確定申告

個人事業主の帳簿の保存期間は7年と5年に分かれる|国税庁の一覧表と電子帳簿保存法・令和9年分の改正

個人事業主の帳簿の保存期間は7年と5年に分かれる|国税庁の一覧表と電子帳簿保存法・令和9年分の改正

個人事業主の帳簿と書類の保存期間は「青色は7年、白色は5年」と説明されがちですが、条文はそこまで単純ではありません。青色申告でも請求書や見積書は5年でよく、白色申告でも法定帳簿は7年です。インボイス発行事業者になると、消費税法の側で7年に戻る書類もあります。この記事では、条文と国税庁の一覧表で保存期間を確定させ、備える帳簿の種類、申告で出さなかった書類の保管期間、会計ソフトなしの電子取引データ保存、令和9年分からの青色申告特別控除の変更までを整理します。

まとめ

  • 青色申告で7年保存が必要なのは、帳簿・決算関係書類・現金預金取引等関係書類(領収書、預金通帳など)です。相手方から受け取った請求書・見積書・契約書・納品書などは5年で足ります(所得税法施行規則63条1項)。
  • 前々年分の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下なら、領収書を含む受領書類はすべて5年でよくなります(同63条2項、所得税法施行令195条1号)。
  • 白色申告は法定帳簿が7年、任意帳簿とその他の書類が5年です(同102条4項)。
  • インボイス発行事業者は交付した適格請求書の写しを、一般課税で仕入税額控除を受ける課税事業者は仕入れの請求書等を7年保存します。所得税側の5年では足りません。
  • 起算日は「翌年3月15日の翌日」なので、7年保存の書類は取引の時点から数えると最長で8年2か月あまり(1月の取引の場合)手元に残ります。
  • 備える帳簿は控除額で決まります。65万円・55万円は仕訳帳と総勘定元帳(正規の簿記)、10万円は現金出納帳・売掛帳などの簡易な帳簿、白色は日々の合計を書く簡易な記帳で足ります。
  • 医療費の領収書や、e-Taxで添付を省略した生命保険料控除証明書などは、事業の帳簿とは別に5年間保管します。
  • 電子取引データ保存は義務ですが、会計ソフトなしでも成立します。保存期間は紙と同じです。
  • 令和9年分から青色申告特別控除の65万円はe-Taxが必須になり、帳簿を電子で保存したうえで、優良な電子帳簿か、デジタルインボイス・口座決済データを扱う基準適合システムを満たすと75万円になります(租税特別措置法25条の2第4項・5項・7項)。前々年の事業の総収入金額が1,000万円を超えると、簡易な帳簿では10万円も受けられなくなります(同2項)。

青色申告でも5年でよい書類がある

先に一覧を示します。国税庁のパンフレット「記帳や帳簿等保存・青色申告」の表と、下で引く条文を突き合わせたものです。

区分 対象 保存期間
青色・帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、経費帳など 7年
青色・決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など 7年
青色・現金預金取引等関係書類 領収書、小切手控、預金通帳、借用証など 7年(前々年分300万円以下は5年)
青色・その他の書類 請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など 5年
白色・法定帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿 7年
白色・任意帳簿と書類 上記以外の帳簿、棚卸表、請求書、領収書など 5年
消費税・インボイス 仕入税額控除用の請求書等、適格請求書の写し 7年

所得税法施行規則63条1項は、青色申告者の保存期間を「起算日から七年間(第三号に掲げる書類のうち、現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のものにあつては、五年間)」と定めています。本題はカッコ書きです。3号は「取引に関して相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し」で、このうち現金預金取引等関係書類にあたらないものは5年でよいと明記されています。

現金預金取引等関係書類の定義は同63条3項にあり、現金の収受もしくは払出し、または預貯金の預入もしくは引出しに際して作成されたものを指します。国税庁の一覧表では、領収書・小切手控・預金通帳・借用証がこれにあたります。お金が動いた瞬間の証拠は7年、取引の約束や請求を示す書類は5年という切り分けです。

前々年の所得が300万円以下なら受領書類はすべて5年

同63条2項は、その年3月15日における前々年分の不動産所得の金額と事業所得の金額の合計額が所得税法施行令195条1号に規定する金額以下である人について、3号書類を「起算日から五年間を超えて保存することを要しない」としています。その金額は同令195条1号で「三百万円以下であること」です。

この特例に入ると、領収書や預金通帳を含む受領書類がすべて5年になります。判定に使うのは前々年分の所得金額で、所得税法施行令195条1号のカッコ書きにより、青色事業専従者給与(白色は事業専従者控除)を必要経費に入れないで計算した金額です。開業1〜2年目は前々年分の事業所得が無いため、ほかに不動産所得が無ければこの5年の区分に入ります。

白色申告は法定帳簿だけが7年

白色申告の根拠は同102条4項で、1項の帳簿を7年、その他の帳簿と3項各号の書類を5年としています。1項の帳簿は収入金額と必要経費を記録する帳簿、つまり法定帳簿です。自分の都合で別に作った任意帳簿は5年で構いません。

白色申告を「5年でよい」と覚えていると、法定帳簿を5年で処分して保存義務違反になります。青色申告を「全部7年」と覚えていると、5年でよい請求書の束を2年余分に抱えます。どちらの誤解も、区分を上の表のように書類名まで下ろしておけば起きません。

業務に係る雑所得の収入300万円超の副業会社員にも保存義務がある

所得税法232条2項を受けた同102条7項・8項は、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人に、現金預金取引等関係書類を作成・受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日から5年間保存する義務を課しています。開業届を出していない副業でも、収入がこの水準に達すれば保存義務者です。

インボイス発行事業者は消費税法の側で7年に戻る

国税庁の一覧表には「消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等や、インボイス発行事業者として交付した適格請求書の写し及び提供した電磁的記録については、上記に関わらず7年間保存する必要があります」という注意書きがあります。所得税では5年でよい請求書が、消費税では7年です。7年になるのは一般課税で仕入税額控除を受けるための請求書等と、交付した適格請求書の写しであって、見積書や契約書まで7年になるわけではありません。とはいえ書類ごとに5年と7年を分けると保存漏れが起きやすいので、インボイス登録をしているなら請求書まわりは7年にそろえて管理するのが安全です。

起算日は翌年3月15日の翌日

同63条4項は起算日を、帳簿はその閉鎖の日の属する年の翌年3月15日の翌日、書類は作成または受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日と定めています。令和8年1月に受け取った領収書の起算日は令和9年3月16日で、7年後は令和16年3月15日です。取引の時点から数えると8年2か月あります。年末に「7年前のものだから」と処分すると、実際にはまだ期間内という事故が起きます。処分は、この起算日から数えた期間が満了したものに限ってください。

個人事業主が備える帳簿は青色と白色で違う

保存期間の前提として、そもそもどの帳簿を作るのかは、申告の種類と青色申告特別控除の額で決まります。7年保存の対象になる「帳簿」の中身がここで変わります。

申告の種類 記帳の方法 主な帳簿 根拠
青色(65万円・55万円) 正規の簿記(複式簿記) 仕訳帳、総勘定元帳 所規57条・58条
青色(10万円) 簡易な記帳 現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳 所規56条1項ただし書
白色 簡易な方法(日々の合計でも可) 収入と必要経費を記録する帳簿 所法232条1項、所規102条

65万円・55万円の控除は仕訳帳と総勘定元帳が前提

所得税法施行規則57条1項は、青色申告者に取引を「正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない」と求め、58条1項はすべての取引を借方と貸方に仕訳する帳簿(仕訳帳)と、勘定科目別に整理する帳簿(総勘定元帳)その他必要な帳簿を備えるよう定めています。国税庁のNo.2072 青色申告特別控除によれば、55万円の控除はこの正規の簿記(一般的には複式簿記)による記帳と、貸借対照表・損益計算書を添付した期限内申告が要件です。売掛金や買掛金の補助簿の付け方は売掛金元帳とは?書き方と記入例、総勘定元帳との照合と保存7年・電子化の判断【2026年版】と買掛金元帳とは?書き方と記入例、総勘定元帳・請求書との照合と保存7年【2026年版】で扱っています。

10万円の控除なら簡易な帳簿で足りる

同56条1項ただし書は、正規の簿記に代えて「財務大臣の定める簡易な記録の方法及び記載事項によることができる」としています。国税庁のNo.2070 青色申告制度は、これを「現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよい」と説明しています。この場合の控除は10万円です。複式簿記にしないと55万円・65万円は取れないので、控除額の差45万円と記帳の手間を比べて選ぶことになります。ただし令和9年分以後は、前々年分の事業所得(不動産所得)の総収入金額が1,000万円を超える事業者が簡易な帳簿のままだと、10万円の控除も受けられなくなります(改正後の租税特別措置法25条の2第2項)。

白色申告にも記帳義務がある

所得税法232条1項は、青色申告の承認を受けていない事業所得者等にも帳簿を備え付けて総収入金額と必要経費を簡易な方法で記録するよう義務づけています。国税庁のNo.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度は、記帳の仕方について「一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよい」としています。日々の合計で済む反面、この帳簿は法定帳簿として7年保存です。確定申告書には収支内訳書の添付も必要です(所得税法120条6項)。

確定申告で提出しなかった書類も5年は手元に残す

事業の帳簿とは別に、確定申告の際に税務署へ提出しなかった書類にも保管期間があります。「国税庁 確定申告 書類 保存期間 5年」で探されているのはこちらです。

医療費控除の領収書は確定申告期限の翌日から5年

医療費控除は、平成29年分から領収書の添付ではなく医療費控除の明細書の添付に変わりました。その代わり、所得税法120条5項は、税務署長が必要と認めるときは「確定申告期限の翌日から起算して五年を経過する日」までの間、医療費の領収書の提示または提出を求めることができ、求められた人は提示・提出しなければならないと定めています。令和8年分の申告なら、確定申告期限の翌日である令和9年3月16日から5年、つまり令和14年3月15日までが目安です。その期限の前6か月以内に更正の請求をした場合は、請求の日から6か月を経過する日まで延びます。国税庁のNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)によれば、医療保険者の医療費通知を添付した分は、この提示の対象から外れます。控除の計算方法は医療費控除とは?対象・計算・申告方法と令和9年分の胃腸薬追加を参照してください。

e-Taxで添付を省略した証明書類も5年

e-Taxで申告すると、生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書などの第三者作成書類は、内容を入力して送信すれば提出・提示を省略できます。ただし国税庁のe-Taxのよくある質問は「原則として法定申告期限から5年間、税務署等からこれらの書類の提示又は提出を求められることがあります」とし、求めに応じなかった場合は「確定申告書に添付又は提示がなかったものとして取り扱われます」と書いています。控除を否認されないためには、出さなかった証明書こそ5年間残しておく必要があります。

電子帳簿保存法の3区分のうち義務は電子取引データ保存だけ

電子帳簿保存法は電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3つに分かれ、義務なのは3つ目だけです。帳簿をデータのまま保存する電子帳簿等保存も、紙の領収書を画像にするスキャナ保存も任意です。制度全体の要件は電子帳簿保存法とは?3区分の要件・対象書類と自社システム対応を解説、スキャナ保存の始め方はスキャナ保存制度とは?紙の請求書・領収書を電子保存する要件と始め方【2026年版】にまとめてあります。

個人事業主が最初に確認すべきは、電子取引にあたる受け取り方をしているかどうかです。メールに添付されたPDFの請求書、クラウドサービスの管理画面からダウンロードした領収書、ECサイトの購入明細は電子取引です。同じ取引先でも、郵送で届いた紙の請求書は電子取引ではありません。電子取引は法2条5号で「取引情報…の授受を電磁的方式により行う取引」と定義されているため、自分がメールでPDFの請求書を送った側も対象です。

電子で保存する場合の保存期間は紙と変わりません。電子帳簿保存法施行規則4条1項は、電子取引のデータを、その取引情報を書面で受け取ったとした場合に「当該書面を保存すべきこととなる期間」保存するよう定めています。メールで受け取った請求書のPDFは、青色申告なら5年、領収書のデータなら7年(前々年分300万円以下は5年)で、上の表がそのまま当てはまります。

改ざん防止は4つの措置から1つ選ぶ

同4条1項は、真実性を確保する措置として、タイムスタンプ付きのデータの授受(1号)、自らのタイムスタンプ付与(2号)、訂正削除の履歴が残るか訂正削除できないシステム(3号)、訂正削除の防止に関する事務処理規程の運用と備付け(4号)の4つを挙げ、いずれか1つでよいとしています。追加のシステムやタイムスタンプを用意しないなら、4号の事務処理規程が現実的です。国税庁が個人事業者用のサンプルを公開しており、作成の手順は事務処理規程とは?電子帳簿保存法の真実性要件を満たす作成方法と国税庁サンプル【2026年版】で扱っています。規程は作って備え付けるだけでなく、規程に沿った運用までが要件です。

会計ソフトを使わずに電子取引データ保存を満たす条件

規則4条1項の後半には、検索機能の確保を免除する仕組みが二重に組み込まれています。まず、税務職員によるダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、範囲指定検索と2項目以上の組合せ検索が不要になります。そのうえで、次のどちらかにあてはまれば、取引年月日・金額・取引先の3項目検索も含めて検索要件が丸ごと不要です。

  • 判定期間に係る基準期間における売上高が5,000万円以下であること
  • データを出力した書面を、整然とした形式および明瞭な状態で出力し、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理したものを提示・提出できるようにしていること

同4条2項によれば、個人事業者の判定期間は電子取引を行った日の属する年の1月1日から12月31日まで、基準期間はその年の前々年です。前々年の売上高で判定するため、開業1年目と2年目は基準期間の売上高がなく、この免除に入ります。前々年の売上高が5,000万円以下なら、ファイル名を工夫しなくても条文上は検索要件を満たせます。

スマートフォンだけでも要件は満たせる

国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月版)の問21は、スマートフォンで授受した領収書データについて、通し番号を付けて保存し、表計算ソフトのアプリで索引簿を作り、事務処理規程を備え付けるといった対応が必要としています。保存に使っているスマートフォンがあれば電子計算機・プログラム・ディスプレイの備付け要件は満たされ、プリンタについても「税務調査等があった時点においてプリンタを常設していない場合であっても、近隣の有料プリンタ等により税務職員の求めに応じて速やかに出力するなどの対応ができれば、プリンタを常設していないことのみをもって要件違反として取り扱うことはありません」と明記されています。プリンタを買う必要はありません。

猶予措置に事前申請は要らない

規則4条3項の猶予措置は、税務署長が「相当の理由」があると認め、かつ電磁的記録とその出力書面の両方の提示・提出に応じられる場合に、保存時の要件を問わずデータ保存を認めるものです。同じ一問一答の問93は、相当の理由にはシステムや社内ワークフローの整備が間に合わないといった事情も含まれるとしたうえで、「この猶予措置の適用を受けるに当たり税務署への事前申請等の手続は必要ありません」と述べています。

ただし、要件どおりに保存できる体制があるのに資金繰りや人手不足等の理由もなく従っていない場合は適用外で、出力書面だけの保存も認められません(令和5年12月末までの宥恕措置とはここが違います)。

ソフトなしでは届かない加算税軽減・75万円控除・重加算税の加重除外

会計ソフトやシステムを使わなければ届かないものもはっきりしています。優良な電子帳簿は、訂正削除の履歴が残るシステムと帳簿間の相互関連性が要件なので、表計算ソフトでは満たせません。あらかじめ届出書を出して満たしていると、電子帳簿保存法8条4項により、過少申告加算税の額から、その基礎となるべき税額の5%相当額を控除できます。隠蔽・仮装があった部分には適用されません。次章の75万円の青色申告特別控除と、その次の重加算税の加重除外も、条文が「システム」を要件にしています。ファイル管理だけで到達できるのは、義務である電子取引データ保存までです。

令和9年分から65万円はe-Tax必須、優良な電子帳簿か基準適合システムで75万円

令和8年分までの租税特別措置法25条の2は、3項で55万円の控除を定め、4項で「優良な電子帳簿の保存」または「e-Taxによる送信」のいずれかを満たせば65万円に引き上げる構成です。どちらか一方でよいため、紙で申告して優良な電子帳簿だけで65万円を取っている人がいます。

これが令和9年分以後(令和8年法律第12号、令和9年1月1日施行)に変わります。改正後の4項は55万円の区分がなくなって65万円になり、7項が「第四項の規定は、その年分の所得税の確定申告書の提出期限までに…電子情報処理組織を使用して…送信した場合に限り、適用する」と定めます。65万円にe-Taxが必須になるということです。新設の5項は、4項に該当する人が帳簿を電子帳簿保存法4条1項等に従って電磁的記録で備え付け・保存していて、かつ次のいずれかを満たすとき、65万円を75万円と読み替えます。紙の帳簿のままでは、どちらのルートでも75万円には届きません。

  • 1号:帳簿書類に係る電磁的記録の備付けと保存が、電子帳簿保存法8条4項の財務省令の要件(優良な電子帳簿)を満たしている場合
  • 2号:電子取引の取引情報に係る特定電磁的記録の保存について、財務省令で定める措置を講じ、かつその特定電磁的記録を保存している場合

2号の「財務省令で定める措置」は租税特別措置法施行規則9条の6第9項が定義しており、電子帳簿保存法施行規則5条5項1号の特定電子計算機処理システムを事業の用に供していることを指します。同9条の6第8項により、電子帳簿保存法施行規則5条6項の届出書の提出も必要です。

この2号ルートは、受け取ったPDFの請求書を何でも対象にするわけではありません。国税庁の届出書の案内は、国税庁長官の定める基準に適合したシステムを「次のいずれかの電磁的記録で特定電磁的記録に該当するものを、電子帳簿保存法規則第5条第5項各号に掲げる要件を満たして保存することができる機能を有したシステム」と説明し、その2つを次のとおり挙げています。

  • デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(「Standard Invoice JP PINT」または「JP Self-Billing」)
  • 金融機関等の預貯金口座における決済データ

2号ルートは、Peppol準拠のデジタルインボイスか銀行口座の決済データを扱う仕組みが前提です。メール添付のPDFをフォルダに並べているだけでは届きません。対応ソフトを探すときは、同じ案内が示している日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)のデジタルシームレスソフト認証リストが手がかりになります。市販ソフトでなく自社の販売・請求の仕組みで請求データと入金データを持っている事業者なら、会計・経理システム開発で既存のデータを要件に合う形で保存する方法もあります。

優良な電子帳簿だけで65万円を取っている書面申告者は10万円に落ちる

この改正で不利になるのは、複式簿記と優良な電子帳簿で65万円を取りながら書面で申告している人です。令和9年分からは7項によって4項自体が使えなくなり、1項の10万円まで落ちます。控除が55万円減るため、所得税率5%の帯なら約8万3,000円、10%の帯なら約11万1,000円だけ所得税と住民税の負担が増える計算です(住民税10%、復興特別所得税2.1%を含む)。e-Taxに切り替えれば65万円に戻ります。75万円まで伸ばすには、帳簿を電子で保存したうえで、優良な電子帳簿を満たすか、基準適合システムで特定電磁的記録を保存して届出を出すかのどちらかです。申告手順は個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円にまとめてあります。

状況 令和8年分まで 令和9年分以後
複式簿記のみ・書面申告 55万円 10万円
複式簿記+優良な電子帳簿・書面申告 65万円 10万円
複式簿記+e-Tax 65万円 65万円
複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿 65万円 75万円
複式簿記+e-Tax+電子帳簿+基準適合システムと届出 65万円 75万円

重加算税の10%加重には除外ができる(個人事業主は令和8年分から)

電子取引データに隠蔽や仮装があった場合、電子帳簿保存法8条5項によって重加算税が10%加重されます。この条文が令和9年1月1日施行の改正で書き換えられ、法7条どおりに保存した電子取引データ(特定電磁的記録)のうち、財務省令の要件を満たして保存を続けているものが加重の対象から除かれました。国税庁の届出書の案内によれば、個人事業者の場合は重加算税の加重措置の不適用の特例が令和8年分の所得税および消費税から、75万円の青色申告特別控除が令和9年分の所得税から適用開始です。特例のほうが1年早く効きます。

その要件は電子帳簿保存法施行規則5条5項が定めています。中心は、国税庁長官の定める基準に適合した特定電子計算機処理システムで授受と保存を行うことと、そのシステムが金額の記録事項を訂正削除したうえで帳簿に取り込めないか、取り込んだ場合にその事実と内容を確認できる仕組みであることです。加えて同5条6項により、所轄税務署長への届出書の提出が必要です。国税庁の手続案内は、適用を受けようとする所得税(源泉所得税に係る所得税を除く)、法人税および消費税に係る法定申告期限までに提出するよう案内しています。

外れるのは上乗せの10%だけで、隠蔽・仮装があれば国税通則法68条の重加算税自体は課されます。制度改正の全体像は改正電子帳簿保存法とは?2024年完全義務化の変更点と企業のシステム対応を解説【2026年版】を参照してください。

保存を怠ったときに実際に起きること

保存期間を守らなかった場合や、電子取引データを要件どおりに保存しなかった場合の帰結は、次の2つです。税務調査で何年分がさかのぼられるかは税務調査は何年分さかのぼる?3年・5年・7年の根拠と住民税・贈与税・時効の期間で扱っています。

帳簿を出せない・記載が不十分だと過少申告加算税が10%か5%上乗せされる

一番直接的なのは加算税の加重です。国税通則法65条4項は、税務調査で帳簿の提示や提出を求められたのに応じなかった場合や、売上げなど特定事項の記載が著しく不十分な場合は過少申告加算税に10%を、記載が不十分な場合は5%を上乗せすると定めています。国税庁のNo.2080によれば、令和5年分の確定申告に対する修正申告等から適用され、無申告加算税にも同じ加重があります。7年保存の帳簿を5年で捨ててしまうと、調査で提示を求められたときにこの上乗せの対象になり得ます。

青色申告の承認取消しは「なり得る」が自動ではない

電子帳簿保存法8条3項2号は、所得税法150条1項1号(青色申告の承認の取消し)の「帳簿書類)」を「帳簿書類)又は…第7条…のいずれか」と読み替えます。条文上、電子取引データの保存不備は青色申告の承認の取消し事由の範囲に入ります。ただし一問一答(令和8年7月版)の問98は、要件違反があったことをもって「直ちに必ず行われるものではなく」、事務運営指針に基づいて真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうかを検討したうえで判断するとしています。

実務で効くのはむしろ別の帰結です。同問98は、要件に従って保存していない電磁的記録や出力した書面について「国税関係書類以外の書類とみなされません」と述べています。法8条2項は、要件どおり保存した電子取引データを他の国税の法律の適用上「国税関係書類以外の書類」とみなす規定で、要件を満たさないデータや出力書面にはこのみなしが働きません。その場合、申告内容の適正性は追加の説明や資料提出、取引先の情報を総合勘案して確認されることになり、立証の負担が自分側に寄ります。消費税に係る保存義務者の電子取引データは、同問98により引き続き出力書面で保存できるという非対称もあります(下のよくある質問を参照)。

よくある質問

青色申告なら領収書も請求書も7年保存でよいのでは?

領収書は7年ですが、請求書は5年です。所得税法施行規則63条1項のカッコ書きが、相手方から受け取った書類のうち現金預金取引等関係書類にあたらないものを5年としているためで、請求書・見積書・契約書・納品書・送り状がこれにあたります。前々年分の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下なら、領収書や預金通帳も5年で足ります。ただしインボイス発行事業者は消費税法の側で請求書等の7年保存が必要なので、登録しているなら請求書まわりは7年で運用するのが簡単です。

会計ソフトを使わずにフォルダ管理だけで電子帳簿保存法に対応できますか?

義務である電子取引データ保存に限れば対応できます。国税庁のサンプルをもとに事務処理規程を作って備え付け、受け取ったPDFをそのまま保存し、ダウンロードの求めに応じられるようにしておけば要件を満たし、前々年の売上高が5,000万円以下なら検索機能の確保も不要です。届かないのは、優良な電子帳簿による加算税の軽減、令和9年分の75万円控除、重加算税の加重除外で、いずれも条文がシステムを要件にしています。

紙に印刷して保存するのは今でも認められませんか?

所得税については認められません。令和3年度改正で書面出力による保存の取扱いが廃止され、令和5年12月31日までの宥恕措置も期限到来で終わりました。令和6年1月以降の猶予措置は書面だけの保存を認めておらず、データ本体の保存と、データおよび出力書面の両方の提示・提出ができることが条件です。消費税に係る保存義務者の電子取引データについては、一問一答(令和8年7月版)の問98が、保存の有無が税額計算に影響することを勘案して、引き続き出力書面による保存を可能としています。

会社(法人)の帳簿の保存期間は個人事業主と違いますか?

違います。法人税では、法人税法施行規則59条1項が青色申告法人の帳簿書類を起算日から7年保存するよう定めており、起算日は事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日です。欠損金の繰越控除を受ける場合は、欠損金が生じた事業年度の帳簿書類を10年保存します(同26条の3)。さらに株式会社には会社法432条2項がかかり、「会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない」とされています。個人事業主には会社法のこの規定がかからないので、所得税法の7年と5年で考えれば足ります。

副業で開業届を出していなくても保存義務がありますか?

前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合は、所得税法232条2項と同施行規則102条7項・8項により、現金預金取引等関係書類を5年間保存する義務があります。電子取引にあたるデータを受け取っていれば、電子帳簿保存法7条の保存義務も同様にかかります。所得区分と経費の考え方は個人事業主の経費と控除の違い|1万円で減る税金と令和8年分の所得控除16種を参照してください。

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