源泉所得税は、支払う所得の種類ごとに計算のしかたが決まっています。毎月の給与は「給与所得の源泉徴収税額表」の月額表、賞与は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」、原稿料や弁護士・税理士への報酬は10.21%、退職金は退職所得の速算表を使います。
この記事では、国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」を使って、それぞれの計算手順を計算例つきで示します。給与計算ソフトやExcelで使う算式は、国税庁の月額表と全行で突き合わせた結果も載せます。令和8年度税制改正で基礎控除が引き上げられましたが、令和8年中の毎月の源泉徴収は改正前の表のままで、表が変わるのは令和9年1月の支払からです。
まとめ:源泉所得税の計算方法の要点
- 給与は「社会保険料等を引いた後の金額」と「扶養親族等の数」で月額表の甲欄を引きます。扶養控除等申告書を出していない人は乙欄、日雇いで2か月以内の人は日額表の丙欄です。
- 賞与は、前月の給与(社会保険料等控除後)から算出率を求め、賞与の額(社会保険料等控除後)に掛けます。前月に給与が無い場合と、賞与が前月の給与の10倍を超える場合は月額表で計算します。
- 原稿料・講演料や弁護士・税理士への報酬は、1回の支払が100万円以下なら10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。司法書士は1回1万円、外交員は月12万円を引いてから掛けます。退職金は「退職所得の受給に関する申告書」が出ていなければ一律20.42%です。
- 給与計算ソフトやExcelでは、税額表の代わりに電算機計算の特例の算式を使えます。表の税額とずれることがあり、月額表の行の中ほどの金額なら±10円程度ですが、行の端の金額では最大320円開きます(令和8年分)。差は年末調整で精算され、どちらも正しい計算です。乙欄にも国税庁が公表する算式があり、こちらは表と1円単位で一致します。
- 令和8年分の税額表は令和8年12月に支払う給与まで使い、基礎控除104万円などの改正は12月の年末調整でまとめて精算します。令和9年分の表では、扶養親族等0人で甲欄の税額が0円になる範囲が、月105,000円未満から111,000円未満に上がります。
支払の種類別に見る源泉所得税の計算方法
源泉所得税の額は、支払う所得の種類ごとに使う表と税率が決まっています。どの計算方法を使うかは、支払の名目ではなく所得税法上の所得の区分で判断します。
| 支払の種類 | 使う表・税率 | 計算の起点 |
|---|---|---|
| 毎月の給与 | 月額表(甲欄・乙欄) | 社会保険料等控除後の給与 |
| 日払い・週払い・日雇賃金 | 日額表(甲欄・乙欄・丙欄) | その日の社会保険料等控除後の給与 |
| 賞与 | 賞与の算出率の表 | 前月の社会保険料等控除後の給与 |
| 原稿料・講演料・弁護士や税理士の報酬 | 10.21%(100万円超の部分20.42%) | 1回の支払額 |
| 退職金 | 退職所得の速算表(申告書なしは20.42%) | 退職所得控除後の金額の2分の1 |
| 非居住者への給与・報酬 | 20.42%(租税条約で軽減あり) | 支払額 |
どの税率にも、所得税に2.1%を上乗せした分が含まれています。10.21%は所得税10%と復興特別所得税(10%×2.1%)の合計です。令和9年1月1日以後は復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれますが、合計の2.1%は変わらないため、10.21%・20.42%という率と計算方法はそのままです。内訳の変更は復興特別所得税とは?2.1%の計算と払わない人、2047年まで延長された期間と会社員の負担額で整理しています。
毎月の給与:月額表で税額を求める手順
月給制の給与は、月額表に「社会保険料等控除後の給与等の金額」と「扶養親族等の数」を当てはめて税額を読み取ります。
社会保険料等控除後の金額と扶養親族等の数の出し方
まず、その月の給与の総支給額から非課税の通勤手当などを除き、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの社会保険料等を差し引きます。月額表の左端の金額欄はこの控除後の金額で引きます。
次に、扶養控除等申告書に記載された扶養親族等の数を数えます。令和8年分の税額表でいう扶養親族等は、源泉控除対象配偶者(本人の所得見積額900万円以下で、配偶者の所得見積額95万円以下)と源泉控除対象親族(控除対象扶養親族と、19歳以上23歳未満の特定親族のうち所得見積額が100万円以下の人)です。本人が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に当たるときや、同一生計配偶者・扶養親族が障害者なら1人、同居特別障害者ならさらに1人を加算します。16歳未満の子は通常の扶養人数には含めませんが、障害者に該当する場合の人数加算は対象です。
甲欄・乙欄・丙欄の選び方
どの欄を使うかは、扶養控除等申告書の提出の有無と雇用の形で決まります。
| 欄 | 対象 | 令和8年分で税額0円の範囲 |
|---|---|---|
| 甲欄(月額表) | 扶養控除等申告書を出した人 | 扶養0人:月105,000円未満(社保等控除後) |
| 乙欄(月額表) | 申告書を出していない人・2か所目の勤務先 | 0円の範囲なし(105,000円未満は3.063%) |
| 丙欄(日額表) | 日雇いで同じ支払者から2か月以内 | 日9,800円未満 |
扶養控除等申告書は1人につき1か所の勤務先にしか出せないため、掛け持ちのアルバイトでは2か所目以降が乙欄になります。乙欄は年末調整の対象外で、引かれすぎた分は確定申告でしか戻りません。乙欄の還付はダブルワークの確定申告|バイト掛け持ちで乙欄の所得税が戻る条件と還付の時期【令和8年分】で扱っています。
丙欄は、日々雇い入れられ、働いた日ごとに支払を受ける日雇賃金に使います。同じ支払者から継続して2か月を超えて支払われた場合、超えた期間の分は日雇賃金に当たらないため、甲欄か乙欄に切り替えます。
計算例:社会保険料等控除後30万円・扶養親族等1人
総支給額345,000円(非課税の通勤手当は除く)、社会保険料等45,000円、扶養親族等1人の従業員の例です。
- 社会保険料等控除後の金額=345,000円−45,000円=300,000円
- 月額表の「299,000円以上302,000円未満」の行を探す
- 甲欄の扶養親族等1人の列と交わる金額=6,320円(令和8年分)
同じ行の乙欄は53,600円です。扶養控除等申告書の提出が漏れているだけで、毎月の天引きが47,280円多くなります。入社時に申告書を回収できていないと乙欄で計算することになるので、最初の給与計算までに提出を受けておきます。
電算機計算の特例:税額表を使わず算式で求める方法
給与計算ソフトやExcelで計算する場合は、月額表の甲欄の代わりに財務省告示「電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する方法」の算式を使えます。月額表の乙欄には告示の特例はありませんが、国税庁が乙欄用の計算式を別に公表しています。
甲欄の算式:4つの別表で課税給与所得金額を出す
社会保険料等控除後の金額Aから、給与所得控除・基礎控除・配偶者(特別)控除・扶養控除の月額を差し引いた残額(課税給与所得金額B)に税率を掛けます。
| Aの範囲(令和8年分) | 給与所得控除の額 |
|---|---|
| 158,333円以下 | 54,167円 |
| 158,334円〜299,999円 | A×30%+6,667円 |
| 300,000円〜549,999円 | A×20%+36,667円 |
| 550,000円〜708,330円 | A×10%+91,667円 |
| 708,331円以上 | 162,500円 |
基礎控除の額は、Aが2,120,833円以下なら48,334円、2,120,834〜2,162,499円なら40,000円、2,162,500〜2,204,166円なら26,667円、2,204,167〜2,245,833円なら13,334円、2,245,834円以上なら0円です。配偶者(特別)控除は源泉控除対象配偶者がいれば31,667円、扶養控除は31,667円×源泉控除対象親族の数です。本人が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に当たる場合などは、税額表と同じように1人ずつ加えて数えます。給与所得控除の1円未満の端数は切り上げます。
| 課税給与所得金額B | 税額の算式 |
|---|---|
| 162,500円以下 | B×5.105% |
| 162,501円〜275,000円 | B×10.210%−8,296円 |
| 275,001円〜579,166円 | B×20.420%−36,374円 |
| 579,167円〜750,000円 | B×23.483%−54,113円 |
| 750,001円〜1,500,000円 | B×33.693%−130,688円 |
| 1,500,001円〜3,333,333円 | B×40.840%−237,893円 |
| 3,333,334円以上 | B×45.945%−408,061円 |
求めた税額の10円未満は四捨五入します。前の章と同じA=300,000円・扶養親族等1人なら、給与所得控除96,667円、基礎控除48,334円、扶養控除31,667円を引いてB=123,332円、税額は123,332円×5.105%=6,296.1円で、四捨五入して6,300円です。この特例は前月に通常の給与がない場合や、賞与が前月の通常給与の10倍を超える場合の賞与にも使えます。
税額表との差:表で0円の帯でも算式では税額が出る
算式の税額は月額表と一致しないことがあります。国税庁「月額表の甲欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算の特例について」は、税額表が「175,000円以上177,000円未満」の帯を176,000円として計算しているのに対し、算式はその月の金額そのもので計算するためだと説明しています。同じ資料の計算例では、A=175,000円・源泉控除対象配偶者と親族1人の場合、月額表は250円、算式は210円です。差は年末調整で精算されます。
令和8年分の月額表(105,000円〜740,000円未満の231行×扶養0〜7人)について、算式の税額を表の値と比べました。各行の中間の金額では、1,848か所のうち1,473か所が一致し、368か所が±10円の差です。差が20円を超えた7か所は、いずれも表で税額0円の帯で、「305,000円以上308,000円未満・扶養5人」は表の0円に対し算式では100円です。行の端の金額では差が広がり、最大320円でした。「737,000円以上740,000円未満・扶養1人」は表が64,900円、算式では737,000円で64,600円、739,999円で65,220円です。
パート・アルバイトの0円ラインも同じです。扶養親族等0人で社会保険料等控除後104,000円の月は、月額表なら0円ですが、算式では80円が引かれます(令和8年分。算式で0円になるのは102,598円以下)。年の途中で表から算式へ切り替えると、同じ人の税額が月によってずれて問い合わせを受けやすいので、切り替えるなら1月支給分からにします。
乙欄の算式:計算基準額を2.5倍・1.5倍して差を取る
乙欄は、主たる給与と従たる給与の合計に対する税額から、主たる給与だけの税額を引く考え方で作られています。国税庁「月額表の乙欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算について」(令和8年分)の手順は次のとおりです。
- 社会保険料等控除後の金額が105,000円未満なら、その3.063%(1円未満切捨て)で終わり
- 105,000円以上740,000円以下なら、月額表の行の下限(計算基準額)に直す。221,000円未満は105,000円から2,000円刻み、221,000円以上は3,000円刻み
- 計算基準額×2.5と×1.5のそれぞれから給与所得控除と基礎控除を引き、5%〜40%の税率(復興特別所得税を含まない率)で税額を出す
- 2つの税額の差を100円単位に丸め(50円未満切捨て・50円以上切上げ)、1.021を掛けて同じように100円単位に丸める
社会保険料等控除後300,000円なら、計算基準額は299,000円です。×2.5の747,500円から給与所得控除162,500円と基礎控除48,334円を引いた536,666円に「20%−35,625円」で71,708円、×1.5の448,500円から126,367円と48,334円を引いた273,799円に「10%−8,125円」で19,254円です。差の52,454円を52,500円に丸め、×1.021の53,602.5円を丸めて53,600円になり、月額表の乙欄と一致します。
この手順を令和8年分の月額表の231行すべてに当てはめたところ、全行で表の乙欄と1円単位まで一致しました。令和9年分(111,000円から2,000円刻み)でも228行すべて一致しています。740,000円を超える部分は、令和8年分なら259,200円に740,000円を超える金額の40.84%を加えます(1,710,000円以上は655,400円+超過額の45.945%)。「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出があれば、求めた税額から扶養親族等1人につき1,610円を引きます(引いた結果がマイナスなら0円)。
Excelで源泉所得税を計算する数式と検算結果
計算ツールを使わなくても、国税庁の算式をそのまま表計算ソフトに書けば同じ結果が出ます(検算はLibreOffice Calcで行いました。使っている関数はExcelやGoogleスプレッドシートにも同じ名前で用意されています)。ここでは令和8年分の数式を載せます。令和9年分は、給与所得控除の最低額の行を「169,444円以下なら57,500円」に、基礎控除の48,334円を51,667円に置き換えます。
甲欄(電算機計算の特例)の数式
A2に社会保険料等控除後の金額、B2に源泉控除対象配偶者の有無(いれば1)、C2に源泉控除対象親族の数(障害者等の加算を含む)を入れ、D2〜G2に次の数式を入れます。
D2 給与所得控除 =ROUNDUP(IF(A2<=158333,54167,IF(A2<=299999,A2*3/10+6667,IF(A2<=549999,A2*2/10+36667,IF(A2<=708330,A2/10+91667,162500)))),0)
E2 基礎控除 =IF(A2<=2120833,48334,IF(A2<=2162499,40000,IF(A2<=2204166,26667,IF(A2<=2245833,13334,0))))
F2 課税給与所得 =MAX(0,A2-D2-E2-31667*(B2+C2))
G2 源泉徴収税額 =ROUND(IF(F2<=162500,F2*0.05105,IF(F2<=275000,F2*0.1021-8296,IF(F2<=579166,F2*0.2042-36374,IF(F2<=750000,F2*0.23483-54113,IF(F2<=1500000,F2*0.33693-130688,IF(F2<=3333333,F2*0.4084-237893,F2*0.45945-408061)))))),-1)
ROUND関数の桁数に-1を指定すると、10円未満の四捨五入になります。配偶者と親族の人数を分けているのは、令和8年12月の扶養親族の所得要件の変更のように、どちらか一方だけが変わる場面で入力を直しやすくするためです。明細の作成に使うシートの分け方や、月額表を参照する数式は給与明細の作成方法:必要書類と7工程の計算例、令和8年分の税額表と表計算の数式で扱っています。
報酬・料金と退職金の数式
H2に報酬の1回の支払額、K2に退職金、L2に勤続年数(1年未満の端数は切上げ済み)を入れます。
I2 報酬・料金 =IF(H2<=1000000,ROUNDDOWN(H2*0.1021,0),102100+ROUNDDOWN((H2-1000000)*0.2042,0))
J2 司法書士報酬 =ROUNDDOWN(MAX(0,H2-10000)*0.1021,0)
M2 退職所得控除 =MAX(800000,IF(L2<=20,400000*L2,8000000+700000*(L2-20)))
N2 課税退職所得 =ROUNDDOWN(MAX(0,K2-M2)/2,-3)
O2 退職金の税額 =ROUNDDOWN(IF(N2<=1950000,N2*0.05,IF(N2<=3300000,N2*0.1-97500,IF(N2<=6950000,N2*0.2-427500,IF(N2<=9000000,N2*0.23-636000,IF(N2<=18000000,N2*0.33-1536000,IF(N2<=40000000,N2*0.4-2796000,N2*0.45-4796000))))))*1.021,0)
退職金の数式は「退職所得の受給に関する申告書」の提出があり、一般の退職手当等に当たる場合のものです。役員としての勤続5年以下(特定役員退職手当等)、障害者になったことによる退職、前の勤務先の退職金がある場合は、M2・N2の求め方が変わるので手で直します。
315ケースで検算した結果と使うときの注意
この記事の数式をLibreOffice 26.8で再計算し、分数で厳密に計算した結果と比べました。国税庁の計算例3件(A=175,000円・扶養2人で210円、446,000円・扶養8人で940円、775,200円・扶養3人で59,470円)を含む甲欄315ケース、報酬・司法書士報酬・退職金の各315ケースの全件が一致しています。退職金2,500万円・勤続30年は584,522円、報酬150万円は204,200円、司法書士報酬150万円は152,129円です。
別表の数字は改正のたびに変わるため、1月の給与計算の前に国税庁の新しい別表と照合する手間は残ります。勤怠・人事データと給与計算の連携まで自社のシステムで組む場合は、人事・労務管理システム開発のように税額の計算ロジックを年ごとの別表として持たせる設計にしておくと、改正時の差し替えが表の更新だけで済みます。
賞与:前月の給与で決まる算出率を掛ける計算
賞与の源泉所得税は、賞与の額そのものではなく、前月に支払った給与の額で税率が決まります。
賞与の算出率:前月給与30万円・扶養1人の計算例
- 前月の給与(賞与を除く)から、その給与から差し引いた社会保険料等を控除する
- 賞与の算出率の表の甲欄で、扶養親族等の数の列から1の金額が入る行を探し、左端の「賞与の金額に乗ずべき率」を読む
- 賞与の額から賞与の社会保険料等を差し引いた金額に、その率を掛ける
前月の社会保険料等控除後の給与が300,000円、扶養親族等1人なら、令和8年分の表では「289千円以上346千円未満」の行に当たり、率は6.126%です。賞与の社会保険料等控除後の金額が500,000円なら、源泉所得税は500,000円×6.126%=30,630円です。乙欄(扶養控除等申告書の提出がない人)は、前月の給与が224千円未満でも10.210%から始まります。
賞与の社会保険料の計算や賞与支払届までの一連の手順は賞与計算の方法:支給額の決定から社会保険料・源泉所得税・賞与支払届までの手順と令和8年の計算例で扱っています。
前月の給与が無い場合・賞与が前月の給与の10倍を超える場合
次のいずれかに当たるときは算出率の表を使わず、月額表で計算します。
- 前月に給与の支払が無い(または前月の給与が社会保険料等以下)
- 賞与(社会保険料等控除後)が前月の給与(社会保険料等控除後)の10倍を超える
| ケース | 計算のしかた(国税庁No.2523) |
|---|---|
| 賞与が前月の給与の10倍超 | (賞与÷6+前月の給与)の月額表の税額−前月の給与の税額、を6倍 |
| 前月に給与の支払がない | 賞与÷6の月額表の税額を6倍 |
賞与・給与とも社会保険料等控除後の金額で計算し、賞与の計算期間が6か月を超えるときは6を12に読み替えます。国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」の計算例では、前月の給与166,531円・賞与1,668,062円・扶養親族等1人の場合、1,668,062円÷6=278,010円に166,531円を加えた444,541円の月額表の税額16,100円から、前月の給与の税額1,510円を引いて6倍し、87,540円です。入社直後の賞与や、休職から復帰した月の賞与で使う場面が多い計算です。
報酬・料金:10.21%と100万円超の20.42%
居住者である個人に支払う原稿料・講演料・デザイン料・弁護士や税理士への報酬などは、所得税法204条1項の対象です。これらを内国法人に支払う場合は、原則として源泉徴収しません。
1回の支払額で決まる10.21%と20.42%
| 1回の支払額 | 源泉所得税の額 |
|---|---|
| 100万円以下 | 支払額×10.21% |
| 100万円超 | (支払額−100万円)×20.42%+102,100円 |
100万円の判定は年間の合計ではなく、同じ人への1回の支払ごとに行います。150万円の原稿料を1回で支払うと、100万円×10.21%=102,100円と50万円×20.42%=102,100円の合計で204,200円です。請求書で報酬と消費税の額が区分されていれば、税抜の報酬額を対象に計算できます。区分されていなければ税込の金額が対象です。受け取る側から見た請求書の書き方や、給与を払っていない個人が支払うときに源泉徴収が不要になる条件は個人事業主の源泉徴収|10.21%の計算と対象の報酬、支払う側になる条件【令和8年】で詳しく扱っています。
一定額を引いてから掛ける報酬:司法書士・外交員・ホステス・賞金
報酬の種類によっては、支払額からあらかじめ決められた金額を差し引いた残りに10.21%を掛けます。差し引く額は所得税法施行令322条で決まっていて、どれも100万円を超える部分の20.42%はありません。
| 報酬の種類 | 差し引く金額 | 税率 |
|---|---|---|
| 司法書士・土地家屋調査士・海事代理士 | 1回の支払につき1万円 | 10.21% |
| 外交員・集金人・電力量計の検針人 | 月12万円(同月の給与があれば12万円−給与) | 10.21% |
| ホステス・コンパニオン等 | 5,000円×計算期間の日数(同期間の給与があればその額を減額) | 10.21% |
| 広告宣伝のための賞金 | 1回50万円 | 10.21% |
| 馬主に支払う競馬の賞金 | 賞金×20%+60万円 | 10.21% |
司法書士に登記の報酬50,000円を支払う場合、国税庁「No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金」のとおり(50,000円−10,000円)×10.21%=4,084円です。1万円を引くのは、所得税法205条2号の報酬が「政令で定める金額を控除した残額」に税率を掛ける型だからで、弁護士や税理士の報酬(同条1号)とは計算の型が違います。この型には100万円超の20.42%の段階がなく、司法書士への報酬が150万円でも(150万円−1万円)×10.21%=152,129円です。支払額が1万円以下なら源泉所得税は0円です。
外交員報酬は、同じ月に給与も支払っていると12万円からその給与額を引いた残り(最低0円)だけを控除します。広告宣伝のための賞金は50万円以下なら源泉徴収不要ですが、懸賞応募作品の入選者に支払う賞金は別の扱いで、1人1回50,000円以下なら源泉徴収しなくてよく、それを超えると原稿料と同じく控除なしで10.21%(1回100万円を超える部分は20.42%)です。
退職金と非居住者への支払:20.42%になる条件
退職金の源泉徴収:申告書の有無による計算の違い
「退職所得の受給に関する申告書」の提出がある場合の基本的な計算は次のとおりです。勤続年数の1年未満の端数は切り上げます。障害者になったことに直接基因する退職では、退職所得控除額に100万円を加算します。
- 退職所得控除額を求める(勤続20年以下は40万円×勤続年数・最低80万円、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年))
- (退職金−退職所得控除額)×2分の1=課税退職所得金額(1,000円未満切捨て)
- 速算表で(課税退職所得金額×税率−控除額)×102.1%を計算し、1円未満を切り捨てる
勤続30年で退職金2,500万円なら、退職所得控除は800万円+70万円×10年=1,500万円、課税退職所得金額は(2,500万円−1,500万円)×2分の1=500万円です。速算表の「330万円超695万円以下」の行(税率20%・控除額427,500円)を当てはめ、(500万円×20%−427,500円)×102.1%=584,522円になります。
申告書の提出がないと、退職金の額に一律20.42%を掛けます。同じ2,500万円なら5,105,000円で、申告書を出した場合より約452万円多く差し引かれます。差額は本人が確定申告をすれば戻りますが、手間が増えるので、退職時に申告書を必ず回収します。役員等としての勤続年数が5年以下の人の退職金(特定役員退職手当等)は2分の1を掛けず、役員以外で勤続5年以下の人の退職金(短期退職手当等)は退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分に2分の1を掛けません。申告書の各欄の書き方と、前の勤務先の退職金がある場合の調整は退職所得の受給に関する申告書の書き方|A〜E欄の記入例と出さないと20.42%【令和8年様式】で扱っています。
非居住者への支払:原則20.42%と租税条約
国内に住所も1年以上の居所もない非居住者に、国内での勤務に対する給与や国内で行った役務の報酬などを支払うときは、原則として支払額に20.42%を掛けて源泉徴収します。税額表や100万円の区分は使いません。租税条約で税率の軽減や免除を受けるには、支払を受ける人が「租税条約に関する届出書」を、最初に支払を受ける日の前日までに支払者経由で税務署に出します(国税庁No.2888)。届出が間に合わなければ支払者は国内法の税率で徴収し、相手方が後から還付請求書で差額の還付を求めます。居住者と非居住者の判定は外国人の確定申告|居住者・非永住者・非居住者の判定と課税範囲、出国時の準確定申告【令和8年分】で確認できます。
令和8年分と令和9年分:税額表の切り替えと年末調整での精算
令和8年度税制改正で、基礎控除(令和8・9年分は合計所得金額489万円以下で一律104万円)と給与所得控除の最低額(74万円)が令和8年分から引き上げられました。ただし、毎月の源泉徴収に使う税額表はすぐには変わっていません。
令和8年11月までは改正前の表、12月の年末調整で精算
国税庁の「源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年4月)は、「令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じません」としています。令和8年中の給与は令和8年分の税額表で計算し、12月に行う年末調整で、引上げ後の基礎控除額と改正後の給与所得控除で1年分の税額を計算し直して差額を精算します。基礎控除と給与所得控除の改正内容は基礎控除と給与所得控除の違い|令和8年分は104万円と74万円で年収178万円まで所得税ゼロで扱っています。
年末調整の対象外の人は、この精算を受けられません。乙欄の給与がある人や給与収入が2,000万円を超える人などは、確定申告で精算します。年の途中で退職した人も、再就職先で年末調整を受ける場合などを除き、確定申告で精算します。扶養親族の所得要件(58万円以下から62万円以下へ)の改正は令和8年12月1日以後に支払う給与から適用されるため、新たに扶養に入る親族がいる人は、12月の年末調整の前に扶養控除等(異動)申告書を出し直す必要があります。
年末調整で使う所得税の速算表
年末調整では、毎月の表ではなく1年分の課税給与所得金額に所得税の速算表を当てはめ、その所得税額(年調所得税額)に102.1%を掛けて年調年税額を出します。課税給与所得金額は1,000円未満を切り捨て、年調年税額は100円未満を切り捨てます。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
課税所得300万円なら、300万円×10%−97,500円=202,500円が所得税で、102.1%を掛けた206,752円の100円未満を切り捨てた206,700円が年調年税額です。1年間に源泉徴収した合計がこれより多ければ差額を還付し、少なければ12月の給与から追加で徴収します。7段階の税率と年収別の税額は累進課税とは?所得税の税率7段階・速算表と年収別の税額【令和8年分】で整理しています。
令和9年分の税額表で変わる金額
令和9年1月1日以後に支払う給与からは、国税庁「令和9年分 源泉徴収税額表」(令和8年4月30日財務省告示第127号)を使います。所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税を合わせて源泉徴収する表で、令和8年分以前の給与には使えません。
| 項目 | 令和8年分 | 令和9年分 |
|---|---|---|
| 月額表 甲欄・扶養0人で税額0円(社保等控除後) | 105,000円未満 | 111,000円未満 |
| 月額表 30万円・扶養1人(甲欄) | 6,320円 | 6,150円 |
| 月額表 30万円(乙欄) | 53,600円 | 53,200円 |
| 賞与 甲欄・扶養0人で0% | 前月82千円未満 | 前月87千円未満 |
| 電算機 給与所得控除の最低額 | 54,167円 | 57,500円 |
| 電算機 基礎控除の額 | 48,334円 | 51,667円 |
| 乙欄の最低税率 | 3.063% | 3.063% |
| 日額表 丙欄で税額0円 | 日9,800円未満 | 日10,000円未満 |
賞与の算出率は、前月の給与が境目付近の人ほど影響が大きくなります。前月の社会保険料等控除後の給与が290,000円で扶養親族等1人なら、令和8年分の表では6.126%、令和9年分の表では4.084%(253千円以上292千円未満の行)です。賞与50万円(社会保険料等控除後)の源泉所得税は30,630円から20,420円に下がります。
令和9年分の電算機計算の特例でも、基礎控除の月額は51,667円(12か月で約62万円=所得税法本則の基礎控除)、給与所得控除の最低額は月57,500円(年69万円)です。基礎控除104万円のうち租税特別措置法で上乗せされる42万円と、給与所得控除の74万円と69万円の差額は、毎月の源泉徴収には反映されず、年末調整で反映されます。このため、年収178万円以下で所得税がかからない人でも、令和9年の毎月の給与から源泉所得税が引かれる月があり、年末調整で戻ります。
納付期限・納付方法と計算ミスを防ぐ確認点
- 端数処理:月額表・日額表は表の税額をそのまま使います。電算機計算の特例は10円未満を四捨五入、賞与(算出率を掛けた額)・報酬・料金・退職金は1円未満を切り捨てます。
- 納付期限:源泉徴収した所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます。給与の支払を受ける人が常時10人未満なら、申請により1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納める納期の特例を使えます。特例の対象は給与・退職金と税理士・弁護士・司法書士などの報酬に限られ、原稿料・デザイン料・外交員報酬・ホステス報酬の源泉所得税は毎月の納付が必要です。
- 納付方法:税務署や金融機関の窓口で「所得税徴収高計算書(納付書)」を使って納めるほか、e-Taxで徴収高計算書データを送信すれば、ダイレクト納付・インターネットバンキング・クレジットカード納付・スマホアプリ納付を使えます(国税庁「源泉所得税の納税手続」)。コンビニ納付は税務署から告知された分だけで、毎月の源泉所得税には使えません。徴収高計算書は令和8年10月時点では引き続き送付されていますが、国税庁は令和11年の年末調整の時期から、法人税や消費税をキャッシュレス納付している事業者への送付をやめると通知しています(地方公共団体や金融機関など個別に連絡を受けた一部の法人は、令和9年の年末調整の時期から順次)。
- 納付が遅れたとき:法定納期限までに納めないと不納付加算税(原則10%、調査による告知を予知しない自主納付は5%)と延滞税(令和8年は2か月以内が年2.8%、それ以後が年9.1%)がかかります。法定納期限から1か月以内に自主納付し、過去1年間に告知や期限後納付が無ければ不納付加算税はかかりません。延滞税の計算は延滞税の計算方法|令和8年は年2.8%と9.1%、起算日と1,000円未満切捨てで扱っています。
- 令和9年1月の給与:12月分の給与を1月に支払う場合も、支払日が令和9年なら令和9年分の表を使います。給与計算ソフトの税額表の更新日を、令和9年最初の給与計算の前に確認します。
よくある質問
源泉所得税は給与の何パーセントですか?
給与には一律の税率はなく、社会保険料等控除後の給与と扶養親族等の数で月額表から税額を読み取ります。源泉徴収対象の原稿料・講演料などは10.21%(1回100万円超の部分は20.42%)です。月額表の乙欄では、令和8年分の社会保険料等控除後の給与が105,000円未満の場合に3.063%を使い、退職所得の受給に関する申告書がない退職金は20.42%です。非居住者への国内勤務に対する給与なども原則20.42%です。
源泉所得税を自分で計算できるツールや計算式はありますか?
月額表の甲欄を使う給与なら、財務省告示の電算機計算の特例の算式で計算でき、Excelの数式にもそのまま書けます。乙欄には国税庁が公表する別の計算式があり、月額表と1円単位で一致します。
ボーナスの所得税はどうやって計算しますか?
前月の給与(社会保険料等控除後)と扶養親族等の数から賞与の算出率の表で率を求め、賞与から社会保険料等を引いた金額に掛けます。前月に給与が無い場合や、賞与が前月の給与の10倍を超える場合は、月額表を使う別の計算になります。
アルバイトの所得税は月いくらから引かれますか?
扶養控除等申告書を出していれば、令和8年分の月額表で社会保険料等控除後の給与が105,000円未満なら税額0円です。令和9年分の表では111,000円未満に上がります。会社が電算機計算の特例を使っている場合は、令和8年分で102,599円以上になると10円から税額が出ます(104,000円なら80円)。申告書を出していない2か所目のアルバイトは乙欄で、105,000円未満でも3.063%が引かれます。
令和9年分の源泉徴収税額表はいつから使いますか?
令和9年1月1日以後に支払う給与から使います。支払日で判定するため、令和8年12月分の給与でも令和9年1月に支払えば令和9年分の表です。国税庁は令和9年分の月額表・日額表・賞与の算出率の表・電算機計算の特例を公表済みです。