深夜手当は、22時から翌5時までの間に働いた時間に対して、通常の賃金の25%以上を上乗せして支払う割増賃金です。正社員だけでなくパート・アルバイトにも、管理監督者にも支払義務があり、残業や法定休日の労働と重なると率は50%・60%・75%へ上がります。この記事では、労働基準法第37条と施行規則の条文にもとづいて、時給制と月給制の計算例、重複時の割増率、夜勤手当との違い、未払いになりやすい場面を、条文の番号を添えて整理しました。後半では、勤怠・給与システムで深夜時間をどの区分で集計すれば計算がずれないかと、既製のシステムで足りる会社・個別の開発が要る会社の線引きを示します。
まとめ:深夜手当の対象時間・割増率・計算式と勤怠設定で押さえる結論
深夜手当の対象は22時から翌5時までの労働で、率は通常の賃金の25%以上です。計算式は「1時間あたりの賃金×0.25×深夜の労働時間」。所定労働時間内の深夜なら上乗せ分の25%だけを払い、残業として深夜に働いた時間は時間外の25%と合わせて50%、月60時間を超える残業なら75%、法定休日の深夜は60%になります。
手当の名前は問われません。夜勤手当として定額を払っていても、法律上の深夜割増の額を下回れば差額が未払いです。管理職でも管理監督者でも深夜分は除外されません。
勤怠システムでは、深夜時間を「所定内深夜」「時間外深夜」「60時間超の時間外深夜」「法定休日深夜」の4区分に分けて集計し、日付をまたぐ勤務は始業日の勤務として扱う設定にします。日勤中心の会社なら既製品の標準設定で対応可能です。24時間シフトや夜勤手当との差額精算がある会社では、既製品の割増区分だけでは手作業が残ります。
深夜手当とは何かを労働基準法37条の深夜割増賃金と対象者から整理
まず、法律上の根拠と「誰に払うのか」を確認します。社内で呼んでいる手当の名前と、法律が求める割増賃金を切り分けておくと、後の計算と規程の見直しが楽になります。
22時から翌5時の労働に25%以上を上乗せする法律上の根拠と名称
根拠は労働基準法第37条第4項です。使用者が午後10時から午前5時までの間に労働させた場合、その時間について通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を払わなければならない、と定めています。法律上の正式な呼び方は「深夜の割増賃金」で、「深夜手当」「深夜割増」は実務上の通称です。
条文には、厚生労働大臣が必要と認める地域・期間については「午後11時から午前6時まで」とする例外の仕組みも書かれています。原則は22時〜5時なので、ほとんどの会社はこの時間帯で設定すれば足ります。
パート・アルバイトも管理監督者も対象になり18歳未満は原則禁止
深夜割増は雇用形態を問いません。時給制のアルバイトでも、22時以降に働けば25%以上の上乗せが必要です。
見落としやすいのが管理監督者です。労働基準法第41条で適用が外れるのは「労働時間、休憩及び休日」に関する規定で、深夜割増は外れません。最高裁も2009年12月18日の判決(ことぶき事件)で、管理監督者にも深夜割増賃金の請求権があると判断しています。深夜割増まで外れるのは、第41条の2の高度プロフェッショナル制度の対象者に限られます。
一方、満18歳未満の人を22時〜5時に働かせることは第61条で原則禁止です(交替制で働く満16歳以上の男性などの例外あり)。妊産婦が請求した場合も、第66条第3項により深夜業をさせられません。
夜勤手当・深夜残業手当との違いと夜勤手当で代える場合の支給条件
| 名称 | 法律上の義務 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 深夜手当 | あり(第37条第4項) | 単価×25%以上×深夜時間 |
| 深夜残業手当 | あり(施行規則第20条) | 単価×50%以上×該当時間 |
| 夜勤手当 | なし(会社独自) | 就業規則・賃金規程で決める |
夜勤手当は、夜間勤務の負担に報いるために会社が独自に設ける手当です。1回5,000円のような定額で払う会社も多く、それ自体は問題ありません。ただし夜勤手当を深夜割増の代わりにするなら、賃金規程に「深夜割増賃金として支給する」と明記し、毎月の深夜割増の計算額と比べて不足分を払う運用が前提です。名目だけ夜勤手当にして差額を払わない運用は、未払いになります。
深夜手当の計算方法を時給制・月給制の1時間単価から具体例で確認
計算は「1時間あたりの賃金」を出すところから始まります。時給制はそのまま時給を使い、日給制・月給制は所定労働時間で割って求めます。
1時間あたりの賃金の出し方と割増の基礎から外せる7種類の手当
労働基準法施行規則第19条は、日給は1日の所定労働時間数で、月給は月の所定労働時間数(月によって違う場合は1年間の1か月平均)で割ると定めています。月給制なら「年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12」が月平均所定労働時間です。
割増の基礎から外してよい手当は、法第37条第5項と施行規則第21条で次の7種類に限られます。
- 家族手当・通勤手当(法第37条第5項)
- 別居手当・子女教育手当・住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
判定は名前でなく実態で行います。全員に一律1万円を払う住宅手当は、住宅費に応じた手当ではないので基礎から外せないとする行政解釈があります。役職手当・資格手当・精勤手当は基礎に入れて計算してください。
時給1,200円で18時〜翌3時に働いた場合の深夜手当の計算例
時給1,200円のアルバイトが18時から翌3時まで勤務し、0時〜1時に1時間休憩した例です。実労働は8時間なので時間外労働は発生しません。
- 深夜の労働時間を数える:22時〜24時の2時間+1時〜3時の2時間=4時間(休憩の1時間は除く)
- 深夜割増を出す:1,200円×0.25×4時間=1,200円
- 日給を合計する:1,200円×8時間+1,200円=10,800円
休憩を深夜帯に取った場合、その時間は深夜の労働時間に入りません。打刻だけを見て22時〜3時の5時間で計算すると、割増を払いすぎる結果になります。
月給26万円・月平均所定160時間の社員の深夜割増を求める手順
基本給24万円、役職手当2万円、家族手当1.5万円、通勤手当1万円の社員で、年間休日125日・1日8時間勤務の会社を例にします。
月平均所定労働時間は(365日−125日)×8時間÷12=160時間です。基礎となる賃金は家族手当と通勤手当を除いた26万円なので、1時間あたり1,625円になります。この月に所定労働時間内の深夜勤務が10時間あれば、深夜割増は1,625円×0.25×10時間=4,062.5円です。
円未満は、1か月の割増賃金の総額について50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理が行政通達で認められているため、4,063円になります。月給には所定内の時間分の賃金がすでに含まれているので、上乗せするのは25%分だけです。
残業・法定休日・月60時間超と深夜が重なるときの割増率の一覧
深夜の時間帯は、残業や休日労働と重なることが多い時間帯です。重なったときの率は施行規則第20条に定められています。時間外と休日の基本の率は割増賃金の率の最低限度を定める政令で、時間外2割5分、休日3割5分です。
| 働いた時間の種類 | 割増率 | 支払う倍率 |
|---|---|---|
| 所定労働時間内の深夜 | 25%以上 | 0.25(基本分は月給に含む) |
| 時間外労働かつ深夜 | 50%以上 | 1.50 |
| 月60時間超の時間外かつ深夜 | 75%以上 | 1.75 |
| 法定休日の労働かつ深夜 | 60%以上 | 1.60 |
時間外と深夜の重複は50%、月60時間超の時間外と重なれば75%以上
9時始業・18時終業の社員が23時まで残業した場合、18時〜22時の4時間は時間外の25%、22時〜23時の1時間は時間外25%+深夜25%で50%です。先ほどの単価1,625円なら、22時〜23時の1時間は1,625円×1.5=2,437.5円になります。
月60時間を超える時間外労働の率は、厚生労働省の解説のとおり中小企業も2023年4月1日から50%です。その超えた時間が深夜に及ぶと75%以上になります。月末に残業が集中する職場では、どの時点で60時間を超えたかを日次で追わないと、深夜分の率を取り違えます。
法定休日の深夜は60%で時間外の25%は加算しない理由と日またぎ
法定休日の労働には「時間外」という考え方がありません。休日に10時間働いても休日の35%のままで、深夜と重なった時間だけ25%を足して60%になります。休日労働の時間に時間外の25%を重ねて85%で払う必要はありません。
注意したいのは日付をまたぐ勤務です。法定休日は原則として0時〜24時の暦日で数えるため、日曜を法定休日とする会社で土曜22時から日曜5時まで働くと、22時〜24時は深夜25%(土曜の勤務が週40時間を超えていれば50%)、0時〜5時は休日+深夜で60%になります。法定休日と所定休日の区別は法定休日とは?所定休日との違い・割増賃金と勤怠設定で詳しく扱っています。
深夜手当の未払いが起きやすい5つの場面と罰則・時効3年の扱い
深夜割増の未払いは、計算式の誤りよりも、制度や手当の設計から深夜分が抜け落ちることで起きます。
固定の夜勤手当・みなし残業・裁量労働制で深夜分が抜ける失敗例
実務で多い順に並べると、次の5つです。
- 定額の夜勤手当で深夜割増を払ったつもりになり、差額の確認をしていない
- 固定残業代に深夜分を含めたが、何時間分の深夜割増かを規程に書いていない
- 裁量労働制の対象者の打刻を計算から外し、22時以降の実労働を拾っていない
- 店長や課長を管理職扱いにして、深夜分まで支給対象から外している
- 休憩を深夜帯に取った日の控除を誤り、深夜時間を過大・過少に数えている
固定残業代に深夜分を含める場合の要件はみなし残業(固定残業代)とは?計算方法・上限時間・違法の見分け方で、裁量労働制で深夜・休日を実時間で計算する設定は裁量労働制とは:専門業務型・企画業務型の要件と勤怠システムの設定で解説しています。
未払いの罰則は6か月以下の拘禁刑と賃金請求権の時効3年の確認
深夜割増を払わないことは第37条違反で、第119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。
賃金請求権の時効は第115条で5年とされていますが、第143条の経過措置により当分の間は3年です。退職した元社員から3年分をまとめて請求されると、夜勤の多い職場では1人あたりの額が大きくなります。過去の勤怠データから深夜時間を再計算できる形で保存しているかどうかが、請求を受けたときの対応の速さを左右します。
勤怠・給与システムで深夜手当を正しく出すための区分設定と集計
ここからは、ここまでの法律上のルールを勤怠・給与システムの設定に置き換えます。深夜割増の計算ミスの多くは、計算式ではなく「どの時間をどの区分に数えるか」の設定で起きています。
深夜帯を設定値で持ち日付をまたぐ勤務を始業日で集計する設計方法
深夜帯の22:00と5:00は、プログラムに直接書かず、就業規則ごとの設定値として持たせます。条文に23時〜6時の例外があること、会社独自の夜勤手当の時間帯が法定の深夜帯とずれることがあるためです。
18時から翌3時までの勤務のように日付をまたぐ場合、継続した1勤務は始業時刻の属する日の労働として扱うのが行政解釈です。打刻を暦日で切ってしまうと、0時以降の3時間が翌日の別勤務になり、1日8時間を超えたかどうかの判定がずれます。ただし法定休日にかかる部分だけは暦日で判定するので、システムには「勤務日の帰属」と「休日判定の暦日」の2つの軸が要ります。
所定内深夜・時間外深夜・60時間超深夜・休日深夜の4区分の持ち方
| 勤怠の集計区分 | 給与の支給項目 | 倍率 |
|---|---|---|
| 所定内深夜 | 深夜割増 | 0.25 |
| 時間外深夜(60時間以内) | 深夜残業 | 1.50 |
| 時間外深夜(60時間超) | 深夜残業(60時間超) | 1.75 |
| 法定休日深夜 | 休日深夜 | 1.60 |
勤怠側で「深夜時間」を1本の合計で渡し、給与側で時間外と重なる分を推定する設計は避けてください。どの深夜時間が時間外かは、勤務の順番と月の累計時間を知っている勤怠側でしか正しく決まりません。勤怠側で4区分に分けた時間数を渡し、給与側は単価と倍率を掛けるだけにすると、検証も監査も単純になります。給与計算側に持たせる項目の全体像は給与計算システムとは?機能・種類・比較の観点で整理しています。
休憩の深夜帯控除と1分単位の集計、月合計での端数処理のルール
深夜時間は1日ごとに1分単位で数え、端数処理は月の合計でだけ行います。行政通達で認められているのは、1か月の時間外・休日・深夜の各合計について30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理です。毎日の深夜時間を15分単位で切り捨てる設定は、通達の範囲を超えるため使えません。
休憩は、勤務パターンに登録した固定の時間帯ではなく、実際に打刻した休憩の時刻で深夜帯と重なる分を引きます。夜勤の休憩時刻は日によって動くことが多く、固定値で引くと深夜時間がずれます。
既製の勤怠システムで足りる会社と深夜計算の個別開発が要る会社
深夜割増の計算機能は、ほとんどの勤怠システムに標準で入っています。開発が必要かどうかは、深夜勤務の量ではなく、勤務パターンと手当の組み合わせの複雑さで決まります。
日勤中心で残業が月数回の会社は標準設定で足り深夜計算の個別開発は過剰
オフィスワーク中心で、22時を超える残業が月に数回ある程度の会社は、既製の勤怠システムの標準設定で十分です。確認すべきなのは、時間外深夜と所定内深夜を分けて出力できるか、月60時間を超えた時点以降の深夜を75%で計算できるか、の2点だけです。この規模で深夜計算のために個別開発をするのは過剰と判断してください。製品の種類と選び方は勤怠管理システムとは?機能・種類・費用と選び方にまとめています。
24時間シフト・夜勤手当併用・複数規程の会社で既製品が詰まる箇所
既製品で手作業が残りやすいのは、介護施設の16時間夜勤、ホテルの夜勤明け、飲食店の深夜営業のように日付をまたぐシフトが毎日ある職場です。特に、定額の夜勤手当と法定の深夜割増を比べて差額だけを払う精算、事業所ごとに違う就業規則、変形労働時間制との組み合わせは、既製品の割増区分では表現しきれず、毎月Excelで差額を出す運用に戻りがちです。
この条件がそろう会社では、勤怠と給与の間に深夜区分と差額精算のロジックを持つ仕組みを作るほうが、毎月の手作業と未払いのリスクの両方を減らせます。現行の勤務パターンと手当規程から計算ルールを洗い出す段階からの相談は、勤怠管理システム開発で受け付けています。
よくある質問
深夜手当について、人事・給与の担当者や働く側から寄せられやすい質問をまとめました。
深夜手当は何時から何時までの労働に付きますか?
22時から翌朝5時までの労働に付きます。労働基準法第37条第4項が定める時間帯で、会社の規程で短くすることはできません。21時30分から23時まで働いた場合は、22時〜23時の1時間だけが深夜割増の対象です。5時を過ぎた時間は、残業であれば時間外の25%だけになります。休憩を取った時間は深夜帯であっても労働時間に入らないため、割増の対象から外れます。
深夜手当は管理職にも支払う必要がありますか?
必要です。管理監督者は労働時間・休憩・休日の規定の適用が外れるため残業代は不要ですが、深夜割増は外れません。最高裁の2009年12月18日判決もこの立場です。また、課長や店長という役職名だけでは管理監督者に当たらず、権限・勤務態様・待遇の実態で判断されます。管理監督者に当たらない管理職には、残業代と深夜割増の両方を払います。
夜勤手当を払っていれば深夜手当は不要ですか?
夜勤手当を深夜割増として払う旨を賃金規程に定め、その額が法律上の深夜割増の計算額以上であれば、別に払う必要はありません。計算額のほうが大きい月は差額を払います。夜勤手当が深夜割増とは別の趣旨(夜間の負担への手当)として定められているなら、夜勤手当とは別に深夜割増の全額が必要です。規程の書き方で結論が変わるので、まず賃金規程の文言を確認してください。
深夜手当は最低賃金の計算に含まれますか?
含まれません。最低賃金を満たしているかを確かめるときは、深夜割増・時間外割増・休日割増のほか、通勤手当や家族手当、賞与も除いて時間額を計算します。深夜手当を足すと最低賃金を超えるという理由で、基本の時給を最低賃金より低くすることはできません。月給や日給を時間額に直す手順は最低賃金の計算方法|月給・日給・歩合の時間額換算と除外手当の判定で解説しています。
深夜手当の未払いは何年分さかのぼって請求できますか?
現在は3年分です。労働基準法第115条は賃金請求権の時効を5年としていますが、第143条の経過措置で当分の間は3年とされています。請求する側は、タイムカードや勤怠システムの記録、シフト表、給与明細をそろえ、深夜時間と支払額を突き合わせる流れが基本です。会社側は、過去3年分の打刻と計算結果を再集計できる状態で保存しておくと、請求を受けたときに事実関係をすぐ確認できます。
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