メンタルヘルス不調で休職した従業員を職場に戻すとき、担当者が最初に参照する公的資料が厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月作成、平成24年7月改訂)です。休業開始からフォローアップまでを5つのステップに分け、各段階で誰が何を判断するかを定めています。ここでは5つのステップを正式名称のまま整理し、混同されやすい「職場復帰支援プログラム」と「職場復帰支援プラン」の違い、プランに書く項目と様式例1〜4、復職可否の判断基準までを手引きの記述に沿って解説します。
まとめ:職場復帰支援で押さえる要点
- 5つのステップは第1「病気休業開始及び休業中のケア」、第2「主治医による職場復帰可能の判断」、第3「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」、第4「最終的な職場復帰の決定」、第5「職場復帰後のフォローアップ」です。
- 「職場復帰支援プログラム」は事業場が休職者の発生前に定める手順、「職場復帰支援プラン」は復帰する労働者ごとに作る個別の支援内容で、手引きの付記に別々の定義があります。先に作るのはプログラムです。
- プランは第3ステップで作成し、職場復帰日・就業上の配慮・人事労務管理上の対応等・産業医等の意見・フォローアップ・その他の6区分を検討します。書類は様式例1〜4を使い、復帰先は「まずは元の職場への復帰」が原則です。
- 主治医の診断書は病状の回復程度で書かれていることが多く、その職場で求められる業務遂行能力まで回復した判断とは限りません。産業医等が精査して意見を述べる設計です。
- 令和7年労働安全衛生調査(令和8年8月7日公表)では、メンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.8%、前年は10.2%でした。
厚生労働省の手引きが定める職場復帰支援の5つのステップ
手引きは職場復帰支援を「病気休業開始から通常業務への復帰までの流れ」として5段階に区切っています。以下の見出しは手引き本文の表記そのままです。社内規程もこの区切りに合わせておくと、産業医や労働基準監督署との会話がかみ合います。
第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア
起点は、主治医が作成した病気休業診断書を労働者から管理監督者等に提出してもらうことです。手引きは、休業が必要である旨だけでなく「必要な療養期間の見込み」まで書いてもらうことが望ましいとしています。見込みが分かれば代替要員の手配や復帰準備を逆算できます。
診断書を受け取った管理監督者(上司その他労働者を指揮命令する者)は、人事労務管理スタッフと事業場内産業保健スタッフに連絡します。本人には、療養に専念できるよう安心させると同時に休業中の事務手続きと職場復帰支援の手順を説明します。手引きが特に重視するのは経済的・将来的な不安の軽減で、傷病手当金制度その他の公的支援制度について事業者側からパンフレット等で手続き情報を提供することが望まれるとしています。傷病手当金は税務上の扱いが年末調整や確定申告に影響するため、非課税とされる根拠条文と確定申告・源泉徴収票の扱いまで案内できると不安は具体的に減ります。
休業の最長(保障)期間やクーリング期間、期間満了後に雇用契約の解除を行う場合の扱いは、労働基準法や労働契約法上の制約に留意したうえで労使協議で決め、あらかじめ就業規則等に定めて周知することが望ましいとされています。休職者が出てから決めると、条件の不利益変更として争いになります。
第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
本人から復職の意思が伝えられたら、事業者は主治医による職場復帰可能の判断が記された診断書(復職診断書)の提出を求めます。診断書には就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を含めてもらうことが望ましいとされています。
手引きがここで釘を刺すのが診断書の読み方です。主治医の診断書は病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それがただちにその職場で求められる業務遂行能力まで回復しているかの判断とは限らない、労働者や家族の希望が含まれている場合もある、と明記されています。「復職可の診断書が出たから復職させる」という運用は手引きの想定とは違います。
ここでいう産業医等とは、手引きの付記で「産業医その他労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師」と定義されています。ずれを減らす実務が事前の情報提供です。手引きは、あらかじめ主治医へ職場で必要とされる業務遂行能力の内容や社内勤務制度等を伝えたうえで、就業が可能であるという回復レベルで意見書を書いてもらうよう依頼することが望ましいとしています。依頼は第2ステップより前、休業中のうちが現実的です。
第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
手引きが「中心的な役割を果たす」と位置づける段階です。事業場内産業保健スタッフ等を中心に管理監督者と本人が話し合い、情報の収集と評価、可否の判断、プランの作成の3作業を進めます。
収集する情報は、本人の復職意思と就業意欲の確認、産業医等による主治医からの意見収集、労働者の状態等の評価、職場環境等の評価の4系統です。本人の状態だけでなく、実施可能な就業上の配慮や人事労務管理上の配慮が職場側にどこまであるかを併せて評価する点が、この段階の要になります。
話し合いの結果は「職場復帰支援に関する面談記録票」(様式例2)等にまとめ、関係者が互いに内容を確認しながら進めることが望ましいとされています。口頭合意のままだと、復帰後に「そんな配慮は聞いていない」という食い違いが起きます。
第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
可否の判断とプラン作成を経て、事業者として最終的な職場復帰を決定します。手引きは、この決定が労働者にとってきわめて重要であり、私法(契約法)上の制約を受けることにも留意して、社内手続きに従い適正に行うべきだとしています。
手順は、本人の状態の最終確認、産業医等による「職場復帰に関する意見書」(様式例3)の作成、管理監督者と人事労務管理スタッフの確認を経た事業者の決定、の順です。決定は就業上の配慮の内容と併せて本人に通知します。復職判定委員会を置く場合、手引きは手続きを組織的に行える利点を認めつつ、委員会決議の責任の所在や迅速な開催の工夫を検討しておく必要があるとしています。手引きはここに制約を置いており、就業上の配慮は円滑な職場復帰という目的に必要な内容を超えた措置を講ずるべきではないとしています。過剰な配慮は処遇を実質的に下げ、配慮そのものが不利益取扱いになりかねません。
決定内容は本人を通じて主治医にも的確に伝わるようにします。書面の場合は「職場復帰及び就業上の配慮に関する情報提供書」(様式例4)を使うとよいとされています。
第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ
手引きは、周到に準備しても計画どおりに進まないことがあるとして、復帰後の経過観察とプランの見直しを第5ステップとして独立させています。フォローアップ面談で扱う項目は、疾患の再燃・再発や新しい問題の発生の有無、勤務状況及び業務遂行能力の評価、プランの実施状況の確認、治療状況の確認、プランの評価と見直し、職場環境等の改善等、管理監督者・同僚等への配慮等の7つです。
あらかじめ期間の目安を定めてその期間内に通常のペースへ戻す目標を立てること、期間は主治医と連携して病態に応じ柔軟に定めることが望ましいとされています。期間を切らずに配慮を続けると本人の就労意識が保ちにくくなるためです。ただし再燃・再発は少なくないため、期間を終えた後も慎重な対応が求められます。
職場復帰支援プログラムと職場復帰支援プランの違い
この2語は現場で頻繁に混同されますが、手引きの付記「用語の定義」で別々に定義されています。職場復帰支援プログラムは「個々の事業場における職場復帰支援の手順、内容及び関係者の役割等について、事業場の実態に即した形であらかじめ当該事業場において定めたもの」、職場復帰支援プランは「職場復帰をする労働者について、労働者ごとに具体的な職場復帰日、管理監督者の就業上の配慮及び人事労務管理上の対応等の支援の内容を、当該労働者の状況を踏まえて定めたもの」です。
| 比較軸 | 職場復帰支援プログラム | 職場復帰支援プラン |
|---|---|---|
| 対象 | 事業場全体 | 復帰する労働者1人 |
| 作る時期 | 休職者が出る前 | 第3ステップ |
| 決める内容 | 標準的な流れ・手順・関係者の役割 | 復帰日・就業上の配慮・人事労務上の対応 |
| 作成の場 | 衛生委員会等で調査審議 | 産業保健スタッフ等・管理監督者・本人 |
| 関連規程 | 就業規則等に反映し周知 | 様式例2・様式例3で記録 |
順序を取り違えないでください。プログラムを作らないままプランだけを個別対応で書くと、担当者が変わるたびに判断が揺れます。手引きは、事業者が衛生委員会等で調査審議し産業医等の助言を受けてプログラムを策定し、労働者・管理監督者・産業保健スタッフ等へ教育研修等により十分周知するところまでを求めています。THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)の指針に沿った進め方と歩調を合わせれば、衛生委員会の審議事項を一本化できます。
職場復帰支援プランの記載項目と厚労省の様式例1〜4
「職場復帰支援プラン 例」「ひな形」で探している担当者が必要とするのは、白紙の様式より何を書く欄があるのかという中身です。手引きは検討事項を6区分で示し、あわせて4種類の様式例を掲載しています。
プランで検討する6区分の項目
手引きが挙げるのは、(ア)職場復帰日、(イ)管理監督者による就業上の配慮、(ウ)人事労務管理上の対応等、(エ)産業医等による医学的見地からみた意見、(オ)フォローアップ、(カ)その他の6区分です。
(イ)は業務でのサポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、残業・交替勤務・深夜業務等の制限または禁止、就業時間短縮、診療のための外出許可です。(ウ)は配置転換や異動の必要性、フレックスタイム制度や裁量労働制度等の勤務制度変更の可否、出張制限や危険作業・運転業務・高所作業・窓口業務・苦情処理業務の禁止または免除などです。(オ)では管理監督者と産業保健スタッフのフォロー方法に加え、就業制限等を見直すタイミングと、すべての配慮や医学的観察が不要となる時期の見通しまで決めます。この「終わり方」を先に書くことが、配慮が期限なく続く事態を避ける唯一の方法です。
プラン作成では元の就業状態に戻すまでにいくつかの段階を設け、段階ごとに求められる水準を明記します。手引きが挙げる水準の例は、定時勤務が可能、職場内での仕事に関する意思疎通が可能、顧客との折衝が可能、という粒度です。「徐々に負荷を上げる」とだけ書いたプランは運用できません。
様式例1〜4の使い分け
| 様式 | 名称 | 使うステップ | 作成者 |
|---|---|---|---|
| 様式例1 | 職場復帰支援に関する情報提供依頼書 | 第3ステップ | 産業医 |
| 様式例2 | 職場復帰支援に関する面談記録票 | 第3ステップ | 記載者(様式に欄あり) |
| 様式例3 | 職場復帰に関する意見書 | 第4ステップ | 産業医 |
| 様式例4 | 職場復帰及び就業上の配慮に関する情報提供書 | 第4ステップ | 産業医 |
使用頻度が高いのは様式例1です。産業医が主治医に宛てる依頼書で、情報提供依頼事項として(1)発症から初診までの経過、(2)治療経過、(3)現在の状態(業務に影響を与える症状及び薬の副作用の可能性なども含めて)、(4)就業上の配慮に関するご意見(疾患の再燃・再発防止のために必要な注意事項など)の4項目が印字され、(5)以降は空欄で自社の追加質問を書けます。本人が「情報提供文書の作成並びに産業医への提出について同意します」と署名する欄が付いており、同意なしに主治医へ照会する運用にならない設計です。
費用の扱いも先に決めます。手引きは、様式例1で情報提供を依頼する場合や直接主治医と連絡・面会を行う場合、その費用負担を事前に主治医と取り決めておく必要があるとしています。診断書料と違い、会社負担か本人負担かが曖昧になりやすい部分です。
復職可否の判断基準と試し出勤の位置づけ
手引きは、職場復帰可否について定型的な判断基準を示すことは困難であり個々のケースに応じて総合的に判断しなければならないと明言したうえで、判断基準の例を挙げています。
手引きが挙げる判断基準の例
挙げられているのは、職場復帰に対して十分な意欲を示していること、通勤時間帯に一人で安全に通勤ができること、会社が設定している勤務日に勤務時間の就労が継続して可能であること、業務に必要な作業(読書、コンピュータ作業、軽度の運動等)をこなせること、作業等による疲労が翌日までに十分回復していること、適切な睡眠覚醒リズムが整っていること、昼間の眠気がないこと、業務遂行に必要な注意力・集中力が回復していることです。
前提条件も押さえてください。手引きは、業務遂行能力が復帰時にはまだ病前のレベルまで完全には改善していないことも考慮したうえで、職場の受け入れ制度や態勢と組み合わせて判断すると書いています。病前と同じ状態に戻るまで待つ運用は手引きの立場ではありません。
職種限定契約の有無による判断範囲の違い
手引きは判例にも触れています。疾病のり患を理由に休職した労働者の職場復帰の可否についてはさまざまな判例が出されており、トラブル防止のため法律の専門家等と相談し適切な対応を図ることが求められる、判例の中には職種を限定した雇用契約を結んでいる場合と職種を限定しない契約を結んでいる場合とで異なった判断をしているものがある、という指摘です。元の職務に耐えられないという一点で判断できるのは職種限定契約の場合で、限定がなければ配置可能な他業務の有無まで含めて検討することになります。
試し出勤制度等の3類型と労務上の注意
正式な職場復帰決定の前に判断材料を増やす仕組みが、試し出勤制度等です。手引きは3つの例を挙げています。
- 模擬出勤:通常の勤務時間と同様な時間帯に、短時間または通常の勤務時間で、デイケア等で模擬的な軽作業やグループミーティング等を行ったり、図書館などで時間を過ごす。
- 通勤訓練:自宅から職場の近くまで通常の出勤経路で移動し、そのままか職場付近で一定時間を過ごした後に帰宅する。
- 試し出勤:職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する。
導入時に決めるのは、この間の処遇、災害が発生した場合の対応、人事労務管理上の位置づけです。手引きは、使用者が作業の指示を与えたり作業内容が業務(職務)に当たる場合などには労働基準法等が適用される場合があること、災害時は労災保険給付が支給される場合があること、賃金等について合理的な処遇を行うべきことに留意するよう求めています。無給の「リハビリ出社」で実作業をさせる運用は、この注意に正面から抵触します。
試し出勤は目的の達成に必要な時間帯・態様、時期・期間等に限るべきで、いたずらに長期にわたることは避けるとされています。事業場側の都合ではなく本人の復帰のために運用する、という原則も明記されています。
復職後の就業上の配慮とフォローアップ設計
まずは元の職場への復帰という原則
手引きは「まずは元の職場への復帰」を原則としています。より好ましい職場への配置転換や異動であっても、新しい環境への適応には時間と心理的負担を要し、その負担が疾患の再燃・再発に結びつく可能性が指摘されているためです。配置転換が必要と思われる事例でも、まずは元の慣れた職場で業務負担を軽減しながら経過を観察し、その後に異動を考慮したほうがよい場合が多い、という順序を示しています。
ただし例外が明示されています。異動等を誘因として発症したケースでは、適応できていた以前の職場に戻すか他の適応可能と思われる職場への異動を積極的に考慮したほうがよい場合があるとされます。職場要因と個人要因の不適合が生じている可能性がある場合、運転業務・高所作業等の危険を有する業務の場合、元の職場環境や同僚が大きく変わっている場合も検討対象です。「原則は元職場」だけを覚えて機械的に戻すと、発症要因が残ったままの復帰になります。
就業上の配慮メニューと短時間勤務の落とし穴
具体的な配慮として挙げられているのは、短時間勤務、軽作業や定型業務への従事、残業・深夜業務の禁止、出張制限、交替勤務制限、業務制限、フレックスタイム制度の制限または適用、転勤についての配慮です。
短時間勤務には手引きが具体的な運用指示を置いています。適切な生活リズムが整っていることが望ましいという観点から、始業時間を遅らせるのではなく終業時間を早めるほうが望ましい、という指摘です。朝が起きられないからと始業を後ろにずらす運用は、狙いと逆に働きます。
もう一つの注意は配慮の量です。同僚に比べて過度に業務を軽減されることは逆にストレスを高めることもあるため、負荷業務量等の調整が必要だとされています。ケースによっては復帰当初からフレックスタイム制度など特段の措置をとらず本来の勤務時間で就労させるほうが良い結果をもたらすこともある、とまで書かれています。配慮は多いほど良いわけではありません。負担の配分先も同じで、手引きは休業していた労働者とともに同僚や管理監督者にも過度の負担がかからないよう配慮する必要があると述べています。周囲が業務を肩代わりし続ける状態は、次の休職者を生みます。
リワークの3系統と選び方
リワークプログラムとは、休職者の職場復帰に向けて生活リズムの立て直しや作業訓練を行う支援の総称で、運営主体により公的・医療・民間の3系統に分かれます。同じ名前でも対象者も期間も違います。手引き自身が、これらの機関が提供するサービスの内容や目標は多様であり、事業場で必要としている要件を十分に満たしているかをあらかじめ検討することが望ましいと注意しています。
公的リワーク:地域障害者職業センター
手引きが公的な事業場外資源の例に挙げるのが、地域障害者職業センターが行う「職場復帰支援(リワーク支援)事業」です。運営は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)で、東京障害者職業センターの案内は対象を「雇用保険適用事業所である民間企業・団体とその休職者」とし、「国、地方公共団体、行政執行法人及び特定地方独立行政法人と、その職員は対象外」と明記しています。公務員が使えない点は、自治体や独立行政法人の担当者が最初に確認すべき条件です。
支援内容は、生活リズムの再構築と体調の自己管理、作業を通じた集中力・持続力・気分・ストレスや疲労の確認、職場復帰に必要な基礎知識の習得、コミュニケーション技法の体験と習得です。利用説明会からプログラム終了までの期間は4〜6か月程度とされており、復帰まで半年近い前提で計画を組む必要があります。
医療リワーク:医療機関のデイケア等
医療機関のデイケア等で行うリワークは治療の一環で、主治医の管理下にあります。目的は症状の安定であり、事業場が求める業務遂行能力の評価と一致するとは限りません。
民間EAPと事業場側の見極め
手引きは、民間の医療機関やEAP(Employee Assistance Program)が有料で復職支援プログラム、リワークプログラム、デイケア等の名称でサービスを提供するケースがあると述べています。名称が同じでも治療なのか職業リハビリテーションなのかは異なるため、利用する場合はそれが何を目的としているかを見極めたうえで事業場の目的に適していることを確認することが重要だとされています。「リワークに通っている」という事実だけでは判断材料になりません。何をどこまで確認できたのかを、様式例1で主治医に照会する情報と突き合わせてください。
産業医がいない50人未満の事業場での進め方
手引きは、産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場に別ルートを示しています。第3ステップの情報収集と可否判断は、人事労務管理スタッフ及び管理監督者等、または衛生推進者もしくは安全衛生推進者が、主治医と連携しつつ地域産業保健センターや労災病院勤労者メンタルヘルスセンター等の事業場外資源を活用して進めます。衛生推進者または安全衛生推進者は、事業場内の窓口の役割を果たすよう努めることが必要とされています。
制度は今後変わります。厚生労働省の労働局は、令和10年4月1日から労働者数50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務化される予定であると案内しています。実施体制を整える作業は職場復帰支援の窓口を決める作業と重なるため、外部委託先を選ぶ段階で復職面談まで相談できる体制かを確認しておくと二度手間になりません。
相談先の情報は本人にも渡します。窓口には対象者や通話料の条件があるため、公的な相談窓口ごとの対象者と費用の条件を確認してから案内してください。不調の兆候を早く拾う側では、6月病と5月病の違いや症状チェックの観点を管理職研修に入れておくと、休職に至る前の相談につながります。
よくある質問
職場復帰支援プログラムにひな形はありますか?
手引きに掲載されている様式例1〜4が、事実上の公的なひな形です。ただしこれらは各ステップで使う書類の例であり、プログラムそのものの雛形ではありません。手引きは、様式例の活用にあたって各事業場が衛生委員会等で調査審議し実態に即して手を加えることを想定しています。まず5ステップを自社の休職規程に写し取り、そこへ様式例を割り当てる順序が現実的です。
主治医が復職可能と診断したら、必ず復職させなければなりませんか?
手引きは、診断書が病状の回復程度で書かれていることが多く、その職場で求められる業務遂行能力まで回復しているかの判断とは限らないと明記し、産業医等が精査して意見を述べる仕組みを置いています。最終的な決定は第4ステップで事業者が行いますが私法上の制約を受けるため、社内手続きに従って適正に行う必要があります。認めない判断をする場合は、雇用契約が職種を限定しているかも含めて法律の専門家に相談してください。
試し出勤中に賃金を支払う必要はありますか?
手引きは、使用者が作業の指示を与えたり作業内容が業務(職務)に当たる場合などには労働基準法等が適用される場合があるとし、賃金等について合理的な処遇を行うべきことに留意すると述べています。無給と決め打ちせず、どの類型でどこまで業務性のある作業をさせるのかを整理したうえで、処遇と災害時の対応を事前にルール化してください。
この手引きは育児休業からの復職にも使えますか?
この手引きが対象とするのは、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰です。育児休業からの復職は健康上の回復過程を前提としないため、面談で確認する項目も主治医との連携の必要性も異なります。5つのステップを流用せず、育児・介護休業法に基づく制度説明と勤務時間の調整を軸に別の手順を作ってください。がんや糖尿病など身体疾患の治療をしながら働く場面も、厚生労働省の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」という別の文書が扱う領域で、この手引きの5ステップとは対象が異なります。
復職とは何を指しますか。復帰との違いはありますか?
復職は、休職により労務提供義務を免除されていた労働者が、その事由が消滅して元の労務提供に戻ることを指します。手引きが用語を定義しているのは「職場復帰支援プログラム」と「職場復帰支援プラン」の2語で、復職と職場復帰は同義に使われています。復職の要件そのものは法律ではなく各社の就業規則で定めるため、休職事由の消滅をどう確認するか(診断書のみか、産業医の意見を要するか)を規程に書いておく必要があります。