職場のいじめ・嫌がらせは、令和7年度の個別労働紛争相談で55,614件と14年連続の最多でした。パワハラ防止法(労働施策総合推進法)は事業主に防止措置を義務づける法律で、大企業は2020年6月1日、中小企業は2022年4月1日から対象です。この記事では措置義務を4分類10項目で確認し、相談窓口の受付フロー・調査記録の持ち方・アクセス権限というシステム要件へ置き換えます。2026年10月1日施行の改正でカスタマーハラスメントと求職者等セクシュアルハラスメントが加わる点、根拠条文が第30条の2から第31条へ繰り下がる点も扱い、専用の相談管理を作るべき企業と既存ワークフローで足りる企業の線引きまで示しました。
まとめ:措置義務10項目の到達点と2026年10月施行分を含む対応の優先順位
措置義務は指針で4分類に整理されています。方針の明確化と周知・啓発、相談に応じ適切に対応するための体制整備、事後の迅速かつ適切な対応、併せて講ずべき措置の4つで、取組の項目数にすると10項目です。罰則規定は置かれていません。ただし勧告に従わなかった場合は企業名を公表される仕組みがあり、報告請求への無回答と虚偽報告には20万円以下の過料が科されます。
システム側の要件は3つに絞られます。面談・電話・メールという複数の受付経路を1案件へ束ねる受付フロー、聴取記録・証拠・時系列を案件単位で保持してあとから経緯を追える記録構造、機微な個人情報を含む相談記録に対する権限分離の3つです。
優先順位は規模で決まります。従業員300人未満・単一拠点・相談が年数件なら専用システムは過剰で、既存のワークフローに申請区分を足して閲覧者を限定すれば足りる。2026年10月1日までに終えるべきは、就業規則の条文引用の更新、カスハラ対処方針の明文化と周知、受付経路の追加の3点です。
パワハラ防止法の中身=労働施策総合推進法が全事業主に課す措置義務の範囲
「パワハラ防止法」は通称で、正式には労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)を指します。この領域は同法の第十章、第30条の2から第30条の8までです。
優越的な関係・業務上必要かつ相当な範囲超え・就業環境侵害という3要素
厚生労働省は職場のパワーハラスメントを、事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレットで3要素すべてを満たすものと定義しています。①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの。1つでも欠ければ該当せず、適正な業務指示や指導は含まれません。
①は職務上の地位が上位の者に限られず、同僚や部下でも、その協力なしには業務が回らないなら当たります。③の基準は「平均的な労働者の感じ方」ですが、強い苦痛を与える態様なら1回でも該当し得る。「職場」には出張先や取引先との打ち合わせ場所も含まれ、対象はパートや契約社員を含む全労働者。派遣労働者については派遣先も措置を講じる必要があります。
大企業2020年6月・中小企業2022年4月という義務化時期と対象者の範囲
厚生労働省のハラスメント防止のページにあるとおり、義務化は大企業が令和2年6月1日、中小企業が令和4年4月1日と段階的でした。現在は労働者を1人でも雇用していれば規模を問わず対象です。
措置の具体的内容は「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)にあり、社内規程を設計するときの一次資料になります。典型例は身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6類型。限定列挙ではないため、これに当てはまらない言動でも3要素を満たせば該当します。
罰則規定なしでも効く勧告・企業名公表・報告拒否20万円以下の過料
措置義務違反そのものに罰則はありません。ただし罰則がないことと実害がないことは別です。e-Gov法令検索で条文を追うと、実効性を担保する仕組みが3段構えで置かれています。第30条の5で都道府県労働局長が助言・指導・勧告を行い、第33条第2項で勧告に従わなかった事業主はその旨を公表され、第36条第1項の報告請求に対して報告をせず又は虚偽の報告をした者は第41条により20万円以下の過料に処されます。
報告請求に耐えるには、措置を講じた事実を後から示せる状態が要ります。研修を実施した記録、就業規則の改定履歴、窓口を周知した日付と方法、個別案件の対応経緯。これらが個人フォルダにしか残っていなければ、報告を求められた時点で再現に数週間を費やす。相談後の配置転換や評価が相談を理由としたものではないと説明するにも、相談日時と人事イベントの前後関係が要ります。
2026年10月1日施行の改正で加わるカスハラ対策と求職者等セクハラ対策
2026年10月1日に、この法律の枠組みが広がります。人事・総務には規程の改定が、情シスには受付経路と権限設計の見直しが発生する改正です。
令和7年法律第63号で追加された2つの義務と条番号の繰り下がり
改正法(令和7年法律第63号)は令和7年6月11日に公布されました。厚生労働省の改正法ページによると、柱はカスタマーハラスメント対策、求職活動等における性的な言動の問題への対策、女性活躍推進の3つ。前2者の防止措置が事業主の義務となり、施行日は令和8年10月1日です。指針は令和8年2月26日公布で、カスハラ防止指針が令和8年厚生労働省告示第51号、求職者等セクハラ防止指針が同第52号にあたります。
見落とされやすいのが条番号の移動です。改正後の条文体系では、パワハラの措置義務は第30条の2ではなく第31条になります。厚生労働省が令和8年7月に更新したパンフレットも根拠条文として第31条を引用しており、調停の根拠は第37条です。就業規則に「第30条の2に基づき」と条番号を直接書いている企業は、10月1日以降その引用が古くなる。規程本文は法令名までにとどめ、条番号は運用マニュアル側へ置くほうが管理しやすくなります。
カスハラ対策で新たに求められる対処方針の周知と録音・録画の扱い
カスタマーハラスメントは、顧客等の言動であって、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されるものと定義されます。求められるのは、毅然とした態度で対応し労働者を保護する旨の方針の明確化と周知、あらかじめ定めた対処の内容の周知です。行為者が自社の労働者ではないため、懲戒規定ではなく対応手順を定める形になります。指針が例示する対処は、管理監督者等へ直ちに報告して指示を仰ぐ、一人で対応させない、やり取りを録音・録画する、繰り返しの要求には一定の時間の経過をもって退店を求めたり電話を切ったりする、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、などです。
録音・録画には個人情報保護法の遵守が明記されており、ここがシステム設計に直接効きます。取得した音声・映像を事実関係の確認に使う場合、その利用目的をできる限り特定して本人に通知または公表する義務があるためです。公表方法としては、プライバシーポリシー等へ利用目的を記載し、自社サイトのトップページから1回程度の操作で到達できる場所に掲載する例が示されています。通話録音基盤を持つ企業は、既存の記載がカスハラ事案の確認まで含むかの確認が要ります。カスハラの10措置と、録音・対応記録・行為者単位の案件管理の設計はカスハラ対策義務化とは?2026年10月施行の10措置と録音・対応記録のシステム要件で詳しく扱っています。
求職活動のルール明確化で変わる面談場所・実施体制・SNSの指定
求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策では、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者と求職者の双方へ周知・啓発することが求められます。指針が挙げるのは、面談時間および場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定。実施体制の例には、面談を複数人で対応することが挙がっています。
採用実務でいうと、リクルーターが個人のアカウントで学生とやり取りする運用や、就業時間外に社外で1対1の面談を行う運用が、明確なルールなしには成り立たなくなります。採用管理システムを使っているなら、候補者との連絡をシステム内のメッセージ機能へ寄せることがそのまま証跡になります。
措置義務10項目を人事システムと相談窓口の機能要件へ置き換える対応表
措置義務は法律用語で書かれているため、そのまま読んでも機能要件になりません。パンフレットは取組を1から13まで番号付けしており、パワハラに該当するのは10項目。これをどのデータをどこに持つかという設計の言葉へ置き換えます。
| 措置義務の分類 | 指針が求める状態 | システム側の要件 |
|---|---|---|
| 方針の明確化と周知 | 規程への明記と全員への周知 | 改定履歴と受講到達の記録 |
| 相談体制の整備 | 複数経路で実質的に受付 | 受付番号の採番と経路統合 |
| 事後の迅速適切な対応 | 事実確認と措置の実施 | 案件単位の時系列と証拠 |
| 併せて講ずべき措置 | プライバシー保護と不利益禁止 | 権限分離と閲覧ログ |
方針の明確化と周知=就業規則の改定履歴と研修受講の到達記録の管理
指針が求めるのは、ハラスメントの内容と行ってはならない旨の方針を明確化して管理監督者を含む労働者へ周知・啓発すること、行為者へ厳正に対処する旨の方針と対処の内容を就業規則等に規定して周知することです。取組例では、懲戒規定を新たに定める方法と、既存の懲戒規定の適用対象となる旨を明確化する方法の2通りが示されています。
問題は「周知した」を後から示す方法です。掲示しただけでは誰が見たかは残りません。設計上の要点は3つ。就業規則の版管理(改定日・改定条項・周知日をセットで保持)、研修受講の到達管理(受講済みと未受講のステータス)、雇用形態を問わない配信対象の生成です。パート・契約社員・派遣社員が人事マスタと別管理の企業では、周知対象の名簿がそもそも作れない。労務管理システムの機能と個別開発の判断軸で扱った従業員マスタと文書管理の連携が、ここで土台になります。
相談窓口の体制整備=面談・電話・メールを1件に束ねる受付フロー
指針は相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知し、利用しやすい体制を整備することを求めます。「窓口をあらかじめ定める」とは形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいう、という表現です。相談方法も、面談だけでなく電話・メール等の複数で受けられるよう工夫すべきとされています。
複数経路を認めると、同じ事案が別々の記録として散らばります。電話で相談し、後日メールで補足し、面談で詳細を話すと、経路ごとにメモが残って対応履歴が分断されるためです。受付時点で案件番号を採番し、以降のやり取りを紐づける設計が要る。指針は該当するか微妙な場合や発生のおそれがある段階、周囲の労働者からの相談まで広く対応することを求めています。フォームの必須項目を被害者本人の前提で作ると目撃者からの通報が入力できません。相談者と被害者を別項目にするか、匿名相談を許容するかを最初に決めます。ワークフローシステム開発でも、申請区分の追加を既存のグループウェアへ載せる形が多く、専用システムを立てるより短期間で終わります。
事実確認と事後対応=聴取記録・証拠・時系列を案件単位で持つ構造
事後対応は、事実関係の迅速かつ正確な確認、被害者への配慮の措置、行為者への適正な措置、再発防止措置の4つです。指針は「事案が生じてから、誰がどのように対応するのか検討するのでは対応を遅らせる」とし、相談窓口と担当部署の連携や対応手順をあらかじめ定めておくことを求めています。
記録は案件を親、相談・聴取・措置を子とする構造が扱いやすい。1つの案件に、相談者・行為者・周囲の労働者からの聴取、録音等の客観的証拠、判断の根拠、講じた措置、再発防止の実施が時系列でぶら下がる形です。事実確認が困難なら法第37条(改正後)の調停という選択肢があり、その申請日と結果も同じ案件に残す。パンフレットは再発防止について、必要に応じて事案の内容や対応経緯を記録し、個人情報の取扱いに留意して関係部門へ共有すると述べています。共有先を広げるほど権限分離とは逆に働くため、共有は部署・時期・類型といった匿名化した統計にとどめます。
プライバシー保護=機微情報を含む相談記録の権限分離と保存年限
併せて講ずべき措置は2つ。相談者・行為者等のプライバシーを保護する措置を講じてその旨を周知すること、相談等を理由とする不利益取扱いをされない旨を定めて周知することです。指針は、このプライバシーには性的指向・ジェンダーアイデンティティや病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれると明記しています。相談記録は案件ごとに担当者を割り当て、担当外は案件の存在すら見えない状態が基準。行為者が相談者の上司である場合に、その上司の人事権が及ぶ範囲から相談情報を切り離せるかが権限設計の合否を分けます。同じ考え方は障害者雇用のデータにも当てはまります。手帳情報を人事マスタのどこに置き、誰に見せないかは法定雇用率の算定と人事マスタの設計で整理しました。
保存年限には法令上の定めがありません。労働施策総合推進法にも指針にも、相談記録を何年残すかの規定は置かれていないのが2026年9月時点の状況です。実務では損害賠償請求権の消滅時効や労働関係の記録保存期間を参考に社内規程で決め、期限到来時に自動削除するのか承認を挟むのかまで仕様に落とします。育児介護休業法の義務と人事システムの設定項目で扱った意向聴取の記録と同じく、残す義務はないが残していないと説明できないデータです。
汎用ワークフローで足りる企業と専用の相談管理を作るべき企業の分岐点
相談管理の仕組みは規模と組織構造で必要な作りが変わり、多くの企業では専用システムの開発は要りません。
相談が年数件で単一拠点なら専用システムを作らないという判断軸
従業員300人未満、単一拠点、相談件数が年に数件という企業なら、専用の相談管理システムは過剰です。既存のグループウェアに「ハラスメント相談」という申請区分を1つ追加し、承認経路を人事部長と担当役員へ限定し、添付ファイルの閲覧権限を絞る。これで措置義務は満たせます。指針が求めているのは実質的な対応が可能な窓口であって、専用システムではないからです。相談記録と同じく機微な情報を扱う労災の記録については、労災保険の記事で権限分離の考え方を扱っています。
年に数件のために案件管理画面や統計ダッシュボードを作り込めば、使われないまま保守費だけが残ります。その予算は外部相談窓口の委託や管理職研修へ充てるほうが目的には近づく。ただし既存ワークフローの管理者権限が情シス部門にあって全申請を閲覧できる設定なら、相談区分だけは管理者からも中身が見えないようにする手当てが必要です。
多拠点・グループ会社・外部窓口併用で必要になる権限分離の要件
専用の作り込みが要るのは、次の条件が重なる場合です。拠点が複数あり拠点長が人事権を持つ、グループ会社間で出向・転籍がある、社内窓口と外部委託窓口を併用している。案件ごとに「誰に見せないか」が変わるため、固定的な承認経路では回りません。
必要になるのは、案件単位で閲覧者を動的に決める仕組みです。行為者が拠点長なら、その拠点の管理者権限を当該案件に限って無効化する。グループ会社をまたぐなら、両社の担当者だけが見える一時的なグループを作る。もう1つの分岐は件数で、年間の相談が数十件を超えると、相談から初回聴取までの日数を追って滞留を検知する仕組みが要ります。育児介護休業法の改正と人事システム改修の要否で示したトリアージと同じく、件数と組織構造が閾値を超えたときだけ作る順序です。
作ってはいけない設計=人事担当者が全件を閲覧できる相談管理画面
採用してはならない設計を1つ挙げます。人事部門のメンバー全員がすべての相談案件を一覧で閲覧できる画面です。運用しやすく統計も取りやすいため、要件定義の初期には必ず候補に挙がります。崩れるのは、行為者として名前が挙がったのが人事部門の社員だったとき。自分に関する相談を自分で閲覧でき、場合によっては編集や削除までできる状態は、指針が求めるプライバシー保護の水準を満たしません。
相談者にとっては、相談内容が人事部門内で共有されること自体が相談をためらう理由になります。第30条の2第2項が不利益取扱いを禁じているのも、相談したこと自体が不利益につながる構造を断つためです。代わりに取るのは案件ごとのアサイン。起票時点で担当者を指名し、担当外は案件の存在を見られない。統計は匿名化した集計から作ります。実装コストは一覧画面より上がりますが、この差分は削ってはならない箇所です。
施行まで1か月を切った企業が就業規則・窓口・記録を通す4週間の順序
2026年10月1日まで残り1か月を切りました。カスハラ対応が手つかずの企業に向けて、何から着手すべきかを順序で示します。
2026年10月1日までに終える最低限と後回しにしてよい範囲
10月1日の時点で必要なのは、方針が定まっていて労働者に周知されている状態です。1週目にカスハラの対処方針を文書化します。指針の例示から自社の業態に合うものを選び、現場が判断に迷わない粒度まで具体化する。小売なら退店を求める基準、コールセンターなら通話を終了する基準です。2週目に就業規則・防止規程を改定して条番号の引用を確認し、3週目に周知と受講記録の取得、4週目に受付区分の追加と受付テストです。
後回しにしてよいのは、統計ダッシュボードの構築、eラーニングの内製、外部窓口の委託先選定です。10月1日時点で未着手でも義務違反にはなりません。録音・録画基盤の新設も急ぎではないものの、既存の通話録音がある企業は利用目的の記載だけ先に見直しておきます。
既存のセクハラ窓口を一元的な相談窓口へ統合するときの分岐設計
指針は望ましい取組として、あらゆるハラスメントの相談へ一元的に応じられる体制の整備を挙げています。取組例には、すでに設置されているセクハラ相談窓口がパワハラや育児・介護休業等に関する相談窓口を兼ねることが示されています。義務ではありませんが、相談者には窓口が1つのほうが迷いません。
注意は、入口を1つにしても対応経路は分ける必要がある点です。カスハラは行為者が社外のため事実確認の相手も措置の内容も異なり、求職者等セクハラは相談者が自社の労働者ではない場合があります。受付フォームでは類型を1つ選ばせ、それに応じて通知先と閲覧権限を切り替える分岐を持たせる。相談者が類型を正しく選べるとは限らないため、受付後に担当者が変更でき、権限も一緒に切り替わる仕様にします。この分岐の要否が、既存ワークフローの流用で済むか専用の受付基盤を作るかを分ける最後の判断材料です。
よくある質問
措置義務について、人事・総務の担当者から実務でよく挙がる質問を5つ取り上げます。
パワハラ防止法に違反すると罰則はありますか?
措置義務違反そのものに対する罰則規定はありません。ただし労働施策総合推進法第33条第2項により、勧告に従わなかった場合はその旨を公表される可能性があります。加えて同法第36条第1項の報告請求に対し、報告をせず又は虚偽の報告をした場合は第41条により20万円以下の過料。民事では、措置を怠ったことが安全配慮義務違反や使用者責任の判断材料になります。
中小企業も相談窓口を設置する義務がありますか?
あります。措置義務は令和2年6月1日に大企業へ、令和4年4月1日に中小企業へ適用され、現在は規模を問わず労働者を雇用するすべての事業主が対象です。窓口の形式は問われませんが、形式的に設けるだけでは足りず実質的な対応が可能であることが求められます。従業員数十人なら、担当者を1名指名し、面談とメールの2経路を用意して全労働者へ周知する構成で足ります。
相談窓口は外部委託でも措置義務を満たしますか?
満たします。指針は取組例として、外部の機関に相談への対応を委託することを明示しています。社内窓口では相談しにくい場合や、人事部門が小規模で利益相反が起きやすい場合の選択肢です。ただし委託して終わりではなく、外部窓口が受けた相談を社内のどの部署がいつ引き取り、誰が事実確認を行うかという手順を定めておく必要があります。引き渡す情報の範囲と同意の取り方も、委託契約と社内規程へ書きます。
ハラスメントの相談記録は何年保存すればよいですか?
労働施策総合推進法にも指針にも、相談記録の保存年限を定めた規定は置かれていません(2026年9月時点)。年限は各社が社内規程で決めます。判断材料は、損害賠償請求権の消滅時効、他の労働関係記録の保存期間、報告請求に応じられる期間です。期限が来た記録の扱い(自動削除か、承認を経た削除か、匿名化して統計だけ残すか)まで仕様に含めておくと、担当者が交代しても運用が揺れません。
カスハラ対策は2026年10月1日から何を始めればよいですか?
最初に着手するのは、カスタマーハラスメントには毅然と対応し労働者を保護する旨の方針と、対処の内容の明文化です。指針は、管理監督者への即時報告、一人で対応させないこと、録音・録画、一定時間の経過後に退店を求めたり電話を切ったりすること、犯罪に該当し得る言動の警察への通報などを例示しています。自社の業態に合うものを選び、現場が迷わない基準まで具体化して周知してください。録音・録画を行うなら、個人情報の利用目的も併せて確認します。
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