離職率の計算方法は法律で1つに決まっておらず、厚生労働省の雇用動向調査は「1年間の離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」で算出しています。この記事では、その式の分子と分母に誰を数えるのかを用語の定義から確認し、同じ在籍データで分母を変えると離職率がどれだけ動くのかを計算例で示します。入社3年以内の離職率や月次の離職率の出し方、厚労省の新卒統計と自社の数字を並べるときの注意も対象です。最後に、人事データから離職率を自動で算出するために在籍履歴をどう持つか、Excelで足りる規模とシステム化する条件を整理します。
まとめ:離職率の計算方法は分母の定義を決めてから数字を出す
基本の式は「期間中の離職者数÷起算日の在籍者数×100」です。厚労省の雇用動向調査もこの形で、令和7年の全国の離職率13.7%は、1月1日現在の常用労働者5,133万7,600人に対する離職者705万2,600人の割合として出ています。
計算そのものは割り算1回で終わります。数字が合わなくなる原因は、分母を期首・期中平均・期末のどれにするか、定年や契約満了や出向を離職者に数えるか、パートを含めるか、という定義の揺れです。同じ100人規模の会社でも、分母の取り方だけで12.0%から15.0%まで変わります。
社内で離職率を使うなら、最初に算出定義を1枚の文書に固定し、毎年同じ定義で出すことが先決です。入社3年以内の離職率は入社年度ごとのコホートで追い、月次の数字は12倍せずに12か月分を積み上げて年の値にします。部署別や雇用区分別に毎月出すようになった段階で、人事マスタの上書き運用では過去の期首人数を再現できなくなるため、在籍履歴を持つ仕組みへの切り替えを検討します。
離職率の基本式と厚生労働省の雇用動向調査が採る分母と分子の定義
自社の離職率を公的統計と比べる場面は多く、そのたびに「厚労省はどう数えているのか」が問題になります。まず統計側の定義を正確に押さえておくと、社内定義を決めるときの基準線になります。
厚労省の式「離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」の読み方
雇用動向調査の用語の定義では、離職率を「常用労働者数に対する離職者数の割合」とし、分母を1月1日現在の常用労働者数としています。1月から12月までの1年間に離職した人数を、年初時点の人数で割る形です。
令和7年の入職と離職の推移に載っている実数で検算すると、次のとおりです。
| 項目 | 令和7年の値 |
|---|---|
| 1月1日現在の常用労働者数 | 51,337.6千人 |
| 1年間の離職者数 | 7,052.6千人 |
| 計算 | 7,052.6÷51,337.6×100 |
| 離職率 | 13.7%(前年比0.5ポイント低下) |
分母は年初の1時点に固定されており、年の途中で入社した人は分母に入りません。一方で、その人が同じ年に辞めれば分子には入ります。この非対称が、後の章で扱う「期中入社者の扱い」の論点の出発点です。なお、年齢階級別の離職率だけは分母が6月末日現在の常用労働者数に変わる点も、同じ用語の定義に明記されています。
離職者に数える人と数えない人:出向・社内異動・定年・契約満了
雇用動向調査の離職者は「調査対象期間中に事業所を退職したり、解雇された者」で、他企業への出向者・出向復帰者を含み、同一企業内の他事業所への転出者を除く、と定義されています。調査の単位が事業所なので、他社への出向は離職に数え、社内の転勤は数えない設計です。
企業が全社の離職率を出す場合は単位が会社になるため、この定義をそのまま写すと実態とずれます。グループ会社への出向者を離職者に入れると、出向の多い会社ほど離職率が高く見えるからです。社内定義では、次の区分ごとに「数える/数えない」を決めておきます。
- 自己都合退職と会社都合退職:どちらも離職者に数える(事由は別の列で持つ)
- 定年退職:数える定義と除く定義の両方があり、除く場合は定年後の再雇用者をどう扱うかも決める
- 有期契約の期間満了:契約社員を分母に入れるなら分子にも入れる
- グループ会社への出向・転籍:出向は在籍のまま数えず、転籍は離職に数える運用が多い
どれを選んでも誤りではありません。問題は年によって扱いが変わることで、定年退職者を入れた年と除いた年を並べると、施策の効果とは無関係に数字が上下します。
法律で決まった計算式がない理由と社内の算出定義を文書化する4項目
労働関係の法令に、企業の離職率の算出方法を一律に定めた規定は見当たりません。厚労省の統計はあくまで統計調査上の定義で、求人票や社内報告の離職率がこれと一致している必要はない、ということになります。
そのぶん、社内で数字を使う側が定義を持つ必要があります。文書化するのは、期間(暦年か事業年度か)、分母の時点、分子に数える退職事由、対象の雇用区分、の4点です。A4で1枚、変更したら改定日を残すだけの運用でも、翌年の担当者が同じ数字を再現できるようになります。
分母の取り方で変わる離職率を同じ在籍データで比べた4通りの計算例
ここからは架空の会社で、分母の取り方だけを変えて離職率を計算します。数字の動き方を一度見ておくと、他社や過去の資料の離職率を読むときに「この数字はどの分母か」を確かめる習慣がつきます。
期首人数・期中平均・期末人数・期首在籍者限定の4方式で割った結果
前提は、1月1日の在籍者100人、年間の入社20人、年間の退職15人、12月31日の在籍者105人とします。退職15人のうち3人は、その年に入社して同じ年に辞めた人です。
| 分母の取り方 | 計算 | 離職率 |
|---|---|---|
| 期首人数(厚労省と同じ) | 15÷100×100 | 15.0% |
| 期中平均人数 | 15÷102.5×100 | 14.6% |
| 期末人数 | 15÷105×100 | 14.3% |
| 期首在籍者のみで追跡 | 12÷100×100 | 12.0% |
期中平均は(期首100人+期末105人)÷2=102.5人で計算しています。最後の行は、年初にいた100人のうち年内に辞めた12人だけを数える方式で、途中入社者を分子からも分母からも外すものです。
同じ会社・同じ年のデータで3.0ポイントの幅が出ます。人員を増やしている会社ほど期末人数が大きくなり、期末基準の離職率は低く出る傾向があります。
期中に入社して同じ年に辞めた人の扱いと目的別に分母を決める判断基準
期首人数を分母にする厚労省式では、期中入社の早期退職者が分子にだけ入ります。採用を大きく増やした年は、入社直後の退職が増えるぶん離職率が高めに出ます。
分母は目的で選びます。公的統計と比べたいなら期首人数、人数の増減が大きい会社で1年間の平均的な流出の強さを見たいなら期中平均、既存社員の定着を見たいなら期首在籍者のみの追跡、という使い分けです。期末人数を分母にする方式は、増員中の会社で離職率を低く見せる方向に働くため、社内指標の主系列にはしないほうが無難です。
実務では主系列を1つ決め、ほかの方式は参考値として同じ表に並べる形が扱いやすくなります。算出した数字を全国や同じ産業の平均と比べるときに、どの欄を相手に選ぶかは離職率の平均と産業別・規模別の値を自社と比べる目安の記事で整理しています。
入社3年以内離職率と新卒コホートの計算手順、厚労省統計と並べる前の注意
「新卒の3年以内離職率」は採用の説明会や経営会議でよく問われる数字です。年単位の離職率とは計算の型が違うため、分けて扱います。
入社年度ごとのコホートで追う式と1年目・2年目・3年目の分け方
入社3年以内離職率は「ある年度に入社した人のうち、入社から3年以内に辞めた人数÷その年度の入社人数×100」で計算します。分母は入社時点の人数で固定し、途中で増えることはありません。
- 2022年4月入社の新卒20人を1つのコホートとして抜き出す
- 2023年3月末までの退職者(1年目)2人、2024年3月末までの追加退職者(2年目)3人、2025年3月末までの追加退職者(3年目)1人を数える
- 1年目10.0%、2年目15.0%、3年目5.0%、3年以内合計30.0%(6÷20)と算出する
年目ごとに分けると、1年目に偏っているのか2年目以降に崩れているのかが見えます。入社1年目の退職が多い場合に疑うのは、配属直後の期待とのずれです。この論点はリアリティショックの実証データと離職率で見る原因と対策で扱っています。人数が20人程度のコホートでは1人の退職で5ポイント動くため、単年で判断せず2〜3年分の入社年度を並べて見ます。
厚労省の新卒3年以内離職率(大卒33.8%)の集計方法と自社との違い
厚労省の新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)は、令和7年10月24日に公表されました。3年以内離職率は大卒33.8%、高卒37.9%で、前年度からそれぞれ1.1ポイント、0.5ポイント低下しています。
この数字は企業へのアンケートではありません。事業所がハローワークに出した雇用保険の加入届から、生年月日や資格取得日をもとに新規学卒者と推定される就職者数を出し、その離職日から算出したものです。把握の時点は卒業から3年後の6月です。
したがって、自社のコホートと並べるときは次の2点を揃えます。1つ目は起点で、統計は3月卒業の新卒が対象なので、自社も4月入社の新卒に限り、中途入社を混ぜません。2つ目は期間で、統計は3年後の6月時点まで含むため、自社が3年後の3月末で締めると退職者が少なめに出ます。事業所規模別・産業別の値は新規学卒者の離職状況のページに掲載されています。
若者雇用促進法の青少年雇用情報で扱う新卒者等の離職者数の数え方
新卒採用を行う企業は、若者雇用促進法に基づく青少年雇用情報の提供を求められます。厚労省の青少年雇用情報シートの書き方のポイントでは、情報提供の義務を「3類型それぞれで1項目以上」とし、その項目の1つに直近3事業年度の新卒者等の採用者数・離職者数が挙がっています。
ここでいう新卒者等には、新卒と同じ採用枠で採用した既卒者も含みます。正社員と正社員以外で分けて記入する点も決まっています。社内の新卒コホートを「4月入社の新卒のみ」で作っていると、既卒の同枠採用者が抜けて数字が一致しません。求人票に載せる数字と社内分析の数字を別の抽出条件で出す場合は、その差を説明できるよう両方の条件を残しておきます。
月次離職率の計算方法と年換算、四半期の定点観測で数字がぶれる原因
年1回の離職率では施策の効果が1年後まで分からないため、月次で追いたいという要望が出ます。月次の計算は単純ですが、年の数字に直すときに誤りが起きやすくなります。
月次離職率を12倍する年換算と12か月分の積み上げで差が出る条件
月次離職率は「当月の退職者数÷月初の在籍者数×100」で出します。月初102人で3月に6人辞めれば5.9%です。
この5.9%を12倍して年70.6%とするのは誤りになります。3月末は年度末の退職が集中する月で、その月だけを基準に年率へ引き伸ばすと過大に出るからです。逆に退職の少ない8月を12倍すれば過小に出ます。年の値が必要なら、12か月分の月次離職率を足し上げるか、12か月分の退職者数を年初人数で割り直すのが正しい手順です。人数が大きく増減しない会社なら、両者はほぼ同じ値になります。
月次の数字は年の値の予測に使うより、前月との差や前年同月との差を見る用途に向いています。
年度末と年明けに退職が偏る季節性と月次離職率を前年同月比で比べる理由
退職は賞与の支給後や年度の切り替わりに集まりやすく、月ごとの離職率は季節で上下します。年明けの求職の動きを統計で追ったあけおめ退職の調査データと年始の離職の実像でも、年始の動きは毎年繰り返す季節パターンとして読むのが正確だとしています。
このため、月次の離職率は前月比ではなく前年同月比で評価します。3月の離職率が2月より高いのは毎年のことで、施策の成否とは関係がありません。四半期で報告する場合も、前年の同じ四半期と比べる形にしておくと、季節の影響を除いて変化を読めます。
人事データから離職率を自動算出するダッシュボードの設計と作り込みの判断
部署別・雇用区分別・入社年度別に離職率を毎月出すようになると、手作業の集計では定義の揺れや転記ミスが避けにくくなります。ここでは自動算出に必要なデータの持ち方と、システム化するかどうかの判断基準を示します。
在籍履歴テーブルに持たせる入社日・退職日・退職事由・雇用区分の項目
離職率の計算に必要なのは、ある日付時点で誰が在籍していたかを後から再現できるデータです。社員ごとに1行の人事マスタで、退職日や所属を上書きしていく運用では、過去の期首人数を出し直せません。
| 項目 | 用途 |
|---|---|
| 社員ID(再発行しない) | 同一人物の追跡 |
| 入社日・退職日 | 期首在籍と分子の判定 |
| 退職事由区分 | 定年・契約満了の除外 |
| 雇用区分と有効期間 | 正社員・パート別の算出 |
| 所属部署と有効期間 | 部署別の分母の算出 |
| 出向・転籍の区分 | 在籍扱いの判定 |
雇用区分と所属は「いつからいつまで」の有効期間付きで行を積み上げる形にします。こうしておけば、2年前の4月1日時点の営業部の在籍者数も、同じ抽出条件で何度でも出せるのが利点です。退職事由は自由記述ではなく区分値で持ち、自己都合・会社都合・定年・契約満了・転籍などを選ばせると、定義の変更にも列の条件を変えるだけで対応できます。
部署異動と雇用区分の変更を離職と誤って計上しないための履歴の持ち方
部署別の離職率でよくある誤りは、異動した人を元の部署の離職者として数えてしまうことです。全社では在籍していても、部署単位では「いなくなった人」に見えるためです。部署別に出すなら、退職日で判定する離職と、所属の有効期間で判定する異動を別の事象として扱います。
契約社員から正社員への登用も同じ問題を起こします。登用時に社員IDを振り直す運用だと、データ上は契約社員が1人辞めて正社員が1人入社した形です。社員IDは雇用区分が変わっても維持し、雇用区分の履歴行を追加する設計にしておきます。定年後の再雇用も、定年退職を離職に数える定義を採るなら、再雇用後の行が新規入社として重複しないよう区分を分けます。
ここまで整えた履歴データは、離職率の算出だけでなく、勤怠やサーベイと組み合わせた分析の土台にもなります。人事データの分析の進め方はピープルアナリティクスの手法と進め方に、機械学習で退職の予兆を捉える取り組みの成立条件はタレントマネジメントのAI導入と離職予兆の中身にまとめています。
Excel集計で足りる従業員規模と離職率の算出をシステム化に進む条件の線引き
従業員が300人未満で、年1回、全社の離職率を経営会議に出すだけなら、Excelの在籍者一覧と退職者一覧で足ります。定義を1枚の文書に固定し、毎年同じ手順で集計すれば十分です。この段階でダッシュボードを開発するのは過剰です。
システム化を検討するのは、次の条件が重なったときです。部署別・雇用区分別の離職率を毎月出す必要がある、人事・勤怠・給与のデータが別々のシステムにあり毎回手で突き合わせている、過去の特定時点の在籍者数を出し直す依頼が年に何度も来る、の3つです。この場合は既製の人事システムの集計機能で賄えるかをまず確かめ、履歴の持ち方が合わないときに作り込みを検討します。
既存の人事・勤怠データを在籍履歴の形に整え、離職率を自動で算出する仕組みは、一創の人事・労務管理システム開発でご相談いただけます。既製システムの機能と自社の算出定義との差を洗い出す段階からお手伝いしています。
よくある質問
離職率の計算方法について、人事担当者からよく寄せられる質問をまとめました。
離職率と定着率はどう違いますか?
定着率は、ある時点の在籍者や入社者のうち、一定期間後も在籍している人の割合です。期首在籍者を追跡する方式や入社年度のコホート方式では、定着率は100%から離職率を引いた値になります。入社3年以内離職率が30.0%なら、3年後の定着率は70.0%です。ただし期中平均や期末人数を分母にした離職率からは、この単純な引き算は成り立ちません。両方の指標を並べるときは、同じ分母で計算していることを確かめてください。
定年退職や契約期間の満了も離職者に含めますか?
厚労省の雇用動向調査は、退職や解雇を広く離職者に含めています。企業の社内指標では、定年退職を除いて自発的な流出だけを見る定義もよく使われます。どちらを採っても構いませんが、年によって扱いを変えないことが条件です。退職事由を区分値で記録しておけば、含める版と除く版の両方をいつでも出せます。
パートやアルバイトは離職率の分母に入れるべきですか?
雇用動向調査は期間の定めがない人と1か月以上の期間を定めて雇われている人を常用労働者とし、パートも含めて集計しています。令和7年はパートの離職率が19.9%、一般労働者が11.4%で、全体の13.7%はその合成値です。パートの比率が高い会社が全体の数字だけを見ると、正社員の定着の状況が見えにくくなります。雇用区分別に分けて算出し、比べる相手の統計も同じ区分の数字にそろえるのが確実です。
離職率は小数第何位まで出せばよいですか?
厚労省の統計は小数第1位までの表示で、新卒の離職状況の資料では小数第2位を四捨五入したと注記しています。社内の報告もこれに合わせて小数第1位までにすれば、統計と並べたときに桁がそろいます。人数が数十人の部署では1人の退職で数ポイント動くため、率と一緒に退職者数と分母の人数も必ず併記してください。
途中で部署が統合された場合、部署別の離職率はどう計算しますか?
統合前の部署の在籍者を、統合後の部署に読み替えてから期首人数を出し直します。所属を有効期間付きの履歴で持っていれば、必要なのは組織コードの対応表1つで、過去の年も同じ単位で再計算が可能です。人事マスタを上書きしている場合は、統合前の在籍者名簿を別に保存しておかないと、前年との比較ができなくなります。
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