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エイハラ(エイジハラスメント)とは?意味・具体例と起きる原因、法律上の扱いと相談先

エイハラ(エイジハラスメント)とは?意味・具体例と起きる原因、法律上の扱いと相談先

エイハラ(エイジハラスメント)とは、年齢や世代を理由に、職場で相手を見下したり不利に扱ったりする言動のことです。「若いから大丈夫でしょ」と無理な仕事を押し付ける、「もう歳だから」と研修から外す、人前で「おばさん」と呼ぶ、といった形で若手にも中高年にも向きます。年下の部下から年上の社員に向くこともあります。

この記事では、具体例を向く相手別に整理し、どこからがハラスメントになるのかを厚生労働省のパワハラ指針で判断する方法を示します。エイハラが起きやすい職場の特徴、法律上の扱い、企業が相談を受けたときの手順、被害を受けたときの相談先もまとめました。

まとめ:エイハラの意味と判断・対処の要点

  • エイハラは「age(年齢)」と「harassment(嫌がらせ)」を組み合わせた和製の言葉で、法令用語ではありません。2015年に同名のテレビドラマが放送され、広く知られるようになりました。
  • 年齢に触れること自体は問題ではありません。問題になるのは、年齢を理由に能力や役割を決めつける、年齢で揶揄するといった言動です。パワハラへの該当性は、優越的な関係・業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動・就業環境への害の3要素で判断し、繰り返しは必須条件ではありません。
  • 日本でエイハラを名指しで禁止する法律はありません。職場での年齢いじりや仕事外しは、労働施策総合推進法第31条のパワハラ規制と指針の6類型で判断します。条件を満たせば企業は措置義務に基づく対応を求められ、民法上の損害賠償責任を問われることもあります。
  • 厚生労働省の調査では、現在の職場でパワハラを受けた929人の31.9%が「従業員の年代に偏りがある」と回答しました。過去3年間にパワハラを受けなかった6,454人では16.6%です。ただし、この調査はパワハラ全般を対象としており、年代の偏りとエイハラの発生との関係を直接示すものではありません。
  • 被害を受けたら、日時・発言・同席者を記録し、社内窓口に相談します。社内で動かなければ、都道府県労働局の総合労働相談コーナー(予約不要・無料)やみんなの人権110番に相談できます。

エイハラの意味と言葉が広まった経緯

エイハラは、年齢や世代を根拠に相手の能力・価値・役割を決めつけ、職場で不利益や精神的な苦痛を与える言動を指します。英語圏では「age discrimination(年齢差別)」や「age-based harassment」と呼ぶのが一般的で、「エイジハラスメント」は日本で広まった言い方です。

言葉が広く知られたきっかけは、テレビドラマ『エイジハラスメント』です。原作は内館牧子の同名小説(幻冬舎、2008年7月刊)で、34歳の主婦がパート先で「オバサン扱い」される話でしたが、2015年7月9日から9月10日にテレビ朝日系で放送されたドラマ版(武井咲主演・脚本は内館牧子)では、主人公を22歳の新入社員に変えています。能力ではなく若さと見た目だけを求められ、まっとうな仕事を任されない、という描き方でした。「エイジハラスメント」で検索するとドラマの配信ページが今も上位に並ぶのは、この作品の影響です。

原作が中年女性、ドラマが若手社員を扱ったように、エイハラは特定の世代だけの問題ではありません。厚生労働省の令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書でも、過去3年間にパワハラを受けた割合は20代17.8%、30代18.8%、40代20.5%、50代以上19.5%と、年代による差は3ポイントに収まっています。年齢による決めつけ全般を指す言葉としては「エイジズム」もあり、無意識の思い込みの側面はアンコンシャスバイアスとは|思い込み・バイアス・先入観・偏見の違いと種類・具体例・対策で整理しています。

エイハラの具体例:向く相手別の言動と私生活への踏み込み

エイハラは、向く相手によって表れ方が変わります。下の表は典型的な言動と、パワハラ指針の6類型のうちどれに近いかを並べたものです。類型に当てはまるかどうかは、後述の3要素とあわせて判断します。

向く相手 言動の例 指針の近い類型
若手 「若いくせに生意気」と会議で発言を遮る 精神的な攻撃
若手 「若いから大丈夫」と体調の相談を退け残業させる 過大な要求
若手 「一番若いから」と私的な雑用を毎回押し付け 過大な要求
中高年 「もう歳だから無理」と研修や新規案件から外す 過小な要求
中高年 人前で「老害」「おばさん」「おじさん」と呼ぶ 精神的な攻撃
中高年 定年間際の社員を誰でもできる業務に移す 過小な要求
年上の社員 年下の同僚集団が無視し情報を回さない 人間関係からの切り離し
全世代 「その歳でまだ結婚しないの?」と繰り返し聞く 個の侵害

表の言動がすべて違法になるわけではありませんが、「冗談だった」「励ましのつもりだった」という言い分だけで該当性が否定されることもありません。

若手に向く言動:「若いから大丈夫」「若いんだから」

若手へのエイハラは、経験の少なさを理由に発言を軽んじるものと、若さを理由に負荷を押し付けるものの2系統に分かれます。前者は「若いくせに」「最近の若者は」「これだからZ世代は」のように、個人を世代でひとくくりにする発言です。世代の区切り自体が生年で決まる便宜上の分類にすぎないことは、X世代・Y世代・Z世代の違いとは?生年の区切りと人口規模を公的データで整理を見るとわかります。

後者の典型が「若いから大丈夫」「若いんだから徹夜くらい平気」です。言う側は励ましのつもりでも、体調不良や業務量の相談を退ける場面で使えば、判断の根拠を本人の状態ではなく年齢に置いたことになります。「一番若いから」と飲み会の幹事や片付けを毎回任せるのも同じ構図です。パワハラ指針は「過大な要求」の該当例として、「新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること」と「労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること」を挙げています。

中高年に向く言動:「もう歳だから」「おばさん」、定年前の仕事外し

中高年へのエイハラは、「もう歳だから覚えられない」「その年でまだ係長?」のように能力や経歴を年齢で否定する発言と、「おばさん」「おじさん」「老害」といった呼称での揶揄や、「年寄り扱い」して会話や判断から外す言動が中心です。

見落とされやすいのが業務上の扱いです。定年が近いことを理由に新しい案件や研修から外す、役職を外したうえで誰でもできる作業だけを割り当てる、といった扱いがこれに当たります。指針は「過小な要求」の該当例に「管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること」を挙げています。一方、「労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること」は該当しない例です。体力や健康状態を本人と話し合って業務量を調整するのは配慮であり、年齢だけを理由に一方的に外すのとは区別されます。

年下からのエイハラ:年下上司や後輩からの言動

エイハラは上司から部下への一方向ではありません。年下の上司が年上の部下を「使えないベテラン」と扱う、IT操作に詳しい若手が年長の同僚を小ばかにして必要な情報を回さない、といったケースもあります。

パワハラの要件にある「優越的な関係」は、役職の上下だけを指すわけではありません。指針は、同僚や部下の言動でも「当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの」や、「同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの」を含むと定めています。若手が新システムの操作を握っている職場で、年長の社員を集団で締め出すような状況は、この定義に当てはまり得ます。

年齢と結婚・出産を結びつける言動

「もう30歳なのに結婚しないの?」「子どもは早く産んだほうがいいよ」のように、年齢を材料に結婚・出産・家族の予定へ踏み込む言動も、エイハラとして挙げられることが多い類型です。言う側は世間話のつもりでも、答えたくない私生活を年齢の物差しで評価していることになります。

指針の6類型では「個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)」が近く、該当例には、性的指向・ジェンダーアイデンティティや病歴、不妊治療等の機微な個人情報を本人の了解なく他の労働者に暴露することが含まれています。結婚や出産に関する発言でも、意に反する性的な言動によって就業環境が害されるなどの要件を満たせば、セクハラに当たり得ます。違いは後の章で整理します。

どこからがエイハラか:年齢に触れる言動の線引き

職場で年齢の話題が出ること自体は避けられません。誕生日を祝う、同年代で昔の話をする、採用や配置で年齢構成を把握する、といった場面は日常的にあります。線引きの目安は次の3点で、重なるほど該当に近づきます。繰り返しがなくても、言動の態様によっては一度で該当し得ます。

  • 年齢を理由に、能力・役割・評価を決めつけているか(「若いから任せられない」「歳だから覚えられない」)
  • 年齢を材料に、相手を揶揄・侮辱しているか(「おばさん」「老害」「ゆとり」)
  • 本人が嫌がっているのに、繰り返しているか

法的なパワハラに当たるかを判断する際、3要素のうち「就業環境が害される」の基準となるのが、指針の「平均的な労働者の感じ方」です。指針は「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当」としています。受け手が不快に感じたという事実だけで、直ちに法的なパワハラに該当すると決まるわけではありません。「受け手がどう感じたかで決まる」と説明する解説も見かけますが、指針の基準はそれとは違います。

逆に、言った側に悪気がなかったというだけで該当性が否定されるわけでもありません。指針は「当該言動の目的」を考慮要素に挙げていますが、同時に「態様・頻度・継続性」「労働者の属性や心身の状況」「行為者との関係性」なども並べ、総合的に考慮するとしています。

「職場で年齢を聞くのはハラスメントか」という疑問もよくあります。年齢を尋ねること自体を禁じる規定はありません。ただし、答えた年齢をもとに「その年で独身?」「その年ならもっとできるでしょう」と評価や私生活に踏み込めば、上の3点に近づきます。答えたくない相手に繰り返し聞くのも避けるべきです。

エイハラ予防で点検したい職場の特徴:年代の偏り・からかい・人事制度

エイハラは個人の口の悪さだけで起きるものではありません。厚生労働省の実態調査は、パワハラを受けた人と受けなかった人に職場の特徴を尋ねています(報告書172ページ、図表197)。年齢に関わる項目と、差が大きかった項目を抜き出すと次のとおりです。

職場の特徴 パワハラを受けた 受けなかった
従業員の年代に偏りがある 31.9% 16.6%
冗談・おどかし・からかいが日常的 14.9% 2.8%
上司と部下のコミュニケーションが少ない 30.6% 11.2%
ハラスメント防止規定が制定されていない 20.9% 3.4%
人手が常に不足している 45.4% 29.4%

対象は現在の職場でパワハラを受けた929人と、過去3年間に受けなかった6,454人です。この調査だけでエイハラの原因は特定できません。以下では、調査結果も参考にしながら、予防のために点検したい職場の特徴と制度を3つ挙げます。

1つ目は年代の偏りです。若手が数人だけの職場や、ベテランばかりの職場では、少数派が「若い子」「年配の人」という属性で語られやすくなります。総務省統計局の統計トピックスNo.149によると、2025年の65歳以上の就業者は943万人で22年連続の増加、就業者全体の13.8%を占めます。常用労働者21人以上の報告企業では、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業も34.8%(令和7年 高年齢者雇用状況等報告)まで増えました。高齢者の就業が広がる中、年齢差のある同僚を想定した相談対応を整えておく必要があります。

2つ目はからかいの常態化です。「冗談・からかいが日常的」はパワハラを受けた人で14.9%、受けなかった人で2.8%と、5倍以上の開きがありました。年齢いじりは笑いを取る手段として使われやすく、一人が始めると周りも同調します。パワハラ指針も、相談窓口が広く対応すべき場面の例に「労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題が原因や背景となってパワーハラスメントが生じるおそれがある場合」を挙げています。

3つ目は年齢で線を引く人事制度です。研修の対象を「〇歳以下」に限る、役職定年で一律に役職を外す、といった制度があると、現場の「もう歳だから」という発言に会社のお墨付きがあるように見えます。制度そのものが直ちに違法になるわけではありませんが、運用で本人の能力を見ずに仕事を外していないかは点検の対象です。

エイハラの法的な扱い:禁止法の有無と適用される規制

日本には「エイジハラスメント」を名指しで禁止する法律はありません。ただし、年齢を明文で扱う規定はあり、職場での年齢を理由とする言動はパワハラの枠組みで規制されます。

年齢を明文で扱う法律:募集・採用と定年

年齢そのものを条文で扱っているのは、主に次の2つの場面です。

法律・条文 内容
労働施策総合推進法 第9条 募集・採用で年齢にかかわりない均等な機会
同法施行規則 第1条の3 年齢制限が認められる例外を限定列挙
高年齢者雇用安定法 第8条 定年は60歳を下回れない
同法 第9条 65歳までの雇用確保措置(義務)
同法 第10条の2 65〜70歳の就業確保措置(努力義務)

労働施策総合推進法第9条は、事業主は「労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めています。例外は施行規則第1条の3が限定的に定めており、定年年齢を下回る者を期間の定めのない契約で募集する場合、法令で年齢による就業制限がある業務、長期的な能力開発を目的に、無期契約・職業経験不問・新卒者と同等の処遇などの条件で若年者等を募集する場合、技能継承、芸術・芸能の表現の真実性、60歳以上の高年齢者の雇用促進などに限られます。高年齢者雇用安定法の措置の実施状況は毎年6月1日時点で報告する仕組みで、報告書の数え方は高年齢者雇用状況等報告書の書き方:⑮〜⑲欄の人数の数え方と6月1日の人事データで扱っています。

ただし、第9条が対象とするのは募集と採用の段階だけです。入社後の配置・昇進・日常の言動に年齢差別を禁じる一般的な条文はありません。この空白を埋めているのが、次に述べるパワハラ規制と民法です。

職場での言動の判断基準:第31条のパワハラ規制と指針の6類型

職場での年齢いじりや仕事外しは、労働施策総合推進法のパワハラ規制で判断します。第31条第1項は、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより就業環境が害されることのないよう、事業主に相談体制の整備などの措置を義務づけています。第2項は、相談したことや、会社の調査に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。この規定は2026年10月1日施行の改正で第30条の2から第31条へ移り、同日から第33条でカスタマーハラスメントへの措置義務も始まりました。改正の全体像はパワハラ防止法とは?措置義務10項目と2026年10月改正への対応をシステム目線で解説で、カスハラ側の要件はカスハラ対策義務化とは?2026年10月施行の10措置と録音・対応記録のシステム要件で扱っています。

具体的な判断基準は、パワハラ指針(令和2年厚生労働省告示第5号、令和8年10月1日適用版)が示しています。この指針の本文には「年齢」という語が一度も出てきません。年齢を理由とする言動に特別な類型はなく、判断の中心はパワハラの3要素です。身体的な攻撃を含む6類型は代表例であり、類型に当てはまるかだけで該当性が決まるわけではありません。指針のどの部分が「指導」と「パワハラ」を分けるかは、ハラハラ(ハラスメントハラスメント)とは?指導との線引きを厚労省指針で判断する方法と対策で詳しく扱っています。

パワハラの3要素を満たさない場合でも、民事上の責任が消えるわけではありません。年齢を理由とする侮辱や嫌がらせが人格権の侵害に当たれば、加害者本人は民法第709条の不法行為責任を、会社は第715条の使用者責任や、労働契約法第5条の安全配慮義務違反による責任を問われる可能性があります。「エイハラという法律がないから訴えられない」わけではありません。

海外との違い:米国は40歳以上、英国は全年齢

海外では、年齢を差別禁止の対象として法律に明記する国があります。米国の雇用機会均等委員会(EEOC)によると、Age Discrimination in Employment Act(ADEA)が保護するのは40歳以上の人に限られ、40歳未満は連邦法の対象外です(州法で若年層を保護する州はあります)。年齢を理由とする嫌がらせについても、EEOCは単発の軽口までは禁じておらず、頻繁または深刻で敵対的な職場環境を生む場合や、解雇・降格につながった場合に違法になると説明しています。

英国のEquality Act 2010 第26条は、ハラスメントの対象となる7つの保護特性に「age」を含め、年齢の上下で保護の範囲を区切っていません。同法の適用地域は第217条によりイングランド・ウェールズ・スコットランドで、北アイルランドには原則として及びません。海外拠点を持つ企業が社内規程を統一するときは、年齢差別を包括的に禁じる法律を持たない日本との差が、規程の文言の差として表れます。

エイハラとパワハラ・セクハラの違い

3つは並列の別物ではなく、軸が違うため重なることがあります。エイハラは「何を理由にしたか」(年齢)で名付けた言葉で、パワハラは「どんな関係で、どの程度の言動か」、セクハラは「性的な言動か」で定義されています。

項目 エイハラ パワハラ セクハラ
定義の軸 年齢・世代が理由 優越的関係と相当性 性的な言動
根拠法 専用法なし 労働施策総合推進法 男女雇用機会均等法
企業の措置義務 パワハラ等として対応 あり(第31条) あり

たとえば上司が年上の女性部下に「その歳で結婚もせずに」と繰り返し言えば、年齢を理由にしている点でエイハラ、性的な事柄に触れる点でセクハラ、上司の立場を背景にしている点でパワハラにも当たり得ます。性別役割の押し付けとの重なりはジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは?具体例とセクハラとの違いを指針の条文で線引きで扱っています。社内で相談を受けるときは、名称の分類に時間をかけず、指針の各類型に照らして事実を確認するほうが実務的です。

企業のエイハラ対策:予防策と相談を受けたときの対応

エイハラ単独の措置義務はありませんが、パワハラ・セクハラ防止の措置の中に年齢を明記しておくと、社員が「これも相談してよい」と判断しやすくなります。

予防策:規程への明記と年齢で線を引く制度の点検

優先度の高い順に挙げます。

  • 就業規則とハラスメント防止方針に「年齢・世代を理由とする侮辱、決めつけ、業務上の不利益な扱い」を禁止行為として明記する
  • 配置・研修対象・昇進の基準に、年齢だけで線を引いている項目がないか人事制度を点検する
  • 研修では抽象論より、「若いんだから」「もう歳だから」など自社で実際に使われがちな言い回しを例に挙げ、どの類型に近いかを示す
  • 相談窓口の受付区分に「年齢・世代」を入れ、相談件数を類型別に集計できるようにする

世代間交流イベントやメンター制度を、既に起きている決めつけや仕事外しへの個別対応の代わりにしてはいけません。規程と人事制度の点検を先に済ませ、交流施策はその後に置くべきです。2026年10月1日から始まったカスハラの措置義務に合わせて相談記録の仕組みを見直すなら、年齢起因の相談区分も併せて検討すると、改修の要件を一度にまとめられます。閲覧権限を対応担当者に限定し、人事評価の情報と区別して相談記録を管理する仕組みづくりは、人事・労務管理システム開発でも支援しています。

相談を受けたときの対応手順:指針が定める4つの措置

パワハラ指針は、相談の申出があった場合の事後対応として、次の4つを事業主に求めています。エイハラの相談もこの手順で扱います。

  1. 事実関係を迅速かつ正確に確認する:相談者と行為者の双方から聴き取り、主張が食い違えば第三者からも聴取する。確認が難しければ、法第37条の調停など中立な第三者機関に委ねる
  2. 被害者への配慮の措置を行う:関係改善の援助、配置転換、行為者の謝罪、メンタル不調への相談対応など
  3. ハラスメントの事実が確認された場合、行為者への措置を行う:就業規則と事案の内容に応じた懲戒その他の措置。必要に応じて両者を引き離す配置転換など
  4. 再発防止の措置を行う:方針の再周知と研修の再実施。指針は、事実が確認できなかった場合も同様の措置を講ずるとしている

エイハラの相談で起きやすい失敗は、「世代間の価値観の違い」として当事者同士の話し合いに任せることです。指針は相談者・行為者のプライバシー保護と、相談を理由とする不利益取扱いの禁止の周知もあわせて求めています。年下からのエイハラについて、年長の相談者が「自分が古いだけかもしれない」と相談をためらう場合にも、窓口側が類型に照らして事実を確認する姿勢を示すことが大切です。

エイハラ放置のリスク:離職と精神障害の労災

エイハラを「よくある軽口」として放置すると、被害は職場の外に出ます。厚生労働省の令和7年度「過労死等の労災補償状況」では、精神障害の労災支給決定1,082件のうち、出来事別で最も多かったのは「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の222件でした。上司からの執拗な言動が部下を追い込む典型はクラッシャー上司とは?特徴チェックリスト15項目と弱点・パワハラとの違いでも整理しています。

労災に至らなくても、若手が「この職場では育ててもらえない」、ベテランが「もう居場所がない」と感じれば離職につながります。自社の離職率を業界平均と比べるときは、離職率の平均は13.7%:令和7年の産業別・規模別の値と自社比較の目安の算出方法がそのまま使えます。

エイハラの被害を受けたときの相談先と対処の手順

エイハラを受けたと感じたら、次の流れが基本です。

  1. 記録を残す:日時・場所・発言の内容(できるだけ言葉どおり)・同席者・自分が受けた影響をメモし、チャットやメールは保存する
  2. 社内の相談窓口に相談する:人事部門やハラスメント相談窓口に、記録をもとに事実を伝える。相談したことを理由とする解雇などの不利益な取扱いは、労働施策総合推進法第31条第2項で禁止されている
  3. 社内で改善しない場合や、社内窓口に相談しにくい場合は外部に相談する。社内への相談を経ずに外部窓口を利用することもできる
  4. 損害賠償を求める場合は、弁護士に相談する

外部の窓口としては、次の2つがあります。

  • 総合労働相談コーナー(厚生労働省):各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内など378か所にあり、予約不要・無料です。パワハラに当たる事案は、労働局の雇用環境・均等部(室)が労働施策総合推進法に基づく助言・指導・勧告(第36条)や、紛争調整委員会による調停(第37条)を扱います。援助や調停を求めたことを理由とする不利益な取扱いも禁止されています。
  • みんなの人権110番(法務省):0570-003-110(受付は平日8時30分から17時15分、ナビダイヤルのため通話料がかかります)。音声ガイダンスで「高齢者の人権に関する相談」は2番、それ以外の年齢に関する相談は「その他の人権問題」の4番を選びます。

相談は増えています。令和7年度の都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)の法施行状況では、パワハラに関する相談は77,514件で、令和5年度の60,053件から2年で約1.3倍になりました。

エイハラ(エイジハラスメント)に関するよくある質問

エイハラ(エイジハラスメント)とはどういう意味ですか?

年齢や世代を理由に、職場で相手の能力や役割を決めつけたり、揶揄したり、不利に扱ったりする言動のことです。若手・中高年のどちらにも向き、年下から年上に向くこともあります。法令用語ではなく、2015年の同名ドラマで広く知られるようになりました。

「若いから大丈夫」「若いんだから」と言うのはハラスメントですか?

一度の励ましで直ちにハラスメントになるわけではありません。ただし、体調不良や業務量の相談を退ける場面で使ったり、若さを理由に無理な残業や私的な雑用を繰り返し押し付けたりすれば、パワハラ指針の「過大な要求」に近づきます。判断の根拠を本人の状態ではなく年齢に置いていないかが分かれ目です。

「おばさん」「おじさん」「老害」と呼ばれるのはエイハラですか?

年齢を材料にした揶揄で、エイハラの典型です。人前で繰り返されたり、業務上の評価と結びついたりすれば、パワハラ指針の「精神的な攻撃」に当たり得ます。本人がいない場での陰口も、職場の空気として定着すれば就業環境を害します。

年下の上司や後輩からのハラスメントもエイハラになりますか?

なります。パワハラ指針は、同僚や部下の言動でも、業務に必要な知識や経験を持つ人の協力なしには仕事が進まない場合や、集団で行われて抵抗が難しい場合は「優越的な関係」に含むとしています。年下からの言動も、パワハラとして会社に対応を求めることができます。

エイジハラスメントは訴えられますか?

エイハラを直接禁止する法律はありませんが、年齢を理由とする侮辱や嫌がらせが人格権の侵害に当たれば、民法の不法行為責任や会社の使用者責任・安全配慮義務違反として損害賠償を請求できる可能性があります。訴える前に、社内窓口や、都道府県労働局による助言・指導や調停を使う方法もあります。

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