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年金受給者が確定申告しないとどうなる?令和8年分は12月の精算後も申告が要る人がいる

年金受給者が確定申告しないとどうなる?令和8年分は12月の精算後も申告が要る人がいる

年金受給者が確定申告をしない場合の扱いは、申告義務の有無と、還付を受けられるかどうかで異なります。公的年金等の収入が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象となり、公的年金等以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です(所得税法121条3項)。問題は、令和8年度税制改正で基礎控除が104万円に上がった令和8年分です。日本年金機構は令和8年12月の年金支払い時に1年分の税額を精算すると公表していますが、この精算に入らない控除が複数あり、申告しなければ戻らないまま終わります。この記事では、申告義務が生じる線引き、申告しなかったときに起きること、義務がなくても申告すべき人を、条文と国税庁・日本年金機構の資料で整理します。公的年金等控除の速算表(令和2年分以後で令和8年分も同じ)も載せています。

まとめ:令和8年分の年金受給者に必要な確定申告の判断

  • 公的年金等の収入400万円以下、その全部が源泉徴収の対象、公的年金等以外の所得20万円以下という3要件を満たせば、所得税の確定申告は不要です。出さなくても加算税は生じません。
  • 申告義務があって納める税額があるのに出さなかった場合は、本税に加えて無申告加算税15%〜30%(調査通知前に自主的に出せば5%)と延滞税がかかります。延滞税の割合は暦年ごとに決まり、令和8年中は年2.8%・年9.1%です。年金の支払額は支払者から税務署と市区町村へ報告されるので、無申告は把握されます。
  • 令和8年分は11月の支払いまで改正前の基礎的控除額で源泉徴収し、12月の支払いで改正後の基礎的控除額による源泉徴収税額を精算します。ただし、年金だけの方でも確定申告が必要な場合があります。
  • 医療費控除や、改正で新たに扶養の要件(合計所得62万円以下)を満たした配偶者以外の親族の扶養控除は12月の精算に入らず、確定申告をしないと取り逃します。配偶者は合計所得95万円以下なら源泉徴収の段階で既に控除されています。
  • 公的年金等控除の表は令和2年分から変わっていません。年金以外の合計所得が1,000万円以下なら、65歳以上で年金330万円未満の雑所得は「収入-110万円」、65歳未満で130万円未満は「収入-60万円」です。いずれも最低0円です。
  • 年金以外の所得がなく、公的年金等控除と基礎控除だけで計算する令和8年分の目安は、65歳以上で214万円、65歳未満で約175万円です。令和9年分以後の源泉徴収対象外の基準額(65歳以上214万円未満・65歳未満164万円未満)とは区別してください。
  • 所得税の申告が不要でも、年金以外の所得について住民税申告が必要な場合があります。給与・年金の支払報告書だけで課税資料がそろう場合などの扱いは、住所地の市区町村で確認してください。

以下、判定の根拠と有利になる人の見分け方を見ていきます。

確定申告をしなかったときの帰結と加算税

申告義務が生じない3つの要件(所得税法121条3項)

確定申告不要制度の3要件は、所得税法121条3項に定められています。

  • 公的年金等の収入金額が400万円以下であること。複数の年金を受けている場合は合計額で判定します。
  • その公的年金等の全部が源泉徴収の対象であること。日本の年金保険者が支払う年金はこれに当たりますが、外国の公的年金は源泉徴収されないため、受給していると不要制度は使えません。
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下であること。給与所得、不動産所得、生命保険会社から受け取る個人年金の雑所得などをすべて合計します。

3つを満たす方が申告書を出さなくても、無申告として扱われることはありません。「年金受給者は毎年申告が必要」という説明を見かけますが、条文上は逆で、この層は申告義務の対象外です。

義務があるのに申告しなかった場合の無申告加算税と延滞税

申告不要制度の要件を満たさなくても、所得控除等によって申告義務が生じない場合があります。申告義務があり、期限後申告等で納付すべき税額が生じる場合は、原則として国税通則法66条の無申告加算税の対象になります。税率は納付すべき税額の区分ごとに変わります。

状況 50万円以下の部分 50万円超300万円以下 300万円超
税務調査で更正・決定を受けた 15% 20% 30%
調査通知後・決定を予知する前の期限後申告 10% 15% 25%
調査通知前に自主的に期限後申告 5%(66条8項)
法定申告期限から1か月以内の期限後申告 期限内納付等の要件を満たす場合のみ不適用

66条9項は、期限内申告の意思があったと認められる政令の要件を満たし、かつ法定申告期限から1か月を経過する日までに提出したものについて無申告加算税を適用しないと定めています。国税庁のNo.2024 確定申告を忘れたときは、その要件として期限後申告で納める税額の全額を法定納期限までに納付していることなどを挙げています。申告漏れに気づいた時点で早く出すほど負担が軽くなる構造です。延滞税は国税通則法60条2項が本則を年7.3%・年14.6%としていますが、特例により令和8年1月1日から12月31日までは納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降が年9.1%です(国税庁No.9205 延滞税の計算方法)。

年金の無申告が税務署に把握される仕組みと遡る期間

年金の収入は、受け取る本人が黙っていても税務署と市区町村に届きます。公的年金等の支払者は源泉徴収票を2通作り、翌年1月31日までに1通を税務署長へ提出します(所得税法226条3項)。市区町村へは公的年金等支払報告書が同じく1月31日までに出されます(地方税法317条の6第4項)。令和9年1月1日以後は、この支払報告書を市区町村に出せば税務署に源泉徴収票を出したものとみなされます(国税庁源泉徴収票のみなし提出の特例)。生命保険会社の個人年金も、支払調書の提出義務が所得税法225条1項に定められています。年金を受け取りながら申告をしない状態は、税務署の側から見れば数字の突き合わせで分かる状態です。

見逃されたまま時間が経っても、すぐには消えません。税務署が決定(申告が無い人の税額を決めること)をできる期間は法定申告期限から5年で(国税通則法70条1項)、偽りその他不正の行為で税を免れた場合は7年に延びます(同条5項)。収入を隠したり帳簿を偽ったりした無申告には、無申告加算税に代えて40%の重加算税が課されます(同法68条2項)。制度を誤解して申告を漏らした場合でも、気づいた年分は調査の通知前に出しておけば5%で済みます。

令和8年分に限って行われる12月支払時の1年分精算

11月までと12月で異なる基礎的控除額

令和8年度税制改正の施行は令和8年12月1日で、年金の源泉徴収事務が年の途中から切り替わります。日本年金機構は、令和8年11月の年金支払いまでは改正前の基礎的控除額を用いて源泉徴収を行い、令和8年12月の年金支払い時に改正後の額で計算した1年分の税額と既に源泉徴収した税額との精算を行い、還付すべき金額が生じる場合は原則としてその金額を還付する、と令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項(2026年6月17日更新)で公表しています。使う控除額は年齢と年金額で4通りに分かれます。

年齢 年金額 令和8年の各月の支払時 令和8年12月の精算時
65歳以上 242万円以下 月割額×25%+105,000円(下限175,000円) 月割額×25%+110,000円(下限180,000円)
65歳以上 242万円超 月割額×25%+100,000円(下限165,000円)
65歳未満 213万円以下 月割額×25%+105,000円(下限130,000円) 月割額×25%+110,000円(下限140,000円)
65歳未満 213万円超 月割額×25%+100,000円(下限125,000円)

公的年金等の源泉徴収税率は原則5.105%です。所得税率5%に、その所得税額の2.1%に当たる復興特別所得税を加え、5%×1.021で計算します。令和9年1月1日以後に生ずる所得は復興特別所得税が1.1%に下がり、代わりに所得税額の1%の防衛特別所得税が加わると国税庁のNo.1600が案内しています。5%×(1+1.1%+1%)で合計は5.105%のままです。扶養親族等申告書を出さなかった場合に税率が10.21%に上がるという説明が流通していますが、条文上10%が適用されるのは203条の3第3号・第6号の超過部分と、第7号の確定給付企業年金等だけです。老齢基礎年金や老齢厚生年金では提出の有無で税率は変わらず、差が出るのは障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・配偶者や親族に関する加算を受けられるかどうかだけです。日本年金機構も、各種控除の適用を受けない方は提出しなかった場合でも多く源泉徴収されることはない、と案内しています。

精算に含まれず確定申告が必要な控除

12月の精算は、扶養親族等申告書に記載済みの控除を改正後の金額に置き換えて計算し直すものです。したがって申告書に書きようがない控除は、精算しても反映されません。代表例が医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税)、雑損控除、そして年金以外の場所で支払った社会保険料や生命保険料です。

令和8年分で特に取りこぼしが出やすいのが扶養控除です。改正で扶養親族等の合計所得金額の要件が58万円以下から62万円以下に引き上げられました。令和8年分の一般の扶養親族は改正前の58万円基準で申告されているため、その親族の合計所得が58万円超62万円以下に収まる世帯は、要件を満たしているのに源泉徴収にも12月の精算にも反映されません。日本年金機構自身が「令和8年分の所得税において、新たに扶養親族等の要件を満たし、扶養控除等の適用を受ける場合には、原則として、確定申告をする必要があります」と明記しています。課税所得195万円以下の最低税率区分で扶養控除38万円を全額使える場合、減税額の目安は38万円×5%×1.021=19,399円です。配偶者は事情が違います。同じページの表では合計所得62万円超95万円以下の配偶者にも配偶者特別控除38万円が当てられており、源泉徴収の段階で95万円以下の配偶者は既に控除されています。配偶者控除と配偶者特別控除の区分は配偶者控除は令和8年分から配偶者の年収136万円まで|戻る税額と申告書の書き方、親を扶養する場合の金額は老人扶養控除の条件と金額|70歳以上の親は年金172万円以下・同居なら58万円【令和8年分】で確認できます。

年金にかかる所得税の計算と非課税になる年金収入

公的年金等控除の速算表(令和2年分以後は令和6年分・令和8年分も同じ)

年金は雑所得として課税され、所得金額は「収入金額-公的年金等控除額」で求めます。所得税法35条4項1号は控除額を40万円と収入に応じた段階計算の合計とし、最低保障を60万円と定めています。租税特別措置法41条の15の3第1項がこの60万円を65歳以上について110万円へ読み替えるため、65歳以上110万円・65歳未満60万円が下限です。65歳以上かどうかはその年の12月31日の年齢で判定します(同条4項)。65歳より前に受け取る特別支給の老齢厚生年金は65歳未満の区分です。

控除額の表は令和2年分から変わっていません。令和8年度税制改正で引き上げられたのは基礎控除で、公的年金等控除は据え置きです。したがって令和6年分の申告で使った表が、令和8年分にもそのまま使えます。国税庁のNo.1600 公的年金等の課税関係が載せている「公的年金等に係る雑所得の速算表(令和2年分以後)」のうち、年金以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合は次のとおりです。

年齢 年金収入の合計 雑所得の金額
65歳未満 60万円以下 0円
65歳未満 60万円超130万円未満 収入-60万円
65歳未満 130万円以上410万円未満 収入×0.75-27万5千円
65歳以上 110万円以下 0円
65歳以上 110万円超330万円未満 収入-110万円
65歳以上 330万円以上410万円未満 収入×0.75-27万5千円
共通 410万円以上770万円未満 収入×0.85-68万5千円
共通 770万円以上1,000万円未満 収入×0.95-145万5千円
共通 1,000万円以上 収入-195万5千円

年金以外の合計所得金額が1,000万円超2,000万円以下なら控除額が一律10万円、2,000万円超なら一律20万円少なくなります(所得税法35条4項2号・3号)。年金だけで暮らす方は1,000万円以下の表で足ります。国税庁の例では、65歳以上・年金収入350万円の雑所得は350万円×0.75-27万5千円=235万円です。65歳以上で年金収入240万円なら「収入-110万円」の行に入り、雑所得は130万円になります。

基礎控除104万円と214万円・175万円の分岐点

令和8年分の基礎控除は所得税法86条1項1号の62万円に、租税特別措置法41条の16の2第1項1号イの42万円が加算されて104万円です(合計所得金額489万円以下の場合)。合計所得が489万円を超えると加算は5万円となり67万円、655万円超2,350万円以下では加算はなく62万円です。2,350万円超は所得に応じて48万円・32万円・16万円となり、2,500万円超では適用されません。この加算は令和8年分と令和9年分の措置で、令和10年分以後は合計所得132万円以下について37万円加算の99万円に切り替わります。基礎控除と給与所得控除の関係は基礎控除と給与所得控除の違い|令和8年分は104万円と74万円で年収178万円まで所得税ゼロで整理しています。

公的年金等控除と基礎控除を足すと、所得税がかからない年金収入の上限が出ます。65歳以上は110万円が収入330万円まで一定の下限として働くため、110万円+104万円=214万円がそのまま分岐点になります。年金214万円なら雑所得は104万円、基礎控除104万円を引いて課税所得はちょうどゼロです。

65歳未満は同じ足し算が使えません。下限の60万円が効くのは収入130万円までで、それを超えると控除額は40万円+(収入-50万円)×25%の計算値に切り替わり、収入とともに増えていくためです。課税所得がゼロになる収入をこの式から解くと、175万3,333円が分岐点になります。年金170万円の場合、控除額は40万円+(170万円-50万円)×25%=70万円で、雑所得100万円は基礎控除104万円に届かず所得税はかかりません。「60万円+104万円=164万円まで」と計算すると、164万円から175万円の帯にいる方が課税されると誤解することになります。

混同しやすいのが、日本年金機構が公表している源泉徴収の対象とならない年金額です。令和9年分以後は、65歳以上では205万円未満から214万円未満へ、65歳未満では155万円未満から164万円未満へ引き上げられますが、これは月々の天引きを行うかどうかの実務上の閾値であり、年間の課税・非課税の境界とは計算根拠が違います。65歳以上は偶然どちらも214万円で一致しますが、65歳未満は164万円を超えても所得税がかからない帯があります。年金以外の収入と組み合わせた手取りの分岐点は年収の壁2026早見表|178万円・136万円・130万円の一覧と手取りの分岐点にまとめています。

申告義務がなくても申告した方が有利な人

申告不要制度は義務を免除するだけで、還付を受ける権利まで消すものではありません。年金から源泉徴収された税額が本来の税額を上回っていれば、確定申告で差額が戻ります。次に当てはまり、源泉徴収等で納め過ぎた所得税がある方は、還付申告を検討できます。12月精算後の源泉徴収税額が0円で他に納付済みの所得税もない方は、控除を追加しても所得税の還付はありません。

  • 年間の医療費が多かった方。総所得金額等が200万円未満なら足切りは10万円ではなく所得の5%です(所得税法73条1項)。年金240万円だけの65歳以上の方は雑所得が130万円なので、対象医療費から保険金等の補てん額を差し引いた残額のうち、6万5,000円を超える部分が控除対象です。
  • 国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料を口座振替や現金で払った方。年金天引き分は源泉徴収に反映されますが、それ以外の支払いは反映されません。
  • 令和8年分から新たに扶養の要件(合計所得62万円以下)を満たす配偶者以外の親族がいる方。
  • ふるさと納税をした方。年金受給者はワンストップ特例を使っても、確定申告をする場合は特例が無効になるため、申告書に寄附金控除を記載する必要があります。

還付を受けるための申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。令和8年分なら令和9年1月1日から令和13年12月31日までの5年間が提出できる期間です。医療費控除の対象範囲は医療費控除とは?対象・計算・申告方法と令和9年分の胃腸薬追加、保険料の計上方法は介護保険料は確定申告で全額控除|令和8年分の書き方といくら戻るかで確認してください。

年金以外に収入がある場合の判定

給与と年金を併せ持つ人の所得金額調整控除

年金を受け取りながら働いている場合、一定の要件を満たすと、給与所得控除後の給与所得からさらに所得金額調整控除を差し引けます。この控除を定めるのが租税特別措置法41条の3の11第2項の所得金額調整控除です。給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額の合計が10万円を超えるとき、それぞれ10万円を上限とした合計額から10万円を差し引いた額を給与所得から控除します。控除額の上限は10万円です。

判定そのものは121条3項で行います。パート収入がある場合、給与所得は、給与所得控除に加え、適用がある所得金額調整控除も差し引いて判定します。この給与所得と他の年金以外の所得の合計が20万円を超えると、年金の申告不要制度から外れます。令和8年分の給与所得控除の最低保障額は74万円なので、調整控除を使わなくても給与収入94万円までは給与所得が20万円以下に収まります。年金の雑所得が10万円以上ある方(65歳以上なら年金120万円以上)は調整控除10万円が加わり、給与収入104万円でも給与所得は104万円-74万円-10万円=20万円です。ただし給与から源泉徴収されている場合は、申告しないと戻る分も戻りません。年金を受けながら事業を営んでいる方の判定は年金をもらいながら個人事業主で働くと年金は減る?60歳以降の確定申告と青色申告を参照してください。

企業年金・個人年金を受けている人が申告しない場合

「年金」と名が付いても、判定上の位置づけは同じではありません。国民年金・厚生年金・共済年金・恩給と、企業年金連合会や確定給付企業年金などから受ける企業年金は所得税法35条3項の公的年金等に含まれ、400万円の枠で合算します。企業年金を足して400万円を超える方は、この申告不要制度の対象外です。所得控除等を反映して申告義務を判定し、無申告加算税は期限後申告等で納付すべき税額がある場合に原則として課されます。国税庁のNo.1600も、生命保険契約に基づく年金は公的年金等に当たらないと明記しています。

生命保険会社と契約した個人年金保険の年金は公的年金等ではなく、払込保険料のうち対応する部分を必要経費として引いた残額が雑所得になります。これは121条3項の「公的年金等に係る雑所得以外の所得」に入るため、20万円を超えると不要制度が使えません。個人年金からは所得税法208条により、年金額から対応する保険料を引いた額が25万円以上なら、その10.21%が天引きされます(国税庁No.1610)。これは仮の徴収です。公的年金等控除も使えないので、申告しないまま済むと考えるのは誤りです。前の節のとおり、生命保険会社は支払調書を税務署へ出しています。

遺族年金と障害年金は課税対象外です。国民年金法25条と厚生年金保険法41条2項が、租税その他の公課は給付として支給を受けた金銭を標準として課することができないと定め、老齢基礎年金・付加年金・老齢厚生年金だけをただし書で除いています。年金生活者支援給付金も、年金生活者支援給付金の支給に関する法律33条により非課税です。これらは400万円の判定にも合計所得金額にも入りません。

所得税が不要でも必要になる住民税の申告

所得税の確定申告不要制度は所得税法の規定であり、住民税には20万円以下を申告不要とする仕組みがありません。地方税法317条の2第1項ただし書が申告不要としているのは、公的年金等の支払を受けている者で「前年中において公的年金等に係る所得以外の所得を有しなかつた」場合に限られます。ただし、給与・年金の支払報告書が提出され、追加する所得や控除がない場合など、住民税申告を不要とする自治体もあります。住所地の申告案内で確認してください。

同じただし書は、社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除・配偶者特別控除・扶養控除、あるいは医療費控除や雑損控除、寄附金税額控除を受けようとする者を申告不要の対象から除いています。年金だけの方でも、公的年金等支払報告書に記載されていない控除を追加して住民税に反映させる場合は、申告が必要です。所得税の確定申告書を提出すれば住民税の申告をしたものとして扱われるため、二重に出す必要はありません。

令和9年分からは扶養親族等申告書の提出対象が広がります。従来の所得税の源泉徴収対象者に加え、住民税の各種控除を受けようとする年金受給者も提出することとされ、日本年金機構は65歳以上で年金額148万円以上、65歳未満で98万円以上の方へ、令和8年9月7日から順次送付しています(2026年9月3日更新の令和9年分の扶養親族等申告書の案内)。この基準は住民税の非課税限度額に対応しており、単身者の場合は級地区分ごとに1級地が65歳未満105万円・65歳以上155万円、2級地が101.5万円・151.5万円、3級地が98万円・148万円です(地方税法施行令47条の3第2号)。所得税が非課税でも住民税が課される帯があるのは、この限度額が所得税の214万円・175万円より低いためです。

申告の期限・必要書類・提出方法

令和8年分の確定申告期間は令和9年2月16日から3月15日までです。申告義務がない方の還付申告はこの期間に縛られず、令和9年1月1日から出せます。用意する書類は次のとおりです。

  • 公的年金等の源泉徴収票。日本年金機構から翌年1月に送られます。発送日や電子送付日は、その年の案内で確認してください。紛失した場合はねんきんネットまたはねんきんダイヤルで再交付を依頼できます。
  • マイナンバーカードなどの本人確認書類と、還付金を受け取る本人名義の口座情報。通知カードを番号確認に使う場合は、氏名・住所等が住民票の記載と一致している必要があります。
  • 適用を受ける控除の証明書。国民健康保険料や介護保険料の納付証明書、生命保険料控除証明書、医療費通知や領収書、寄附金の受領証明書など。
  • 年金以外に収入がある場合は、給与の源泉徴収票や個人年金の支払調書など収入額のわかる書類。

提出方法は、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成してe-Taxで送信する方法、作成コーナーで印刷して郵送する方法、税務署へ持参する方法があります。マイナポータル連携を使うと公的年金等の源泉徴収票のデータを自動で取り込めるため、転記ミスを避けられます。スマートフォンでの手順と対応機種はe-Taxのスマホ対応機種一覧はどこ?Android・iPhoneの条件と確定申告のやり方【2026年10月】にまとめています。

よくある質問

年金だけで暮らしていますが、確定申告をしないと税務署から連絡が来ますか?

公的年金等の収入が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象となり、公的年金等以外の所得が20万円以下なら申告は不要であるため、提出しなくても無申告にはならず、督促や加算税の対象にもなりません。

令和8年12月に精算されるなら、確定申告はしなくてよいのですか?

12月の精算は源泉徴収税額の計算し直しで、申告義務の判定は別です。年金が400万円以下で全部が源泉徴収の対象、他の所得が20万円以下なら、精算後に申告しなくても問題はありません。年金が400万円を超える方は精算後も申告不要制度の対象外です。医療費控除やふるさと納税、令和8年分から新たに扶養に入った配偶者以外の親族の控除を使う場合は精算に含まれないため、確定申告をします。

特別支給の老齢厚生年金を受けていますが、申告は必要ですか?

判定の考え方は65歳以降と同じで、400万円と20万円の2つの基準で判断します。ただし公的年金等控除は65歳未満の60万円が下限で、所得税がかからない上限は約175万円(175万3,333円)です。年齢はその年の12月31日時点で判定するため、年の途中で65歳になった年は110万円・214万円で計算します。

扶養親族等申告書を出し忘れました。どうなりますか?

源泉徴収の税率は5.105%のままで変わりません。変わるのは控除額で、障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除や配偶者・親族に関する加算が源泉徴収に反映されなくなります。多く引かれた分は確定申告で取り戻せます。

過去に申告し忘れた年があります。今から出せますか?

還付になる年分は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。納付が生じる年分については、税務調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば無申告加算税は5%に、法定申告期限から1か月以内の自主的な申告で、原則として期限内に全額納付済みであることなどの要件を満たす場合は不適用になります。気づいた時点で早く提出するほど負担が軽くなります。

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