車を売ったときに確定申告が要るかどうかは、その車を何に使っていたかで決まります。通勤や買い物に使っていた自家用車なら所得税はかからず、申告もいりません。個人事業主が仕事に使っていた車は、売って利益が出れば事業所得ではなく総合課税の譲渡所得として申告します。
この記事では、国税庁タックスアンサー(No.3105・No.3152、令和8年4月1日現在法令等)と所得税法・同施行令・基本通達の原文をもとに、取得費(未償却残高)の出し方、50万円の特別控除と長期の2分の1、売った年の減価償却費の扱い、「譲渡所得の内訳書【総合譲渡用】」の書き方、仕訳と消費税までを計算例で整理します。令和8年中に売った車は、令和9年2月16日から3月15日までの令和8年分の確定申告で扱います。
まとめ:車を売ったときの確定申告の要否と計算の要点
先に結論を表にします。迷ったら、まず左端の「車の用途」で自分の行を探してください。右端は譲渡所得を申告書に載せる場面で、確定申告そのものが必要かどうかは他の所得も含めて判定します(会社員なら給与以外の所得が20万円以下で申告不要になる場合があります。国税庁No.1900)。
| 車の用途 | 所得税 | 売却損の通算 | 消費税 | 申告書に載せる場面 |
|---|---|---|---|---|
| 通勤・買い物用の自家用車 | 非課税 | 不可 | かからない | 載せない |
| 趣味・レジャー用の車 | 総合譲渡で課税 | 不可 | かからない | 年の譲渡益合計が50万円超 |
| 事業専用の車 | 総合譲渡で課税 | 可 | 課税事業者は課税売上 | 益合計が50万円超か損失を通算 |
| 事業と通勤・生活用の兼用車 | 事業割合分だけ課税 | 事業割合分は可 | 事業割合分が課税売上 | 事業割合分で同上 |
- 事業に使っていた車の売却益は、事業所得ではなく総合課税の譲渡所得です(所得税法33条)。決算書の売上や雑収入に入れません。
- 譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除50万円。取得費は購入代金ではなく、減価償却累計額を引いた未償却残高です。売却額の5%(概算取得費)の方が大きければ、そちらを使えます。
- 所有期間が5年以内なら短期で全額、5年超なら長期で特別控除後の2分の1だけが他の所得と合算されます。
- 売った年の1月から売却までの償却費は、必要経費にせず取得費を前年末の未償却残高のまま計算するのが原則で、必要経費に入れることも選べます(所得税基本通達49-54)。譲渡益が50万円の控除枠に収まって枠が余るときは、必要経費に入れる方が有利です。
- 計算は「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)【総合譲渡用】」で行い、結果を確定申告書の第一表・第二表に転記します。
- 帳簿では、帳簿価額との差額を事業主借(売却益)・事業主貸(売却損)で処理します。
確定申告が要るかを決める車の用途:通勤用・レジャー用・事業用
同じ「車を売った」でも、所得税の扱いは3つに分かれます。根拠はいずれも国税庁タックスアンサーNo.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」と所得税法の条文です。
通勤・買い物用の自家用車が非課税になる生活用動産の範囲
所得税法9条1項9号は、生活に通常必要な動産の譲渡による所得を非課税にしています。国税庁No.3105は、その例として「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服など」を挙げています。会社員が通勤用のマイカーを買取店に売った場合は、利益が出ても申告はいりません。
非課税から外れるのは、所得税法施行令25条が定める「貴石、貴金属、真珠」「書画、こっとう及び美術工芸品」などで1個または1組の価額が30万円を超えるものです。自動車はこの列挙に入っていないので、30万円という金額だけで課税・非課税は決まりません。
逆に、売って損が出ても他の所得から差し引けません。所得税法9条2項1号により、生活用動産を取得費等より安く売ったときの不足額は「ないものとみなす」とされています。
趣味・レジャー用の車の課税と損益通算の制限
週末のドライブやサーキット走行にしか使わない車は、「生活に通常必要な動産」とは言いにくくなります。所得税法施行令178条1項2号は「主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産」を「生活に通常必要でない資産」と定めており、こうした車を売った利益は総合課税の譲渡所得になります。東京地方税理士会のQ&Aも、趣味目的の車の売却は総合課税の譲渡所得で申告が必要だとしています。
この区分の車は、損が出ても他の所得と損益通算できません(所得税法69条2項)。課税だけされて損失は使えない、という非対称な扱いです。
事業用の車の所得区分と事業所得になる例外
個人事業主が事業に使っていた車は、生活用動産ではありません。売った利益は所得税法33条の譲渡所得で、土地・建物や株式以外の資産なので総合課税です(No.3105)。法人なら固定資産売却益として事業の損益に入れますが、個人では事業所得の外で計算する点が最初の分かれ目です。
ただし、次の車両は譲渡所得にならず、売却益は事業所得になります(所得税法施行令81条、No.3105)。
- 使用可能期間が1年未満のもの
- 取得価額が10万円未満で、購入年に全額を経費にしたもの
- 取得価額が20万円未満で、一括償却資産として3年で経費にしたもの
10万円未満と20万円未満の2つは、業務の性質上基本的に重要なものを除きます。中古の原付バイクを9万円で買って経費にした、といったケースが当てはまります。10万円・20万円・40万円の区分の違いは少額減価償却資産とは?40万円特例はいつからか、10万円・20万円との使い分けとパソコンの判定を解説で整理しています。
また、中古車の転売をくり返している人の売却益は、No.3105の「相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合」に当たり、事業所得または雑所得になります。
譲渡所得の計算式と取得費(未償却残高)の出し方
事業用の車の売却で税額を左右するのは、ほぼ取得費です。計算式そのものは単純でも、取得費に何を入れるかで結果が数十万円単位で変わります。
計算式と50万円の特別控除・長期の2分の1
国税庁No.3152は、総合課税の譲渡所得を次の式で示しています。
譲渡所得の金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除50万円
| 要素 | 車の売却で入れるもの |
|---|---|
| 譲渡価額 | 買取額・下取り額(未経過の自動車税相当額を含む) |
| 取得費 | 未償却残高(売却額の5%の方が大きければ5%) |
| 譲渡費用 | 売るために直接払った手数料・陸送費など |
| 特別控除 | 短期と長期の譲渡益の合計に対して年50万円まで |
短期譲渡所得は全額が、長期譲渡所得は2分の1が、事業所得や給与所得と合算されて累進税率で課税されます(No.3152)。合算後の税額の出し方は総合課税とは?対象の8所得と税額の計算手順、配当で選ぶ分岐点【令和8年分】で手順を追えます。
取得費は取得価額から減価償却累計額を引いた未償却残高
No.3152の注1は、取得費について「使用したり、期間が経過することによって減価する資産にあっては、減価償却費相当額を控除した金額」としています。事業用の車では、購入代金と諸費用の合計から、取得から売却までの毎年の償却費の合計を引いた額が取得費です(所得税法38条2項)。確定申告書等作成コーナーの解説は、毎年の償却費を必要経費にしていない部分があっても「毎年の減価償却費の合計額とすることに変わりはありません」としています。償却を計上し忘れた年があっても、その分を引かずに済むわけではありません。
償却費は法定耐用年数で変わります。減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一では、車両の耐用年数は次のとおりです。
| 区分 | 車種 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 一般用 | 軽自動車(総排気量0.66L以下) | 4年 |
| 一般用 | 普通乗用車など(その他のもの) | 6年 |
| 一般用 | 貨物自動車(ダンプ式以外) | 5年 |
| 一般用 | 貨物自動車(ダンプ式) | 4年 |
| 一般用 | 二輪・三輪自動車 | 3年 |
| 運送事業用 | 小型車(貨物2t以下・その他2L以下) | 3年 |
| 運送事業用 | 大型乗用車(3L以上) | 5年 |
| 運送事業用 | その他の自動車 | 4年 |
個人の減価償却は届出をしなければ定額法で、償却率は6年が0.167、4年が0.250です(同省令別表第八)。事業に使い始めた年は、使い始めた月からの月割りで計算します。償却率表の引き方は減価償却の計算方法とは?定額法・定率法の計算式と償却率表、期中取得とExcelの計算式を設例で解説にまとめています。軽貨物で配送をしている人は運送事業用の3年になるので、軽貨物ドライバーの確定申告|令和8年分の申告ラインと経費・車両の耐用年数・インボイスもあわせて確認してください。
中古車の耐用年数の簡便法と使える条件
中古で買った車は、今後の使用可能期間を見積もるのが難しい場合に、簡便法の年数で償却できます(同省令3条1項2号)。事業に使うための改良費(資本的支出)が取得価額の50%を超える場合は簡便法を使えません。全部経過した車は法定耐用年数×20%、一部経過した車は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で、1年未満の端数は切り捨て、2年未満なら2年です(国税庁No.5404)。経過年数がちょうどの年数の場合、次の表になります。
| 経過年数 | 普通乗用車(法定6年) | 軽自動車(法定4年) |
|---|---|---|
| 1年落ち | 5年 | 3年 |
| 2年落ち | 4年 | 2年 |
| 3年落ち | 3年 | 2年 |
| 4年落ち | 2年 | 2年 |
| 5年落ち以上 | 2年 | 2年 |
経過年数は月数で計算します。たとえば普通乗用車の3年10か月落ち(46か月)は、(72−46)+46×0.2=35.2か月で2年11か月となり、端数を切り捨てて2年です。耐用年数が短いほど償却が早く進み、売るときの取得費は小さくなります。簡便法は事業に使い始めた年にしか選べない点は減価償却の耐用年数とは?省令別表の引き方と主な資産の年数、中古資産と改正時の台帳管理を解説で詳しく扱っています。
未償却残高と概算取得費5%の比較
所得税基本通達38-16は、土地建物等以外の資産について、譲渡の収入金額の100分の5を取得費として計算しているときは「これを認めて差し支えない」としています。取得価額が分からない場合に限る書き方ではないので、実額の取得費(未償却残高)と売却額の5%の大きい方を使えます。
償却の途中で売る車は、未償却残高の方が大きいのが普通です。逆に償却が終わって未償却残高が1円の車は、5%の方が大きくなります。購入時の契約書をなくした場合も、5%で計算できます。
売却年の減価償却費の扱いと2つの選択肢
年の途中で売った車の、その年1月から売却日までの償却費をどう扱うかで、税額が変わることがあります。
所得税基本通達49-54の原則と選択
所得税法49条の償却費は、その年の12月31日に持っている資産について計算する仕組みです。年の途中で売った車にはこの規定がそのままは当てはまらないため、売った年の償却費は必要経費にならず、取得費からも差し引かない(取得費は前年末の未償却残高のまま)のが原則です。
そのうえで所得税基本通達49-54は、譲渡の時までの償却費を「譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に含めないで、その年分の…事業所得の金額…の計算上必要経費に算入しても差し支えない」としています。
- 原則:売った年の償却費は必要経費にせず、取得費は前年末の未償却残高のまま
- 選択:売った年の償却費を月割りで必要経費にし、その分だけ取得費を小さくする
計算例:50万円控除の枠が余るときに有利な必要経費算入
2023年1月に300万円で買った普通乗用車を事業専用に使い、2026年6月に180万円で売った例です(譲渡費用3万円、定額法・償却率0.167、年50万1,000円)。2025年末の未償却残高は149万7,000円、2026年1〜6月の償却費は25万500円です。所有期間は5年以内なので短期です。
| 項目 | 原則(必要経費にしない) | 選択(必要経費にする) |
|---|---|---|
| 事業所得への影響 | 0円 | −250,500円 |
| 取得費 | 1,497,000円 | 1,246,500円 |
| 譲渡益(180万円−取得費−3万円) | 273,000円 | 523,500円 |
| 特別控除後の譲渡所得 | 0円 | 23,500円 |
| 総所得金額への影響 | 0円 | −227,000円 |
選択の方が所得が22万7,000円少なくなります。原則では譲渡益27万3,000円が50万円の控除枠に収まって使い切れずに残るのに対し、選択では償却費が事業所得をまるごと減らし、譲渡側の増加分は控除枠でほぼ吸収されるためです。長期譲渡所得なら2分の1課税も効くので、差はさらに開きます。
一方、同じ年に他の譲渡益や一時所得がなく、譲渡損失を全額ほかの所得と通算できる場合は、どちらを選んでも総所得金額は同じです。同じ車を120万円で売ったときは、原則で譲渡損失32万7,000円、選択で事業所得−25万500円と譲渡損失7万6,500円になり、合計はどちらも−32万7,000円です。
会計ソフトで売却月までの償却費を計上してから売却処理をした場合は、選択の方法をとったことになります。その場合、内訳書の「償却費相当額」には売却月までの償却費を含めた累計を書きます。
短期・長期の判定と50万円控除を使う順番
総合課税の譲渡所得は、所有期間が5年以内か5年超かで課税される額が倍半分に変わります。
取得日と売却日による所有期間5年の判定
No.3152は、取得したときから売ったときまでの所有期間が5年を超えれば長期、5年以内なら短期としています。土地・建物の分離課税のように売った年の1月1日で判定するのではなく、実際の取得日から売却日までで数えます。
売却日は、車を引き渡した日が原則で、売買契約の効力が生じた日を選ぶこともできます(所得税基本通達36-12)。取得日も同じ考え方で、納車の日が基準になります。中古で買った車は自分が買った日から数え、新車登録の日(初度登録年月)からは数えません。
境目で売るなら日付を確認してください。2021年7月1日に納車された車は、2026年7月1日以前に引き渡すと短期、2026年7月2日以後なら長期になります。11月に契約して翌年1月に引き渡すと、売った年そのものも翌年分に移ります。
同じ年に複数台売ったときの50万円の配分順序
No.3152の注3は、その年に短期と長期の譲渡益があるときは「先に短期の譲渡益から特別控除の50万円を差し引きます」としています。短期の譲渡益30万円と長期の譲渡益60万円があれば、短期から30万円、残りの20万円を長期から差し引き、長期は(60万円−20万円)×1/2=20万円が合算されます。
2台目の車だけでなく、同じ年に売ったゴルフ会員権や30万円を超える貴金属などの譲渡益も同じ50万円の枠を分け合います。
減価償却が終わった車を売ったときの計算例
耐用年数を過ぎて償却が終わった車は、帳簿価額が備忘価額の1円になっています。取得費がほぼゼロなので、売却額のほとんどが譲渡益です。
2019年5月に150万円で買った軽自動車(法定4年)を営業に使い、2026年9月に90万円で売った例で計算します。償却は2023年に終わり、未償却残高は1円です。所有期間は5年を超えるので長期です。
| 計算の段階 | 金額 |
|---|---|
| 譲渡益(90万円−取得費1円−譲渡費用0円) | 899,999円 |
| 特別控除後(−50万円) | 399,999円 |
| 総所得金額に入る額(長期のため×1/2) | 199,999円 |
この車は概算取得費を使う方が有利です。取得費を90万円×5%=4万5,000円とすると、(90万円−4万5,000円−50万円)×1/2=17万7,500円で、実額の1円で計算するより2万2,499円少なくなります。同じ車を5年以内に売っていれば、特別控除後の全額が合算されていました。償却が終わった車でも、売却額が50万円以下で、同じ年に他の総合課税の譲渡益がなければ、譲渡所得はゼロです。
事業と私用の兼用車・自家用から転用した車の取得費
家事按分をしながら、事業と通勤・買い物などの生活の両方に使っていた車は、事業に使っていた部分だけが課税されます。私用部分が趣味・レジャー目的なら、その部分も非課税にはなりません。
生活用途との兼用車の事業割合による按分計算
事業割合70%で使っていた車を80万円で売った例です(帳簿上の未償却残高20万円、譲渡費用2万円)。譲渡価額・取得費・譲渡費用のそれぞれに70%を掛けます。
| 項目 | 全体 | 事業分(70%) |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | 800,000円 | 560,000円 |
| 取得費(未償却残高) | 200,000円 | 140,000円 |
| 譲渡費用 | 20,000円 | 14,000円 |
| 譲渡益 | 580,000円 | 406,000円 |
事業分の譲渡益40万6,000円は50万円の控除内なので、譲渡所得はゼロです。私用の30%は、通勤・買い物用であれば生活用動産の譲渡として非課税です。FUJITA税理士法人のコラムも、事業割合40%の下取りの例で同じ按分をしています。
按分に使う割合は、毎年の減価償却で家事按分に使ってきた割合と同じにします。売るときだけ割合を下げると、過去の経費計上と矛盾します。走行距離の記録(事業での走行km÷総走行km)を運行日誌やアプリで残しておけば、税務調査で割合の根拠を示せます。
自家用から事業用に転用した車の非業務期間の減価計算
開業前から乗っていた自家用車を事業に使い始めた場合、取得費の計算で、私用だった期間の減価も差し引きます(所得税法38条2項2号)。その期間の減価は、所得税法施行令85条により、法定耐用年数を1.5倍した年数(1年未満切り捨て)で旧定額法に準じて計算します。
2021年4月に240万円で買った普通乗用車を、2023年4月の開業と同時に事業専用にした例では、6年×1.5=9年の旧定額法償却率0.111(同省令別表第七)を使い、240万円×0.9×0.111×2年=47万9,520円が私用期間の減価です。転用時点の未償却残高は192万480円です。転用後の定額法の償却費は、この残高ではなく当初の取得価額240万円に償却率を掛けて計算します(国税庁の計算例も取得価額を基礎にしています)。売るときの取得費は「取得価額−私用期間の減価−事業用期間の償却費の累計」です。
私用期間の減価は経費になりませんが、取得費からは差し引きます。これを忘れると取得費が大きくなりすぎ、譲渡益を過少に申告することになります。
譲渡所得の内訳書【総合譲渡用】の書き方と記載例
車の譲渡所得は、国税庁の申告書添付書類一覧にある「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)【総合譲渡用】」で計算します。土地・建物用の「確定申告書付表兼計算明細書」とは別の様式で、分離課税用の第三表も使いません。
内訳書の4つの欄に書く内容
令和7年分の様式(全2ページ)の1ページ目は1〜4の欄に分かれています。令和8年分の申告では、国税庁が公表する令和8年分の様式を使ってください。先ほどの例(2023年1月に300万円で取得、2026年6月30日に180万円で売却、原則の方法)で書くと次のようになります。
| 欄 | 項目 | 記載例 |
|---|---|---|
| 1 譲渡した資産 | 資産の名称・種類 | 普通乗用車(車両名)・車両 |
| 1 譲渡した資産 | 利用状況 | 事業用 |
| 1 譲渡した資産 | 譲渡先・売買契約の日 | 買取業者の住所・名称・2026年6月20日 |
| 1 譲渡した資産 | 引き渡した日・登録等の日 | 2026年6月30日・名義変更の日 |
| 1 譲渡した資産 | ①譲渡価額 | 1,800,000円 |
| 2 購入代金など | 購入先・購入年月日・購入価額 | 販売店・2023年1月・3,000,000円 |
| 2 購入代金など | ②取得費(購入価額−償却費相当額) | 3,000,000円−1,503,000円=1,497,000円 |
| 3 譲渡費用 | ③支払先・支払金額 | 手数料の支払先・30,000円 |
| 4 計算(短期の行) | A収入金額・B必要経費(②+③) | 1,800,000円・1,527,000円 |
| 4 計算(短期の行) | C差引金額・D特別控除額・E譲渡所得金額 | 273,000円・273,000円・0円 |
兼用車の場合は、①②③に事業割合を掛けた後の金額を書き、利用状況の欄に「事業用70%」のように割合を添えると、税務署が計算を追えます。保有5年超なら4の「長期」の行に書きます。
確定申告書への転記とe-Taxでの入力
内訳書4のE欄(譲渡所得金額)を、確定申告書第一表の収入金額等「総合譲渡」の短期(ケ)・長期(コ)欄に書きます。ほかの所得と違い、売却代金そのものではなく特別控除後の金額を書く点に注意してください。所得金額等の「総合譲渡・一時」(11)欄には、一時所得がなければ「短期の金額+長期の金額×1/2」を書きます。第二表の「総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項」には、所得の種類を「譲渡(短期)」「譲渡(長期)」として収入金額と必要経費等を記入します(国税庁「令和7年分 確定申告の手引き」)。事業所得や総合課税の譲渡所得に赤字があるときは、この計算欄ではなく「損益の通算の計算書」で計算します。
国税庁の確定申告書等作成コーナーで総合課税の譲渡所得の画面に内訳書と同じ項目を入力すれば、内訳書と申告書の該当欄は自動で作られます(No.3152の関連リンク)。売却額が取得費等を下回って譲渡損失が出たときは、その損失を他の所得と通算するために入力が必要です。特別控除で譲渡所得がちょうどゼロになるだけなら、税額は変わりません。
手元に残しておく書類は、購入時と売却時の売買契約書(または買取明細)、固定資産台帳の減価償却の明細、譲渡費用の領収書、車検証の写しです。取得価額と償却累計額の証拠がそろっていれば、実額と概算取得費5%の有利な方を選べます。
車を売ったときの仕訳:事業主借・事業主貸と下取り・リサイクル預託金
帳簿の処理は、譲渡所得の計算とは別の作業です。事業所得の帳簿から車を外し、差額は事業主勘定で処理します。仕訳の型は法人と同じ部分も多いので、減価償却累計額を使う間接法の仕訳は減価償却の仕訳とは?期末・月次・売却・除却・買換えの仕訳例と勘定科目、会計システムへの自動仕訳連携も参照してください。
売却益の事業主借と売却損の事業主貸
帳簿価額50万円の車を売った例です。上2行は税込経理、3行目は課税事業者が税抜経理で、税抜80万円(税込88万円)で売った場合です。
| ケース | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 80万円で売却 | 普通預金 800,000 | 車両運搬具 500,000/事業主借 300,000 |
| 30万円で売却 | 普通預金 300,000/事業主貸 200,000 | 車両運搬具 500,000 |
| 税抜80万円で売却(税抜経理) | 普通預金 880,000 | 車両運搬具 500,000/仮受消費税 80,000/事業主借 300,000 |
売却益を「固定資産売却益」や「雑収入」にすると、決算書の所得に入り、内訳書の譲渡所得と二重に申告することになります。差額を事業主勘定に逃がすことで、事業所得には影響させず、譲渡所得は内訳書だけで計算する形になります。社用車を何台も持つ規模になり、固定資産台帳と仕訳の連携を自社の仕組みで整えたい場合は、会計・経理システム開発で売却・除却の自動仕訳まで設計する方法もあります。
下取りでの売却と購入の両建て計上
ディーラーで新車を買い、古い車を下取りに出したときも、差額だけを記帳するのではなく、旧車の売却と新車の購入を別々に計上します。消費税法基本通達10-1-17は、売る側(ディーラー)が新車の売上から下取り額を差し引くことはできず、下取りは課税仕入れになるとしています。下取りに出す側から見れば、下取り額は旧車の譲渡価額(課税事業者なら課税売上)、新車代金は新しい車両の取得価額(課税仕入れ)です。
新車300万円を買い、帳簿価額50万円の旧車を80万円で下取りに出して差額220万円を払った場合は、次のように両建てで仕訳し、内訳書の①には80万円を書きます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 車両運搬具(新車) 3,000,000 | 普通預金 2,200,000 |
| (なし) | 車両運搬具(旧車) 500,000 |
| (なし) | 事業主借 300,000 |
リサイクル預託金と未経過の自動車税相当額の区分
買取明細には、車両本体価格とは別に「リサイクル預託金相当額」や「自動車税(未経過分)相当額」が書かれていることがあります。国税庁の質疑応答事例は、この2つを次のように扱っています。
- リサイクル預託金相当額:売主から買主への預託金の譲渡で、金銭債権の譲渡として消費税は非課税
- 未経過の自動車税相当額:自動車税そのものではなく「中古車の購入代金の一部」で、区分表示しても譲渡の対価に含まれる(消費税法基本通達10-1-6)
帳簿では、購入時に資産計上したリサイクル預託金を売却時に貸方で消します。車の譲渡価額には自動車税相当額を含め、リサイクル預託金相当額は含めずに内訳書の①を書きます。
個人事業主が車を売ったときの消費税
所得税とは別に、消費税の課税事業者は車の売却額を課税売上に入れます。ここでは譲渡所得の金額ではなく、売却額そのものが基準になります。
課税事業者の事業用部分の売却額と課税売上
事業に使っていた車の売却は、事業者が事業として行う資産の譲渡なので課税取引です。兼用車について消費税法基本通達10-1-19は、譲渡の金額を「事業としての部分と家事使用に係る部分とに合理的に区分」し、事業部分だけを対価にするとしています。先ほどの事業割合70%・売却額80万円(税込)の例なら、課税売上は56万円、含まれる消費税は56万円×10/110=5万909円です。
簡易課税を選んでいる場合、自分で使っていた固定資産の譲渡は第四種事業(みなし仕入率60%)です(消費税法基本通達13-2-9)。本業が第五種のサービス業でも、車の売却分だけは第四種で計算する点に注意してください。
免税事業者の車売却額と2年後の納税義務の判定
免税事業者は車を売っても消費税を納めませんが、売却額は基準期間の課税売上高に入ります。消費税法基本通達1-4-5により、免税事業者だった年の課税売上高は、受け取った金額の全額(税抜きにしない額)で数えます。本業の売上が950万円の年に事業用の車を110万円で売ると、その年の課税売上高は1,060万円になり、2年後は課税事業者になります。
売上が1,000万円の境目に近い年に車を売るなら、売る時期を年明けにずらすだけで判定が変わることがあります。免税の判定の流れは個人事業主の消費税免除はいつまで?免税事業者の要件と令和8年度改正、1,000万円を超えた後の税額は個人事業主が売上1000万円を超えたら消費税はいくら?納税開始は2年後・2割特例は令和8年分までで試算できます。
売却損が出たときの損益通算と通算できない車
帳簿価額より安くしか売れなかったときは譲渡損失になります。事業用の車なら、この損失を他の所得から差し引けます。
事業用の車の譲渡損失と事業所得・給与所得との損益通算
所得税法69条1項は、譲渡所得の計算上生じた損失を他の各種所得から控除できるとしています。まず同じ年の総合課税の譲渡益と相殺し、残った損失を事業所得や給与所得などと通算します。前の例で車を120万円で売った場合の譲渡損失32万7,000円は、事業所得から差し引けます。
この損失を通算するには、内訳書を作って申告書に載せる必要があります。譲渡所得がマイナスだからと申告を省くと、通算の機会を失います。青色申告者なら、通算しきれずに残った純損失を翌年以後3年間繰り越せます(所得税法70条1項)。通算の順序と第四表の扱いは損益通算とは?対象は4所得だけ|通算の順序と第四表の書き方をわかりやすく解説で解説しています。
生活用・レジャー用の車の売却損と通算の制限
通勤用の自家用車の損失は、所得税法9条2項1号で「ないものとみなす」とされます。趣味・レジャー用の車の損失は、69条2項により他の生活に通常必要でない資産の所得からしか差し引けず、引ききれない分は「生じなかつたものとみなす」とされます。兼用車で通算できるのは、事業割合に当たる部分の損失だけです。
よくある質問
車を売ったら確定申告は必要ですか?
用途で決まります。通勤や買い物に使っていた自家用車は生活用動産で非課税なので、申告書に載せるものはありません。事業用や趣味・レジャー用の車は総合課税の譲渡所得になり、その年の譲渡益の合計が50万円を超えた分が所得に加わります。確定申告が必要かどうかは他の所得と合わせて判定し、会社員なら給与以外の所得が20万円以下で申告不要になる場合があります。事業用で損が出た場合は、申告すれば他の所得と通算できます。
減価償却が終わった車を売ったら税金はかかりますか?
未償却残高が1円なので、売却額のほとんどが譲渡益になります。取得費は売却額の5%(概算取得費)を使えるので、実額より有利です。その年に売った総合課税の資産の譲渡益の合計が50万円以下なら、特別控除で課税はありません。50万円を超えた分は、所有期間が5年超なら2分の1だけが他の所得と合算されます。90万円で売った長期の例では、概算取得費を使うと合算されるのは17万7,500円です。
個人事業主が車を売った利益は事業所得ですか?
事業所得ではなく総合課税の譲渡所得です(所得税法33条)。決算書の売上や雑収入に入れず、帳簿では事業主借で処理して、譲渡所得の内訳書【総合譲渡用】で計算します。取得価額10万円未満で全額を経費にした車両などは例外で、事業所得になります。
車の下取りの仕訳と勘定科目はどうなりますか?
旧車の売却と新車の購入を分けて記帳します。下取り額と旧車の帳簿価額の差額は事業主借(益)か事業主貸(損)、新車は車両運搬具で取得価額の全額を計上します。課税事業者なら下取り額は課税売上、新車代金は課税仕入れです。
車を売ったときに消費税はかかりますか?
消費税の課税事業者が、事業に使っていた車を売った場合にかかります。兼用車は事業割合の部分の売却額が課税売上です。通勤用の自家用車を売るのは事業としての譲渡ではないのでかかりません。免税事業者は納税しませんが、事業用部分の売却額は2年後の納税義務を判定する基準期間の課税売上高に入ります。