令和8年度の雇用保険料率は、一般の事業で労働者負担5/1000、事業主負担8.5/1000、合わせて13.5/1000です。令和7年度の14.5/1000から、労使とも0.5/1000ずつ下がりました。本記事では、令和8年度の料率を事業の種類別に示したうえで、令和3年度からの推移と年度途中に変わった令和4年度の例、新しい料率を支給日ではなく賃金の締日で切り替える考え方を、厚生労働省の一次情報で整理します。後半では、給与システムの料率マスタを切り替える手順、4月の給与で改定漏れを見つける検算、年度更新で2つの料率を使い分ける境目まで扱います。
まとめ:令和8年度の雇用保険料率は一般13.5/1000、4月1日以降の締日の賃金から切替
令和8年4月1日から令和9年3月31日までの料率は、一般の事業が労働者5/1000・事業主8.5/1000、農林水産・清酒製造の事業が6/1000・9.5/1000、建設の事業が6/1000・10.5/1000です。月30万円の従業員なら、控除額は令和7年度の1,650円から1,500円に下がります。
実務で間違えやすいのは、金額よりも切り替える時期です。新しい料率は「4月に支給する給与から」ではなく、4月1日以降に締日が来る賃金から使う扱いが一般的です。末日締め・翌月25日払いの会社では、4月25日の支給分はまだ旧料率で、5月25日の支給分から新料率になります。給与システムでは料率を事業の種類と適用開始日の行で持ち、判定には支給日ではなく締日を渡す形にしておくと、毎年の改定を行の追加だけで済ませられます。
令和8年度の雇用保険料率を事業の種類別に整理した表と、労使の負担割合の内訳
料率は事業の種類で3つに分かれ、それぞれ労働者負担と事業主負担が決まっています。まず表で全体を確認します。
一般・農林水産清酒・建設3区分の労働者5〜6/1000、事業主8.5〜10.5/1000
厚生労働省の令和8年度 雇用保険料率のご案内に載っている料率を、令和7年度と並べると次のとおりです。
| 事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 | 令和7年度の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1000 | 8.5/1000 | 13.5/1000 | 14.5/1000 |
| 農林水産・清酒製造 | 6/1000 | 9.5/1000 | 15.5/1000 | 16.5/1000 |
| 建設の事業 | 6/1000 | 10.5/1000 | 16.5/1000 | 17.5/1000 |
3区分とも、令和7年度から労働者負担と事業主負担がそれぞれ0.5/1000下がり、合計で1/1000下がりました。下がったのは失業等給付・育児休業給付の保険料率で、労使が同じ率を負担する部分です。一般の事業では、令和7年度の5.5/1000から5/1000になっています。
事業主だけが負担する雇用保険二事業3.5/1000と建設の4.5/1000の内訳
事業主負担が労働者負担より大きいのは、雇用保険二事業の保険料率を事業主だけが負担するためです。令和8年度の二事業の率は、一般の事業と農林水産・清酒製造の事業が3.5/1000、建設の事業が4.5/1000で、いずれも令和7年度から据え置きです。
一般の事業の事業主負担8.5/1000は、失業等給付・育児休業給付の5/1000と二事業の3.5/1000の合計です。給与システムで事業主負担の見込み額を出すときは、8.5/1000を1つの数字で持つより、5/1000と3.5/1000に分けて持っておくと、どちらか一方だけが変わる年にも行を分けずに済みます。令和4年度は実際に二事業の率だけが先に変わりました。
園芸サービス・酪農・養鶏・養豚は農林水産でなく一般の事業の率を使う例外
同じリーフレットは、園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖、特定の船員を雇用する事業については、一般の事業の率を使うとしています。農業法人だから15.5/1000と決めつけると、酪農や養鶏の会社では1人あたり毎月1/1000分を多く控除することになります。
どの区分を使うかは、労働保険の成立時に届け出た事業の種類で決まります。給与システムの事業所マスタに持たせる区分は、年度更新の申告書に印字されている事業の種類と一致しているかを、4月の切替前に1度照らしておくと確実です。
雇用保険料率の推移:令和3年度から令和8年度までの変化と年度途中の改定
令和8年度の料率だけを見ても、なぜ料率マスタを日付で持つ必要があるのかは見えにくいものです。過去6年度の動きを並べると理由が分かります。
令和5年度15.5/1000から令和7年度14.5、令和8年度13.5へ2年連続引き下げ
厚生労働省が毎年度出しているリーフレットから、一般の事業の料率を抜き出しました。この期間の頂点は、令和5年度・令和6年度の15.5/1000です。
| 期間 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 3/1000 | 6/1000 | 9/1000 |
| 令和4年4月〜9月 | 3/1000 | 6.5/1000 | 9.5/1000 |
| 令和4年10月〜令和5年3月 | 5/1000 | 8.5/1000 | 13.5/1000 |
| 令和5年度・令和6年度 | 6/1000 | 9.5/1000 | 15.5/1000 |
| 令和7年度 | 5.5/1000 | 9/1000 | 14.5/1000 |
| 令和8年度 | 5/1000 | 8.5/1000 | 13.5/1000 |
出典は令和4年度、令和5年度、令和6年度、令和7年度の各リーフレットです。令和8年度の13.5/1000は、令和4年10月からの半年間と同じ水準に戻った形になります。
令和4年度は4月と10月の2回改定、この6年で年度途中に料率が変わった例
令和4年度は、4月に事業主負担の二事業分だけが0.5/1000上がり、10月に失業等給付の分が労使とも2/1000上がりました。1つの年度に料率が3種類あったことになります。
この年に困ったのは、料率を「年度」の単位で持っていた給与システムです。10月からの料率を入れる行が無く、年度の途中で料率を書き換えると、9月以前の給与を再計算したときに新しい料率で計算されてしまいます。年度更新でも、前期と後期で別の料率を使って確定保険料を出す必要がありました。料率を年度ではなく適用開始日で持つ設計は、この例外に備えるためのものです。
新しい雇用保険料率をいつの給与から使うか:支給日でなく賃金締切日で決める考え方
料率の数字は毎年リーフレットで確認できますが、どの給与から切り替えるかは、リーフレットには書かれていません。ここが担当者の間で解釈の割れやすいところです。
年度更新の手引きの「支払義務が具体的に確定した賃金」が締日で判定する根拠
厚生労働省の年度更新申告書の書き方(確定保険料の賃金集計表)は、令和7年度の賃金総額を「令和7年4月1日から令和8年3月31日までに使用したすべての労働者に支払われた賃金(支払義務が具体的に確定した賃金を含みます。)」の総額と説明しています。
月給や時給の賃金は、締日を迎えた時点で支払う額が確定します。このため、3月31日締めで4月25日に払う給与は、3月中に支払義務が確定した令和7年度の賃金として扱い、4月1日以降に締日が来る賃金から令和8年度の料率を使う、という運用が給与実務では広く採られています。法令の条文が締日を名指ししているわけではないので、締日と支払日の関係が特殊な会社は、管轄の労働局に確認してから設定してください。
末日締め翌月払い・20日締め当月払い・末日締め当月払いの切替月の比較
締日と支払日の組み合わせごとに、令和8年度の料率を最初に使う給与を並べると次のようになります。
| 締日・支払日 | 旧料率の最後の給与 | 新料率の最初の給与 |
|---|---|---|
| 末日締め・当月25日払い | 3月25日支給(3月31日締め) | 4月25日支給(4月30日締め) |
| 末日締め・翌月25日払い | 4月25日支給(3月31日締め) | 5月25日支給(4月30日締め) |
| 20日締め・当月末払い | 3月31日支給(3月20日締め) | 4月30日支給(4月20日締め) |
| 15日締め・当月25日払い | 3月25日支給(3月15日締め) | 4月25日支給(4月15日締め) |
注意したいのは2行目です。4月に支給する給与なのに旧料率を使うため、「4月支給分から新料率」と設定した給与ソフトでは1か月早く切り替わります。20日締めの会社は、3月21日から4月20日までの勤務のうち3月分を含んでいても、締日が4月なので全額に新料率をかけます。
賞与と遅れて払う残業代は、締日の無い支給で料率の判定日をどう持つか
賞与には賃金の締日がありません。支給額と支給日が決まった時点で支払義務が確定するため、支給日が4月1日以降なら新料率とする扱いが一般的です。3月に支給額を決めて4月上旬に払う決算賞与のように、決定と支給が年度をまたぐ場合は判断が割れるので、労働局に確認した結果を記録に残しておきます。
3月分の残業代の未払いを5月に精算する場合も同じ問題が起きます。給与システムでは、支給ごとに「料率の判定日」を持ち、通常は締日を入れ、例外のときだけ担当者が上書きできる形にしておくと、判断の記録と計算結果が一致します。
給与システムの料率マスタを切り替える手順と、4月給与で改定漏れを見つける検算
競合の解説は「給与ソフトの設定を忘れずに」で終わるものがほとんどです。ここでは、料率マスタをどう持ち、切替後にどう確かめるかを具体的に示します。
料率マスタは事業の種類×適用開始日の行で持ち、判定日には支給日でなく締日を渡す
料率マスタは、次の列を1行にして持ちます。
| 列 | 令和8年度・一般の事業の値 |
|---|---|
| 事業の種類 | 一般の事業 |
| 適用開始日 | 2026-04-01 |
| 労働者負担率 | 5/1000 |
| 事業主負担率(失業等給付・育児休業給付) | 5/1000 |
| 二事業率 | 3.5/1000 |
計算時は「事業の種類が一致し、適用開始日が判定日以前の行のうち、最も新しい行」を引きます。判定日に支給日を渡すか締日を渡すかで、前の章の2行目の会社の計算結果が変わるため、判定日に渡す日付の区別が必要です。率は0.005のような小数でなく、分子と分母の整数で持つと、端数処理のずれを防げます。この理由は雇用保険料の計算方法と50銭の端数処理で実例とともに解説しています。
新料率の公表から4月最初の締日までに済ませる料率マスタ切替の5工程
料率の切替は、次の順で進めると漏れが出にくくなります。
- 厚生労働省のリーフレットで、自社の事業の種類の労働者負担率・事業主負担率・二事業率を確認する
- 料率マスタに適用開始日2026-04-01の行を追加する(旧年度の行は消さずに残す)
- 給与システムの判定日の設定が締日になっているかを確認する
- 4月1日以降に締日が来る最初の給与を、テスト環境か計算結果のプレビューで1人分計算する
- 確定後、次の章の検算で全従業員分を確かめ、結果を年度更新の資料と一緒に保管する
避けたいのは、2の工程で旧年度の行を上書きすることです。上書きすると、3月以前の給与の再計算や、年度更新で令和7年度分を集計し直すときに、令和8年度の料率で計算されてしまいます。
控除額÷賃金総額の比率で改定漏れを検知する、1人30万円で150円差の検算
切り替えたはずの料率が本当に効いているかは、控除額を賃金総額で割った比率で確かめられます。賃金総額300,000円の従業員なら、令和8年度の料率で1,500円、令和7年度のままなら1,650円で、1人あたり150円の差が出ます。
全従業員分を確かめるときは、4月1日以降に締日が来る最初の給与について「雇用保険料控除額÷賃金総額」を1人ずつ出し、0.0050前後に収まっているかを見ます。50銭の端数処理があるため厳密には一致しませんが、0.0055に近い人がいれば旧料率のまま、0に近い人がいれば被保険者の区分の設定漏れです。被保険者でない人が0になるのは正常なので、区分の判定は雇用保険の加入条件と適用除外と突き合わせてください。
年度更新で令和7年度確定分と令和8年度概算分の2つの料率を使い分ける境目
月々の控除とは別に、会社は年に1回、1年分の賃金総額に料率をかけて保険料を申告します。このとき料率の切替と賃金の年度の振り分けが、もう一度問題になります。
令和8年年度更新:確定分14.5/1000・概算分13.5/1000の2料率を1枚で併用
神奈川労働局の労働保険の料率の案内は、令和8年度の概算保険料は新しい料率で、令和7年度の確定保険料はこれまでの料率で計算するよう求めています。一般の事業なら、令和7年度の賃金総額に14.5/1000をかけて確定保険料を、令和8年度の賃金総額の見込み額に13.5/1000をかけて概算保険料を出します。
年間の賃金総額が1億円の会社なら、雇用保険分は確定保険料が145万円、概算保険料が135万円で、概算は10万円下がります。そのうち事業主負担は8.5/1000の85万円、令和7年度の9/1000なら90万円だったので、会社の負担は年5万円の減少です。
3月締め4月払いの給与は令和7年度の賃金総額に入れる、集計の境目と締日の関係
前の章で見た締日の考え方は、年度更新の集計にもそのまま使います。3月31日締め・4月25日払いの給与は、支払義務が3月中に確定しているので令和7年度の賃金総額に入れ、14.5/1000で確定保険料を計算します。月々の控除で旧料率を使った給与と、確定保険料で旧料率をかける賃金が、同じ範囲にそろうわけです。
支給日で年度を振り分けて集計すると、この給与が令和8年度に入り、控除では旧料率、申告では新料率という食い違いが起きます。給与システムから年度更新用の集計を出すときは、支給日ではなく締日で年度を切る集計になっているかを確かめてください。年度更新の時期と給与計算の年間の流れは給与計算の業務の流れと年間スケジュールで整理しています。
料率改定を毎年手作業で追う会社と、給与システムで料率と判定日を持つ会社の境界
雇用保険料率の改定は年に1回、多くても2回です。全ての会社に仕組みづくりが要るわけではありません。
事業の種類が1つで締日も1つなら既製の給与ソフトの年次更新で足りる理由
事業の種類が一般の事業だけで、全従業員の締日が同じ会社なら、既製の給与計算ソフトの料率設定を年に1回更新すれば足ります。確かめるのは、切替の判定が締日になっているかと、4月の検算の2点だけです。この規模で雇用保険料率のためだけに個別開発をするのは過剰です。
建設と一般の混在、拠点ごとに異なる締日がある会社は料率マスタから作り直す判断
反対に、建設の事業と一般の事業の事業所を両方持つ会社や、拠点ごとに締日が違う会社では、事業所単位で料率と判定日を持たないと切替時期がそろいません。1つのソフトに全社を載せて「4月支給から」と一律で設定している場合、ある拠点では合い、別の拠点では1か月ずれる、という誤りが毎年起きます。
こうした会社では、料率マスタを事業の種類と適用開始日で持ち、事業所ごとの締日から判定日を決める形に作り直すと、改定時の作業は行の追加だけで済む仕組みです。一創では、給与・勤怠データと保険料の計算をつなぐ人事・労務管理システム開発として、既存の給与ソフトを残したまま料率マスタや年度更新の集計を補う構成も含めてご相談を承っています。健康保険・厚生年金の側の料率切替は、対象月と支給月の考え方が違うため、社会保険料の計算方法と料率改定で別に扱っています。
よくある質問
令和8年度の雇用保険料率について、給与担当者から寄せられやすい質問に、厚生労働省と労働局の資料に沿って回答します。
令和8年度の雇用保険料率はいくらですか?
令和8年4月1日から令和9年3月31日までの料率は、一般の事業で労働者負担5/1000・事業主負担8.5/1000・合計13.5/1000です。農林水産・清酒製造の事業は6/1000・9.5/1000・15.5/1000、建設の事業は6/1000・10.5/1000・16.5/1000です。園芸サービス、酪農、養鶏、養豚などは、農林水産ではなく一般の事業の率を使います。
令和8年度の雇用保険料率は引き上げですか、引き下げですか?
引き下げです。令和7年度から、3区分とも労働者負担と事業主負担が0.5/1000ずつ、合計で1/1000下がりました。令和5年度・令和6年度の一般の事業は15.5/1000、令和7年度は14.5/1000だったので、2年続けての引き下げです。事業主だけが負担する二事業の率は3.5/1000(建設は4.5/1000)で変わっていません。
新しい雇用保険料率はいつの給与から適用しますか?
4月1日以降に締日が来る賃金から適用する扱いが一般的です。末日締め・当月25日払いなら4月25日支給分から、末日締め・翌月25日払いなら5月25日支給分からになります。厚生労働省の年度更新の手引きが、年度の賃金に「支払義務が具体的に確定した賃金」を含めているためです。判断に迷う場合は管轄の労働局に確認してください。
月給30万円の場合、令和8年度の雇用保険料はいくらになりますか?
一般の事業なら、賃金総額300,000円×5/1000で、従業員の控除額は1,500円です。令和7年度の5.5/1000では1,650円だったので、150円下がります。会社負担は8.5/1000で2,550円です。雇用保険料は基本給ではなく、残業代や通勤手当を含めた総支給額にかけるため、実際の控除額は月ごとに変わります。
4月の給与を旧料率のまま控除してしまった場合はどうすればよいですか?
令和8年度の料率で計算し直した額との差額を、本人に返します。1人30万円なら150円の過大控除です。翌月の給与で精算する場合は、どの月の差額かを明細や記録に残しておくと、年度更新の集計で説明がつきます。原因が「4月支給分から」という設定なのか、料率マスタの行の追加漏れなのかを確かめ、翌年度に同じ誤りが起きないよう判定日の設定も見直してください。
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