配偶者を亡くしたあとに受け取れる遺族年金は、令和8年度の遺族基礎年金が年847,300円、これに子の加算が1人目・2人目は各243,800円(3人目以降は各81,300円)加わります。遺族厚生年金は亡くなった方の報酬比例部分の4分の3で、平均標準報酬額40万円・加入300月なら年約49万3千円です。厚生年金保険(第1号)の遺族年金受給権者の平均は月82,209円(令和6年度末、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」表9「厚生年金保険(第1号)受給権者平均年金月額の推移」。併給する基礎年金を含む)で、遺族年金だけで生活費をまかなえる水準ではありません。ここでは金額・受給できる条件・いつまで受け取れるか・2028年4月に施行される改正までを、日本年金機構と厚生労働省の資料の数値でそのまま整理します。
まとめ:配偶者が受け取る遺族年金の要点(令和8年度)
- 遺族基礎年金は年847,300円(昭和31年4月2日以後生まれ)。子の加算は1人目・2人目が各243,800円、3人目以降が各81,300円。
- 遺族基礎年金を受け取れるのは18歳年度末までの子がいる配偶者のみ。子がいない配偶者は遺族厚生年金だけになります。
- 遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3。厚生年金の加入期間が300月未満でも、在職中の死亡などでは300月とみなして計算します。
- 遺族厚生年金を受け取る妻のうち、40歳以上65歳未満で子のいない方には中高齢寡婦加算として年635,500円が65歳まで上乗せされます(長期要件の場合は夫の厚生年金加入20年以上が条件)。
- 受給期間は、遺族基礎年金が子の18歳年度末まで、遺族厚生年金は30歳未満で子のない妻が5年、それ以外は原則として終身です。
- 2028年4月1日施行の改正で、子のない配偶者の遺族厚生年金は5年の有期給付へ移ります。男性は施行時から60歳未満が対象、女性は対象年齢を40歳未満から20年かけて60歳未満まで段階的に引き上げます。有期給付の年収850万円未満という収入要件は廃止されます。
以下、金額の出し方から順に、自分のケースに当てはめられる形で説明します。
令和8年度の遺族年金額と配偶者の受取額早見表
遺族基礎年金は年847,300円に子の加算を上乗せした額
遺族基礎年金は定額です。令和8年4月分からの額は、昭和31年4月2日以後生まれの方が年847,300円、昭和31年4月1日以前生まれの方が年844,900円で、令和7年度から1.9%の引き上げとなりました。ここに子の加算が加わります。
| 子の人数 | 年額 | 月額換算 |
|---|---|---|
| 1人 | 1,091,100円 | 約90,900円 |
| 2人 | 1,334,900円 | 約111,200円 |
| 3人 | 1,416,200円 | 約118,000円 |
| 4人 | 1,497,500円 | 約124,700円 |
※月額換算は100円未満を切り捨てています。
3人目以降の加算が81,300円と大きく下がるため、子が2人から3人に増えても年8万円ほどしか増えません。なお、ここでいう子とは18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある方を指します。婚姻している子は対象外で、死亡当時に胎児だった子は出生後に対象になります。
遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3
遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は「平均標準報酬月額×7.125÷1000×平成15年3月までの月数」と「平均標準報酬額×5.481÷1000×平成15年4月以降の月数」の合計で計算します(昭和21年4月2日以後生まれの乗率)。下表は、加入期間がすべて平成15年4月以降にある場合の目安です。
| 平均標準報酬額 | 300月(25年) | 360月(30年) | 480月(40年) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約246,600円 | 約296,000円 | 約394,600円 |
| 25万円 | 約308,300円 | 約370,000円 | 約493,300円 |
| 30万円 | 約370,000円 | 約444,000円 | 約591,900円 |
| 40万円 | 約493,300円 | 約591,900円 | 約789,300円 |
| 50万円 | 約616,600円 | 約739,900円 | 約986,600円 |
※年額は100円未満を四捨五入しています。
平均標準報酬額40万円・300月の欄を例に計算過程を追うと、400,000円×5.481÷1000=2,192.4円、これに300月を掛けて657,720円、その4分の3で493,290円です。在職中の死亡や初診日から5年以内の死亡といった短期要件に当たる場合、加入期間が300月に満たなくても300月とみなして計算するため、20代・30代での死亡でもこの表の300月の列がそのまま目安になります。一方、老齢厚生年金の受給資格を満たした方が亡くなった長期要件では300月みなしが働かず、実際の加入月数で計算します。
会社員の夫(平均標準報酬額40万円・加入300月)が亡くなり、妻と18歳未満の子2人が残された世帯なら、遺族基礎年金1,334,900円と遺族厚生年金約493,300円で年1,828,200円、月に直すと約152,300円です。
40歳以上65歳未満の妻に加わる中高齢寡婦加算635,500円
次のいずれかに当たる妻の遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまで年635,500円(令和8年度)が加算されます。夫が死亡したときに40歳以上65歳未満で生計を同じくする子がいない場合と、子がいたため遺族基礎年金を受けていた妻が、子の18歳年度末到達により遺族基礎年金を受け取れなくなった場合です。後者は「40歳に達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けていた妻に限る」という限定が付きます(日本年金機構「遺族年金ガイド令和8年度版」)。40歳を過ぎてから子を養育し始めた場合は対象外です。長期要件(老齢厚生年金の受給資格を満たした方の死亡など)では、亡くなった夫の厚生年金の加入期間が20年以上(中高齢の期間短縮の特例などで20年未満の加入期間で受給資格期間を満たした方はその期間)ないと加算されません。夫を亡くした妻に限られる加算で、妻を亡くした夫には同じ加算がない点が、後述する2028年改正の出発点になっています。
配偶者が遺族年金を受け取れる条件
生計維持は「生計同一」と「年収850万円未満」の2つ
遺族年金を受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた遺族です。日本年金機構は、死亡当時に生計を同一にしていた方で、原則として年収850万円未満(所得655万5千円未満)の方が該当するとしています。生計同一は同居に限りません。単身赴任・就学・施設入所・入院療養などで別居していても、仕送りを受けている、健康保険の被扶養者である、といった事情があれば認められます。別居の場合は、仕送りの事実がわかる振込記録や健康保険証の写しなど、生計同一を示す書類を求められます。共働きで自分の年収が850万円以上ある場合でも、退職や廃業などでおおむね5年以内に850万円未満になると認められる事由があれば受け取れます。この収入要件は2028年4月から廃止されます(後述)。
遺族基礎年金は18歳年度末までの子がいる配偶者に限定
「専業主婦だったのに遺族年金がほとんど出ない」という相談の多くは、ここが原因です。遺族基礎年金は子のある配偶者と子だけが対象で、子がいない配偶者には支給されません。夫が会社員なら遺族厚生年金は残りますが、夫が国民年金の第1号被保険者だけだった自営業世帯では、子がいなければ遺族基礎年金も遺族厚生年金も出ません。その場合の受け皿が寡婦年金と死亡一時金です。
夫が受け取るときは死亡当時55歳以上・支給開始60歳
妻を亡くした夫の遺族厚生年金には、死亡当時に55歳以上という年齢要件があり、実際の支給開始は60歳からです。ただし遺族基礎年金を受給中の夫に限り、60歳より前でも遺族厚生年金をあわせて受け取れます。遺族基礎年金のほうは、子のある配偶者であれば夫にも年齢要件はありません。受給の優先順位は、配偶者・子、父母、孫、祖父母の順で、先順位の方がいる間は後順位の方に支給されません。
保険料納付要件と令和18年3月末までの特例
亡くなった方の納付状況も要件です。ただしこれが問われるのは、被保険者である間の死亡と、被保険者期間中に初診日がある傷病で初診日から5年以内の死亡(遺族基礎年金・遺族厚生年金それぞれの受給要件①②)に限られます。老齢厚生年金の受給権者の死亡などの長期要件や、1級・2級の障害厚生年金を受け取っていた方の死亡には納付要件がありません。納付要件が問われる場合は、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が3分の2以上あることが必要になります。これを満たさない場合でも、死亡日が令和18年3月末日までにあり、死亡日に65歳未満で、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に未納がなければ要件を満たしたものとされます。未納が続いていた時期がある方ほど、この特例の期限が実務上効いてきます。
遺族年金を受け取れる期間と失権のタイミング
遺族基礎年金の終了時点は子の18歳年度末
遺族基礎年金は、子が18歳になった年度の3月31日に到達した時点で受給権が消滅します(障害等級1級・2級の状態にある場合は20歳到達時)。子が2人いる世帯では、上の子の到達で加算分が減り、下の子の到達で遺族基礎年金そのものが終わります。妻の場合、40歳に達した当時に子がいて遺族基礎年金を受けていたのであれば、この時点で65歳未満なら中高齢寡婦加算に切り替わり、遺族厚生年金は続きます。18歳年度末の到達による失権では、遺族年金失権届の提出は不要です。
30歳未満・子のない妻は5年で失権
夫が亡くなったときに30歳未満で子のない妻は、遺族厚生年金の受給権を得てから5年を経過した時点で失権します。遺族基礎年金と遺族厚生年金を受けていた妻が30歳到達前に遺族基礎年金の権利を失った場合も、その日から5年で遺族厚生年金が終わります。30歳以上で夫を亡くした妻は、現行制度では期限の定めのない給付です。
再婚・養子縁組による失権と届出の期限
受給中でも、次に当たると受給権そのものが消滅します。いずれも回復しません。
- 婚姻したとき(内縁関係を含む)
- 直系血族または直系姻族以外の方の養子となったとき
- 亡くなった方と離縁したとき
- 受給権者が死亡したとき
届出の期限は年金の種類で違い、遺族基礎年金は該当した日から14日以内、遺族厚生年金は10日以内に年金事務所または街角の年金相談センターへ遺族年金失権届を提出します。届け出ずに受け取り続けた分は返還の対象になるため、再婚の日が確定した時点で手続きの予定に入れておくのが安全です。
65歳以降に自分の老齢厚生年金と重なるときの計算
①と②を比べて高いほうが遺族厚生年金の額
65歳以上で自分の老齢厚生年金(退職共済年金)を受ける権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、次の2つを比べて高いほうが遺族厚生年金の額になります。1つ目は報酬比例部分の4分の3の額、2つ目は「その額の3分の2」と「自分の老齢厚生年金の額の2分の1」を合計した額です。日本年金機構は、4分の3の額が60万円、自分の老齢厚生年金が50万円のケースで、後者が60万円×3分の2+50万円×2分の1=65万円となり、こちらが遺族厚生年金の額になる例を示しています。
ただし、決まった遺族厚生年金のうち自分の老齢厚生年金に相当する額は支給停止されます。老齢厚生年金は全額支給され、差額だけが遺族厚生年金として上乗せされる形です。共働きで自分の厚生年金加入期間が長いほど、この支給停止によって手取りの増分は小さくなります。老齢基礎年金は全額そのまま受け取れます。
下表は、①(報酬比例部分の4分の3)が60万円のケースで、自分の老齢厚生年金の額別に手取りの増分がどう変わるかを、上の計算式で計算したものです。
| 自分の老齢厚生年金 | ②の額 | 遺族厚生年金の額 | 実際の上乗せ額 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 400,000円 | 600,000円 | 600,000円 |
| 200,000円 | 500,000円 | 600,000円 | 400,000円 |
| 400,000円 | 600,000円 | 600,000円 | 200,000円 |
| 500,000円 | 650,000円 | 650,000円 | 150,000円 |
| 800,000円 | 800,000円 | 800,000円 | 0円 |
自分の老齢厚生年金が①の3分の4(この例では80万円)に達すると、上乗せはゼロになります。共働きで自分の厚生年金加入期間が長い方ほど、遺族厚生年金の請求で増える額は小さいという結論です。それでも請求手続きは必要で、老齢厚生年金または退職共済年金の請求をしていないと、この①②の比較と支給停止の計算自体が行われません。
「夫の年金が月15万円」から遺族厚生年金を見積もる手順
夫が受け取っていた年金額しか分からない場合は、そこから報酬比例部分を切り出します。月15万円が老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計で、老齢基礎年金が満額(令和8年度は月70,608円)なら、報酬比例部分はおよそ月79,400円、年約952,700円です。その4分の3が遺族厚生年金なので、年約714,500円、月にすると約59,500円になります。
この見積もりは、加給年金額や経過的加算、繰上げ・繰下げによる増減が含まれていない前提での概算です。妻自身に老齢厚生年金があれば上の①②の比較と支給停止が加わるため、実額はねんきん定期便や年金証書の内訳(報酬比例部分の額)で確認してください。
2028年4月施行の改正で変わる点
有期給付化は男性が施行時から、女性は20年かけて段階的に
令和7年の年金制度改正法により、2028年(令和10年)4月1日から、18歳年度末までの子がいない配偶者の遺族厚生年金が原則5年間の有期給付へ移ります。ただし施行のしかたは男女で違います。男性は施行日から60歳未満で死別した場合が対象になり、女性は現行の30歳未満から対象年齢を施行日にまず40歳未満へ引き上げ、そこから20年かけて段階的に60歳未満まで広げます(厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」)。男女とも60歳未満という最終形になるのは施行から20年後です。60歳以上で死別した場合は男女とも現行どおりの無期給付です。
有期給付には新たに有期給付加算が上乗せされ、額は現在の遺族厚生年金の約1.3倍になります。5年の終了後も、障害の状態にある方や収入が十分でない方は、最長で65歳になるまで継続給付を受けられます。継続給付は、単身で就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下なら全額支給され、おおむね月収20万円から30万円を超えると終了します。
施行直後に有期給付の対象となる女性は2028年度末時点で40歳未満の方で、このうち20代はすでに5年の有期給付のため、新たに加わるのは30代の女性です。厚生労働省の推計では年間約250人にとどまります。これに対し、これまで55歳未満では受給できなかった男性は新たに年間約1万6千人が対象になると推計されています。改正の実質は、女性の給付の打ち切りより男性への拡大のほうが大きい点を押さえておくと、報道の「5年で打ち切り」という表現に振り回されずに済みます。
年収850万円未満の収入要件は廃止、中高齢寡婦加算は25年かけて縮小
有期給付については、年収850万円未満という収入要件が廃止されます。共働きで自分の収入が多いために対象外だった配偶者も、施行後は受給できることになります。あわせて死亡分割が導入され、婚姻期間中の厚生年金の記録を分割して自分の老齢厚生年金に反映できるようになります。厚生労働省の社会保障審議会年金部会資料では、按分割合は夫婦の標準報酬月額等の合計の2分の1とする合意があったものとみなす仕組みが示されています。
一方で中高齢寡婦加算は縮小します。令和10年4月1日以降に新規に発生する加算の額は令和35年度まで25年かけて段階的に引き下げられ、最終的に廃止されます。施行日前からすでに加算を受け取っている妻の額は変わらず、65歳まで受け取れます。子を養育している年金受給者への加算も横断的に見直され、1人目・2人目の加算額は2024年度価格で年234,800円から281,700円へ引き上げられる予定です。厚生労働省は、加算額の引き上げに加えて「老齢基礎年金のみを受給されている方など、対象者の範囲を広げることを予定しています」としています。
影響を受けない人と、繰下げ受給の取扱い変更
厚生労働省は、影響を受けない方として、すでに遺族厚生年金を受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、2028年度に40歳以上になる女性を挙げています。18歳年度末までの子がいる間の給付内容も現行と同じです。
見落とされやすいのが繰下げの扱いです。現行では、66歳到達日以前に遺族年金を受け取る権利を有すると老齢年金の繰下げができません。令和7年の改正により、令和10年3月31日時点で遺族厚生年金を受け取る権利があり65歳に到達していない方(昭和38年4月2日以降生まれ)は、老齢基礎年金を遺族厚生年金の請求の有無にかかわらず繰り下げられるようになります。老齢厚生年金の繰下げは、遺族厚生年金の請求を行っていない場合に限られます。繰下げで増額を狙うなら、遺族厚生年金の請求を出す前に順序を決めてください。請求してからでは選べません。
遺族基礎年金が出ない自営業世帯の受け皿:寡婦年金と死亡一時金
国民年金の第1号被保険者だった夫が亡くなり、子がいないために遺族基礎年金が出ない妻には、国民年金の独自給付があります。厚生年金保険にはない制度で、遺族年金の解説記事では省かれがちですが、自営業・フリーランス世帯では受け取れる唯一の給付になることがあります。
寡婦年金は、第1号被保険者としての保険料納付済期間と免除期間が合わせて10年以上ある夫が亡くなり、その夫に生計を維持され、かつ婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続していた妻が、60歳から65歳になるまで受け取れます。額は夫の第1号被保険者期間から老齢基礎年金の計算方法で算出した額の4分の3です。夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取ったことがある場合、妻が繰上げ受給の老齢基礎年金を受けている場合は請求できません。
死亡一時金は、第1号被保険者としての保険料納付済期間が36月以上ある方が亡くなったときに、生計を同一にしていた遺族が受け取れます。亡くなった方が老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取っていたとき、および遺族基礎年金を受け取れる方がいるときは支給されません。
| 保険料納付月数 | 死亡一時金 |
|---|---|
| 36月以上180月未満 | 120,000円 |
| 180月以上240月未満 | 145,000円 |
| 240月以上300月未満 | 170,000円 |
| 300月以上360月未満 | 220,000円 |
| 360月以上420月未満 | 270,000円 |
| 420月以上 | 320,000円 |
死亡した月の前月までに付加保険料の納付済期間が36月以上あれば、上の額に8,500円が加算されます。寡婦年金と死亡一時金の両方の要件を満たす場合はどちらか一方の選択です。60歳から65歳まで5年間受け取れる寡婦年金は、夫の納付期間が長いほど総額が死亡一時金を上回りやすく、迷ったら年金事務所で両方の試算を出してもらってから選んでください。死亡一時金は死亡日の翌日から2年で請求できなくなります(国民年金法102条4項)。国民年金の被保険者区分については第1号被保険者の位置づけの解説もあわせて確認できます。
請求手続きと時効、振込までの期間
遺族年金は請求しなければ支給されません。年金請求書を年金事務所または街角の年金相談センターへ提出します(遺族基礎年金のみの請求は市区町村の窓口)。共済組合等の加入期間がある方も、年金事務所への提出で共済分をあわせて請求できます。
提出から年金証書が自宅に届くまでは1カ月程度、加入状況の確認を要する場合は2カ月程度かかります。年金証書の到着から約1〜2カ月後に振り込みが始まり、以後は偶数月に2カ月分がまとめて振り込まれます。支給は亡くなられた月の翌月分からです。
請求の期限は、年金給付を受ける権利が支給すべき事由が生じた日から5年で時効消滅します(厚生年金保険法92条1項、国民年金法102条1項)。5年を過ぎてから請求した場合でも、請求そのものはでき、さかのぼって受け取れるのは直近5年分です。時効の取り扱いは事情により異なるため、5年を過ぎているときほど年金事務所で確認してください。死亡一時金だけは2年と短く、こちらは期限を過ぎると請求そのものができません。健康保険の被扶養者だった配偶者は、自身が就職して健康保険に入る、別の親族の被扶養者になるといった場合を除き、遺族年金の請求と並行して国民健康保険への切り替え手続きが必要になります。こちらは資格喪失から14日以内が原則です。
遺族年金の税・保険料の扱いと確定申告
遺族年金は非課税です。国民年金法25条は「租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りでない」と定め、厚生年金保険法41条2項も老齢厚生年金を除いて同じ扱いを規定しています。つまり、遺族年金と障害年金は非課税、老齢年金は課税対象という線引きです。
非課税である以上、遺族年金は所得税・住民税の課税所得に入りません。国民健康保険料は住民税の総所得金額等、65歳以上の介護保険料は合計所得金額と課税年金収入額をもとに算定されるため、課税所得に入らない遺族年金はこれらの算定基礎からも外れます。住民税の非課税ラインの判定でも同様です。ただし自分の老齢年金や給与、事業収入がある場合は、そちらだけで課税関係を判断することになります。公的年金受給者の確定申告が必要になる条件は別途確認してください。
児童扶養手当との関係も押さえておきます。平成26年12月以降、公的年金の額が児童扶養手当の額より低い場合は、その差額分の手当を受け取れます。遺族厚生年金が少額にとどまる世帯では、市区町村の児童扶養手当窓口への申請で上乗せが得られる可能性があります。
遺族年金(配偶者)に関するよくある質問
遺族年金は配偶者がいくらもらえますか?
令和8年度の遺族基礎年金は年847,300円(昭和31年4月2日以後生まれ)で、18歳年度末までの子が1人いれば1,091,100円、2人なら1,334,900円です。遺族厚生年金は亡くなった方の報酬比例部分の4分の3で、平均標準報酬額40万円・加入300月なら年約493,300円です(日本年金機構「遺族年金ガイド令和8年度版」)。厚生年金保険(第1号)の遺族年金受給権者の平均は月82,209円(令和6年度末、併給する基礎年金を含む。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」表9)となっています。
遺族年金はいつまでもらえますか?
遺族基礎年金は子が18歳になった年度の3月31日まで(障害等級1級・2級の場合は20歳まで)です。遺族厚生年金は、夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は5年間、それ以外の配偶者は現行制度では終身です(日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」)。ただし2028年4月1日以降に受給権が発生する子のない配偶者は、5年間の有期給付へ移ります。男性は施行時から60歳未満、女性は40歳未満から20年かけて対象年齢が60歳未満まで引き上げられます。
子のいない妻や専業主婦でも遺族年金はもらえますか?
子がいない配偶者に遺族基礎年金は支給されません。夫が会社員・公務員で厚生年金に加入していれば遺族厚生年金は受け取れ、妻が40歳以上65歳未満なら中高齢寡婦加算635,500円が上乗せされます。夫が国民年金の第1号被保険者だけだった場合は遺族基礎年金も遺族厚生年金も出ず、要件を満たせば寡婦年金または死亡一時金の対象になります(日本年金機構「遺族年金ガイド令和8年度版」)。
共働きで年収が850万円以上あると遺族年金は受け取れませんか?
現行では、死亡当時の年収が850万円以上(所得655万5千円以上)だと原則として生計維持要件を満たしません。ただし退職や廃業などでおおむね5年以内に850万円未満になると認められる事由があれば受け取れます。2028年4月の改正で、有期給付についてはこの収入要件が廃止されます(厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」)。
2028年の遺族年金改正で何が変わりますか?
2028年(令和10年)4月1日施行で、18歳年度末までの子がいない配偶者の遺族厚生年金が原則5年の有期給付になり、有期給付加算により額は約1.3倍になります。対象は男性が施行時から60歳未満、女性は40歳未満から20年かけて60歳未満まで段階的に引き上げられます。年収850万円未満の収入要件は廃止され、死亡分割が導入されます。中高齢寡婦加算は施行日以降の新規発生分が令和35年度まで25年かけて段階的に縮小されます。すでに受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、2028年度に40歳以上になる女性は影響を受けません(厚生労働省「遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方」)。