年金を受け取りながら個人事業を続けていると、利益が増えたぶん年金を止められるのではないかという不安が先に立ちます。結論を先に言えば、個人事業主が受け取る老齢厚生年金は、事業所得がいくらであっても1円も減りません。減額の対象になるのは厚生年金保険の被保険者と70歳以降も適用事業所に勤める人で、個人事業主本人はそこに入らないからです。日本年金機構の公表と条文にあたり、年金が減る働き方と減らない働き方を切り分けます。
まとめ
- 個人事業主本人は厚生年金保険の被保険者にならないため、在職老齢年金による支給停止は適用されない
- 対象になるのは会社勤めとの兼業か法人成りをした場合で、基準額は令和8年4月に月51万円から65万円へ引き上げられた
- 国民年金の保険料を納める義務は60歳で終わる。任意加入できるのは納付月数が480月に満たない人で、令和8年度の保険料は月17,920円
- 令和8年分の基礎控除は104万円(合計所得489万円以下の場合)、公的年金等控除の下限は65歳以上110万円・65歳未満60万円(年金以外の合計所得1,000万円以下の場合)
- 公的年金等の収入400万円以下かつ年金以外の所得20万円以下なら所得税の確定申告は不要。ただし住民税の申告は別に必要になる
- 青色申告特別控除65万円は複式簿記に加えてe-Taxか電子帳簿保存が要る。令和9年分からは65万円と75万円に組み替わり、いずれもe-Tax送信が必須になる
以下、それぞれの根拠と、年金180万円・事業所得155万円のケースでいくら納めるのかを順に示します。
個人事業主の事業所得が老齢厚生年金に影響しない理由
支給停止の対象範囲=厚生年金保険の被保険者と70歳以上被用者
日本年金機構の「在職老齢年金の計算方法」は、年金が止まる場面を「老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるとき」と限定しています。同じページはもう1つ、平成19年4月以降に70歳に達した人が70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務している場合は、被保険者でなくても在職による支給停止が行われる、という例外も置いています。裏を返せば、勤務先を持たない個人事業主はどちらの入口にも当たりません。
個人事業主が被保険者になるかどうかは、同機構の年金Q&Aが正面から答えています。個人事業所の事業主およびその家族については、通常「事業所に使用される者」に該当しないため被保険者にはならない、という記述です。厚生年金保険が被保険者とするのは適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人で、事業主は自分の事業所に使用される立場ではありません。従業員を常時5人以上雇っていて事業所そのものが強制適用事業所になっている場合(農林漁業・サービス業等を除く業種、および令和4年10月から加わった士業)でも、加入するのは従業員であって事業主本人ではないため結論は変わりません。事業所得が500万円でも1,000万円でも、老齢厚生年金は全額支給されます。
令和8年4月の基準額引上げ(月51万円から65万円へ)
令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、令和8年4月から基準額が月51万円から65万円に引き上げられました。基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら全額支給、超えた場合は「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2」が支給額になります。基本月額は加給年金額を除いた報酬比例部分の月額、総報酬月額相当額は標準報酬月額にその月以前1年間の標準賞与額を12で割った額を足したものです。65万円は令和8年度の支給停止調整額で、毎年度賃金の変動に応じて改定されます。
法人成りで支給停止の対象側へ移る仕組み
ここは判断が分かれる場面なので言い切ります。年金の支給停止だけを見れば、受給しながら働く人にとって法人成りは不利です。日本年金機構は強制適用事業所を「株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)」と定めています。従業員がいない1人法人でも、自分に役員報酬を出せば厚生年金の被保険者になり、在職老齢年金の判定に入ります。
| 働き方 | 厚生年金の被保険者 | 在職老齢年金による支給停止 |
|---|---|---|
| 個人事業主本人 | ならない | 対象外 |
| 1人法人の役員(70歳未満・報酬あり) | なる | 対象 |
| 1人法人の役員(70歳以上・報酬あり) | ならない | 対象(70歳以上被用者) |
| 個人事業と会社勤めの兼業 | なる | 対象 |
70歳で被保険者資格は外れますが、適用事業所に勤め続ける限り支給停止は続きます。法人化による節税額が支給停止で失う年金額を上回るかどうか、役員報酬の月額を決める前に並べて試算してください。報酬をゼロにすれば被保険者にはなりませんが、その場合は社会保険料の負担を根拠にした法人化のメリット自体が消えます。
60歳以降の国民年金保険料と任意加入の判断
60歳での第1号被保険者資格喪失と納付義務の終了
国民年金の第1号被保険者は、日本年金機構の定義で「20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方など」です。60歳に達した日(誕生日の前日)に資格を失い、事業を続けていても保険料の納付書は届きません。混同しやすい国民健康保険料は75歳で後期高齢者医療制度へ移るまで課され続けます。60歳を境になくなるのは年金保険料だけです。国民年金の加入区分と免除の全体像は個人事業主が最初に理解すべき国民年金の仕組みと第1号被保険者の位置づけで扱っています。
任意加入の条件と回収までの年数
60歳時点で40年分の保険料を納め終えていない場合は、任意加入で年金額を増やせます。日本年金機構が示す条件は次の4つをすべて満たすことです。
- 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満であること
- 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないこと
- 20歳以上60歳未満の保険料納付月数が480月(40年)未満であること
- 厚生年金保険や共済組合等に加入していないこと
受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の人も加入できます。繰上げ受給を選んだ時点で任意加入の道が閉じる点は、繰上げを検討する際に見落とされがちです。
採算は計算できます。令和8年度の国民年金保険料は月17,920円、同年度の老齢基礎年金は満額で年847,300円(昭和31年4月2日以後生まれ、月額70,608円)です。満額は480月に対応するので、1か月分の任意加入で増える年金は年約1,765円。17,920円を払って毎年1,765円ですから、受給を始めてからおよそ10年で払った保険料を回収する計算になります。あわせて月400円の付加保険料を納めれば、納付月数×200円が毎年の年金に加算され、2年で元が取れます。ただし付加保険料を納められるのは第1号被保険者と65歳未満の任意加入被保険者までで、国民年金基金の加入員は対象外です。納めた保険料は全額が社会保険料控除の対象になります。
年金と事業所得がある人の令和8年分の確定申告の要否
公的年金等400万円以下かつ年金以外の所得20万円以下という3要件
確定申告不要制度の根拠は所得税法121条3項です。条件は3つで、公的年金等の収入金額が400万円以下であること、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象であること、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であることを、すべて満たす必要があります。
実務で最も間違えられるのが2つ目の「20万円」の中身です。これは事業収入ではなく事業所得、つまり収入から必要経費を差し引いた後の金額を指します。さらに租税特別措置法25条の2第1項は、事業所得の金額を「次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除した金額とする」と定めており、青色申告特別控除を引いた後が事業所得の金額です。ただし55万円と65万円の控除は期限内に確定申告書を提出することが適用要件なので、申告しない前提で65万円を引いて20万円以下だと判定する組み立ては成り立ちません。申告しない選択とセットで使えるのは10万円控除までです。
20万円超でも納税額が出ない条件
20万円を超えたら必ず申告義務が生じるわけではありません。所得税法120条1項が申告書の提出を求めるのは、所得控除を差し引いた後の金額に税率を適用して計算した所得税の額が、配当控除の額を超えるときです。年金の雑所得と事業所得を足した合計所得金額が所得控除の合計以下なら、そもそも税額が立たないので申告義務は生じません。
65歳以上で年金以外に所得がない人の分岐点は、公的年金等控除110万円と基礎控除104万円を足した年金収入214万円で、事業所得が加わるとこの線は下がります。申告義務がない場合でも、年金から源泉徴収されていれば所得税法122条の還付申告で取り戻せます。医療費控除や寄附金控除を使いたい年は、義務の有無と関係なく申告したほうが有利になるでしょう。申告書の作り方と令和8年分の期限は個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円にまとめています。
住民税に20万円ルールが無い理由
地方税法317条の2第1項ただし書が住民税の申告を不要としているのは、その年に「公的年金等に係る所得以外の所得を有しなかつた」場合だけです。自治体の条例で非課税者を申告不要としている場合を除き、事業所得が1円でもあれば市区町村への住民税申告が必要になります。所得税の確定申告をすればその内容が市区町村へ回るため住民税の申告は要りませんが、20万円以下だから所得税は申告しないと決めた年は、住民税だけを別に申告することになります。
年金雑所得と事業所得を合算した令和8年分の税額計算
公的年金等控除の下限=65歳以上110万円・65歳未満60万円
公的年金等控除は所得税法35条4項1号で「40万円+(収入金額-50万円)×25%」と定められ、この計算結果が60万円に満たないときは60万円が下限になります(25%が適用されるのは収入410万円までの区分で、それ以上は率が段階的に下がります。いずれも年金以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合)。租税特別措置法41条の15の3第1項が、65歳以上についてこの下限を110万円に読み替えます。読み替わるのは下限だけで計算式は年齢で変わらず、65歳以上かどうかはその年の12月31日の年齢で判定します。
| 公的年金等の収入金額 | 65歳以上の控除額 | 65歳未満の控除額 |
|---|---|---|
| 130万円 | 110万円 | 60万円 |
| 180万円 | 110万円 | 72万5,000円 |
| 240万円 | 110万円 | 87万5,000円 |
| 300万円 | 110万円 | 102万5,000円 |
| 330万円 | 110万円 | 110万円 |
| 400万円 | 127万5,000円 | 127万5,000円 |
65歳以上は収入330万円まで110万円で一定です。65歳未満は下限60万円が効くのが収入130万円までで、そこから先は計算式に切り替わり、330万円で65歳以上に追いつきます。
事業所得の計算=必要経費と青色申告特別控除の控除後
事業所得は事業収入から必要経費を引き、さらに青色申告特別控除を引いて求めます。ここで国民年金保険料や国民健康保険料を必要経費に入れる誤りが目立ちますが、これらは所得税法74条1項の社会保険料控除であって(国民年金保険料は同条2項5号、国民健康保険料は2号)、事業の必要経費ではありません。所得控除の側で引くため事業所得の金額は変わらず、翌年度の国民健康保険料の算定にも影響しない点が経費との決定的な違いです。経費と所得控除の効き方の差は個人事業主の経費と控除の違い|1万円で減る税金と令和8年分の所得控除16種で数字を並べています。
年金180万円・事業所得155万円の計算例
68歳、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計が年180万円、事業収入300万円、必要経費80万円、青色申告特別控除65万円、国民健康保険料と介護保険料の合計30万円という前提で計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 公的年金等の収入金額 | 1,800,000円 |
| 公的年金等控除 | 1,100,000円 |
| 年金の雑所得 | 700,000円 |
| 事業収入 | 3,000,000円 |
| 必要経費 | 800,000円 |
| 青色申告特別控除 | 650,000円 |
| 事業所得 | 1,550,000円 |
| 合計所得金額 | 2,250,000円 |
| 基礎控除 | 1,040,000円 |
| 社会保険料控除 | 300,000円 |
| 課税所得金額 | 910,000円 |
| 所得税(税率5%) | 45,500円 |
| 復興特別所得税を含む年税額 | 46,400円 |
基礎控除が104万円になるのは、合計所得金額225万円が489万円以下だからです。所得税法86条1項1号の62万円に、租税特別措置法41条の16の2第1項1号イの42万円を加算します。合計所得金額が489万円を超えると加算は5万円に落ちて基礎控除は67万円、655万円を超えると加算がなくなり62万円(合計所得2,350万円以下の場合。それを超えると48万円・32万円・16万円と逓減し、2,500万円超はゼロ)です。事業が伸びた年に手取りの目減りが急に大きく感じられるのは、この段差が効くためでしょう。
課税所得91万円は195万円以下の帯なので税率5%、これに復興特別所得税2.1%を上乗せして年税額は46,400円になります。年金からは受給の都度5.105%が源泉徴収されているので、実際に納めるのは表の年税額46,400円からその源泉徴収税額を差し引いた残りです。源泉徴収された額のほうが多ければ差額が還付されます。令和8年分については、年金の源泉徴収が11月の支払分まで改正前の控除額で行われ12月の支払時に1年分を精算する特殊な扱いになっており、精算の対象と対象外の切り分けは年金受給者が確定申告しないとどうなる?令和8年分は12月の精算後も申告が要る人がいるで整理しています。
青色申告特別控除65万円の追加要件と令和9年分の改正
65万円の追加要件=e-Taxか電子帳簿保存
令和8年分の青色申告特別控除は租税特別措置法25条の2で3段階に分かれます。簡易な記帳による10万円が第1項、複式簿記による55万円が第3項、55万円の要件に加えてe-Taxによる送信または電子帳簿保存の要件を満たすと65万円になるのが第4項です。複式簿記さえ付けていれば自動的に65万円になるわけではなく、e-Taxも電子帳簿保存もしなければ55万円で止まります。
手続きの期限も落とし穴です。青色申告の承認申請書は、適用を受けたい年の3月15日までに提出しなければなりません。その年の1月16日以後に事業を始めた場合は開業日から2か月以内です(所得税法144条)。年金を受け始めてから事業を立ち上げた人は、開業届と同時に出しておくのが確実でしょう。55万円と65万円は期限内申告が要件なので、令和8年分の申告期限である令和9年3月15日(月)に1日でも遅れると10万円に落ちます。
令和9年分の65万円・75万円への組み替え
令和8年法律第12号による改正で、令和9年分から控除額の構成が変わります。複式簿記による控除が第4項の65万円になり、電子帳簿保存法の優良な電子帳簿の要件などを満たすと第5項の75万円になります。ここで見落とせないのが第7項で、第4項の適用そのものが「確定申告書の提出期限までに電子情報処理組織を使用して情報を送信した場合に限り」と条件づけられている点です。つまり令和9年分は、複式簿記だけでは65万円に届かず、e-Tax送信が必須になります。紙で提出すれば10万円です。
あわせて第2項で10万円控除にも制限が入り、前々年分の事業所得の総収入金額が1,000万円を超える人は適用対象から外れます。売上1,000万円超で複式簿記をしていない人は、令和9年分から青色申告特別控除がゼロになるということです。年金と事業を並行している人ほど記帳を簡易なままにしがちなので、令和8年のうちに複式簿記とe-Taxに対応した会計ソフトへ切り替えておくべきです。なお国税庁のタックスアンサーは改正前の記述が残る場合があるため、金額は条文か最新の手引で確認してください。
青色事業専従者化で変わる2つの扱い
配偶者に支払う給与を必要経費にできるのが青色事業専従者給与です(所得税法57条1項)。ただし給与の支払を受ける配偶者は所得税法2条1項33号の同一生計配偶者から除かれるため配偶者控除の対象外になり、配偶者特別控除も83条の2第1項が青色事業専従者等を除いています。親族については2条1項34号が扶養親族の定義から除いており、白色申告の事業専従者も同じく扶養親族から外れます。専従者給与を年60万円払って配偶者控除38万円を失うなら差引きで得ですが、支払額が控除額を下回る設計にすると損をします。届出書の期限は承認申請と同じ3月15日、1月16日以後の開業なら2か月以内です(同条2項)。
社会保険の側でも扱いが変わります。日本年金機構は、事業主の家族が厚生年金の被保険者になるかを判定する確認項目の1つに「事業主の確定申告で専従者給与として支払われていないか」を挙げています。専従者給与を出している家族は通常この確認項目を満たさないため、被保険者として扱われません。なお白色申告の場合は届出こそ不要ですが、必要経費とみなされる額は配偶者86万円・その他の親族50万円が上限です(同条3項)。
申告内容が翌年度の住民税と国民健康保険料に反映される時期
令和8年分の確定申告(受付は令和9年2月16日から3月15日)の内容が、令和9年度の住民税、国民健康保険料、介護保険料の算定基礎になります。事業を縮小した年でも保険料は前年の所得で計算されるので、負担が下がるのは1年遅れです。廃業や減収を予定しているなら、このずれを見込んで資金を残してください。
負担を下げる手段としては、青色申告特別控除と所得控除で効き方が違う点を押さえておくと判断を誤りません。青色申告特別控除は事業所得の金額そのものを減らすので、所得税・住民税・国民健康保険料の3つすべてに効きます。一方、社会保険料控除やiDeCoの掛金のような所得控除は、所得税と住民税は下げても国民健康保険料は1円も下げません。国民健康保険法施行令29条の7が所得割の算定基礎とするのは、所得控除前の総所得金額等から地方税法314条の2第2項1号の基礎控除43万円だけを引いた額だからです。保険料の実額は個人事業主の国民健康保険はいくら?令和8年度の早見表と安くする方法、住民税の内訳は住民税はいくら?年収別早見表と均等割・所得割の内訳、市民税所得割額の確認方法【令和8年度】で確認できます。
よくある質問
年金をもらいながら個人事業主として働くと年金は減りますか?
減りません。在職老齢年金の支給停止は厚生年金保険の被保険者が対象で、個人事業主本人は「事業所に使用される者」に該当せず被保険者にならないためです。事業所得が1,000万円あっても老齢厚生年金は全額支給されます。減額の判定に入るのは、会社勤めと兼業して厚生年金に加入している場合、法人成りして自分に役員報酬を出している場合、そして70歳以降も厚生年金適用事業所に勤めている場合の3つです。
国民年金保険料や国民健康保険料は必要経費にできますか?
できません。所得税法74条1項が定める社会保険料控除として、所得控除の側で差し引きます(国民年金保険料は同条2項5号、国民健康保険料は2号)。事業主本人の分だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の保険料を本人が支払った場合も、支払った人の控除に含められます。必要経費なら翌年度の国民健康保険料まで下がりますが、所得控除にその効果はありません。世帯内で誰が払うかは、所得の高い側に寄せられないか検討してください。
事業が赤字のとき年金の所得と相殺できますか?
できます。事業所得の損失は所得税法69条1項の損益通算により、雑所得である年金の所得から差し引けます。年金収入180万円・65歳以上で雑所得70万円、事業が30万円の赤字なら、合計所得金額は40万円です。ただし相殺には確定申告が必要で、20万円ルールを使って申告しなければ源泉徴収された税額は戻ってきません。青色申告なら通算しきれなかった損失を翌年以後3年間繰り越せます(同法70条1項)。赤字の年こそ申告しておく実益があります。
公的年金等の源泉徴収票はいつ届きますか?
毎年1月の上旬から中旬にかけて日本年金機構から送付されます。令和7年分の場合は、はがきの源泉徴収票が令和8年1月8日から15日にかけて順次送付され、マイナポータルへの電子送付は1月6日から7日でした。郵便事情を考慮して8日程度は待つよう案内されています。届かない場合や紛失した場合は、年金事務所やねんきんダイヤルで再交付を受けられます。確定申告書には添付を求められませんが、収入金額と源泉徴収税額の転記に使うため手元に置いてください。
確定申告をしないとどうなりますか?
申告義務があるのに提出しなかった場合は、無申告加算税と延滞税がかかります。無申告加算税は国税通則法66条1項から3項で原則15%(納付税額50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%)ですが、調査の通知を受ける前に自主的に申告すれば同条8項で5%まで下がります。さらに法定申告期限から1か月以内の自主的な申告で一定の要件を満たす場合は、同条9項で課されません。令和8年の延滞税は納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降は年9.1%です。気づいた時点ですぐ出すほど負担が軽くなります。
65歳未満で年金を受けながら事業をしています。年金収入はいくらまで所得税がかかりませんか?
所得控除が基礎控除だけの前提なら、年金収入175万3,333円までです。65歳未満は公的年金等控除の下限60万円が効くのが収入130万円までで、そこから先は計算式に切り替わるため、60万円と基礎控除104万円を足した164万円を境目とする計算は誤りになります。日本年金機構が令和8年度から164万円という数字を公表していますが、これは源泉徴収を行うかどうかの基準であって課税・非課税の境目ではありません。なお住民税は基礎控除が43万円と別物なので、所得税がかからなくても住民税は課される点にも注意してください。65歳以上の分岐点は214万円です。