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専従者給与とは?要件・届出といくらまで経費になるか、配偶者控除との損得【令和8年分】

専従者給与とは?要件・届出といくらまで経費になるか、配偶者控除との損得【令和8年分】

専従者給与とは、個人事業主が生計を一にする配偶者その他の親族に払う給与のうち、例外として必要経費にできるもののことです。同居か別居かではなく、生活費を共にしているかで判断します。家族への給与は所得税法56条で原則として経費になりませんが、その家族が事業に専ら従事する「専従者」であれば、57条の特例で経費にできます。

扱いは申告方法で分かれます。青色申告なら届け出た金額の範囲で実際に払った相当額を経費にでき(青色事業専従者給与)、白色申告なら給与を払っていなくても配偶者86万円・その他の親族50万円を上限に経費とみなします(事業専従者控除)。この記事では、専従者の要件と届出、令和8年分の金額でいくらまで払えば税金がかからないか、配偶者控除を使う場合とどちらが得かを、条文と国税庁の資料に沿って整理します。

まとめ:専従者給与の要点

  • 専従者になれるのは、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族で、その年12月31日時点で15歳以上、その年に6か月を超えて事業に専ら従事した人です。学生や他に仕事を持つ人の期間は、原則として従事期間に数えません。
  • 青色申告は「青色事業専従者給与に関する届出書」をその年の3月15日まで(1月16日以後の開業や新たに専従者ができた場合は2か月以内)に出し、届出額の範囲で労務の対価として相当な額が経費になります。
  • 白色申告の事業専従者控除は、配偶者86万円・その他の親族50万円と、控除前の事業所得等を「専従者の数+1」で割った額の低い方です。
  • 青色事業専従者として給与を受けた家族と白色申告の事業専従者は、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・特定親族特別控除の対象から外れます。白色では、実際の給与支払いがなくても対象外です。
  • 令和8年分は、専従者本人に他の所得がなければ給与年178万円まで所得税はかからず、毎月の源泉徴収は扶養控除等申告書を提出して甲欄を使う場合、社会保険料等控除後105,000円未満なら0円です。
  • 専従者給与と配偶者控除の損得は、給与額、事業主の税率と控除額、配偶者本人の税負担を合わせて比べます。試算では事業所得600万円の事業主が月9万円の給与を払うと、配偶者控除より世帯の税額が約21万8,000円少なくなりました。合計所得489万円の前後では基礎控除が37万円変わるため、給与額の決め方で差が広がります。

専従者の意味と、家族従業員・一般の従業員との違い

専従者は、事業主の家族のうち所得税法の要件を満たして事業に専念している人です。手伝っていても要件を満たさなければ、給与を払っても経費になりません。

家族への給与が原則として経費にならない理由(所得税法56条)

所得税法56条は、事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が事業から対価を受けても、その金額を事業主の必要経費に入れないと定めています。家族間で所得を付け替えて累進税率を下げることを防ぐためで、給与だけでなく家賃や報酬など対価の形を問いません。

この原則の例外が57条です。青色申告者には1項の青色事業専従者給与、白色申告者には3項の事業専従者控除が用意されています。なお、不動産所得は不動産の貸付けが事業として行われている場合に限って、この特例を使えます(国税庁No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除)。

専従者の3要件と「専ら従事」の判定

青色・白色に共通する専従者の要件は次の3つです。

  • 事業主と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • その年12月31日時点で15歳以上であること
  • その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事していること

「専ら従事」の期間には、所得税法施行令165条2項により、次の期間を数えません。学校教育法上の学校・専修学校・各種学校の学生や生徒である期間(夜間の学校に通い昼間に事業へ従事する場合などは除く)、他に職業を持つ期間(その職業の時間が短く事業への専念を妨げない場合は除く)、老衰や心身の障害で事業に従事する能力が著しく損なわれている期間です。配偶者がフルタイムで勤めに出ている期間は原則として専従期間に数えませんが、短時間のパートで事業に専念できる実態があれば、専従者と認められる余地があります。

青色申告に限り、年の途中で事業を始めた場合や、家族が就職・退職・婚姻・長期の病気などで年間を通じて従事できなかった場合は、従事できた期間の2分の1を超えて専ら従事すれば足ります(同令165条1項ただし書)。国税庁の質疑応答事例では、8月に会社を退職して父の事業に加わった子について、退職から年末までの2分の1を超えて従事していれば、その間の給与を青色事業専従者給与にできるとしています。白色申告の事業専従者控除にはこの緩和がなく、6か月超が必要です。

専従者・生計が別の家族・一般の従業員の違い

家族に払う給与でも、生計が別なら56条自体が適用されず、一般の従業員と同じく実際に払った給与を経費にできます。青色事業専従者給与の届出は不要ですが、給与支払事務所等の届出や源泉徴収など、一般の給与支払者としての手続きは別途必要です。別居して独立した生計の子を雇う場合が典型で、同居していても生活費を明確に分けていれば生計が別と認められることがあります。判定基準は「生計を一にしない」とは?同居でも別生計と認められる条件と証明【令和8年分】で詳しく扱っています。

区分 経費にできる額 事前の届出 配偶者控除・扶養控除
青色事業専従者 届出額の範囲の相当額 必要 給与を受けた年は対象外
白色の事業専従者 86万円・50万円が上限 不要(申告書に記載) 対象外
生計一で専従者でない家族 経費にならない ― 所得要件を満たせば対象
生計が別の家族・他人 払った給与の全額 不要 生計が別なので対象外

青色事業専従者給与と白色の事業専従者控除の違い

青色は「実際に払った給与」を経費にし、白色は「決まった額」を経費とみなします。白色の控除は給与を払っていなくても使える代わりに、上限が低く、事業所得が少ないとさらに削られます。

項目 青色事業専従者給与 白色の事業専従者控除
根拠 所得税法57条1項 所得税法57条3項
経費になる額 届出額の範囲で相当な実支給額 86万円・50万円か所得÷(人数+1)の低い方
給与の支払い 必要 不要
届出 3月15日まで(開業等は2か月以内) 確定申告書に記載
年の中途の緩和 従事可能期間の2分の1超で可 なし(6か月超)

白色の事業専従者控除額の計算

白色の控除額は、次のいずれか低い方です。

  • 配偶者なら86万円、配偶者以外の親族なら1人50万円
  • この控除をする前の事業所得等の金額を、事業専従者の数に1を足した数で割った額

たとえば控除前の事業所得が150万円で、配偶者1人を専従者にする場合、150万円÷2=75万円が86万円より低いため、控除額は75万円です。配偶者と子の2人なら150万円÷3=50万円で、配偶者50万円、子50万円の計100万円になります。控除を受けるには、確定申告書にその旨と金額を記載します(57条5項)。

白色の事業専従者控除額と本人のみなし給与収入

白色の事業専従者控除の額は、実際に払っていなくても、専従者本人の給与所得の収入金額とみなされます(57条4項)。このみなし給与は源泉徴収の対象になりませんが、所得の計算には入ります。国税庁の質疑応答事例では、みなし給与と別の給与がある場合、給与所得者向けの確定申告不要制度は適用できないとしています。ただし、所得控除などを反映して税額が生じず、ほかに申告義務もない場合まで一律に申告が必要になるわけではありません。専従者が別の勤め先からも給与を受けている場合は注意が必要です。

青色事業専従者給与の届出と手続き

青色事業専従者給与は、法定期限内に届出書を提出し、届け出た支給方法・金額の範囲などの要件を満たした給与を経費にできます。

届出書の提出期限と記載事項

「青色事業専従者給与に関する届出書」は、経費に入れたい年の3月15日までに納税地の所轄税務署へ出します。期限が土日・祝日に当たる場合は翌日以後の最初の平日で、令和8年分は3月16日でした。令和9年分から適用を受けるなら、2027年3月15日(月)が期限です。その年の1月16日以後に事業を始めた場合や新たに専従者ができた場合は、その日から2か月以内です(所得税法57条2項、国税庁 No.2075)。記載するのは、専従者の氏名・続柄・年齢、仕事の内容と従事の程度、資格、給与の金額と支給期(月給・賞与)、昇給の基準などです。

青色申告の承認申請書とは別の書類です。開業した年から専従者給与を経費にする場合、両方の提出期限は、1月15日までの開業なら原則3月15日、1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内です。e-Taxでも提出できます。開業時のほかの届出は個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円にまとめています。

給与額の変更や専従者の追加に必要な変更届出書

専従者を増やす、給与を増額する、賞与を新たに払うなど、届出の内容を変えるときは「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく出します(所得税法施行令164条2項)。前述の年の途中で退職した子の事例では、専従者とした日から2か月以内に届出書を出す必要があるとされています。

実務では、毎月の給与額だけでなく、賞与の支給時期と金額の上限も届出に書いておくと、決算期に賞与を出したときに届出の範囲外にならずに済みます。

経費として認められない支払いのパターン

  • 法定期限までに届出書を提出していない場合の給与、届出に書いていない賞与
  • 届出額を超えて払った部分
  • 届出書に書いた方法(支給期など)と違う方法で払った給与
  • 労務の対価として相当と認められる額を超える部分(57条1項)
  • 休業中の期間に払った給与

休業中の給与については、区画整理で店舗を建て替える6か月間に払った専従者給与は労務の対価ではないため経費にならず、事業に従事しない親族への給付は贈与税の対象になる、とする質疑応答事例があります。届出額の範囲内でも、働いていない期間の給与は認められません。

専従者給与の相当額と本人の非課税ライン

経費として認められる上限は仕事の実態で決まり、専従者本人に税金がかからない上限は令和8年分の控除額で決まります。

相当な給与額を判断する3つの基準(所得税法施行令164条)

経費として認められる額は、次の状況に照らして判断されます。

  • 専従者が働いた期間、仕事の性質、提供の程度
  • 同じ事業のほかの使用人の給与、同業・同規模の事業で同じ仕事をする人の給与
  • 事業の種類・規模・収益の状況

届出額の範囲内であっても、相当額を超える部分は経費になりません。経理や受付を週5日担当する配偶者と、ときどき電話番をするだけの配偶者では、同じ月額でも判断が変わります。勤務日数や担当業務を記録した業務日誌、同じ地域のパート求人の時給などを残しておくと、税務調査で説明できます。

専従者本人の所得税:他の所得がない場合の年178万円ライン

専従者給与は専従者本人の給与所得になるため、給与所得控除と基礎控除が使えます。令和8年分は、給与所得控除の最低額が74万円(給与収入220万円以下の場合の令和8・9年分の特例)、基礎控除が合計所得金額489万円以下で104万円です。ほかに所得がなければ、給与178万円までは所得税がかかりません。令和8年分の控除額は、国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」で確認できます。

住民税は基礎控除が43万円のままなので、所得税より低い給与額で課税が始まります。令和8年分の所得にかかる令和9年度の住民税は、給与119万円以下なら非課税です(均等割の非課税基準は市区町村の級地により低い場合があります)。所得税・住民税・社会保険の金額ラインは年収の壁【2026年最新】178万円・136万円・130万円の一覧と手取りの分岐点で一覧にしています。

毎月の源泉徴収:令和8年分の月額表は105,000円未満で0円

専従者に給与を払う事業主は、一般の従業員と同じく源泉徴収義務者です。専従者が事業主に扶養控除等申告書を出していれば甲欄を使い、令和8年分の月額表では社会保険料等を控除した後の給与が105,000円未満なら税額は0円です(国税庁令和8年分 源泉徴収税額表)。令和7年分までの88,000円未満から引き上げられたため、古い資料の「月8.8万円以下に抑える」という目安は令和8年分には当てはまりません。

専従者給与と配偶者控除・扶養控除の損得比較

家族を専従者にすると、その家族について配偶者控除や扶養控除が使えなくなります。どちらが得かは、事業主の所得と給与額で決まります。

専従者になると外れる控除と、外れないケース

所得税法2条1項33号・34号は、同一生計配偶者と扶養親族から「青色事業専従者で給与の支払を受けるもの」と「事業専従者」を除いています。19歳以上23歳未満の子を対象とする特定親族特別控除(84条の2)も同じです。年の途中で1か月分でも専従者給与を受ければ、その年はこれらの控除の対象になりません。

この除外は「その事業主の専従者」に限りません。国税庁の質疑応答事例では、生計を一にする父の事業で青色事業専従者として年84万円を受けている妻について、会社員の夫は配偶者控除を受けられないとしています。逆に、青色事業専従者給与の届出をしていても、その年に給与を1円も払わなかった配偶者は除外の対象にならず、所得要件を満たせば配偶者控除の対象です。配偶者控除の要件と申告方法は配偶者控除は令和8年分から配偶者の年収136万円まで|戻る税額と申告書の書き方、扶養控除との違いは扶養控除と配偶者控除の違い|令和8年分は年収136万円が共通ラインを参照してください。

配偶者控除38万円と専従者給与の損益試算

次の前提で、配偶者を専従者にしない場合と、月9万円・月9.5万円の専従者給与を払う場合の令和8年分の税額を比べます。事業主は青色申告特別控除65万円を引いた後の事業所得が600万円(専従者給与を払う前)、社会保険料控除90万円、ほかの所得控除なし。配偶者は70歳未満で他の収入がなく、均等割の非課税限度額が所得45万円の地域を想定します。住民税は令和9年度分として所得割10%、調整控除2,500円、均等割4,000円と森林環境税1,000円を含めて計算しています。

項目 配偶者控除38万円 専従者給与 月9万円 専従者給与 月9.5万円
専従者給与(年額) 0円 108万円 114万円
事業主の合計所得 600万円 492万円 486万円
事業主の基礎控除 67万円 67万円 104万円
事業主の課税所得 405万円 335万円 292万円
事業主の所得税(復興税込み) 約39万500円 約24万7,500円 約19万8,500円
事業主の住民税 43万6,500円 36万1,500円 35万5,500円
配偶者の所得税・住民税 0円 0円 0円
世帯の税額合計 約82万7,000円 約60万9,000円 約55万4,000円

配偶者控除38万円を使うより、月9万円の専従者給与を払う方が世帯の税額は約21万8,000円少なくなります。差の大部分は、事業主の所得から引く額が38万円から108万円に増えることと、配偶者側では給与所得控除と基礎控除の範囲に収まって税金がかからないことから生まれます。

月9.5万円にするとさらに約5万5,000円減ります。事業主の合計所得が492万円から486万円に下がり、令和8・9年分の基礎控除が67万円から104万円に37万円増えるためです。基礎控除が切り替わる合計所得489万円の前後で税額が大きく変わる仕組みは年収500万円の個人事業主の税金は59万7,000円|令和8年分の手取りと489万円の崖で詳しく扱っています。小規模企業共済やiDeCoの掛金は所得控除なので合計所得金額を下げませんが、専従者給与は必要経費なので合計所得金額そのものを下げます。

この試算は所得税と住民税だけを比べたものです。国民健康保険料の所得割は、事業主については専従者給与を差し引いた後の所得で計算し、国保に加入する専従者本人の給与所得も計算対象に含めます。一方、7割・5割・2割軽減の判定では専従者給与を差し引かずに計算します(国民健康保険法施行令29条の7)。専従者給与の支払いによる所得の付け替えだけでは、軽減判定所得は下がりません。もともと軽減基準を満たす世帯は、専従者給与を払っていても軽減対象になります。国保料の計算は個人事業主の国民健康保険はいくら?令和8年度の早見表と安くする方法を参照してください。

専従者給与と扶養関係の控除を比較すべき条件

次の場合は、失う控除額、給与額、世帯の税負担、手続きの負担を比較して判断します。事業主の税率が低い場合や19歳以上23歳未満の子の場合でも、給与額によっては専従者給与の方が有利になります。

  • 払える給与が年38万円前後以下:所得税の配偶者控除38万円・住民税の配偶者控除33万円(事業主の合計所得900万円以下の場合)と差し引く額がほぼ同じか少なくなり、減る税額は小さいか、かえって増えます。合計所得489万円の境目をまたぐ場合は基礎控除が変わるため、両方を計算して比べます。
  • 事業主の課税所得が小さい:所得税率5%の事業主なら、給与10万円あたりの減税は所得税約5,100円と住民税1万円程度です。税率だけで決めず、年間の減税額と、届出・源泉徴収・年末調整の手間を比べます。
  • 19歳以上23歳未満の子:特定扶養親族の扶養控除63万円を失います。子にほかの所得がなければ、給与が63万円(住民税の特定扶養控除は45万円)を超えた分だけ事業主の差し引く額が増えるため、税率が5%の事業主でも専従者給与の方が税額は少なくなり得ます。事業主の減税額は、所得税では「給与と63万円の差額×所得税率」が目安ですが、住民税では控除額が45万円なので別に計算します。さらに、基礎控除や税率の変化、子本人の税負担も反映して世帯で比較します。
  • 家族がほかで働いている:他に職業を持つ期間は専従期間に数えないため、要件を満たさないおそれがあります。

迷う場合は、上の表と同じ方法で両方の世帯の税額を計算してから届出額を決めてください。

専従者給与を払う事業主の源泉徴収・年末調整・社会保険

専従者給与を払い始めると、事業主は家族に対しても給与の支払者としての事務を負います。

給与支払事務所等の開設届と源泉所得税の納期の特例

初めて給与を払うときは、開設から1か月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を所轄税務署へ出します。源泉徴収した所得税は原則として支払った月の翌月10日までに納めますが、給与の支給人員が常時10人未満なら「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出すことで、1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納められます(国税庁 No.2505)。令和8年分の月額表で税額0円の範囲の給与なら、納付額は0円で、納付書(所得税徴収高計算書)の提出だけになります。

なお、令和9年分以後の給与には防衛特別所得税1%が加わる一方、復興特別所得税は2.1%から1.1%に下がり、両税の合計税率は2.1%のままです。

年末調整と給与支払報告書

専従者から扶養控除等申告書を受け取っている場合は、その年最後の給与を払うときに年末調整をします。令和8年分は基礎控除などの改正が12月1日に施行され、11月までの源泉徴収は改正前の計算のまま、12月の年末調整で1年分を精算します。給与支払報告書は原則として翌年1月31日までに、翌年1月1日現在の専従者の住所地の市区町村へ提出し、本人には源泉徴収票を交付します。令和8年分の期限は、休日の関係で令和9年2月1日(月)です。

労働保険・社会保険での家族従業員の扱い

税法上の専従者であることと、労働保険・社会保険で「労働者」「被保険者」になるかどうかは別の判断です。

  • 雇用保険:事業主と同居している親族は、原則として被保険者になりません。事業主の指揮命令に従っていることが明確で、就業の実態と賃金がほかの労働者と同様であり、取締役など事業主と利益を一にする地位にない場合に限り、被保険者になることがあります。資格取得届には「同居の親族」雇用実態証明書と、本人とほかの労働者1名分の雇用契約書・賃金台帳・出勤簿などを添えます(ハローワーク飯田橋の案内)。
  • 労災保険:労働基準法は同居の親族のみを使う事業には適用されず(116条2項)、同居の親族は原則として労災保険の対象になる労働者に当たりません。同居の親族以外の労働者も使っていて、上と同様に就労実態が一般の労働者と同じ場合は例外です。家族だけで営む事業で業務中のけがに備えるには、業種ごとの特別加入制度の対象になるかを労働基準監督署で確認します。
  • 健康保険・厚生年金:個人事業所が強制適用となるのは、現在は常時5人以上を使う法定17業種の事業所です。それ以外でも、従業員の同意などの要件を満たせば任意適用を受けられます。2029年10月からは業種を問わず常時5人以上で適用対象になりますが、その時点で既にある従来の非適用業種の個人事業所は、当分の間、今回の強制適用拡大の対象外です(厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト)。ただし適用事業所であっても、個人事業所の事業主とその家族は、通常は「事業所に使用される者」に当たらず被保険者になりません。家族が例外として被保険者になるのは、就業規則・出勤簿による時間管理・賃金台帳による賃金計算がほかの従業員と同様で、かつ事業主の確定申告で専従者給与として支払われていない場合などです(日本年金機構 年金Q&A)。
  • 専従者の加入先:専従者給与を受ける家族の医療保険は、ほかの加入資格や年齢に応じて決まります。国民年金の第1号被保険者になるのは、原則として国内に住む20歳以上60歳未満で、第2号・第3号被保険者に当たらない人です。

よくある質問

専従者給与はいくらまで無税ですか?

令和8年分は、専従者本人にほかの所得がなければ、給与年178万円まで所得税がかかりません。住民税は令和9年度分で給与119万円以下なら非課税です(均等割は地域により基準が低い場合あり)。毎月の源泉徴収は、扶養控除等申告書を提出して月額表の甲欄を使う場合、社会保険料等控除後の給与が月105,000円未満なら0円です。ただし、事業主の経費として認められるのは、届出額の範囲で労務の対価として相当な額までです。

夫が自営業で妻が専従者になると、配偶者控除はどうなりますか?

妻が専従者として給与を1円でも受けた年は、夫は配偶者控除も配偶者特別控除も受けられません。白色申告の事業専従者控除を受ける場合も同じです。専従者給与の届出をしていても、その年に給与を払わなかった場合は、所得要件を満たせば配偶者控除の対象になります。

専従者がパートに出る場合も専従者給与を払えますか?

他に職業を持つ期間は、原則として専従期間に数えません。ただし、所得税法施行令165条2項は「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」を除いているため、短時間のパートで事業に専念できる実態があれば専従者になれる余地があります。勤務時間と事業に従事した時間を記録しておくことが前提です。

学生の子どもを専従者にできますか?

昼間の学校に通う学生や生徒の期間は、原則として専従期間に数えません。夜間の学校に通いながら昼間に事業へ従事する場合や、昼間の学校に通いながら夜間を主とする事業に従事する場合、常時は修学しない専修学校・各種学校の生徒などは例外です。夏休みだけ手伝う大学生は、6か月超の要件を満たしにくいのが通常です。

年金を受け取っている親を専従者にできますか?

年金の受給は「他に職業を有する」に当たらないため、ほかの要件を満たせば専従者にできます。老衰や心身の障害で事業に従事する能力が著しく損なわれている期間は専従期間に数えないため、実際に業務を担っていることが前提です。親が70歳以上で、年金などの所得を含めて扶養控除の要件を満たしている場合は、専従者になると老人扶養親族の扶養控除48万円(同居老親等なら58万円)を失うため、配偶者の場合と同じように損益を比べてから決めてください。

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