個人事業主やフリーランスの定額減税は、令和6年分の所得税から1人3万円、令和6年度分の個人住民税所得割から1人1万円を差し引く、1回限りの措置でした。給与所得がない場合、所得税の定額減税は原則として予定納税と令和6年分の確定申告(令和7年3月17日期限)で、住民税は市区町村から届く納税通知書の第1期分から差し引かれました。
2026年10月時点で、令和7年分・令和8年分の所得税に定額減税はありません。いま確認する価値があるのは、令和6年分の申告で44欄「令和6年分特別税額控除」を正しく書けたか、専従者や配偶者の扱いを間違えていないか、引ききれなかった分の給付を受け取ったか、の3点です。この記事では、国税庁「令和6年分 確定申告の手引き」と「令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係)」、内閣官房「定額減税・各種給付の詳細」で、個人事業主に固有の部分だけを整理します。
まとめ|個人事業主の定額減税で押さえる数字と期限
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減税額(1人あたり) | 所得税3万円+住民税所得割1万円 |
| 本人の所得要件 | 合計所得金額1,805万円以下の居住者 |
| 人数に入る家族 | 同一生計配偶者・扶養親族(16歳未満も含む) |
| 人数に入らない家族 | 青色事業専従者・白色事業専従者 |
| 確定申告書の欄 | 令和6年分 第一表44欄 |
| 予定納税の減額申請期限 | 第1期 令和6年7月31日/第2期のみ 11月15日 |
| 引ききれない分 | 市区町村の調整給付・不足額給付 |
| 令和7年分以降の所得税 | 定額減税なし |
定額減税のために確認する主な記入箇所は、令和6年分確定申告書第一表44欄と第二表「配偶者や親族に関する事項」です。住民税は市区町村が計算するので申告書に定額減税の欄はありません。以下、人数の数え方、予定納税、44欄の計算、専従者・従業員、給付、2026年に残る手続きの順に見ていきます。
対象者と減税額|合計所得金額1,805万円以下の居住者と人数の数え方
本人・同一生計配偶者・扶養親族1人ごとに4万円
減税額は「本人+同一生計配偶者+扶養親族」の人数で決まります。内閣官房の例では、同一生計配偶者1人と扶養親族1人の3人世帯で、所得税9万円・住民税3万円の合計12万円です。家族は居住者に限られ、所得税は原則として令和6年12月31日、令和6年度住民税は原則として令和5年12月31日の現況で判定します。
同一生計配偶者と扶養親族は、どちらも合計所得金額48万円以下の人です。配偶者の所得が48万円を超えれば、配偶者特別控除の対象であっても定額減税の人数には入りません。その配偶者に所得税がかかるなら、配偶者自身が自分の申告や勤務先で3万円を受ける形になります。
扶養親族には年齢の制限がありません。扶養控除は16歳以上が対象ですが、定額減税は16歳未満の子も1人3万円です。確定申告書等作成コーナーでは、16歳未満の扶養親族も「扶養控除」の入力画面で入力するよう国税庁が案内しています。
合計所得金額は青色申告特別控除を引いた後の金額
1,805万円の判定に使う合計所得金額は、売上ではなく所得です。事業所得なら、収入金額から必要経費と青色申告特別控除を引いた後の金額になります。売上2,500万円・経費700万円・青色申告特別控除65万円なら、事業所得は1,735万円です。他の所得がなければ、合計所得金額1,805万円以下の要件を満たします。
住民税は判定の年が1年ずれます。令和6年度分の住民税は令和5年中の所得で課税されるため、令和6年に開業した人は、令和5年中の合計所得金額などで住民税の定額減税が決まり、所得税は給与所得なども含めた令和6年分の合計所得金額などで決まります。
青色事業専従者・白色事業専従者を人数に入れない理由
国税庁Q&A(予定納税・確定申告関係)の1-5-2は、青色事業専従者等は定額減税の対象となる同一生計配偶者等に含まれないと明記しています。青色事業専従者として給与を受ける人と白色事業専従者は、税法上の同一生計配偶者・扶養親族から除かれるためです。家族4人のうち妻が青色事業専従者なら、事業主の申告で数える人数は3人です。
専従者の分が消えるわけではありません。専従者本人に所得税がかかる場合は、本人が給与の源泉徴収や年末調整で3万円を受けます。専従者本人に所得税も住民税所得割もなく引けなかった場合は、後述の不足額給付Ⅱの対象になり得ました。
予定納税がある個人事業主|第1期の本人分3万円と減額申請の日程
前年の所得税が一定額以上で予定納税の通知が届く人は、確定申告を待たずに令和6年分の予定納税額から定額減税を受けました。本人分の3万円は、第1期分(7月)の予定納税額から自動で差し引かれています。配偶者や扶養親族の分は自動では引かれず、予定納税額の減額申請が必要でした。
| 区分 | 減額申請の期限 | 納期限(振替日) |
|---|---|---|
| 第1期分 | 令和6年7月31日(通常は7月15日) | 令和6年9月30日 |
| 第2期分のみ | 令和6年11月15日 | 令和6年12月2日 |
令和6年分に限り、減額申請の手続のために第1期の納期が9月30日まで延長されました。第1期分から引ききれなかった額は第2期分から引かれます。
減額申請を出さなかった人も損はしていません。確定申告で年間の所得税額と定額減税額を精算するため、家族分は申告時に差し引かれます。予定納税は前払いなので、減額申請をしなければ一時的に多く払い、申告で納める額が減るか還付になるだけです。令和8年分の予定納税の日程と減額申請の要件は「個人事業主の予定納税|令和8年分の納期限・15万円基準・減額申請と仕訳の実務」にまとめています。
確定申告での受け方|令和6年分第一表44欄「令和6年分特別税額控除」
41欄から47欄の計算順と、復興特別所得税まで減る仕組み
令和6年分の確定申告書第一表では、税額控除を引いた後の所得税(41欄)から災害減免額(42欄)を引いた43欄「再差引所得税額」から、44欄の定額減税を差し引きます(国税庁「令和6年分特別税額控除」の記入要領)。住宅ローン控除などの税額控除は41欄より前で引かれるので、定額減税は最後に近い位置で入ります。
| 欄 | 名称 | 計算 |
|---|---|---|
| 43 | 再差引所得税額 | 41 − 42 |
| 44 | 令和6年分特別税額控除 | 3万円 × 人数 |
| 45 | 再々差引所得税額(基準所得税額) | 43 − 44(赤字は0) |
| 46 | 復興特別所得税額 | 45 × 2.1%(1円未満切捨て) |
| 47 | 所得税及び復興特別所得税の額 | 45 + 46 |
定額減税を全額差し引ける場合は、控除後の45欄に2.1%を掛けて復興特別所得税を計算するため、両税を合わせた減税額は3万円×人数より大きくなります。43欄が182,000円で本人・配偶者・子2人の4人なら、44欄は120,000円、45欄は62,000円、46欄は1,302円で、47欄は63,302円です。定額減税がなければ185,822円だったので、差は122,520円になります。
同じ家族で妻が青色事業専従者の場合、人数は3人で44欄は90,000円です。45欄92,000円、46欄1,932円、47欄93,932円となり、4人で数えた場合より30,630円多く納めるのが正しい計算です。
43欄が44欄より小さいときの「定額減税実施済額」
43欄が50,000円しかない人が4人分の120,000円を書いても、45欄は0円で止まり、差額の70,000円は所得税からは戻りません。申告書の整理欄には「定額減税実施済額は、43と44のいずれか少ない方の金額」と注記があり、この例では50,000円が実際に引けた額です。引ききれなかった70,000円は、市区町村の調整給付で扱われます。
赤字などで所得税がゼロの場合、44欄を書いても所得税からは控除できません。給付の対象になるかは、住民税所得割の課税状況、扶養関係、低所得世帯向け給付の対象状況などによって異なります。
第二表の家族欄に「2」を書く記入漏れの注意
44欄の「人数」の□には、本人を含めた人数を書きます。あわせて第二表「配偶者や親族に関する事項」に、対象の配偶者・扶養親族の氏名、マイナンバー、続柄、生年月日を書き、「その他」欄の□に「2」を記入します。
国税庁Q&Aの2-2によると、配偶者控除や扶養控除なら年末調整で受けて内容に変更がない場合に氏名等の記載を省略できますが、定額減税の対象とする家族は年末調整で受けていても確定申告書への記載が必要です。副業で給与がある人が省略しやすい箇所です。確定申告書全体の流れは「個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円」、第一表の後半の欄は「申告納税額とは?確定申告書第一表50欄の計算順とe-Taxの「納付する金額」との違い」で確認できます。
専従者や従業員に給与を払う個人事業主|事業主として行った月次減税
専従者やアルバイトに給与を払っている個人事業主は、源泉徴収義務者として従業員の定額減税も担当しました。令和6年6月1日に在職し扶養控除等申告書を出している従業員について、6月1日以後最初に払う給与の源泉徴収税額から減税額を差し引く「月次減税」を行い、年末調整で年間の額を精算する流れです。
国税庁Q&A(概要・源泉所得税関係)の2-9は、青色事業専従者も主たる給与の支払者のもとで月次減税と年末調整の対象になると答えています。つまり事業主は、自分の申告では専従者を人数から外し、給与の支払者としては専従者本人の3万円を源泉徴収で差し引く、という二つの立場を持っていました。
これらの事務は令和6年中に終わっており、令和7年分以降の給与には関係しません。源泉徴収の基本的な仕組みは「個人事業主が押さえるべき源泉徴収の基本的な仕組みと課税対象の全体像」で扱っています。
引ききれなかった分の給付|調整給付と不足額給付Ⅰ・Ⅱの違い
定額減税の額が税額を上回る人には、市区町村が差額を給付しました。令和6年の当初調整給付は、早く届けるために令和5年の所得をもとにした推計で計算されています。令和6年分の所得税が確定した後、その推計とのずれを埋めたのが令和7年の不足額給付です。
| 区分 | 対象 | 金額 |
|---|---|---|
| 不足額給付Ⅰ | 実績で再計算した額が当初給付を上回った人 | 差額(1万円単位) |
| 不足額給付Ⅱ | 本人としても扶養親族等としても対象外だった人 | 原則4万円 |
個人事業主に関係が深いのは不足額給付Ⅰです。令和5年より令和6年の事業所得が減った人や、令和6年中に子が生まれた人は、当初給付に不足が生じる場合がありました。不足額給付Ⅱは、令和6年分所得税と令和6年度住民税所得割がともに定額減税前からゼロで、税制度上の扶養親族等にも該当せず、所定の低所得世帯向け給付の対象世帯の世帯主・世帯員にも該当しない人などが対象です。内閣官房は対象例として、青色事業専従者・白色事業専従者と、合計所得金額48万円超の人を挙げています。
専従者や転出入者は要件の確認が必要なため、原則として本人からの申請が前提でした。申請期限は全国一律ではなく、内閣官房は「各市区町村が定める申請期限」があると案内しています。受け取っていない心当たりがあれば、令和7年度の住民税を課税した市区町村に受付状況を問い合わせてください。
2026年時点で残る手続き|期限後申告・更正の請求と令和7年度住民税
令和6年分の未申告者|期限後申告での44欄の記入
所得税法2条1項37号は、確定申告書に期限後申告書を含むと定めています。令和6年分の申告をしていない個人事業主が今から期限後申告をする場合も、44欄で定額減税を差し引いて計算します。納める税金がある人には、原則として無申告加算税と延滞税がかかります。予定納税の払いすぎなどによる還付申告は、令和7年1月1日から令和11年12月31日まで提出できます。ただし、青色申告特別控除の55万円・65万円は法定申告期限内の提出が要件なので、期限後申告では受けられません。
44欄の書き漏れ・人数の誤りは更正の請求か修正申告
44欄の書き忘れや16歳未満の子の算入漏れで税額を多く申告していた場合は、更正の請求ができます。期限は原則として法定申告期限から5年以内ですが、申告義務のない人が提出した還付申告書については、原則として提出日から5年以内です。逆に専従者や所得48万円超の配偶者を人数に入れていた場合は過大控除なので、税務署から指摘される前に修正申告で直します。還付の手続と期限は「払いすぎた税金の還付|所得税・住民税・源泉所得税で違う手続と5年の期限」が詳しいです。
令和7年度住民税で引かれた配偶者分1万円
本人の合計所得金額が1,000万円を超えると、所得48万円以下の配偶者は配偶者控除の対象にならない「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」となり、令和6年度の住民税では定額減税の人数に入りませんでした。この配偶者分の1万円は、本人の令和6年中の合計所得金額が1,000万円超1,805万円以下で配偶者が国内に住んでいる場合に、令和7年度分の住民税から差し引かれています。給与所得者なども要件を満たせば対象となる扱いで、仕組みは「定額減税はいつまで?令和7年度住民税の配偶者分で終了、令和8年度はなし」で解説しています。
令和7年分・令和8年分の所得税|定額減税の対象外
国税庁は定額減税の対象を「令和6年分所得税」としており、令和7年分の確定申告書には44欄に相当する欄がありません。令和7年分以降の所得税を下げているのは、基礎控除の引上げなど別の改正です。所得税・住民税それぞれの終了時期は「定額減税はいつまで?令和7年度住民税の配偶者分で終了、令和8年度はなし」に時系列でまとめています。家族の人数ごとの控除で税額を下げたいなら、配偶者控除・扶養控除の要件を確認する方が実利があります。考え方は「扶養控除と配偶者控除の違い|令和8年分は年収136万円が共通ライン」を参照してください。
よくある質問
フリーランスも定額減税の対象でしたか?
対象でした。所得税は令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の居住者が対象で、本人と対象家族1人につき3万円が税額を限度に控除されます。令和6年度住民税は令和5年中の所得などで別に判定し、所得割の課税者に本人と対象家族1人につき1万円が税額を限度に控除されます。違うのは受け方で、給与天引きがないフリーランスは予定納税と令和6年分の確定申告で所得税から差し引き、住民税は普通徴収の第1期分(令和6年6月分)から差し引かれました。
赤字や所得税ゼロの個人事業主は定額減税を受けられませんか?
所得税がゼロなら所得税からは控除できませんが、住民税所得割から控除できる場合があります。調整給付を受けられるかは、両税の課税状況や扶養関係、低所得世帯向け給付の対象状況などによって異なります。令和6年の当初調整給付は令和5年の所得による推計なので、令和6年に赤字になった人は令和7年の不足額給付Ⅰで差額が出ている可能性があります。申請期限は市区町村ごとに決められており、受付を終えている市区町村もあるため、未受給なら役所に確認してください。
青色事業専従者の妻は定額減税を受けられませんか?
受けられますが、事業主の人数には入りません。妻に所得税がかかる場合は、給与の支払者である事業主のもとで月次減税と年末調整により3万円が引かれます。妻の令和6年分所得税と令和6年度住民税所得割がともに定額減税前からゼロで、扶養親族等としても定額減税の対象にならず、所定の低所得世帯向け給付の対象世帯にも該当しない場合などに、不足額給付Ⅱの対象となりました。専従者は本人からの申請が前提とされていた点に注意が必要です。
副業で給与がある個人事業主は二重に減税されますか?
二重にはなりません。給与から月次減税・年末調整で引かれた分は源泉徴収票の源泉徴収税額に反映済みで、確定申告では事業所得と給与所得を合わせた年間の所得税から44欄で3万円×人数を1回だけ引き、源泉徴収税額(50欄)と精算します。家族の氏名・マイナンバーは年末調整で受けていても第二表に書く必要があります。
定額減税は2026年(令和8年)もありますか?
ありません。定額減税は令和6年分所得税と令和6年度分住民税(一部の配偶者分は令和7年度分)に限った措置で、令和7年分・令和8年分の所得税には適用されません。2026年に手続きが残るのは、令和6年分の期限後申告、44欄の書き漏れに対する更正の請求、過大控除を直す修正申告、未受給の給付に関する市区町村への確認などです。