土地は減価償却できません。国税庁は「土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません」と説明しており、条文上の根拠は法人税法施行令13条と所得税法施行令6条の柱書にある括弧書きです。この記事では、その理由を条文までたどったうえで、土地以外に償却できない資産、建物と一緒に買ったときの按分、経費にできる土地の費用、売却時の扱いまでを順に確認します。
まとめ
- 土地は使っても減らず、時の経過で価値が減少しないため減価償却資産に当たりません。法人税法2条23号・所得税法2条1項19号の列挙に土地は無く、施行令の柱書も「時の経過によりその価値の減少しないもの」を除いています。
- 地価が下がっても償却にはならず、会計上の減損損失も法人税法33条1項により原則として損金になりません。
- 償却できるのは鉱業権・水利権・貯留権などの権利で、その下の土地ではありません。借地権・地上権・地役権も原則として減価償却できません。更新料の支払時には、従前の帳簿価額の一部を費用化する規定があります。
- 土地建物の一括購入で、買主の按分方法を定めた条文はありません。消費税額の逆算か固定資産税評価額の比率で合理的に分け、根拠資料を保存します。
- 按分で変わるのは費用になる時期です。建物に多く配分すれば保有中の減価償却費が増え、土地に配分した分は売却するまで取得費として残ります。
土地を減価償却しない理由は「時の経過で価値が減らない」こと
減価償却は、何年も使う資産の購入代金を、使える期間に分けて少しずつ費用にする手続です。建物や機械は使うほど古くなり価値が落ちるので、その減り方に合わせて費用を配分します。土地は何十年使っても摩耗せず、使える期間という考え方自体が成り立ちません。この理屈が、法律・政令・国税庁の説明の3か所に書かれています。
国税庁No.2100の説明と減価償却の仕組み
国税庁のタックスアンサーNo.2100 減価償却のあらましは、建物や機械装置などを「一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます」と説明し、続けて「土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません」と書いています。減価償却資産の取得に要した金額は「その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきもの」で、その期間として法定耐用年数が財務省令の別表に定められています。土地には耐用年数の定めがありません。
法人税法2条23号・所得税法2条1項19号と減価償却資産の範囲
法人税法2条23号は減価償却資産を「建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう」と定めます。所得税法2条1項19号も同じ列挙を使い、その前に「不動産所得若しくは雑所得の基因となり、又は不動産所得、事業所得、山林所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供される」という限定を置いています。
両法律の例示には土地がありませんが、具体的な対象範囲は政令に委任されています。土地が対象外であることは、施行令の列挙と除外規定まで確認して判断します。借地権や地役権の扱いを考えるときも、この「列挙に無いから対象外」という読み方が基準になります。
施行令の柱書にある「時の経過によりその価値の減少しないもの」
法人税法施行令13条の柱書は「棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする」と定めます。所得税法施行令6条の柱書は「(時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)」だけで、「事業の用に供していないもの」がありません。所得税では法律側の2条1項19号が業務の用に供されることを定義に組み込んでいるためで、未使用の資産が対象外になる結論は同じです。
土地に当てはまるのは「時の経過によりその価値の減少しないもの」です。仮に土地が列挙に入っていても、この括弧書きで落ちます。時の経過による価値の減少は美術品の判定にも使います。稼働休止資産については、必要な維持補修を行い、いつでも稼働できる状態にあるかを別に確認します。
地価下落時の減損判定と税務上の評価損
実勢の地価は下がることがあります。会計上は減価償却ではなく、減損の兆候と損失認識の要否を検討します。減損処理を行った場合でも、税務では法人税法33条1項が「内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない」と定めます。例外の同条2項は「災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合」に、損金経理で帳簿価額を減額したときに限られ、相場の下落だけでは届きません。
通常、土地の税務上の帳簿価額は減価償却によって減りません。売却時には、その帳簿価額と売却価額との差額を譲渡損益に反映します。売却で損が出たときの扱いは不動産売却で損失が出たときの確定申告|損益通算できる条件と2つの特例、法人の譲渡損益は譲渡損益とは?法人の土地・株式売却の計算と別表の書き方で扱っています。
土地以外に減価償却できない資産の一覧
減価償却できない資産は土地だけではありません。理由は「列挙に無い」「時の経過で価値が減らない」「事業の用に供していない」のどれかに分かれ、理由が分かれば例外も読めます。
| 資産 | 償却できない理由 | 例外・根拠 |
|---|---|---|
| 土地 | 列挙に無い・価値が減らない | なし(法令13条・所令6条) |
| 借地権・地上権・地役権 | 無形固定資産の列挙に無い | 更新料の一部(法令139条・所令182条)、建物代価のおおむね10%以下の借地権(法基通7-3-8) |
| 電話加入権 | 列挙項目の定義から除外 | なし(法令13条8号ナ) |
| 古美術品・1点100万円以上の美術品 | 価値が減らない | 古美術品等を除き、減価が明らかなものは償却可(法基通7-1-1) |
| 建設中の資産(建設仮勘定) | 事業の用に供していない | 完成して使っている部分は償却可(法基通7-1-4) |
| 未使用・遊休の資産 | 事業の用に供していない | 維持補修中の稼働休止資産は償却可(法基通7-1-3) |
償却できるのは鉱業権・水利権・貯留権などの権利
「鉱業権が設定された土地は償却できる」「埋立地は沈下するので償却できる」という説明を見かけますが、誤りです。法人税法施行令13条8号は無形固定資産として、イに「鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利(ロに掲げる無形固定資産を除く。)を含む。)」、ハに「漁業権(入漁権を含む。)」、ホに「水利権」を挙げています。採石場や取水地で償却されているのはこれらの権利の取得価額で、その下の土地の帳簿価額は1円も動きません。
ロの「貯留権(二酸化炭素の貯留事業に関する法律(令和六年法律第三十八号)第二条第八項(定義)に規定する試掘権を含む。)」は、従来ロに掲げられていた試掘権の規定を、2026年5月22日施行の改正で貯留権を含む規定へ拡張したものです。試掘の段階の権利に加えて、二酸化炭素を地下に貯める事業そのものの権利も、鉱業権と並ぶ償却可能な無形固定資産として列挙されたことになります。
美術品は1点100万円が分岐点
法人税基本通達7-1-1は、「時の経過によりその価値の減少しない資産」と扱う美術品等として、古美術品・古文書・出土品・遺物のように歴史的価値または希少価値があり代替性のないものと、それ以外で「取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く。)」を挙げます。1点100万円未満の美術品は原則として減価償却資産です。この基準は平成26年課法2-12の改正で入り、平成27年1月1日以後に取得したものに適用されます。改正前は、年鑑等への作者の登載や、取得価額1点20万円以上(絵画は号当たり2万円以上)などで判定していました。
建設中の資産と稼働を休止している資産
法人税基本通達7-1-4は「建設中の建物、機械及び装置等の資産は減価償却資産に該当しないのであるが、建設仮勘定として表示されている場合であっても、その完成した部分が事業の用に供されているときは、その部分は減価償却資産に該当する」と定めます。工期の長い建物は、完成して使い始めた棟や階から償却を始められるということです。
逆に、いったん使い始めた資産を止めているときは7-1-3が基準になります。「稼働を休止している資産であっても、その休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるもの」は減価償却資産のままです。維持補修をやめて放置した遊休資産は「事業の用に供していないもの」に寄っていくので、休止中の設備は補修記録を残しておくと説明しやすくなります。
電気通信施設利用権の定義と電話加入権の除外
法人税法施行令13条8号ナの電気通信施設利用権は、定義の末尾が「(電話加入権及びこれに準ずる権利を除く。)」で閉じられています。列挙されているのに償却できないのではなく、列挙項目の定義から抜かれているので、土地と同じく最初から対象外です。
土地と建物を一括購入したときの按分方法
建物付きの土地を買うと、総額を土地と建物に分ける必要があります。建物部分だけが減価償却の基礎になるため、按分の仕方で毎年の経費が変わります。
買主の取得価額の区分と売主の消費税計算の区別
買主の取得価額を定める法人税法施行令54条1項1号にあるのは「当該資産の購入の代価」と付随費用という定義だけで、一括取得した土地と建物の分け方は書かれていません。基準は合理的に区分できるかどうかです。
計算方法が書かれているのは消費税法施行令45条3項で、対価が「資産ごとに合理的に区分されていないとき」は譲渡時の価額の比で分けると定めています。ただしこれは売主が納める消費税の課税標準の規定で、買主の取得価額を決める条文ではありません。「法令が時価按分を義務づけている」と説明すると、根拠を問われたときに答えに詰まります。消費税法基本通達10-1-5の注記が「それぞれの譲渡に係る通常の取引価額を基礎として区分する」としている点から、税法が合理性の物差しに時価を置いていることは読み取れます。買主が採る方法は、その時価をどう近似するかの選択です。
消費税額から建物価格を逆算する方法
売主が課税事業者なら、契約書の消費税額から建物価格を割り戻せます。土地の譲渡は消費税法6条1項と別表第二第一号で非課税なので、消費税は建物部分にしかかからないからです。消費税額300万円・税率10%なら、建物は税抜3,000万円です。
別表第二第一号の括弧書きが委任する消費税法施行令8条により、「土地の貸付けに係る期間が一月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴つて土地が使用される場合」は課税です。土地に関する支払を一律に非課税とすると誤ります。売主が個人で消費税が課されない取引や、契約書に消費税額の記載がない場合は逆算法を使えません。
固定資産税評価額の比率で按分する方法と数値例
固定資産税評価額は市町村が算定する評価額で、地方税法341条5号が価格を「適正な時価をいう」と定義しています。契約書に合理的な内訳がない場合の方法の一つとして、固定資産評価証明書の土地と家屋の評価額の比で区分します。以下の例では消費税と付随費用を考慮しません。
| 項目 | 土地 | 建物 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 固定資産税評価額 | 1,500万円 | 1,000万円 | 2,500万円 |
| 構成比 | 60% | 40% | 100% |
| 按分後の取得価額 | 3,000万円 | 2,000万円 | 5,000万円 |
この建物2,000万円が減価償却の基礎です。評価替えは地方税法341条6号の基準年度ごと、つまり3年に一度なので、証明書の年度を確認してから使ってください。建物の耐用年数と償却費の計算は不動産の減価償却|建物の耐用年数と計算例、中古の簡便法と売却時の取得費で扱っています。
建物の比率を膨らませたときの加算税
契約書に内訳があれば原則としてその金額が取得価額ですが、実勢から著しく離れた内訳は時価で引き直されます。建物価格を膨らませて減価償却費を増やす処理が典型です。更正を受けると過少申告加算税が10%(国税通則法65条1項)、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分には5%が加わります(同条2項)。実態と異なる内訳を意図的に作って申告したと認定されれば、重加算税35%(同法68条1項)の対象になり得ます。固定資産評価証明書や、内訳と消費税額が書かれた契約書を按分の根拠として保存し、固定資産台帳と紐づけておくと調査で説明できます。台帳と仕訳の連携まで仕組みにしたい場合は会計・経理システムの開発で相談できます。
土地と建物・構築物の境界と造成費
土地に加えた工事は、土地に含めれば永久に償却できず、構築物や建物として区分できれば償却できます。どこで線を引くかは、所得税・法人税と固定資産税でそれぞれ決まっています。
造成費の土地算入と防壁・石垣積みの構築物への区分
法人税基本通達7-3-4は「埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得価額に算入する」としたうえで、防壁や石垣積みでも「その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるもの」は構築物の取得価額と「することができる」と定め、上水道・下水道の工事も同様とします。「できる」規定なので、区分を検討しないと費用は土地の取得価額に入り、保有中は償却できません。規模の大きい擁壁や上下水道の引込みは取得時に区分を検討してください。
同通達の注記は、「専ら建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事」の費用は建物や構築物の取得価額に入るとしています。建物を建てるための地盤改良は、土地ではなく建物の取得価額です。
構築物にできた場合の耐用年数は、耐用年数省令の別表第一で敷設材ごとに違います。
| 区分 | 細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 舗装道路及び舗装路面 | コンクリート敷、ブロック敷、れんが敷又は石敷 | 15年 |
| アスファルト敷又は木れんが敷 | 10年 | |
| ビチューマルス敷 | 3年 | |
| 緑化施設及び庭園 | 工場緑化施設 | 7年 |
| その他の緑化施設及び庭園 | 20年 |
同じ駐車場の舗装でも、アスファルト敷なら10年、コンクリート敷なら15年です。総額だけの請求書では細目を立証しにくいので、仕様書や見積書の内訳を保存してください。
取壊し目的で取得した建物の帳簿価額・取壊費用の土地算入
法人税基本通達7-3-6は、建物付きの土地を取得して「その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるとき」は、建物の帳簿価額と取壊費用の合計額(廃材の処分収入を控除)を土地の取得価額に算入すると定めます。建物の代金も取壊費用も、償却できない土地に吸収されます。判断の基準は取得当初の目的なので、取壊しまでの間に一時的に賃貸しただけでは、土地への算入を避けられるとは限りません。
所得税・法人税の建物と固定資産税の家屋・償却資産の区分
法人税法2条23号と所得税法2条1項19号は「建物」を列挙するだけで、建物とは何かを定義していません。固定資産税では、地方税法341条3号が家屋を「住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう」と定め、4号が償却資産を「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産」としています。何が建物に当たるかの判断には、不動産登記規則111条の「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの」という要件が実務で参照されます。「税務会計上の建物を明確に定義した規定があるので不動産登記の定義は参照されない」という記述は、この構造と合いません。
舗装や外構、看板のように屋根と周壁を持たない工作物は家屋ではなく構築物で、事業用なら固定資産税では償却資産として申告の対象になります。申告の範囲は償却資産とは?対象になる資産・ならない資産と申告書の書き方、評価額の計算例で確認できます。
借地権・地上権・地役権と更新料の費用化
法人税法施行令13条8号のイからナまでを読んでも、借地権・地上権・地役権・永小作権は出てきません。所得税法施行令6条8号も同じです。権利金として払った金額は無形固定資産に計上したまま、保有期間中は費用になりません。例外として、借地上の建物を買ったときに建物の購入代価に含まれる借地権の対価がおおむね10%以下なら、法人税基本通達7-3-8のただし書により区分せず建物の取得価額に含めることができ、その部分は建物と一緒に償却されます。
例外が更新料です。法人税法施行令139条は、借地権または地役権の存続期間を更新して更新料を払ったとき、「その更新の直前における当該借地権又は地役権の帳簿価額に、その更新の時における当該借地権又は地役権の価額のうちに当該更新料の額の占める割合を乗じて計算した金額に相当する金額」を損金に算入し、更新料は帳簿価額に加算すると定めます。帳簿価額2,000万円の借地権で、更新時の価額が5,000万円、更新料が500万円なら次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 更新直前の帳簿価額 | 2,000万円 | 前回更新後の残高 |
| 更新料が価額に占める割合 | 10% | 500万円÷5,000万円 |
| 損金算入額 | 200万円 | 2,000万円×10% |
| 更新後の帳簿価額 | 2,300万円 | 2,000万円-200万円+500万円 |
個人事業者には所得税法施行令182条が同じ仕組みを必要経費算入の形で置いており、基礎となる取得費からは過去の更新で必要経費に算入した金額を控除します。更新を繰り返す借地では、過去の算入額の記録が要ります。地上権と土地の賃借権は同条の括弧書きで借地権に含まれるので、別の扱いはありません。
土地にかかる費用で経費にできるもの
土地そのものは費用になりませんが、土地を持つことで払う費用には経費になるものがあります。分かれ目は、取得価額に入るか、毎期の費用かです。
- 固定資産税・都市計画税:事業用・賃貸用の土地にかかる分は、毎年の租税公課として経費または損金になります。自宅部分は対象外です。
- 不動産取得税・登録免許税:法人は法人税基本通達7-3-3の2により、不動産取得税と「登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」を取得価額に「算入しないことができる」ので、損金にするか土地に含めるかを選べます。個人事業者の業務用の土地では原則として必要経費です。
- 取得に伴う仲介手数料・造成費・測量費・立退料:土地の取得に対応するものは原則として取得価額に含めます。建物・構築物に区分する工事費や、売却のために支払う費用は別に判定します。
- 借入金の利子・地代:事業用の土地のための借入金利子や借地の地代は、原則として毎期の費用です。個人の開業前の利子など、取得価額に入る場合があります。
個人事業者の土地購入時の費用区分と勘定科目は個人事業主の土地購入で経費にできる費用と勘定科目|取得価額との線引きと税額、固定資産税などの経理は租税公課とは?経費になるもの・ならないもの一覧と仕訳・消費税区分で扱っています。補助金で土地を取得したときの課税の繰延べは土地の圧縮記帳|買換え・収用・補助金の3制度と面積5倍の壁を参照してください。
売却時の土地の取得費と按分による費用化時期の違い
土地の取得費は減価償却によって減らず、売却時の譲渡所得を計算する際に売却収入から差し引きます。国税庁のNo.3252 取得費となるものは、取得費に土地や建物の購入代金・購入手数料などが含まれるとしたうえで、「建物の取得費は、購入代金または建築代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額となります」と書いています。減価償却費相当額を差し引く対象は建物だけです。
この仕組みから、按分で建物に多く配分しても、物件全体で費用にできる総額は変わらないことが分かります。5,000万円の事業用物件について、建物への配分を2,000万円と3,000万円にした場合を比べます。次の表は、建物を継続使用し、備忘価額1円まで償却した場合の概算で、1円の差を省略しています。
| 按分 | 保有中に償却できる額 | 売却まで残る土地の取得費 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 建物2,000万円・土地3,000万円 | 最大2,000万円 | 3,000万円 | 5,000万円 |
| 建物3,000万円・土地2,000万円 | 最大3,000万円 | 2,000万円 | 5,000万円 |
建物に寄せると保有中の経費が増えて税が早く減り、その分だけ売却時の取得費が小さくなって譲渡益が増えます。個人の不動産所得は総合課税で、土地建物の譲渡所得は分離課税なので、保有中に減る所得にかかる税率と売却時に増える所得にかかる税率は一致しません。法人でも費用計上と譲渡益計上の時期が変わりますが、各期の所得や適用税率によって税負担への影響は異なります。どちらの場合も、按分は時価を合理的に反映しているかで判断し、税率差を狙って比率を作ると前の章の加算税の問題になります。
よくある質問
土地はなぜ減価償却しないのですか?
土地は時の経過によって価値が減少しない資産とされているためです。国税庁No.2100が「土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません」と説明しており、条文上は法人税法2条23号・所得税法2条1項19号の列挙に土地が無く、法人税法施行令13条・所得税法施行令6条の柱書も「時の経過によりその価値の減少しないもの」を除いています。
土地の耐用年数は何年ですか?
ありません。耐用年数省令の別表は減価償却資産の使用可能期間を定めたもので、減価償却資産ではない土地は載っていません。土地の上に造った舗装や緑化施設は構築物として耐用年数があり、コンクリート敷の舗装は15年、アスファルト敷は10年です。
土地は経費にならないのですか?
購入代金は保有中に経費になりませんが、売却時に取得費として譲渡所得の計算で差し引かれます。事業用の土地の固定資産税・都市計画税は毎年の経費です。不動産取得税・登録免許税は、法人なら損金にするか取得価額に含めるかを選べ、個人事業者は原則として必要経費です。
借地権は減価償却できますか?
できません。法人税法施行令13条8号の無形固定資産の列挙に借地権・地上権・地役権は入っていません。ただし更新料を払ったときは、法人税法施行令139条または所得税法施行令182条により、法人は更新直前の帳簿価額、個人は過去の更新で必要経費に算入した金額を控除した取得費を基礎に、更新料が更新時の権利の価額に占める割合を掛けた金額を損金または必要経費にできます。
建設仮勘定は減価償却できますか?
建設中の資産は減価償却資産に該当しません。ただし法人税基本通達7-1-4により、建設仮勘定として表示していても、完成して事業に使っている部分は減価償却資産になります。完成部分は本勘定へ振り替えて、使い始めた日から償却します。