44 人が閲覧(直近 30 日) 確定申告

個人事業主の消費税免除はいつまで?免税事業者の要件と令和8年度改正

個人事業主の消費税免除はいつまで?免税事業者の要件と令和8年度改正

個人事業主が消費税を納めなくてよいのは、消費税法第9条第1項が基準期間の課税売上高1,000万円以下の事業者について納税義務を免除しているからです。ただしこの免除は、売上が1,000万円を超えたときだけでなく、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を受けた時点でも外れます。登録している間は、売上がいくら少なくても免除は適用されません。

この記事では、免除の条件を国税庁のタックスアンサーと消費税法基本通達で確認したうえで、開業何年目に免除が切れるか、登録をやめて免税事業者に戻るには何をいつまでに出すか、そして免税のままでいる選択が令和8年度税制改正でどう変わったかを整理します。

まとめ:個人事業主の消費税免除の要点

  • 免除の原則は基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が1,000万円以下であること。開業1年目と2年目は基準期間そのものが無いため原則として免除されます。
  • 免除されないのは、インボイス登録を受けている、特定期間の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円を超えた、課税事業者選択届出書を出した、相続で事業を承継した、高額特定資産を取得した、のいずれかに当たる場合です。
  • 免除されるのは納付の義務だけで、取引価格に消費税相当額を含めること自体は制限されていません。
  • インボイス登録者が免税事業者に戻るには、戻りたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに登録の取消しを求める届出書が必要です。ただし登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、届出書を出しても納税義務が残ります。
  • 免税事業者からの仕入れについて取引先が控除できる割合は、令和8年10月から70%に下がります。値引き要求の線引きは、令和8年1月に下請法から改称された取適法の第5条が定めています。

以下では、この5点をそれぞれの根拠条文と判定の順序に沿って掘り下げます。

納税義務の免除と非課税の違い

消費税法第9条第1項の見出しは「小規模事業者に係る納税義務の免除」です。免除の対象は事業者が国に納める義務であって、その事業者が行う取引が消費税の対象から外れるわけではありません。ここを取り違えると、請求書の書き方から確定申告の要否まで判断がずれます。

免税事業者の請求と受領に対する制限の有無

免税事業者が取引価格に消費税相当額を含めることを禁じた規定は、消費税法にありません。公正取引委員会の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」も、仕入側が「免税事業者が仕入れ時に支払っていた消費税額も払えないような価格」を設定する行為を問題視しており、免税事業者が消費税相当額を受け取っていることを前提に書かれています。免税事業者も仕入れや外注費を払うときには消費税を負担しているため、価格からその分を差し引かれると持ち出しになります。

ただし、免税事業者が発行する請求書は適格請求書になりません。取引先はその支払いについて仕入税額控除を満額では受けられず、後述の経過措置の割合だけが控除できます。請求できることと、取引先が控除できることは別の話です。

非課税・不課税・免税事業者の区分の違い

「非課税事業者」という言い方が検索されますが、消費税法にその区分はありません。次の3つは着目している対象が異なります。

用語 着目する対象 具体例
非課税 取引の性質 土地の譲渡・貸付け、利子など
不課税 課税の対象外 国外取引、給与、受取配当
免税事業者 事業者の納税義務 基準期間の課税売上高1,000万円以下

免税事業者が行う売上は非課税売上ではありません。課税取引を行いながら納税義務だけが免除されている状態です。だからこそ、翌々年に売上要件を満たせば同じ取引のまま課税事業者になります。

免除を受けられる年と受けられない年を分ける条件

国税庁のタックスアンサーNo.6501「納税義務の免除」(令和7年4月1日現在法令等)は、基準期間の課税売上高1,000万円以下という原則に対して、免除されない場合を6つ挙げています。うち「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」は新設法人と特定新規設立法人の話なので、個人事業主には関係しません。残る5つに原則の判定を加え、確認すべき順序で並べると次のとおりです。

確認順 条件 該当すると
1 適格請求書発行事業者の登録を受けている 売上規模を問わず課税事業者
2 課税事業者選択届出書を提出している 原則、翌課税期間から課税事業者
3 基準期間の課税売上高が1,000万円超 その年は課税事業者
4 特定期間の課税売上高が1,000万円超 その年は課税事業者
5 相続で事業を承継した 被相続人の課税売上高で判定
6 高額特定資産を取得した 一定期間は免除が制限される

登録を先頭に置いたのには理由があります。消費税法基本通達1-4-1は第9条第1項の対象を「基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者(適格請求書発行事業者を除く。)」と書いており、登録者は売上を数えるまでもなく免除の枠から外れているからです。なお2の課税事業者選択届出書は、原則として提出した日の属する課税期間の翌課税期間から効きますが、事業を開始した日の属する課税期間など一定の場合は提出した年から課税事業者になれます。

3と4で使う課税売上高には、数え方の落とし穴が2つあります。ひとつは通達1-4-4の「事業者単位で算定する」という規定で、物販と不動産賃貸のように所得区分が分かれていても、屋号を分けていても、1人分にまとめて1,000万円と比べます。もうひとつは通達1-4-5で、基準期間が免税事業者だった年である場合は「収受し、又は収受すべき金銭等の全額」が課税売上高になり、税抜きに割り戻しません。税込1,078万円を980万円と数えて免税と判断する誤りが起きやすい部分です。数え方の場合分けは消費税の課税事業者と免税事業者の判定基準|基準期間の課税売上高1,000万円の数え方にまとめています。

開業1年目から3年目までに免除が切れるタイミング

基準期間が無い1年目と2年目の免除

消費税法基本通達1-4-6は、新たに開業した個人事業者のように「基準期間における課税売上高がない場合又は基準期間がない場合には、納税義務が免除される」と述べています。個人事業者の基準期間は前々年なので、開業1年目には前々年に事業がなく、2年目も同じです。3年目になって初めて、開業1年目の課税売上高で判定します。

この2年間は基準期間が無いことの結果であって、開業から2年という独立した特例があるわけではありません。したがって上の表の1・2・4・5・6に当たれば、1年目や2年目でも課税事業者になります。

特定期間の課税売上高と給与等支払額による判定

開業2年目に、インボイス登録以外の理由で免除が外れる経路が特定期間です。個人事業者の特定期間は前年1月1日から6月30日までで、この半年間の課税売上高が1,000万円を超えると、翌年は基準期間が無くても課税事業者になります。

ただしこの判定は、課税売上高に代えてその期間の給与等支払額の合計額で行うこともでき、どちらの基準を使うかは納税者の任意です。両方が1,000万円を超えたときだけ課税事業者になるため、上半期に売上が集中しても人を雇っていなければ免税のままというケースが出ます。

ここでいう給与等の金額について、国税庁の質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」(令和7年8月1日現在)は、所得税法施行規則第100条第1項第1号に規定する給与等の金額を指すとしたうえで「所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当せず、未払額は含まれません」と答えています。所得税の課税対象である青色事業専従者給与は含まれ、給与ではない外注費は含みません。なお国外事業者は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から給与等支払額による判定を使えません。

年の途中開業と12か月換算の不要性

法人には事業年度が1年に満たない場合の年換算がありますが、個人事業者にはありません。通達1-4-9は、基準期間に事業を行っていた期間が1年に満たないときでも「当該基準期間における課税売上高によって」判定すると明記しています。

特定期間も同じです。国税庁No.6531は「前年の3月1日に事業を開始した個人事業者の特定期間における課税売上高は、前年の3月1日から6月30日までの期間における課税売上高(又は給与等の金額)となり、6か月分に換算する必要はありません」と書いています。10月に開業して年内に800万円を売り上げた個人事業主は、その800万円をそのまま基準期間の課税売上高として使うので、翌年1月から6月の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円以下であれば翌々年も免税事業者です。12か月換算すれば3,200万円相当となり、結論が逆になってしまいます。

インボイス登録による免除の不適用と免税事業者に戻る手続き

登録日以後の課税期間における免除の不適用

消費税法基本通達1-4-1の2は「適格請求書発行事業者は、その登録日の属する課税期間以後の課税期間については、法第9条第1項本文の規定の適用はない」と定めています。登録している限り、基準期間の課税売上高が300万円でも100万円でも消費税の申告と納付が必要です。免除の判定に入る前段で除外されている、という位置づけになります。

登録は取り消せますが、取り消しても一定期間は課税事業者のままです。登録番号を取得する前に、次の拘束期間だけは確認しておいてください。登録番号そのものの性質はインボイス登録番号とは?個人事業主の13桁とマイナンバー・法人番号の違いで扱っています。

取消届出書の提出期限と登録から2年間の納税義務

通達1-4-1の2は、戻る方法も具体的に書いています。第9条第1項本文の適用を受けようとする課税期間の「初日から起算して15日前の日までに」、消費税法第57条の2第10項第1号に規定する適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出する必要があります。個人事業者の課税期間は暦年なので、令和9年分から戻りたいなら令和9年1月1日から起算して15日前の日、つまり令和8年12月17日(木)が期限です。

国税庁の「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」は、この期限の扱いを3点補足しています。第一に「12/17が土日祝日の場合でもその翌日に期限が延長されない」こと。登録申請のほうは12月17日が日曜だった令和5年に12月18日へ延びましたが、取消しは延びません。第二に「郵送の場合は12/17の通信日付有効」で、消印の日付で判定します。第三に「同日の翌日以後の提出の場合、翌々課税期間の初日からの取消しとなる」ため、1日遅れると戻れるのが1年先になります。

そして、期限内に出せば必ず翌年から免除に戻れるわけではありません。同じ事例集は、登録申請に関する経過措置の適用により登録を受けた事業者について「登録を受けた日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、納税義務あり(ただし、令和5年10月1日を含む課税期間に登録した事業者を除く)」としています。令和6年2月1日に登録した個人事業主なら、2年を経過する日は令和8年1月31日、その日が属する課税期間の末日は令和8年12月31日です。令和8年12月17日までに取消届出書を出して令和9年分から免税事業者に戻る、という順序になります。

もう1点、通達1-4-1の2の注書きに見落としやすい条件があります。課税事業者選択届出書を出して課税事業者になっている登録者は、登録の取消しを求める届出書だけでは免税事業者に戻れません。第9条第5項の課税事業者選択不適用届出書もあわせて提出する必要があります。1通しか出さなかったために、登録は消えたのに課税事業者のまま申告義務が残る、という状態が起こり得ます。

免税事業者のままでいる場合に起きること

取引先が控除できなくなる金額と経過措置の日程

免税事業者からの課税仕入れについて、取引先は経過措置で一定割合だけ仕入税額控除を受けられます。令和8年度税制改正でこの割合が見直され、令和8年10月からの2年間は80%ではなく70%になりました。

期間 控除できる割合
令和8年10月から2年間 70%
令和10年10月から2年間 50%
令和12年10月から1年間 30%
令和13年10月以降 0%

改正前は令和8年10月から3年間50%、その後0%となる予定でした。控除できる期間が延びた分だけ、取引先が免税事業者との取引を打ち切る動機は弱まっています。

取引先が求めてくる値引き額の妥当性は、この割合で検算できます。税込110万円の外注であれば、控除できなくなる金額は110万円×10÷110×30%=3万円です。税抜きに換算せず、税込110万円に10%を掛けた11万円を消費税額とみなして、その30%で3.3万円と見積もるのは誤りになります。

経過措置には上限もあります。一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)がその年で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分には適用できません。令和8年10月1日以後に開始する課税期間からの取扱いです。1億円は取引先1者ごとの金額であって、免税事業者への発注総額ではないため、売上1,000万円以下の個人事業主との取引でこの上限に触れることはまずありません。

代金の減額・買いたたきに当たる値引き要求と取適法

公正取引委員会の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」Q7は、仕入側の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が仕入れ時に支払っていた消費税額も払えないような価格にすることは、独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たるとしています。取適法では、第5条第1項第3号の代金の減額、同項第5号の買いたたき、同項第6号の購入・利用強制がそれぞれ該当し得ます。低い価格に応じない相手方との取引を停止する行為も問題となり得ると書かれています。

ここでいう取適法とは、旧・下請法のことです。令和8年1月1日施行の令和七年法律第四十一号によって題名が変わり、現在の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略称は中小受託取引適正化法または取適法となりました。法律番号は昭和三十一年法律第百二十号のままです。公正取引委員会のインボイス制度関連コーナーも、掲載資料名を「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る取適法等の考え方」へ改めています。相談窓口で下請法と言っても通じますが、条番号を引用するなら現行の取適法で確認してください。

令和9年分・令和10年分だけ使える3割特例

登録して課税事業者になった人が納税額を売上税額の2割に抑えられる2割特例は、国税庁の令和8年度税制改正特集によれば「令和8年9月30日が属する課税期間まで」です。個人事業者の課税期間は暦年なので、令和8年分の確定申告が2割特例を使える最後の年になります。

続く令和9年分・令和10年分には3割特例が置かれます。要件は、個人事業者であること、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること、インボイス発行事業者の登録を受けていることの3つで、納付税額を売上税額の3割にできます。対象は個人事業者に限られ、法人は適用できません。法人成りを検討している免税事業者には、この2年間だけ個人のほうが有利になる局面があります。

どちらの特例も、インボイス登録によって課税事業者になった人向けの措置です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えて自動的に課税事業者になった年には使えず、簡易課税か原則課税の二択になります。売上1,000万円を超えた場合の納税額は個人事業主が売上1000万円を超えたら消費税はいくら?納税開始は2年後・2割特例は令和8年分までで試算しています。

よくある質問

開業から何年目に消費税の免除がなくなりますか?

年数で決まっているわけではありません。個人事業者の基準期間は前々年なので、開業1年目と2年目は判定材料が存在せず結果として免除されます。3年目以降も前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば免除は続きます。逆に、特定期間の課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円を超えれば2年目から課税事業者です。

免税事業者は消費税を請求してもよいのですか?

免税事業者が取引価格に消費税相当額を含めることを禁じる規定は、消費税法にありません。公正取引委員会のQ&Aも、免税事業者が仕入れ時に消費税を負担していることを前提に、それすら賄えない価格設定を問題としています。ただし発行する請求書は適格請求書にならないため、取引先は経過措置の割合分しか仕入税額控除を受けられません。

免税事業者の売上は非課税売上になりますか?

なりません。非課税は土地の譲渡や利子など取引の性質に着目した区分で、免税事業者はあくまで納税義務が免除された事業者です。免税事業者が行う売上は課税取引であり、翌々年に基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば、同じ取引のまま納税義務が生じます。

年の途中で開業した場合、売上を12か月に換算して1,000万円と比べますか?

個人事業者は換算しません。消費税法基本通達1-4-9が、基準期間に事業を行っていた期間が1年に満たなくてもその期間の課税売上高で判定すると定めています。特定期間についても国税庁No.6531が「6か月分に換算する必要はありません」と明記しています。

インボイス登録をやめて免税事業者に戻れますか?

登録日から2年を経過する日の属する課税期間を過ぎていれば戻れます。手続きは、戻りたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出することで、令和9年分から戻る場合の期限は令和8年12月17日(木)です。この期限は土日祝でも翌日に延びず、1日でも遅れると翌々年からの取消しになります。課税事業者選択届出書を提出している場合は、課税事業者選択不適用届出書もあわせて必要です。

関連記事

お気に入りに入れた記事の一覧

この記事は以下の記事からリンクされています

資料請求

今日のトレンド記事 直近 24 時間で、いつもより多く読まれている記事

  1. 2026.10.23 テックブログ Renta!はいつ再開?不正アクセスでメールアドレス等が流出したおそれ・再開時のパスワード再設定と運営側の対応
  2. 2026.07.09 テックブログ Muse Imageとは?Metaの画像生成AIの使い方・API料金(1枚0.01ドル)と日本での提供状況【2026年10月】
  3. 2026.10.23 テックブログ Splunk 脆弱性CVE-2026-76299:影響版の確認と10.2.8などへの更新手順
  4. 2026.10.22 テックブログ Tomcatのバージョン一覧とサポート期限【2026年10月】最新版11.0.27、9.0系は2027年3月末終了・9.1系は2030年末まで
  5. 2026.10.21 テックブログ ユミルリンク不正アクセス第二報で延べ5,162万件:Cuenote FC利用企業と受信者の確認点

RELATED POSTS 関連記事

目次