HOHO(ホーホー)は「His Office, Her Office」の略で、定年や子どもの独立で時間ができた夫婦が、自宅にそれぞれ仕事場を構えて別々に働くスタイルを指す言葉です。フクロウの鳴き声の「ホーホー」とは関係がありません。法律や統計の用語ではないため、この記事では言葉の意味とSOHOとの違いを整理し、夫婦がそれぞれ個人事業を始める場合の開業手続き・経費・年金の扱いを確認します。
まとめ:HOHOの意味と始める前に押さえる要点
- HOHOは「His Office, Her Office」の略。夫婦が自宅にそれぞれのオフィスを持ち、別々の仕事で収入を得る働き方。
- SOHOは自宅や小規模事務所で働く形態の総称で、HOHOは夫婦が自宅にそれぞれ仕事場を持つ働き方として紹介される言葉。本記事では夫婦が別々の個人事業を営む場合を扱う。
- 日本の65歳以上の就業者は2025年に943万人で、従業上の地位の内訳では自営業主・家族従業者が239万人(25.6%)。
- 夫婦がそれぞれ個人事業を開業する場合、開業届は各自が提出し、青色申告を希望する人は承認申請も各自で行う。
- 生計を一にする夫の家の一室を妻が事業用に借りて家賃を払っても、所得税法56条により、その家賃は妻の必要経費にならない。
- 個人事業の事業所得は在職老齢年金の調整計算に入らない。会社勤めを並行して厚生年金に加入する場合の報酬、70歳以上で会社に勤める場合、法人化して役員報酬を受ける場合は別。
HOHOの意味と由来:His Office, Her Officeの略
日本の用語解説での定義
人事用語辞典『日本の人事部』HRペディア(2014年10月掲載)は、HOHOを「定年を迎えたり子どもが独立したりして時間に余裕ができた夫婦が自宅にそれぞれオフィスを構えて、在宅で働くワークスタイル」と定義しています。具体像として挙げられているのは、退職後にかつての同僚や取引先から仕事を頼まれるケースと、子育てを終えた人が趣味や挑戦してみたかったことに打ち込むうちに起業に至るケースです。子どもが独立して空いた部屋を、それぞれの仕事場に充てる想定です。
この解説も、人事労務の用語集として知られるカオナビの解説も、言葉の提唱者や初出の文献は示していません。読み方は「ホーホー」です。ここでは日本の用語解説に見られる意味を紹介し、英語圏での普及度や提唱者については断定しません。
アメリカのベビーブーマー世代との関係(生年は1946〜1964年)
HOHOは、アメリカのベビーブーマー世代が退職後も仕事を続ける生き方として紹介されてきました。日本語の解説には「1947年生まれから64年生まれ」と書くものがありますが、米国勢調査局の資料はベビーブーマーを1946年から1964年生まれとしています。1947〜1949年生まれの日本の団塊の世代とは、生年の範囲を区別して扱います。
HOHOとSOHOの違い:働く人の単位と場所
SOHO(Small Office/Home Office)は、個人事業主や少人数の会社が自宅や小さな事務所で仕事をする形態の総称です。年齢や家族構成は問いません。HOHOは夫婦が自宅にそれぞれ仕事場を持つ点に着目した言葉で、本記事では夫婦が別々の個人事業を営む場合を想定して比較します。
| 比較軸 | HOHO | SOHO |
|---|---|---|
| 働く人 | 夫婦がそれぞれ | 1人または少人数 |
| 働く場所 | 自宅(それぞれの部屋) | 自宅または小規模事務所 |
| 想定する人 | 退職・子育て終了後の夫婦 | 年齢・家族構成を問わない |
| 本記事の想定 | 夫婦それぞれが個人事業主 | 個人事業主または小規模法人 |
| 主な論点 | 夫婦間の家賃・経費の線引き | 事務所費・雇用の有無 |
夫婦で1つの事業を一緒に営む場合(一方が事業主で、もう一方が手伝う形)は、本記事で扱う「夫婦が別々の個人事業を営む場合」と区別して考えます。その形なら青色事業専従者給与や法人化を検討することになり、税務の組み立てがまったく変わります。
日本のシニア就業の現状:65歳以上の就業者943万人と自営の比率
総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2026年9月公表)によると、2025年の65歳以上の就業者は943万人で、22年連続で増えて過去最多になりました。就業者全体に占める割合は13.8%です。従業上の地位で見ると、役員を除く雇用者が586万人(62.7%)、自営業主・家族従業者が239万人(25.6%)、会社などの役員が109万人(11.7%)です。自営業主・家族従業者は約4分の1ですが、この統計から夫婦で在宅就業するHOHOの人数は分かりません。
一方、会社側の制度としてHOHOの入口になりうるのが、高年齢者雇用安定法10条の2の「創業支援等措置」です。65歳から70歳までの就業機会を業務委託契約などで確保する仕組みで、2021年4月から努力義務となった高年齢者就業確保措置の選択肢の一つです(定年の引上げや継続雇用制度と並ぶ)。ただし厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」では、創業支援等措置を導入した企業は132社、報告企業全体の0.1%にとどまります。この調査は従業員21人以上の企業の制度導入状況を示すもので、制度によらない個別の業務委託契約の有無までは分かりません。それでも、制度として業務委託の道を用意している企業はごく少数なので、元の勤務先や取引先と個別に契約を結びにいく前提で準備するほうが現実的です。
夫婦それぞれの開業手続き:開業届と青色申告を2人分
開業届と青色申告承認申請の期限
夫婦がそれぞれ事業主になるなら、開業届は各自が税務署に提出します。個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)の提出期限は、現行の所得税法229条で「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」とされています。2026年中に開業すれば2027年3月15日が期限です。「開業から1か月以内」と書く解説は改正前の規定に基づくものです。
青色申告は選択制で、希望する人は所得税の青色申告承認申請書を、青色申告をしようとする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)に出します。開業届と違ってこちらの期限は短く、過ぎるとその年は白色申告になります。夫婦とも青色申告にするなら、片方だけ出し忘れないよう2通をそろえて出すのが確実です。
| 青色申告特別控除(2026年分) | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の要件+e-Taxで申告または優良な電子帳簿で保存 |
| 55万円 | 複式簿記で記帳+貸借対照表・損益計算書を添付し期限内申告 |
| 10万円 | 上記を満たさない青色申告 |
2027年分からは措置法25条の2の改正で、65万円控除はe-Taxでの期限内申告が条件になり、加えて所定の要件を満たすと最高75万円の控除が設けられます。会計ソフトをそろえることは要件ではないので、夫婦それぞれが記帳・書類添付・期限内のe-Tax申告の要件を満たしているかを確認してください。
青色事業専従者の「専ら従事」要件と配偶者控除
国税庁の説明では、青色事業専従者にはその年を通じて6か月を超える期間、配偶者などの事業に「専ら従事」する要件があります。夫婦がそれぞれ独立して事業を営む場合は、この要件を満たすかの確認が必要です(他に職業があっても、専従を妨げないと認められる場合は一律には除外されません)。また、青色事業専従者として給与の支払いを受けた配偶者は、配偶者控除・配偶者特別控除の対象から外れます。夫婦がそれぞれ自分の事業で稼ぐなら、互いに雇う・雇われる関係を作らず、各自の事業所得を申告する形が基本です。
同じ家で2つの事業を営むときの経費:所得税法56条と家事按分
生計を一にする夫名義の持ち家の一室を妻が仕事場にし、妻が夫に家賃を払う場合、この家賃は妻の事業の必要経費になりません。所得税法56条は(国税庁タックスアンサーNo.2210も参照)、生計を一にする配偶者その他の親族が事業から対価の支払を受ける場合、その対価を「必要経費に算入しないものとし」と定めています。夫の側でも、受け取った家賃は所得として「ないものとみなす」扱いです。
その代わり、同条は親族の側でかかる費用を事業主の経費に算入すると定めています。上の例なら、夫が負担している家屋の固定資産税や減価償却費のうち、妻の仕事場に対応する部分を、妻の事業の必要経費にできます。夫婦間で家賃を払う形にしても節税にはならず、按分の根拠(床面積・使用時間)を記録しておくことが実務の中心になります。
光熱費や通信費も同じ考え方で、2人の事業がそれぞれ使う割合を合理的な基準で分け、家事部分と事業部分を区別します。回線を1本にまとめるより、仕事用の回線や端末を夫婦で分けるほうが按分の説明は簡単です。
在職老齢年金と個人事業の事業所得:原則として調整の対象外
「HOHOで稼ぐと在職老齢年金で年金が減る」という説明は、個人事業の事業所得には原則として当てはまりません。在職老齢年金は、老齢厚生年金を受ける人が厚生年金の被保険者として働く場合に、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額(標準報酬月額に直近1年間の標準賞与額の12分の1を加えた額)の合計が、2026年度の支給停止調整額である月65万円を超えたときに老齢厚生年金を調整する仕組みです。老齢基礎年金は調整の対象に含みません。厚生労働省の社会保障審議会年金部会でも、事務局が「自営業の方とか請負といった契約の形」で働く場合は「在職老齢年金の支給停止の対象とはなっておりません」と説明しています。個人事業の事業所得は、いくら増えても調整の計算に入りません。ただし、個人事業と並行して会社に勤め、厚生年金の加入要件を満たす場合は、会社から受ける報酬が調整の対象になります。
このほか注意が必要なのは2つの場合です。1つは、70歳以上の人が厚生年金の適用事業所に勤める場合で、被保険者でなくても在職老齢年金の調整を受けます。もう1つは、事業を法人化して自分に役員報酬を出す場合です。1人法人でも適用要件を満たす70歳未満の役員は厚生年金の被保険者となり、70歳以上でも所定の要件を満たせば在職老齢年金の調整対象になります。年金の支給停止だけを見れば、HOHOは個人事業のまま続けるほうが有利です。
年金受給と事業所得の申告をどう組み合わせるかは、年金をもらいながら個人事業主で働くと年金は減る?60歳以降の確定申告と青色申告で詳しく扱っています。
業務委託で受注するときの契約:フリーランス法の取引条件明示
HOHOで企業や個人事業主から業務委託を受ける場合は、契約条件の確認が必要です。従業員を雇わない個人事業主は、2024年11月1日施行のフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)で「特定受託事業者」として保護されます。同法3条は、発注する事業者に対し、業務委託をした場合は直ちに「給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項」を書面または電磁的方法で明示するよう義務付けています。この明示義務は、従業員のいない個人の発注者にもかかります。
発注者が従業員を使用する個人、または2人以上の役員がいるか従業員を使用する法人(特定業務委託事業者)に当たる場合、4条により、原則として給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定めます。所定の事項を明示した再委託には、元委託の支払期日から30日以内とする特例があります。元の勤務先から口頭で仕事を頼まれる場面ほど、条件が書面に残らないまま着手しがちです。受注のたびに業務内容・報酬額・支払期日がメールやチャットで示されているかを確認し、示されていなければ求めてください。発注側の義務の全体はフリーランス法とは?発注者の義務と2026年取適法施行後のシステム対応を解説にまとめています。
HOHOに向く夫婦・向かない夫婦の判断基準
HOHOに向くのは、開業前から仕事の出どころが見えている夫婦です。元の勤務先や取引先から業務委託を受けられる、資格や専門分野で個人客を持っている、といった条件が片方にでもあれば、もう片方は小さく始めて試せます。同時にオンライン会議をする仕事なら、声が互いの会議に入らない環境を確保してください。別室の利用が難しい場合は、会議時間をずらすなど、実際の仕事内容に合わせて調整します。
向かないのは次のような場合です。
- 夫婦で同じ事業を一緒にやりたい場合。別々の個人事業ではなく、一方を事業主にして専従者を置くか、法人化を検討する形になる。
- 開業に借入が必要な場合。個人事業の債務は原則として事業主本人が負い、配偶者が有効な連帯保証契約を結べば配偶者も保証債務を負う。退職金を大きく取り崩す設備投資は、生活費の予備資金を確保したうえで、売上が計画を下回っても事業を続けられるかを確認して判断する。
- 家の中で仕事と生活の空間を分けられない場合。経費の按分の根拠も示しにくくなる。
日本政策金融公庫の融資先を対象とする「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の年齢が60歳以上だった人は6.4%で、他の年齢層より低くなっています。借入をせずに始める小さな開業はこの調査に表れにくく、シニアの開業全体の割合を示す数字ではありません。
副業や複数の仕事を並行させる考え方はパラレルキャリアとは?副業との違いと会社が禁止できる4つの場合、自宅以外の仕事場を持つ選択肢はコワーキングスペースとは?意味・料金相場・シェアオフィスとの違いをわかりやすく解説が参考になります。
HOHOについてよくある質問
HOHOの読み方と意味は?
「ホーホー」と読みます。His Office, Her Officeの略で、夫婦がそれぞれ自宅に仕事場を持ち、別々の仕事で収入を得る働き方を指します。
HOHOとSOHOの違いは?
SOHOは1人または少人数が自宅や小規模事務所で働く形態の総称で、年齢や家族構成を問いません。HOHOは夫婦が自宅にそれぞれ仕事場を持って働く点に着目した言葉です。
夫婦の片方が会社員でもHOHOといえますか?
会社勤めかどうかと、自宅に仕事場を持つかどうかは別の条件で、会社員であることだけを理由にHOHOから外れるとはいえません。ただし税務上は、在宅勤務の会社員と自宅で開業した配偶者は「給与所得者と個人事業主」として別々に扱われ、本記事の開業手続きや経費の話は事業を営む側にだけ当てはまります。
年金をもらいながらHOHOで働くと年金は減りますか?
個人事業の事業所得は在職老齢年金の調整計算に入らないため、事業所得が増えても支給停止は原則かかりません。会社勤めを並行して厚生年金に加入する場合の報酬、70歳以上で会社に勤める場合、法人化して役員報酬を受ける場合は対象になります。
夫の家の一室を妻が借りて家賃を払うと経費になりますか?
夫婦が生計を一にしているなら、なりません。所得税法56条により、生計を一にする配偶者への家賃は必要経費に算入されません。代わりに、夫が負担する固定資産税や減価償却費のうち妻の仕事場に対応する部分を、妻の事業の経費にできます。