OFF-JT(オフジェーティー、Off the Job Training)は、通常の仕事を一時的に離れて行う研修のことです。新入社員研修や管理職研修、外部セミナー、eラーニングがこれにあたります。
この記事では、OJT・自己啓発との違いを表で整理したうえで、厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」の実施率と費用、研修時間を労働時間として扱うべき場面、人材開発支援助成金の対象になる条件を一次資料の数値で示します。後半では、研修で学んだ内容が現場で使われない原因を研究に基づいて分解し、実施前に決めておく項目をまとめます。
まとめ:OFF-JTの意味と実施前に押さえる要点
- OFF-JTは業務命令に基づき通常の仕事を一時的に離れて行う研修で、体系的な知識を複数人に共通の内容で教えるのに向きます。業務の中で指導するOJT、本人が自発的に学ぶ自己啓発とは役割が違います。
- 令和7年度能力開発基本調査では、正社員にOFF-JTを実施した事業所は70.9%、正社員以外では30.7%です。企業規模30〜49人では53.0%にとどまります。
- 参加を義務づけた研修の時間は労働時間です。休日や終業後に開いても、自主参加扱いにして賃金を払わないことはできません。
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の人材育成訓練では、通学制・同時双方向型は実訓練時間10時間以上、eラーニング・通信制は標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上が時間・期間の要件です。中小企業は経費の45%と、1時間800円の賃金助成を受けられます。
- 研修内容を現場で使い続けるには、研修の設計や受講者の特性に加え、実践の機会と上司の支援を整える必要があります。効果は満足度アンケートではなく、行動と成果の変化で測ります。
OFF-JTの意味と実施形態
Off the Job Trainingの定義と読み方
OFF-JTは「Off the Job Training」の略で、読み方は「オフジェーティー」です。「Off-JT」「OFFJT」とも表記します。厚生労働省の能力開発基本調査は、OFF-JTを「業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)」と定義し、社内で労働者を1か所に集めて行う集合訓練と、業界団体や民間の教育訓練機関など社外の機関が行う教育訓練の両方を含めています。
定義で押さえるべき点は2つあります。1つは、社内の会議室で行う研修でも、仕事から離れていればOFF-JTに含まれることです。場所が社外かどうかは関係ありません。もう1つは、業務命令で受ける研修だという点です。同じ調査は自己啓発を、労働者が職業に関する能力を「自発的に開発し、向上させるための活動」と定義しており、本人の判断で受ける講座はこちらに分類されます。
集合研修・外部セミナー・eラーニングの違い
| 実施形態 | 主な例 | 向いている内容 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 社内集合研修 | 新入社員研修・階層別研修 | 自社の制度・共通ルール | 講師役の社員の工数 |
| 外部セミナー・公開講座 | 民間研修会社・業界団体 | 専門知識・他社の知見 | 自社への当てはめが別途必要 |
| 講師派遣型研修 | 研修会社の講師を社内に招く | 管理職研修・技能研修 | 1回あたりの費用が大きい |
| eラーニング | 動画講座・オンライン教材 | 知識の反復・拠点の分散 | 修了率の管理が必要 |
同じ調査では、正社員にOFF-JTを行った事業所の76.4%が「自社」で実施し、41.4%が民間教育訓練機関を使っています。実施機関では自社が最も多い一方、複数回答なので、社内と社外を併用している割合や外部研修を使う目的はこの数値からは分かりません。eラーニングの仕組みや種類はeラーニングの仕組み・種類と導入の進め方で詳しく扱っています。
OJT・自己啓発(SD)との違い
社員教育は、OJT(On the Job Training)、OFF-JT、自己啓発(SD:Self Development)の3つで説明するのが一般的です。違いは次のとおりです。
| 比較項目 | OJT | OFF-JT | 自己啓発 |
|---|---|---|---|
| 通常業務との関係 | 実務を通じて学ぶ | 通常業務を離れて学ぶ | 本人が自発的に学ぶ |
| 主な指導者 | 上司・先輩 | 社内外の講師 | 本人 |
| 身につくもの | 自社の実務の手順 | 体系的な知識・共通スキル | 本人が選んだ知識・資格 |
| 費用負担 | 主に指導者の時間 | 会社 | 本人(会社の補助あり) |
| 時間の扱い | 労働時間 | 義務なら労働時間 | 原則労働時間外 |
OJTは早く実務に就けますが、教え方が指導者によってばらつきます。OFF-JTは同じ内容を一度に教えられる一方、学んだ知識を実務に移す工程が別に必要です。そのため、OFF-JTで型を学び、OJTで実務に当てはめる順番で組むのが基本になります。OJTを担う側の役割はOJTトレーナーの役割と責任、研修・経験・他者からの学びの配分を考える枠組みは70:20:10フレームワークで解説しています。
令和7年度能力開発基本調査で見るOFF-JTの実施率と費用
厚生労働省の能力開発基本調査は、常用労働者30人以上の企業・事業所と、そこで働く労働者を対象にした統計です。令和7年度調査は2026年7月31日に公表され、令和6年度の1年間の実績を集計しています。OFF-JTの主な数値は次のとおりです。
| 指標 | 令和7年度調査 | 前回 |
|---|---|---|
| 正社員にOFF-JTを実施した事業所 | 70.9% | 71.6% |
| 正社員以外にOFF-JTを実施した事業所 | 30.7% | 31.2% |
| OFF-JTに費用を支出した企業 | 50.1% | 49.4% |
| 労働者一人当たりのOFF-JT費用 | 2.0万円 | 1.5万円 |
| OFF-JTを受講した正社員 | 44.5% | - |
| OFF-JTを受講した正社員以外 | 19.4% | - |
| 平均延べ受講時間(正社員) | 22.2時間 | - |
| 平均延べ受講時間(正社員以外) | 11.2時間 | - |
※一人当たり費用は、費用を支出した企業の平均額です。
数値から読み取れる点は3つあります。まず企業規模の差です。正社員にOFF-JTを実施した事業所は、30〜49人で53.0%、1,000人以上で85.4%でした。次に雇用形態の差で、正社員以外は実施率が30.7%と正社員の70.9%の半分以下、平均延べ受講時間も11.2時間と正社員の22.2時間の約半分です。最後に研修の短さで、受講者の年間延べ受講時間は「5時間未満」22.0%と「5時間以上10時間未満」27.1%を合わせて約半数が10時間未満でした。後述する人材育成訓練では、通学制・同時双方向型の実訓練時間が10時間未満の単独コースは対象外です。eラーニング・通信制には別の時間・期間要件があります。
実施内容は「新規採用者など初任層を対象とする研修」が75.7%で最も多く、「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」49.3%、「マネジメント」46.9%が続きます。受講した労働者の96.0%が「役に立った」と答えていますが、これは本人の感想で、職場の成果が上がったかどうかは別に確かめる必要があります。
事業所側の悩みも調査に出ています。能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所は80.1%で、内訳は「指導する人材が不足している」59.5%、「人材を育成しても辞めてしまう」51.6%、「人材育成を行う時間がない」45.5%の順でした。社内に教える人がいない場合、外部のOFF-JTはその穴を埋める手段になります。
OFF-JTのメリットとデメリット
OFF-JTのメリット:教育内容の共通化
利点は、教材と説明の内容を受講者全員で共通化しやすいことです。コンプライアンスやハラスメント防止のように全員が同じ理解を持つべき内容は、共通教材を使った集合研修で説明内容をそろえ、理解度テストで認識の違いを確認するのに向いています。外部講師を使えば、社内にない専門知識や他社の事例も取り込めます。部署の違う受講者が同じ場で学ぶため、研修後に部署を越えて相談できる関係ができることもあります。
デメリット:費用と業務の中断、現場で使われないリスク
費用は受講料だけではありません。受講者がその時間に担当するはずだった業務の穴埋めも、実質的なコストになります。令和7年度能力開発基本調査では、企業規模30〜49人の事業所で実施率が低くなっています。ただし、この結果だけでは業務の穴埋め負担が原因かどうかは判断できません。
より深刻なのは、研修で学んだ内容が職場で使われないまま終わることです。受講直後の満足度が高くても、職場に戻って使う機会がなければ行動は変わりません。この問題は後半の「研修内容が現場で使われない原因と対策」で扱います。
OFF-JTの労働時間の扱いと賃金支払い
OFF-JTを企画するときに見落とされやすいのが、研修時間の賃金です。厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は、労働時間にあたる例として「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」を挙げています。
実務上の判断は次のようになります。
- 受講を命じた研修は、所定時間外や休日に開いても労働時間です。所定時間を超えた分も労働時間として記録します。法定時間外労働に該当する場合は、割増賃金の支払いが必要です。
- 事前課題や研修後のレポートも、提出を義務づければ労働時間に含める必要があります。
- ガイドラインは、自主的な研修だと報告されていても、実際には使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間は労働時間として扱うべきだとしています。形式上「任意参加」にしても、実態で判断されます。
本当に任意の講座にしたいなら、受講しなくても評価や配置で不利にならないことを明示し、業務時間外の自己啓発として費用補助の形で支援するのが筋です。
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の要件と助成額
OFF-JTの費用を抑える公的制度の中心は、厚生労働省の人材開発支援助成金です。7コースあり、受講する社員の職務に関連した専門的な知識・技能を学ぶOFF-JTは「人材育成支援コース」の「人材育成訓練」が対象になります。職務との関連は受講する労働者ごとに判断されるため、同じ研修でも対象になる人とならない人が出ます。令和8年度版リーフレット(令和8年4月8日版)の助成内容は次のとおりです。
| 項目 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 経費助成率(正規雇用労働者等) | 45% | 30% |
| 賃金助成(1人1時間) | 800円 | 400円 |
| 賃金要件等を満たす場合の加算 | +15%・+200円 | +15%・+100円 |
| 経費助成限度額(10時間以上100時間未満) | 15万円 | 10万円 |
| 経費助成限度額(100時間以上200時間未満) | 30万円 | 20万円 |
| 経費助成限度額(200時間以上) | 50万円 | 30万円 |
| 1事業所1年度の限度額 | 1,000万円 | |
※経費助成限度額は受講者1人1訓練あたり。有期契約労働者等への人材育成訓練の経費助成率は70%(加算+15%)です。
申請で外しやすい条件は次の4つです。
- 通学制・同時双方向型は1コースの実訓練時間が10時間以上、eラーニング・通信制は標準学習時間が10時間以上または標準学習期間が1か月以上であること。
- eラーニングと通信制の訓練は経費助成のみで、賃金助成は受けられないこと。また、通学制等でも所定労働時間外の訓練は賃金助成の対象外であること。
- 職業訓練実施計画届を、訓練開始日の6か月前から1か月前までに管轄の労働局へ出すこと。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。
- 訓練経費は事業主が全額を負担していること。厚労省は「訓練経費は無料になりません」というリーフレットを出し、「無料で訓練が受けられます」という勧誘を危険サインとして注意喚起しています。
加算の「賃金要件」は、訓練修了後に受講者の賃金を5%以上上げる、または資格等手当を就業規則に定めて支払い3%以上上げる場合に満たします。2026年9月14日時点の詳細版パンフレットは令和8年8月3日版です。年度途中に申請書類も改正されているため、計画届の提出前と支給申請前の両方で確認してください。
OFF-JTの企画から効果測定までの進め方
目的と対象者の決め方
企画は「どの研修をやるか」ではなく「職場で何ができるようになってほしいか」から始めます。たとえば「新任課長が部下の評価面談を一人で進められる」のように、研修後の行動で目的を書くと、内容・対象者・時間数が決めやすくなります。研修の分析・設計・開発・実施・評価を順に回す枠組みはADDIEモデルの定義と研修計画での使い方で解説しています。
カークパトリックモデルによる4段階の効果測定
研修評価の定番はカークパトリックモデルです。モデルの解説と普及を行うKirkpatrick Partnersは、4つのレベルを次のように定義しています。
| レベル | 測るもの | OFF-JTでの測り方の例 |
|---|---|---|
| 1 Reaction(反応) | 受講者が有益・関連があると感じたか | 研修直後のアンケート |
| 2 Learning(学習) | 知識・スキル・態度・自信・コミットメントの獲得 | 研修前後のテスト |
| 3 Behavior(行動) | 職場で重要な行動を実践しているか | 研修直後から継続する上司の観察 |
| 4 Results(成果) | 組織の成果が生じたか | 離職率・不良率・売上の変化 |
同社は「モデルを使うときはレベル4から始めることが重要だ」としています。アンケート(レベル1)だけで評価を終えると、前述の「96.0%が役に立った」と同じく、行動が変わったかは分かりません。企画の段階で、レベル3の行動とレベル4の指標を先に決めておきます。
研修内容が現場で使われない原因と対策
研修で学んだ内容が職場で使われ、使い続けられることを「研修転移(transfer of training)」と呼びます。この分野で広く引用されるBaldwin & Ford(1988年、Personnel Psychology第41巻)のレビューは、転移を左右する要因を「研修の設計」「受講者の特性」「職場環境」の3つに整理しました。企業側が手を打ちやすく、見落とされやすいのは3つ目の職場環境です。
職場環境の側で打てる手は、研修の前後に分けると具体的になります。
- 研修前:上司が受講者と面談し、研修で何を持ち帰るかを決める。上司が研修の中身を知らないまま送り出すと、戻った後に使う場面を用意できません。
- 研修直後:学んだ手法を使う業務を1つ割り当てる。実践の機会を確保し、学習内容を職場で使い続けられるよう支援します。
- 研修直後から継続:上司が実践状況を確認し、うまくいかなかった点をOJTで補う。経験を振り返って次の行動につなげる考え方は経験学習サイクルが参考になります。
反対に、OFF-JTを選ぶべきでない場面もあります。手順が現場ごとに違い、頻繁に変わる作業は、集合研修で一般化して教えるより、現場でOJTとマニュアルで教える方が早く正確です。また、職場の上司が研修の考え方を受け入れていない場合は、部下を受講させる前に、学んだ内容を試せる業務と上司の支援を合意しておくべきです。管理職向けの研修を先に行うか、上司と部下を同時に受講させる方が効果を期待できます。
よくある質問
OFF-JTの読み方と意味は?
「オフジェーティー」と読みます。Off the Job Trainingの略で、会社の指示で通常の仕事を一時的に離れて受ける研修を指します。社内の会議室で行う研修も含まれます。
OJTとOFF-JTはどちらを先に行うべきですか?
基礎知識や共通ルールをOFF-JTで先に教え、OJTで実務に当てはめる順番が基本です。ただし、現場ごとに手順が違う作業はOJTから始めた方が早い場合があります。
OFF-JTの具体例にはどんなものがありますか?
新入社員研修、昇格時の階層別研修、管理職のマネジメント研修、コンプライアンス研修、外部セミナー、eラーニングが代表例です。令和7年度能力開発基本調査では、実施内容の最多は初任層向けの研修で75.7%でした。
OFF-JTの研修時間に給料は支払われますか?
参加が業務上義務づけられている研修は労働時間なので、賃金の支払いが必要です。所定労働時間を超えた分も労働時間として記録し、法定時間外労働に該当する場合は割増賃金を支払います。本人の意思で受ける自己啓発は原則として労働時間に含まれません。
eラーニングはOFF-JTに含まれますか?
業務を離れて会社の指示で受講するものは、一般にOFF-JTとして扱われます。ただし人材開発支援助成金では、eラーニングと通信制の訓練は経費助成のみで、賃金助成の対象外です。