人と会社に返す精算が必要です。給与システムには、改定の対象月と反映した支給月を別々に記録させてください。
表計算で足りる会社と、給与システムの改修や個別開発で判定を組む会社の境界
判定の手間は、復職者の人数より勤務形態の多さで決まります。
復職者が年に数人で月給制・当月払いなら届書作成と手作業で足りる条件
復職者が年に数人で、全員が月給制、給与が当月払いなら、復職月から3か月の報酬を表計算に並べて1等級差を見るだけで判定できます。届書は日本年金機構の届書作成プログラムや電子申請で作り、申出の有無を人事記録に残せば足ります。
見落としやすいのは、本人への申出の案内と、養育特例の申出のし直しです。給与計算システムの多くは届書の作成機能を持っているため、製品を選ぶ段階で育休終了時改定の届書に対応しているかを確認してください。選び方は給与計算システムとは?機能・種類・比較の観点から個別開発の判断まで解説で整理しています。
時短・パートの復職者と複数の支払形態を抱える会社が個別開発を検討する基準
時短勤務やパートでの復職が毎月のように出て、月給制と時給制、当月払いと翌月払いが混在する会社では、17日・11日・15日の基準と随時改定の重なりを人が毎回確認することになります。勤怠システムの出勤日数を支払月ごとに取り込めない給与システムでは、判定のたびに転記が発生します。
勤怠からの日数の取り込み、随時改定との同時判定、届書データの電子申請までを1つの流れにしたい、という条件が2つ以上重なるなら、既存システムの改修や個別開発を検討する段階です。一創の人事・労務管理システム開発では、復職日と申出の記録、支払月単位の判定、届書データの出力を、既存の給与計算と勤怠の間に組み込むところから設計します。復職者が年に数人なら、個別開発は過剰です。
よくある質問
育児休業等終了時報酬月額変更届でよく出る質問です。
育児休業等終了時報酬月額変更届は必ず提出しなければなりませんか?
必須ではありません。健康保険法43条の2は、被保険者が事業主を経由して申し出たときに改定すると定めており、本人の申出がなければ届出は不要です。ただし、時短勤務で基本給が下がり2等級以上の差が出る場合は随時改定の要件を満たすことがあり、こちらは本人の希望に関係なく月額変更届の要否を判定する必要があります。
改定後の標準報酬月額はいつの給与から反映されますか?
改定は終了日の翌日が属する月から数えて4か月目の保険料からです。4月20日に育休を終えた場合、保険料が変わるのは7月分からです。前月分を当月の給与から引く会社では8月支給の給与から控除額が変わり、当月分を当月に引く会社では7月支給の給与から変わります。届出が遅れても改定月は変わらないため、差額は後の給与で精算します。
標準報酬月額が上がる場合も届け出られますか?
届け出られます。要件は改定前後で1等級以上の差があることで、上がる場合を除く定めはありません。ただし保険料が上がるため、本人が申し出る場面は限られます。復職後に昇給や手当の追加で固定的賃金が上がり、2等級以上の差が出る場合は、随時改定として月額変更届の対象になるかを先に判定してください。
育休明けに年金が減らないようにするにはどうすればよいですか?
厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書を出します。3歳未満の子を養育する期間は、年金額の計算で養育開始前の標準報酬月額が使われます。この特例は育休の開始で終わるため、復職時に改めて申し出てください。申出前の期間は2年までしか遡れません。健康保険の傷病手当金と出産手当金には同じ特例がない点も説明が必要です。
男性が短期の育休から復帰した場合も対象になりますか?
対象になります。育休の期間の長さは要件に含まれず、終了日に3歳未満の子を養育していればよいためです。1週間の育休から戻って残業が減り、報酬が1等級下がれば申し出られます。給与が育休前と変わらないなら等級の差が出ないため、届出の意味はありません。
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