厚生労働省が令和8年8月31日に公表した令和7年の雇用動向調査では、日本の離職率の平均は13.7%で、前年の14.2%から0.5ポイント下がりました。この記事では、その13.7%を一般労働者とパートタイム労働者、16の産業に分けた最新の値で示し、新卒3年以内離職率が事業所の規模でどれだけ違うかも並べます。そのうえで、自社の離職率を平均と比べるときに何をそろえるべきか、従業員が少ない会社ほど平均との差が偶然で動く幅を数字で確認し、目安として使える条件を整理します。最後に取り上げるのは、平均値と自社の数字を毎年同じ形で並べる定点観測の作り方です。
まとめ:離職率の平均13.7%は産業と就業形態をそろえて自社と比べる
全国の離職率の平均は13.7%ですが、この数字は一般労働者11.4%とパートタイム労働者19.9%の合成値です。産業別では宿泊業・飲食サービス業の23.7%から金融業・保険業の6.6%まで3倍以上の開きがあり、全体平均だけを基準にすると、業種によって「高すぎる」「低すぎる」の判断が簡単に逆転します。
自社と比べる相手は、同じ産業の、同じ就業形態の値です。正社員の離職率を見たいなら、その産業の一般労働者の欄を使います。新卒の3年以内離職率なら、大卒33.8%という全体値より、自社と同じ事業所規模の値(100〜499人なら大卒33.9%)が比較の相手になります。
もう1つの前提は人数です。従業員50人の会社では1人の退職で離職率が2.0ポイント動き、平均と同じ辞めやすさでも、年によって10ポイント近い差が偶然に出ます。100人に満たない会社は単年の数字で平均と比べず、3年分をまとめて見るのが確実です。
令和7年雇用動向調査の離職率の平均13.7%と10年間の推移から読む水準
最初に、全体の平均値がどう構成されているかを確認します。内訳を知らないまま13.7%を使うと、比べる相手を取り違えやすくなります。
全体13.7%を一般11.4%・パート19.9%と男女別に分けた令和7年の内訳
令和7年の入職と離職の推移に載っている主な値は次のとおりです。
| 区分 | 令和7年 | 令和6年 |
|---|---|---|
| 常用労働者 計 | 13.7% | 14.2% |
| 男性 | 12.5% | 12.6% |
| 女性 | 15.1% | 16.0% |
| 一般労働者 | 11.4% | 11.5% |
| パートタイム労働者 | 19.9% | 21.4% |
前年からの低下0.5ポイントのうち、大きく動いたのはパートタイム労働者(1.5ポイント低下)で、一般労働者は0.1ポイントしか下がっていません。正社員中心の会社が「全国の離職率が下がったから自社も下がるはず」と読むのは早計です。
平成28年から令和7年までの離職率の推移と令和元年15.6%の山
同じ資料の10年分の推移を並べると、離職率は14%前後から15%台の間で上下しています。
| 年 | 離職率 |
|---|---|
| 平成28年(2016) | 15.0% |
| 平成29年(2017) | 14.9% |
| 平成30年(2018) | 14.6% |
| 令和元年(2019) | 15.6% |
| 令和2年(2020) | 14.2% |
| 令和3年(2021) | 13.9% |
| 令和4年(2022) | 15.0% |
| 令和5年(2023) | 15.4% |
| 令和6年(2024) | 14.2% |
| 令和7年(2025) | 13.7% |
10年間の最大は令和元年の15.6%、最小は令和7年の13.7%で、その差は1.9ポイントでした。全国の平均はこの程度しか動かないため、自社の離職率が前年より5ポイント上がったなら、景気や労働市場の全体の動きでは説明がつかず、社内の要因を疑うべきだと判断できます。
離職理由別に見た個人的理由10.2%と事業所側の理由0.9%の内訳
離職理由別離職率の推移によると、令和7年の13.7%のうち、結婚・出産・育児・介護・その他の個人的理由による離職は10.2%、経営上の都合や出向などの事業所側の理由は0.9%でした。残りの約2.6ポイントは、この2区分に入らない理由(契約期間の満了や定年など)です。
離職理由は離職者がいた事業所が回答したものと注記されています。自社で退職事由を区分して記録していれば、「個人的理由による離職率」を同じ切り口で出し、平均の10.2%と並べることが可能です。定年や契約満了の多い会社は、全体の率より理由別の率で比べたほうが実態に近くなります。
産業別の離職率の平均:宿泊・飲食23.7%から金融・保険6.6%までの差
比較の相手を決めるうえで最も効くのが産業の区分です。同じ13.7%の全国平均でも、産業ごとの値は大きく離れています。
16産業の離職率を一般労働者とパートタイム労働者に分けた令和7年の一覧
産業別の入職と離職の表4-2から、離職率と入職超過率を抜き出しました。
| 産業 | 計 | 一般 | パート | 入職超過率 |
|---|---|---|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 23.7% | 21.5% | 25.0% | 4.1 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 21.2% | 20.3% | 23.8% | 0.6 |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 20.1% | 16.1% | 25.1% | 1.2 |
| 教育・学習支援業 | 15.1% | 9.8% | 26.6% | 0.4 |
| 医療・福祉 | 14.3% | 13.6% | 15.9% | 0.2 |
| 不動産業・物品賃貸業 | 12.1% | 10.5% | 19.6% | 2.3 |
| 卸売業・小売業 | 11.9% | 8.5% | 17.6% | 0.7 |
| 学術研究・専門・技術サービス業 | 11.7% | 10.0% | 26.7% | 1.2 |
| 情報通信業 | 10.4% | 10.0% | 21.9% | 3.2 |
| 鉱業・採石業・砂利採取業 | 10.2% | 9.8% | 19.0% | 0.3 |
| 製造業 | 9.8% | 9.2% | 14.2% | -0.2 |
| 運輸業・郵便業 | 9.0% | 8.1% | 12.2% | 0.6 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 8.8% | 8.0% | 19.6% | 0.5 |
| 建設業 | 8.7% | 7.9% | 19.3% | 1.7 |
| 複合サービス事業 | 8.6% | 7.7% | 12.6% | -2.3 |
| 金融業・保険業 | 6.6% | 6.3% | 10.6% | 2.1 |
| 産業計 | 13.7% | 11.4% | 19.9% | 1.0 |
入職超過率は入職率から離職率を引いた値で、単位はポイントで、プラスなら入職者が離職者を上回っています。
同じ産業でも一般とパートで差が開く業種と比較相手の選び方の基準
産業の「計」は、その産業のパート比率に強く引っ張られます。卸売業・小売業は一般労働者8.5%に対して計11.9%ですが、これは1月1日現在の常用労働者938.8万人のうち352.7万人、約38%がパートタイム労働者だからです。宿泊業・飲食サービス業では約64%がパートタイム労働者で、計の23.7%はほぼパートの値に近づいています。
正社員が大半の小売企業が計の11.9%と比べると、自社の離職率を低く見積もることになります。比べる相手は「産業×就業形態」の欄で選ぶ、というのが実務の基準です。教育・学習支援業のように一般9.8%、パート26.6%と3倍近く離れる業種では、この選び方を誤ると結論が逆になります。
新卒3年以内離職率の平均と事業所規模別の差、大卒33.8%の読み方
規模による違いがはっきり出るのが、新卒の3年以内離職率です。厚労省は令和7年10月24日に、令和4年3月卒業者の数字を公表しています。
学歴別の3年以内離職率:中学54.1%・高校37.9%・短大等44.5%・大学33.8%
新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)では、就職後3年以内の離職率は中学54.1%、高校37.9%、短大等44.5%、大学33.8%でした。前年と比べて大学は1.1ポイント、高校は0.5ポイント下がり、中学は3.6ポイント上がっています。
「新卒の3割が3年で辞める」という言い方は大卒の33.8%に由来します。高卒採用が中心の会社なら、比べる相手は4.1ポイント高い37.9%のほうです。この統計は雇用保険の加入記録から集計したもので、自社の入社年度別の数字と並べるときの測り方の違いは、離職率の計算方法:厚労省の式と分母の選び方、入社3年以内・月次の算出例で整理しています。
事業所規模別に見た5人未満57.5%から1,000人以上27.0%までの開き
同じ公表資料の事業所規模別の値です。
| 事業所規模 | 高校 | 大学 |
|---|---|---|
| 5人未満 | 63.2% | 57.5% |
| 5〜29人 | 54.6% | 52.0% |
| 30〜99人 | 45.2% | 41.9% |
| 100〜499人 | 36.7% | 33.9% |
| 500〜999人 | 29.9% | 31.5% |
| 1,000人以上 | 26.3% | 27.0% |
大卒で見ると、5人未満と1,000人以上の差は30.5ポイントでした。規模が小さいほど離職率が高いという傾向は、高校・大学のどちらでも崩れていません。従業員40人の会社が大卒の3年以内離職率40%を「全国平均33.8%より高い」と受け止めるのは誤りで、同じ30〜99人の41.9%とほぼ同じ水準です。
産業別の上位5業種と、規模別の値を自社の比較相手に選ぶときの注意点
産業別で3年以内離職率が高い上位5業種は、大卒では宿泊業・飲食サービス業55.4%、生活関連サービス業・娯楽業54.7%、教育・学習支援業44.2%、医療・福祉40.8%、小売業40.4%です。事業所規模別・産業別のさらに細かい表は、厚労省の新規学卒者の離職状況のページに掲載されています。
注意したいのは、ここでの規模が企業ではなく事業所の規模である点です。従業員2,000人の会社でも、配属先の支店が20人なら5〜29人の区分に入ります。全社の新卒をまとめて比べるなら、本社・支店の人数構成に近い区分を選ぶか、配属事業所の規模ごとに分けて比べます。
自社の離職率が平均より高いか判断する目安と、比べてはいけない条件
平均値の一覧を手に入れても、自社の数字とそのまま並べてよいとは限りません。ここでは、比較が成り立つ条件と、比較をやめるべき場面を具体的に示します。
統計の母集団は5人以上の事業所:出向を離職に含む定義と自社との差
雇用動向調査の概況によると、調査対象は5人以上の常用労働者を雇用する事業所から抽出した約15,000事業所で、離職率の分母は1月1日現在の常用労働者数です。離職者には他企業への出向者・出向復帰者が含まれ、同じ企業内の他事業所への転出者は含まれません。
自社の離職率を定年退職や出向を除いて算出している場合、統計より低く出るのは当然です。比較の前に、自社の数字の分母と、分子に含めた退職事由を確かめます。定義が違ったまま差を議論しても、結論は出ません。
従業員50人の会社で1人の退職が動かす2.0ポイントと偶然の幅の目安
人数の少ない会社では、平均と同じ辞めやすさでも、その年の離職率は大きくぶれます。離職を1人ずつ独立に起きる事象とみなした粗い近似で、平均13.7%の会社の離職率が偶然でどれだけ動くかを計算すると次のようになります。
| 従業員数 | 1人の退職で動く幅 | 偶然で起こりうる幅(約95%) |
|---|---|---|
| 50人 | 2.0ポイント | ±約9.7ポイント |
| 300人 | 0.3ポイント | ±約4.0ポイント |
| 1,000人 | 0.1ポイント | ±約2.2ポイント |
50人の会社で離職率が20%(10人)だったとしても、13.7%との差6.3ポイントは偶然の幅に収まります。この規模で1年分の数字を平均と比べ、「うちは離職率が高い」と結論を出すのは早計です。100人未満の会社は3年分の離職者数と期首人数を合計して率を出し、それを平均と比べる方法を勧めます。
入職超過率と合わせて見る:離職率が高くても人員が増える会社の読み方
離職率だけでは、人が減っているのか入れ替わっているのかが分かりません。宿泊業・飲食サービス業は離職率23.7%で最も高い一方、入職超過率は4.1ポイントで、人員はむしろ増えています。複合サービス事業は離職率8.6%と低いものの、入職超過率はマイナス2.3ポイントで、人員が減っています。
自社の数字も、入職率・離職率・入職超過率の3つを並べて読みます。離職率が平均を上回っていても、採用で補えていて入職超過がプラスなら、優先して手を打つべきは定着より採用コストの側かもしれません。逆に、離職率が平均並みでも入職超過率がマイナスの年が続くなら、採用が追いついていない状態です。
平均との比較で「高い」と言い切れる条件と、比較をやめるべき場面
自社の離職率が平均より高いと言い切ってよいのは、次の2つを満たすときです。1つは、同じ産業・同じ就業形態の値と、同じ定義で算出した自社の数字を比べていること。もう1つは、差が上の表の偶然の幅を超えているか、3年続けて平均を上回っていることです。
反対に、比較をやめるべき場面もあります。創業から数年で人員が急増している会社は、期首人数が小さく入社直後の退職が分子に入りやすいため、統計の定義で出すと高めに出ます。M&Aや事業の切り出しで転籍が大量に発生した年も、平均との比較には使えません。こうした年は、平均との比較を外し、自社の前年同期の数字とだけ比べます。
離職率の平均と自社の数字をBIダッシュボードで毎年定点観測する設計
平均との比較を毎年同じ形で続けるには、公表値の取り込みと自社の算出を仕組みにしておく必要があります。年1回の作業でも、定義がずれると過去との比較が崩れます。
厚労省の公表値をベンチマーク表として持つ項目と年1回の更新手順
雇用動向調査の年計は、令和7年分が令和8年8月31日に公表されました。新卒の3年以内離職率は別の公表で、直近の更新は令和7年10月24日です。公表された値は、次の手順でベンチマーク表に追加します。
- 産業(自社の該当産業と産業計)、就業形態(計・一般・パート)、年の3つをキーにした表を作る
- 離職率・入職率・入職超過率の3列を、概要のPDFの表4-2から転記する
- 新卒の3年以内離職率は、学歴と事業所規模をキーにした別の表に追加する
- 転記した年と出典のURLを行ごとに残し、前年の行は上書きせずに積み上げる
企業規模別や年齢階級別の離職率が必要な場合は、e-Statの雇用動向調査 年次別推移に「性、企業規模別入職・離職率」「性、年齢階級別離職率」の表があり、Excel形式で取得できます。
自社の離職率を統計と同じ定義で出すための在籍データと画面の並べ方
自社側の数字は、統計と同じく「1月1日の在籍者数」を分母に、暦年の離職者を分子にして出すと、ベンチマーク表と同じ列に並べられます。社内の主系列を事業年度や期中平均で出している会社は、比較用の系列を別に1本持つ形が扱いやすい方法です。分母の違いで数字がどれだけ変わるかは、兄弟記事の離職率の計算方法で計算例を示しています。
画面は、自社の離職率と同じ産業・就業形態の平均を同じ折れ線グラフに重ね、隣に入職超過率を置く構成が読みやすくなります。部署別の表を並べる場合は、人数の少ない部署の率が大きく振れるため、率と一緒に人数の表示が必須です。経営会議で見る指標の選び方や画面の構成は経営ダッシュボードの指標の決め方と構築方式、ツールの選び方はBIツールでできることとダッシュボードの選定軸で扱っています。
Excelの表で足りる段階とダッシュボード化・システム化に進む条件
全社の離職率を年1回出し、産業平均と比べるだけなら、Excelのベンチマーク表と在籍者一覧で足ります。従業員300人未満でこの用途に限るなら、BIツールの導入は過剰です。
ダッシュボードやシステムに進むのは、部署別・雇用区分別の離職率を毎月見たい、人事・勤怠・給与のデータが別々で毎回手で突き合わせている、過去の年の在籍者数を出し直す依頼が何度も来る、といった条件が重なったときです。まず既製の人事システムの集計機能で足りるかを確かめ、在籍履歴の持ち方が合わない場合に作り込みを検討します。在籍履歴を整え、平均値と並べて離職率を自動で算出する仕組みは、一創の人事・労務管理システム開発でご相談いただけます。
よくある質問
離職率の平均について、人事担当者や経営者からよく寄せられる質問をまとめました。
離職率が何%を超えると高いといえますか?
全業種に共通する線はありません。令和7年の産業別の離職率は6.6%から23.7%まで離れているため、「20%を超えたら高い」といった一律の目安は、宿泊業・飲食サービス業では平均以下、金融業・保険業では平均の3倍という意味になります。自社と同じ産業・同じ就業形態の値を基準にし、そこから偶然の幅を超えて上回っているか、3年続けて上回っているかで判断してください。
IT業界(情報通信業)の離職率の平均はどのくらいですか?
令和7年の雇用動向調査では、情報通信業の離職率は10.4%で、一般労働者は10.0%、パートタイム労働者は21.9%でした。入職率は13.6%で、入職超過率は3.2ポイントと16産業の中でも高い部類に入ります。辞める人は全体平均より少なく、それ以上に採用で人が増えている業種という読み方になります。正社員中心のIT企業なら、比べる相手は一般労働者の10.0%です。
中小企業の離職率の平均は大企業より高いですか?
新卒の3年以内離職率では、規模が小さいほど高い傾向がはっきり出ています。大卒の場合、事業所規模5人未満で57.5%、30〜99人で41.9%、1,000人以上で27.0%です。一般の常用労働者の企業規模別の離職率は、e-Statの雇用動向調査 年次別推移の「性、企業規模別入職・離職率」の表で確認できます。中小企業は人数が少ないぶん単年の数字がぶれやすいため、複数年をまとめて比べてください。
離職率が0%の会社は良い会社といえますか?
離職率0%だけでは判断できません。従業員20人の会社なら、平均と同じ辞めやすさでも、その年の退職がたまたま0人になることは珍しくありません。また、採用を止めていて入職率も0%に近い会社は、人の入れ替わりがないまま平均年齢が上がっている可能性もあります。入職率・入職超過率・年齢構成と合わせて見て、はじめて良し悪しが言えます。
厚労省の離職率の平均はいつ更新されますか?
雇用動向調査は上半期と下半期の年2回実施され、両方を合わせた年計が翌年に公表されます。令和7年分の年計は令和8年8月31日の公表です。新卒の3年以内離職率は別の統計で、令和4年3月卒業者の数字が令和7年10月24日に公表されました。ベンチマーク表は、この2つの公表時期に合わせて年1回ずつ更新する運用で足ります。
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