決算賞与とは、事業年度の業績が見えた期末に支給を決める賞与です。期末までに額を決めて通知し、翌期に入ってから払っても、法人税法施行令第72条の3の要件を満たせば当期の損金になります。この記事では、損金算入の3要件を条文と国税庁の通達で確認したうえで、支給日在籍要件を付けると要件を欠く理由、決算賞与はいつまでに払うか、平均額の目安、社会保険料と源泉所得税の扱い、通知の記録と未払計上を給与システムと会計システムでどう管理するかまで解説します。
まとめ:決算賞与は期末までの全員への通知と1か月以内の支払で当期の損金になる
決算賞与を当期の損金にする要件は3つです。期末日までに支給額を各人別に、同時期に支給するすべての従業員へ通知すること、期末の翌日から1か月以内に通知した額を全員へ払うこと、通知した期に損金経理をすることです。3月決算なら、3月31日までに通知し、4月30日までに払います。
「支給日に在籍している人だけに払う」という定めを付けると、その通知は要件の通知に当たりません。決算賞与では、退職予定者を含めて通知した全員へ払う前提で対象者を決めます。
当期の損金になるのは賞与そのもので、会社負担の社会保険料は支給月の期の損金です。通知の日付と相手、支給額、支払日を記録として残せるかどうかが税務調査での分かれ目になるため、対象者が数十人を超える会社は給与システムと会計システムの連携で管理します。
決算賞与とは:期末の業績を見て支給を決める賞与と夏冬の賞与との違い
決算賞与は法律上の用語ではありません。税務では使用人に払う賞与の一種として、損金に入れる時期が条文で決まっています。
法人税法施行令第72条の3が定める損金算入時期の3区分と決算賞与の位置
e-Gov法令検索の法人税法施行令第72条の3は、使用人に払う賞与の損金算入時期を3つに分けています。
| 区分 | 条件 | 損金に入る期 |
|---|---|---|
| 1号 | 就業規則等の支給予定日が到来・通知済み・損金経理 | 支給予定日か通知日の遅い方の期 |
| 2号 | 全員へ各人別に通知・1か月以内に支払・損金経理 | 通知をした日の期 |
| 3号 | 上記以外 | 実際に払った日の期 |
期末に額を決めて翌期に払う決算賞与は、2号の要件を満たすかどうかで結論が変わります。満たせば通知した期の損金に、満たさなければ3号として払った翌期の損金になります。
夏冬の賞与・寸志との違いは支給を決める時期と原資で、法律上の区分は同じ
夏冬の賞与は就業規則で支給時期を定め、算定期間の評価をもとに額を決めます。決算賞与は期末の利益を見てから支給するかどうかと原資を決めるため、毎年払うとは限りません。社会保険や源泉所得税では、どちらも同じ「賞与」として扱われます。賞与の定義と法律ごとの区分は賞与とは:法律ごとの定義とボーナスとの違い、就業規則の定め方と給与システムの支給区分設計で整理しています。
期末に額が確定していない賞与を見積もって計上する賞与引当金は、賞与引当金を扱う別の記事で詳しく解説します。業績に連動して額が決まる賞与の設計は、業績賞与を扱う別の記事で詳しく解説します。
決算賞与はいつ払うか:3月決算なら4月30日、12月決算なら1月31日が期限
2号の支払期限は「事業年度終了の日の翌日から1か月以内」です。3月31日が期末の会社は4月1日から数えて4月30日まで、12月31日が期末の会社は1月31日までに払います。期末の数日前に通知し、翌月の給与日と同じ日に振り込む日程にすると、この期限に収めやすくなります。
期限を1日でも過ぎると、2号の要件を欠いて払った期の損金になります。決算の日程と申告期限の関係は決算とは?種類と期限・流れを法律別に整理、会計システムで締める仕組み【2026年版】で確認できます。
決算賞与の平均額に公的な統計はなく、夏季賞与の水準と利益から原資を決める
決算賞与だけを切り出して集計した公的な統計は、厚生労働省の毎月勤労統計にも見当たりません。毎月勤労統計は賞与を「特別に支払われた給与」としてまとめて集計しており、決算賞与を区別していないからです。参考になるのは夏季賞与の水準で、毎月勤労統計調査の令和7年9月分結果速報等の特別集計では、2025年夏季の支給事業所の一人平均は426,337円でした。
額の決め方は、当期の税引前利益の見込みから原資の上限を決め、基本給の月数や評価で配分する順にします。社員1人あたり何か月分と先に決めるより、原資を先に決めるほうが、キャッシュの流出額を経営側で管理できます。
損金算入の3要件:各人別の全員通知・1か月以内の支払・通知した期の損金経理
国税庁のタックスアンサーNo.5350は、2号の要件を3つの項目で示しています。どれか1つでも欠けると、損金に入る期が翌期へずれます。
要件1 通知:同時期に支給を受ける全員へ、期末日までに各人別の額を伝える
通知は「各人別に」「同時期に支給を受けるすべての使用人に対して」行います。部署ごとの総額だけを伝える、管理職にだけ先に伝える、といった方法では要件を満たしません。通知の方法は条文に定めがなく、書面、メール、社内システムのいずれでもかまいません。
問題になるのは、期末日までに通知したことを後から示せるかどうかです。税務調査では通知書の控えや送信記録の日付を確認されます。通知書に支給額と支給予定日を書き、受け取った本人の確認の記録まで残すと、日付の立証に困りません。
要件2 支払:通知した全員に、通知した額どおりを1か月以内に払う
条文は「通知をした金額を当該通知をした全ての使用人に対し」払うことを求めています。通知した後に業績の見込みが下がって額を減らした場合や、一部の人への支払が期限に遅れた場合は、要件を欠きます。
通知から支払までの間に退職した人がいても、通知した額を払う必要があります。この点が、次の章で扱う支給日在籍要件との衝突につながります。
要件3 損金経理:通知した期に未払賞与として費用に計上する仕訳の形
損金経理とは、決算で費用として計上することです。期末に次の仕訳を入れ、翌期の支払時に取り崩します。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 3月31日(通知・計上) | 賞与 5,000,000円 | 未払費用 5,000,000円 |
| 4月25日(支払) | 未払費用 5,000,000円 | 普通預金・預り金 5,000,000円 |
支払時の貸方は、源泉所得税と本人負担の社会保険料を預り金に分け、残りを普通預金とします。期末に入れる他の決算整理仕訳との並びは決算整理仕訳とは?主な9項目の仕訳一覧と期末商品棚卸高の設例、税務の要件と会計システムで定型化する範囲【2026年版】で扱っています。
支給日在籍要件と決算賞与:もらえない人を作ると通知の要件を欠く理由
夏冬の賞与で一般的な「支給日に在籍している人だけに払う」という定めは、決算賞与ではそのまま使えません。
基本通達9-2-43:支給日在籍者だけに払う定めの通知は要件の通知に当たらない
法人税基本通達の第8款 使用人給与の9-2-43は、支給日に在職する使用人だけに賞与を払うこととしている場合、その支給額の通知は2号イの通知に当たらないとしています。支給日までに退職すればもらえない定めでは、通知の時点で各人への支給が確定していないと解されています。
就業規則の賞与の条文に支給日在籍要件があり、決算賞与にも同じ条文を当てている会社は、通知書をどれだけ整えても2号を満たしません。決算賞与は別の条文にするか、通知書に「通知した額は支給日前に退職しても支給する」と明記して、在籍要件を外します。
決算賞与をもらえる人・もらえない人は、通知の時点の対象者の決め方で決まる
決算賞与をもらえない人を作れるのは、通知の前の段階です。算定期間の在籍月数が一定未満の人、休職中の人、期末日時点で退職している人を支給の対象から外す基準は、通知の前に就業規則や支給要領で決めておけば問題ありません。
通知した後で外すことはできません。退職の申出が出ている人を通知の対象に含めるかどうかは期末までに判断し、含めたら支払日までに退職しても払います。同じ通達の9-2-44により、パートタイマーや臨時雇いを正社員と区分して賞与を払う会社は、区分ごとに通知したかどうかを判定できます。ただし継続して雇用し、正社員と同じく賞与の対象にしている人は区分できません。
役員の決算賞与は使用人賞与と別枠で、原則として損金に入らない
第72条の3が扱うのは使用人の賞与で、役員には別の規定が当たります。国税庁のタックスアンサーNo.5211によれば、役員給与のうち定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも当たらないものは損金に入りません。期末の業績を見て額を決める役員の決算賞与は、事前に額と時期を届け出る事前確定届出給与に当たらないため、損金不算入です。
使用人兼務役員に払う賞与のうち使用人の職務に対する部分は、使用人の賞与として第72条の3の対象になります。役員に払う賞与の届出と支給管理は、役員賞与を扱う別の記事で詳しく解説します。
社会保険料と源泉所得税:決算賞与を翌期に払うときの計算と損金の期ずれ
決算賞与の税務の要件を満たしても、社会保険料と源泉所得税の扱いは支払った日で決まります。期末と支払日が別の期になるため、計上の時期がずれます。
会社負担の社会保険料は支給した月の期の損金で、期末に未払計上しても入らない
法人税基本通達の9-3-2は、会社が負担する健康保険料と厚生年金保険料を、保険料の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金としています。4月に払う決算賞与の保険料は4月分なので、3月決算の会社では翌期の損金です。国税庁の質疑応答事例も、月末が来ていない月の保険料を見積もって計上することは認めていません。
協会けんぽ東京支部の令和8年3月分からの保険料額表で計算すると、40歳未満の人に50万円の決算賞与を4月に払う場合、会社負担は健康保険料24,625円、子ども・子育て支援金575円、厚生年金保険料45,750円の合計70,950円です。10人に払えば709,500円が翌期の費用になり、当期の節税効果の計算には入りません。
社会保険の賞与は年3回以下で、決算賞与を足して4回になると扱いが変わる
日本年金機構の「従業員に賞与を支給したときの手続き」は、名称を問わず年3回以下の支給のものを賞与としています。夏冬の賞与に決算賞与を足すと年3回です。四半期ごとの賞与がある会社で決算賞与を足すと4回を超え、賞与ではなく報酬として標準報酬月額の側で扱う必要が出ます。
賞与として扱う場合は、支払日から5日以内に被保険者賞与支払届を出します。標準賞与額の上限と同じ月に2回払ったときの合算は賞与の社会保険料:標準賞与額の計算と573万円・150万円の上限、令和8年度の料率と給与システムでの管理で解説しています。
源泉所得税は支払日で決まり、12月決算の1月払いは翌年分の表と年末調整に入る
源泉所得税は通知の日ではなく支払日に徴収し、国税庁のタックスアンサーNo.2505のとおり原則として払った月の翌月10日までに納めます。率はNo.2523のとおり、前月中に払った給与をもとに算出率の表で決まります。4月25日に払うなら、使うのは3月中に払った給与です。
12月決算の会社が1月に払うと、算出率の表は支払日の年の版を使い、源泉徴収票と年末調整も翌年分に入ります。令和8年分の算出率の表は令和7年分と区切りが変わっており、年をまたぐ支払では表の年版を取り違えやすい点に注意が必要です。控除額の計算手順と計算例は賞与計算の方法:支給額の決定から社会保険料・源泉所得税・賞与支払届までの手順と令和8年の計算例で、算出率の表の読み方は給与・賞与・報酬ごとに異なる源泉所得税の計算体系と実務上の使い分けで扱っています。
給与システムと会計システムで3要件を満たす通知記録・未払計上・支払期限の管理
決算賞与の失敗は、計算の誤りより記録の欠けで起きます。期末は決算作業と重なるため、通知と計上と支払を別々の担当者が別々のファイルで扱うと、どこかが抜けます。
通知の記録として残す6項目と、期末日を過ぎた通知を止める仕組み
税務調査で2号の要件を示すには、1人ずつ次の項目が揃っている必要があります。
- 従業員番号と氏名、通知の対象とした区分(正社員・パートなど)
- 通知した支給額と支給予定日
- 通知した日時と方法(書面・メール・社内システム)
- 本人が受け取ったことの確認の記録
- 実際に払った日と金額
- 通知後に退職した人の退職日と、支払を済ませた記録
社内システムで通知するなら、通知日時をサーバー側で記録し、期末日を過ぎた日付では通知を送れないようにします。後から日付を書き換えられる表計算の列では、日付の証明として弱くなります。
給与システムの賞与データから未払計上の仕訳を起こし、支払額と突き合わせる
未払計上の額は、給与システムに登録した通知額の合計と一致していなければなりません。給与システムの賞与データを期末日に締めて、合計額を会計システムへ仕訳として渡す連携にすると、手で集計した額と通知額がずれる事故を防げます。支払後は、給与システムの支給実績と未払費用の残高を突き合わせ、差額が0円になることを確認します。
給与システムと会計システムのどちらを仕訳の起点にするかは、経理システムと会計システムの違い:業務範囲と仕訳の起点で分ける選定基準で整理しています。決算賞与の場合は通知額の元データが給与側にあるため、給与側を起点にするほうが整合を取りやすくなります。
表計算で足りる会社と、通知記録と連携の仕組みを組む会社の境界
対象者が10人前後で、社長が全員に通知書を手渡しできる会社は、通知書の控えと表計算で足ります。通知書に日付と受領の署名をもらい、支払の振込記録と一緒に7年分保管しておけば、要件の立証に困りません。
対象者が数十人を超える、拠点が複数ある、パートと正社員で支給の区分が違う会社は、通知の漏れや期限超過が起きやすくなります。賞与計算に対応した製品の機能は給与計算システムとは?機能・種類・比較の観点から個別開発の判断まで解説で確認できます。製品が通知の記録や会計システムへの仕訳連携を持たない場合は、周辺の仕組みを組む価値があるケースです。一創の人事・労務管理システム開発では、決算賞与の通知と受領確認の記録、期末日での締め、会計システムへの未払計上の連携を、既存の給与計算の周辺に組み込むところから設計します。決算賞与を出すのが数年に1回で対象者も少ないなら、個別開発は過剰です。
よくある質問
決算賞与についてよく出る質問です。
決算賞与は必ず支給しなければなりませんか?
就業規則や労働契約で決算賞与の支給を約束していなければ、支給する義務はありません。業績が良い年だけ払う会社がほとんどです。ただし「利益が一定額を超えたら決算賞与を払う」と規程に書いている場合は、その条件を満たすと支給の義務が生まれます。規程に書く前に、利益が出なかった年の扱いまで決めておきます。
通知した後で業績が下がった場合、決算賞与の額を減らせますか?
減らすこと自体は労使の合意があれば可能ですが、税務では通知した額どおりに払っていないため2号の要件を欠きます。その場合は3号として、損金に算入するのは実際に払った翌期です。期末の数字が固まる前に通知すると起きやすいので、通知は利益の見込みが確定してから行います。
決算賞与の支払が期末から1か月を過ぎたらどうなりますか?
通知した期の損金にはならず、払った日の期の損金になります。賞与そのものが損金にならないわけではありませんが、当期の利益を減らす目的は果たせません。資金繰りで期限内に払えない見込みなら、通知の前に額を下げるか、翌期の賞与として扱います。
決算賞与にも社会保険料と源泉所得税はかかりますか?
かかります。社会保険では年3回以下の支給なら賞与として標準賞与額に料率を掛け、支払日から5日以内に賞与支払届を出します。雇用保険料は支給額に料率を掛けて算出する仕組みです。源泉所得税は前月の給与から算出率の表で率を決め、払った月の翌月10日までに納めます。
決算賞与の通知はメールや社内システムでもよいですか?
法人税法施行令は通知の方法を定めていないため、メールや社内システムでもかまいません。求められるのは、各人別の額を、同時期に支給するすべての人へ、期末日までに伝えたと示せることです。送信日時が記録に残り、後から書き換えられない方法を選びます。
関連記事
- 賞与とは:法律ごとの定義とボーナスとの違い、就業規則の定め方と給与システムの支給区分設計:決算賞与を含む賞与の定義と、就業規則での支給条件の書き方を扱っています。
- 賞与計算の方法:支給額の決定から社会保険料・源泉所得税・賞与支払届までの手順と令和8年の計算例:決算賞与から引く控除額の計算手順を確認できます。
- 決算整理仕訳とは?主な9項目の仕訳一覧と期末商品棚卸高の設例、税務の要件と会計システムで定型化する範囲【2026年版】:未払賞与を含む期末の決算整理仕訳の全体を整理しています。
- 給与計算システムとは?機能・種類・比較の観点から個別開発の判断まで解説:賞与の管理を含む給与計算システムの機能を解説しています。
- 給与計算とは?業務の流れと年間スケジュール・システム化の判断基準を解説:決算賞与を組み込む給与計算の年間スケジュールを確認できます。