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コールセンターのカスハラ対策とは?録音告知・暴言検知・切電基準をシステムで支える設計

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コールセンターのカスハラ対策は、方針を掲げるだけでは現場が守れません。電話は相手の顔が見えず、オペレーターが1人で受け止める時間が長いからです。この記事では、日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2026年9月1日に改定したガイドラインの判定目安と、厚生労働省の企業マニュアル(令和8年度改訂版)を根拠に、録音告知のガイダンス、着信拒否とルーティング、音声認識による暴言検知とSVへの通知、通話打ち切り(切電)の基準と記録の残し方を、コールセンターの仕組みの設定・要件へ置き換えます。既存のCTI・CRMの設定変更で足りるセンターと、音声認識を作り込むべきセンターの分かれ目も示しました。

まとめ:録音告知・検知と通知・切電・記録の4点をセンターの仕組みへ組み込む順番

コールセンターのカスハラ対策で、仕組みとして先に入れるのは4つです。IVR冒頭の録音告知、SVへ知らせる検知と通知、オペレーターが迷わず切れる切電の基準、切電した通話を事案として残す記録。CCAJのガイドラインは対処法を「未然防止」「オペレーションルール」「技術的対処」に分けており、この4点はそれぞれに対応します。

順番は、録音告知と切電基準が先、検知は後です。告知と基準は既存のIVRやCTIの設定と運用ルールの文書化で済み、費用もほぼかかりません。音声認識による検知は、録音と切電の運用が回ってから、どの言動を拾いたいかが分かった段階で入れると無駄を避けられます。AIの検知結果だけで自動的に通話を切る設計は採りません。最終判断はSVかオペレーターに残します。

コールセンターのカスハラ判定目安とCCAJガイドライン2026年改定の要点

システムで扱うには、何をカスハラとみなすかを先に数値と言動の例で決めておく必要があります。コールセンター業界にはその基準が既にあります。

長時間拘束1時間・リピート3回という判定目安を設定値として持つ方法

CCAJの「コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメント対策ガイドライン」は、コンタクトセンターで起きるカスハラを12類型に分け、判定の目安として長時間拘束は1時間以上、リピートは3回以上を示しています。暴言・怒声には数値の基準がなく、具体的な言動の例で判定します。

この2つの数値は、そのままシステムの設定値になります。通話時間が1時間に近づいたらSVの画面で色を変える。同じ発信者番号からの入電が一定期間に3回を超えたら、応対履歴の画面に件数を出す。数値で判定できるものは機械に数えさせ、暴言のように言動で判定するものは人が録音を聞いて決める。この分担を最初に決めておくと、後で検知の仕組みを足すときも迷いません。

2026年9月改定版で広がった顧客等と従業員の範囲、配慮の申出の扱い

2026年9月1日の改定では5点が変わりました。顧客等に購入・利用者の家族と問い合わせをする者を加えたこと。障がい者による差別的取扱いの是正や社会的障壁の除去を求める意思表示は、それ自体はカスハラに該当しないと定義に追記したこと。従業員に非正規労働者と派遣社員を含むと明記したこと。暴言・怒声の例に性的指向・性自認への差別的な発言を加えたこと。相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止を加えたことです。

仕組みへの影響が大きいのは2点目です。配慮を求める申出を繰り返した顧客を、件数だけで「リピート」と判定してはいけません。入電の区分に「配慮の申出」を用意し、リピートの件数から外す設計にします。派遣社員が多いセンターでは、3点目により派遣のオペレーターも相談窓口の対象になるため、相談の受付画面を派遣元任せにしない運用も決めておきます。

改正労働施策総合推進法の措置義務とコールセンター現場の対策との分担

2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法によりカスハラ対策がすべての事業主の義務になりました。方針の周知、相談窓口、事後対応、悪質事案への対処方針といった会社全体の措置は、カスハラ対策義務化の10措置と録音・対応記録のシステム要件で扱っています。対応記録に持たせる6項目や、繰り返し連絡してくる相手の名寄せもそちらが詳しい。

本記事が扱うのは、その義務を受けてコールセンターの現場で通話中に何を動かすかです。会社の方針が「一人で対応させない」と定めても、SVが通話の異変に気づく仕組みがなければ現場では実現しません。措置義務を通話単位の運用へ落とす部分が、センター側の担当範囲です。

未然防止の仕組みとして入れる録音告知ガイダンスと着信拒否・ルーティング

CCAJは未然防止策として録音通知と着信拒否を挙げています。どちらもIVRやCTIの標準機能で実現でき、入れるのに開発は要りません。決めるべきは文言と運用の条件です。

IVR冒頭の録音告知の文言と個人情報保護法の利用目的の通知・公表

「この通話は品質向上のため録音しています」というガイダンスは多くのセンターで流れています。カスハラ対策として見直すのは、その利用目的の範囲です。顧客の声で本人を識別できれば録音は個人情報にあたり、個人情報保護法第21条第1項により、取得時に利用目的を通知するか公表しなければなりません。

目的が「品質向上」だけなら、トラブル時に録音を事実確認の証拠として使う根拠が弱くなります。ガイダンスとプライバシーポリシーの両方に「応対内容の確認およびトラブル発生時の事実確認のため」を加えてください。ガイダンスは短いほど聞かれるため、IVRでは目的を2つまでに絞り、詳細はプライバシーポリシーに書く形が収まりやすい。録音していると伝わること自体が抑止になる点も、告知を冒頭に置く理由です。都内の中小企業が録音機器の導入費用を東京都の奨励金でまかなう場合の要件は、カスハラ奨励金とは?東京都40万円の第2回要件と11月6日までに間に合う取組にまとめました。

着信拒否より先に検討する特定番号の専任ルーティングとSV直通キュー

着信拒否は強い手段です。一度拒否すれば、その番号からの正当な問い合わせ、たとえば契約の解約や事故の連絡も受けられなくなります。拒否の判断は、会社の悪質事案への対処方針に沿って決裁を経たものに限るのが安全です。

その手前に置けるのが、特定の発信者番号を一般のキューに流さず、SVや経験者だけが受けるキューへ回すルーティングです。CTIやACDの多くは、発信者番号や顧客属性で着信先を分けられます。厚労省の企業マニュアルが継続的・執拗な連絡への対応として挙げる「窓口の一本化」を、着信の振り分けで実現する形です。新人オペレーターが同じ相手から繰り返し暴言を受ける状況を、拒否に踏み切らずに断てます。

ビジネスネーム運用でオペレーターの本名を出さない仕組みと記録の照合

CCAJはオペレーションルールとしてビジネスネームを挙げています。名乗る名前を本名と別にしておけば、SNSでの名指しや待ち伏せのリスクを下げられます。

仕組みの側で見落としやすいのは、記録との照合です。応対履歴の担当者欄がビジネスネームのままだと、後から事案を調べるときに誰が対応したかが人事の記録とつながりません。CTIのログイン情報に本名の社員番号とビジネスネームの両方を持たせ、顧客に見せる名前と社内で照合する識別子を分けて記録します。

音声認識による暴言検知とSV通知をリアルタイムで回す設計と日本語の対応範囲

CCAJが技術的対処として挙げるアラート機能は、通話をリアルタイムに文字化し、条件に合う発話があればSVへ知らせる仕組みです。厚労省マニュアルも、通話内容を文字化してリアルタイムに確認する例を紹介しています。ここではAmazon Connectの会話分析(Contact Lens)を例に、ルールの組み方を確認します。

キーワード群と話者の組み合わせで暴言・威圧の発話を拾うルール設計

Amazon Connectのリアルタイムアラートのルールは、語句の一致方式として完全一致とパターン一致を選べます。セマンティック一致はリアルタイム分析では使えません(2026年10月時点の公式ドキュメント)。同じカード内の行はOR、カード同士はANDで結ばれます。

ルールの組み方 拾いたい場面 条件の例
顧客側の語句だけ 脅迫・人格否定 「訴える」「辞めさせろ」「家に行く」
顧客側の語句 AND オペレーター側の語句 謝罪を繰り返しても収まらない状態 顧客「上を出せ」AND 担当「申し訳ございません」
語句 AND 感情スコア 怒声を伴う要求 要求語句 AND 顧客の感情が否定側
語句 AND キュー 特定窓口に偏る事案 解約・返金キューに限定

実務で効くのは2行目の組み方です。顧客の暴言だけを拾うと、怒っているが正当な苦情まで大量に通知され、SVが見なくなります。オペレーターの謝罪語が何度も出ているのに収まらない、という組み合わせのほうが、介入すべき通話を絞れます。語句の候補は、録音の聞き直しで実際に出た表現から作ってください。

通知を受けたSVの介入手順と、感情スコアを条件に加えるときの誤検知

公式ドキュメントでは、アラートはキューとエージェントのパフォーマンスのダッシュボードに表示され、SVはそこから通話を傍受し、チャットでオペレーターに指示を出せます。傍受中はリアルタイムの文字起こしと顧客の感情の推移も見られます。

仕組みが出せるのは通知までです。通知のあとSVが何分以内に傍受に入るか、どの段階で通話を引き取るかを、運用ルールとして決めておかないと検知は空振りします。感情スコアは声の調子で動くため、早口や地声の大きい顧客で誤って高く出ることがある点に注意が必要です。導入前後の注意点はコールセンターの音声感情分析の仕組みと運用設計で扱っています。スコア単独で通知せず、語句と組み合わせる条件にとどめるのが無難です。

日本語のリアルタイム分析で使える機能と、機密情報マスキングの制約

Amazon Connectのサポート言語の一覧では、日本語(ja_JP)はリアルタイム通話分析、感情分析、パターン一致のルールに対応しています。一方、機密情報のマスキング(Redaction)は日本語に対応しておらず、そもそもマスキングは通話後の分析とチャット分析だけの機能です。

このため日本語のリアルタイム文字起こしには、顧客が読み上げたカード番号や住所がそのまま残ります。SVの画面に表示される文字起こしの閲覧権限と保存期間は、録音データと同じ基準で管理してください。他社のクラウドコンタクトセンターを使う場合も、日本語で使える機能の範囲は同じ確認が要ります。

通話打ち切り(切電)の基準をシステムに組み込む手順と証拠の残し方

CCAJはオペレーションルールとして切電を挙げています。カスハラ対策で現場がいちばん迷うのが、ここです。

膠着30分・拘束1時間を通話時間のタイマーでSVに見せる画面

厚労省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)は、話が膠着状態に陥ってから30分程度を目安に電話を切る対応例を示しています。CCAJの長時間拘束の目安は1時間以上です。

この2つの時間は、オペレーターに自分で計らせると機能しません。応対中は時計を見る余裕がないからです。SVのモニタリング画面で通話時間が30分を超えた通話を色分けし、1時間に近づいたものを上に並べる。通話時間の表示はほとんどのACDやCTIが標準で持っており、閾値と並べ順の設定で済みます。マニュアルが証拠として挙げる「時間の計測」も、この通話時間の記録がそのまま使えます。

警告・切電・記録の3段階を手順化し、オペレーターが切れる権限を明文化

切電の手順は、オペレーターが自分の判断で実行できる形に書きます。

  1. 警告:決まった文言で「これ以上続く場合はお電話を終了します」と伝える(文言はトークスクリプトに固定)
  2. 切電:警告後も同じ言動が続いたら、SVの許可を待たずに切ってよい
  3. 記録:切電した通話に区分を付け、応対履歴に切電の理由と時刻を残す

2の「許可を待たずに」を明文化するかどうかで、現場の負担は大きく変わります。SVが別の通話の対応中だと、許可を待つ間オペレーターは暴言を聞き続けることになるからです。CTIのソフトフォンに「警告済み」のボタンを置き、押した時刻を記録しておけば、切電が手順どおりだったかを後から確かめられます。

切電した通話の録音と応対履歴を事案として束ねて検証可能にする証拠化

切電した通話は、録音ファイル、文字起こし、警告と切電の時刻を1つの事案に紐づけて残します。厚労省マニュアルは、録音・録画・対応記録・時間の計測で第三者が検証可能な証拠を集めるよう求めています。

既にコールセンター向けCRMの応対履歴管理を持つセンターは、応対履歴に「カスハラ疑い」の区分を足すのが近道です。録音システムが一律の保存期間で自動削除する設定なら、区分付きの通話だけ保存を延ばす例外を作ってください。メールや問い合わせフォームでも同じ相手から連絡が来る場合は、問い合わせ管理システムの機能と自社開発の判断基準で扱ったチケットと事案番号でつなぎます。

既存CTI・CRMの設定で足りるセンターと音声認識を作り込むセンターの分岐

ここまでの仕組みの多くは、既存の製品の設定と運用ルールで実現できます。作り込みが要るのは一部の条件に限られます。

設定変更と運用ルールで足りる条件=クラウド型CTIで録音と傍受が既にある

クラウド型のコンタクトセンター製品を使っていて、通話録音とSVの傍受が既に動いているなら、新たな開発は要りません。録音告知の文言の差し替え、特定番号のルーティング、通話時間の閾値表示、応対履歴の区分追加。どれも管理画面の設定と手順書の改訂で終わります。暴言検知も、製品にリアルタイム分析の機能があれば、ルールの登録だけで始められます。

この条件のセンターが独自の検知システムを作るのは過剰です。まず製品の機能で3か月運用し、通知の件数と誤検知の割合を見てから次を決めます。

音声認識を作り込む条件=オンプレPBX・業界固有の語彙・複数拠点の集約

作り込みを検討するのは、次の条件のどれかに当たる場合です。オンプレミスのPBXで、製品にリアルタイム分析の機能がない。医療・金融・設備保守など業界固有の語彙が多く、汎用の音声認識では暴言と業務用語を取り違える。複数拠点や委託先のセンターの通話を、1つの基準で集約して見たい。

この場合は、PBXから音声を取り出して音声認識にかけ、検知ルールとSVへの通知を自前で組む構成になります。語彙の登録や話者の分離の精度が検知の質を左右するため、要件定義の段階で実際の録音を使った認識の検証を入れてください。一創のAI音声認識システム開発では、既存の録音データを使った認識精度の検証から始め、検知ルールとSV通知の仕組みを既存のCTI・CRMにつなぐ形で進めています。

採用しない設計=AIの検知結果だけで顧客との通話を自動で切る仕組み

要件の検討で必ず候補に挙がるのが、暴言を検知したら自動で通話を切る仕組みです。これは採りません。

理由は2つあります。1つは誤検知の影響の大きさです。正当な苦情を言っている顧客の通話が、語句の一致だけで切られれば、それ自体が新たなクレームになります。もう1つは配慮の申出との混同です。CCAJの改定版は、障がい者の社会的障壁の除去を求める意思表示はカスハラに該当しないと明記しました。語句だけでは、この区別はつきません。検知は通知までにとどめ、切るかどうかはガイドラインの手順に沿って人が決めます。

よくある質問

コールセンターのカスハラ対策について、センター長・SV・情シスの担当者からよく挙がる質問を5つ取り上げます。

コールセンターでカスハラと判断する基準はありますか?

日本コンタクトセンター協会のガイドラインが目安を示しています。長時間拘束は1時間以上、同じ用件のリピートは3回以上で、暴言・怒声は具体的な言動の例で判定します。2026年9月1日の改定版では、性的指向・性自認への差別的な発言が暴言の例に加わりました。一方で、障がい者による社会的障壁の除去を求める意思表示はカスハラに該当しないと明記されています。ガイドライン本体は協会の申請フォームから無料で入手できます。

カスハラの電話はオペレーターの判断で切ってよいですか?

手順を決めておけば切ってかまいません。厚労省の企業マニュアルは、膠着状態から30分程度を目安に電話を切る対応例を示しています。実務での手順は、決まった文言で警告し、それでも続けば切り、切った理由と時刻を応対履歴に残す3段階です。SVの許可を待つ規定にすると、その間オペレーターが暴言を聞き続けることになるため、警告後の切電はオペレーターの判断で行えると明文化しておくのが現場の負担を減らします。

「この通話は録音しています」の案内だけで十分ですか?

抑止としては有効ですが、録音データの利用目的については確認が必要です。個人情報保護法第21条第1項は、個人情報の取得時に利用目的の通知か公表を求めています。目的が「品質向上のため」だけだと、トラブル時の証拠として使う根拠が弱くなります。ガイダンスとプライバシーポリシーに「トラブル発生時の事実確認」を加えてください。あわせて、録音の自動削除の設定がカスハラ疑いの通話まで消していないかも確認が必要です。

AIの暴言検知は日本語の通話でも使えますか?

使えます。たとえばAmazon Connectの会話分析は、日本語のリアルタイム通話分析・感情分析・パターン一致のルールに対応しています(2026年10月時点)。ただし機密情報のマスキングは日本語に対応しておらず、リアルタイムの文字起こしにはカード番号なども残ります。検知の精度は語句の選び方で大きく変わるため、実際の録音から拾った表現でルールを作り、顧客の暴言とオペレーターの謝罪語を組み合わせて通知を絞る運用が向いています。

着信拒否はどの段階で使えばよいですか?

会社の悪質事案への対処方針に沿って決裁を経たときに限ります。着信拒否をすると、その番号からの解約や事故連絡などの正当な用件も受けられなくなるからです。その手前の段階では、特定の発信者番号をSVや経験者だけが受けるキューへ回すルーティングで、新人が繰り返し対応する状況を断てます。厚労省マニュアルが挙げる窓口の一本化を、着信の振り分けで実現する方法です。

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