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個人事業税がかからない業種は?法定70業種の一覧と税率3〜5%・290万円控除の計算

個人事業税がかからない業種は?法定70業種の一覧と税率3〜5%・290万円控除の計算

個人事業税は、地方税法が名指しした70業種の事業だけにかかる都道府県税です。ライター、翻訳者、プログラマー、画家のように70業種のどれにも当てはまらない事業は、所得がいくらあっても課税されません。判定は「儲かっているか」ではなく「条文に載った業種に実態として当たるか」で決まります。ここでは第一種37・第二種3・第三種30の全業種名と税率、青色申告特別控除を足し戻す290万円控除の計算、確定申告だけで手続きが完結する仕組みまでを、条文と東京都主税局の公表内容で確認します。

まとめ:個人事業税の課税判定と税額計算の要点

先に結論をまとめます。

  • 課税対象は地方税法72条の2第3項が定める第一種・第二種・第三種の計70業種のみで、列挙されていない事業には課税されません。
  • 税率は第一種5%・第二種4%・第三種5%です。3%は第三種のうちあん摩等と装蹄師業の2業種だけで、70業種全体でも2つしかありません。
  • 事業主控除290万円は業種を問わず引けます。ただし青色申告特別控除は事業税では引けないため、所得に足し戻してから計算します。
  • 確定申告書を出せば個人事業税の申告をしたものとみなされます(72条の55の2)。納期は8月と11月の年2回です。
  • 納めた個人事業税は所得税の必要経費に算入できます。効果は税額の2割程度ですが、住民税と扱いが逆で見落としやすい処理です。

以下、業種の判定から税額の計算、納付までを順に見ていきます。

課税対象を法定70業種に限る条文の構造

地方税法72条の2第3項は「個人の行う第一種事業、第二種事業及び第三種事業に対し、所得を課税標準として……その個人に課する」と定めています。課税できる事業がこの3区分に限定されているため、区分に載っていない事業は税率や控除を検討するまでもなく、課税対象そのものが存在しません。「かからない業種」を探す作業は、70業種の一覧に自分の事業が無いことの確認と同じです。所得税を扱う税務署ではなく、都道府県税事務所が判定と賦課を行う点も所得税・住民税と異なります。

文筆業・システム開発業が課税されない根拠と政令の確認範囲

第一種は72条の2第8項に31業種、第二種は第9項に2業種、第三種は第10項に24業種が名指しされています。それぞれの末尾に「前各号(第二種は前二号)に掲げる事業に類する事業で政令で定めるもの」という受け皿があるため、政令まで確認しないと不在の証明になりません。地方税法施行令10条の7が第一種に商品取引業・不動産売買業・広告業・興信所業・案内業・冠婚葬祭業の6業種、同12条が第二種に薪炭製造業、同14条が第三種に歯科衛生士業・歯科技工士業・測量士業・土地家屋調査士業・海事代理士業・印刷製版業の6業種を追加し、合計が37・3・30の70業種になります。

この70業種のどこにも、文筆業、翻訳業、システム開発業、プログラミング、作曲、絵画制作、スポーツ選手は登場しません。農業も同様で、第二種3号の政令委任は「(農業を除く。)」と明記して農業を締め出しています。原稿を書いて報酬を得るライターや、自分でコードを書いて納品するエンジニアが個人事業税の通知を受け取らないのはこのためです。同じ理由で俳優やタレントも法定業種に無く、事務所に所属していても事業税は原則かかりません(芸能人はなぜ個人事業主なのか|労働者性の判断基準と個人事業税がかからない理由で労働者性の判断基準まで扱っています)。

ただし安心しきるのは危険です。判定は名乗っている職業名ではなく契約と業務の実態で行われ、成果物の完成を約束して報酬を受け取る形の契約が中心なら、第一種の「請負業」として5%を課される余地があります。建設業の工事請負や一人親方の受注は典型的にこの請負業です。開業届の職業欄に何と書いたかは判定を拘束しません。境界にいる自覚があるなら、都道府県税事務所に契約書を持って事前に確認するほうが、数年分の遡及課税より安く済みます。

法定業種でも課税されない3つの例外

70業種に該当していても、次のいずれかに当たれば税額は発生しません。

  • 第三種のあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復その他の医業に類する事業を、両眼の視力が0.06以下の方が行う場合(72条の2第10項5号かっこ書、施行令13条。屈折異常がある場合は矯正視力で測定します)。
  • 第二種の畜産業・水産業・薪炭製造業を、主として自家労力で行う場合。本人と同居の親族が働いた日数の合計が、その事業の年間延労働日数の2分の1を超えるかどうかで判定します(施行令11条)。この例外は第二種にしかありません。
  • 事業の所得が事業主控除額290万円以下の場合。72条の55第1項は申告義務そのものを「控除額を超えるもの」に限っているため、通年で事業を行っていれば申告も納付も不要です(損失の繰越控除を受けたいときは72条の55第2項の任意申告ができます)。

医師や歯科医師など第三種1号から5号の事業では、社会保険診療として受け取った金額は総収入金額に算入せず、対応する経費も必要経費に算入しません(72条の49の12第1項ただし書)。自由診療の割合が低い診療所で事業税の負担が想像より軽くなるのはこの仕組みによるものです。

第一種37・第二種3・第三種30の業種一覧と適用税率

区分 業種数 税率 根拠
第一種事業 37 5% 72条の2第8項・令10条の7
第二種事業 3 4% 72条の2第9項・令12条
第三種事業(下記2業種以外) 28 5% 72条の2第10項・令14条
第三種事業のうちあん摩等・装蹄師業 2 3% 72条の49の17第1項4号

各区分の業種名は次のとおりです。

  • 第一種事業37業種(5%):物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、運送業、運送取扱業、船舶定係場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場業(むし風呂等)、演劇興行業、遊技場業、遊覧所業、商品取引業、不動産売買業、広告業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業
  • 第二種事業3業種(4%):畜産業、水産業、薪炭製造業
  • 第三種事業28業種(5%):医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、印刷製版業
  • 第三種事業2業種(3%):あん摩・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業

スタジオを構えて撮影を請け負うカメラマンは、この一覧のうち第一種の写真業に当たります。

3%が70業種中2業種しかない理由

72条の49の17第1項は、第一種に100分の5、第二種に100分の4、第三種に100分の5の標準税率を定めたうえで、4号で「第三種事業のうち第72条の2第10項第5号及び第7号に掲げる事業」だけを100分の3としています。5号があん摩等、7号が装蹄師業ですから、3%が適用されるのはこの2業種に限られます。「第三種は3%または5%」とだけ書かれた解説を読んで税理士業やデザイン業を3%で見積もると、税額は本来の5分の3、つまり4割少なくなってしまいます。第三種の残り28業種は第一種と同じ5%です。なお条例で標準税率を超えることもできますが、東京都を含め多くの道府県は標準税率どおりです(同3項が1.1倍を上限としています)。

区分の異なる事業を兼営している場合は、事業主控除後の事業の所得を各事業の所得金額で按分し、区分ごとの税率を当てはめます(同2項)。税率の高い区分の所得が大きいほど税額は上振れします。

区分に迷いやすい職種と不動産貸付業の規模基準

デザイン業とコンサルタント業はいずれも第三種で5%です。デザインを名乗っていても、印刷用の製版工程が中心なら第三種の印刷製版業、印刷まで請け負うなら第一種の印刷業と、工程によって区分が動きます。

不動産貸付業と駐車場業は、規模で課税かどうかが分かれる点が他の業種と違います。東京都主税局は、住宅(一戸建)は棟数10以上、住宅(一戸建以外)は室数10以上を認定基準としています。駐車場業は3つに分かれ、車両の寄託を受けて保管する駐車場は1台以上、建築物である駐車場と機械式駐車場は台数を問わず課税対象、それ以外の青空駐車場は10台以上です。区分所有のワンルームを9室で止めるか10室に増やすかで、不動産所得から290万円を引いた残りの5%が丸ごと発生するかどうかが変わります。

事業主控除290万円を差し引くまでの計算

課税標準は前年中の事業の所得です(72条の49の11)。所得の計算は所得税法26条の不動産所得、27条の事業所得の計算の例によります(72条の49の12第1項)。つまり売上から必要経費を引くところまでは確定申告と同じで、そこから先が所得税と分かれます。

青色申告特別控除を足し戻す理由と税額への影響

青色申告特別控除は租税特別措置法25条の2による控除で、「所得税法26条及び27条の計算の例」には含まれません。そのため事業税では引けず、東京都主税局も「個人の事業税には青色申告特別控除の適用はありませんので、所得金額に加算します」と明記しています。

売上800万円・必要経費400万円の請負業(第一種)で確かめます。所得税では青色申告特別控除65万円(電子申告等の要件を満たす場合の額)を引いて事業所得335万円ですが、個人事業税では65万円を足し戻した400万円が出発点です。ここから事業主控除290万円を引いた110万円が課税標準となり、税額は5%の55,000円になります。青色申告特別控除を引いたまま計算すると課税標準は45万円、税額は22,500円にとどまり、32,500円の差が生じます。確定申告書の数字をそのまま当てはめると必ずこの分だけ過少になる計算です。

控除の適用順序と事業税だけにある譲渡損失控除

72条の49の12第15項が控除の順序を定めており、まず青色申告者の繰越損失(6項)または被災事業用資産の損失(7項)を控除し、次に譲渡損失(13項)と繰越譲渡損失(14項)、最後に事業主控除290万円(72条の49の14)という順になります。順序を入れ替えると事業主控除を使い切れずに損をします。

このうち譲渡損失は所得税には無い事業税独自の控除です。直接事業に使っていた機械、装置、車両などを売って損が出た場合、事業の所得から控除できます。土地や家屋は対象外です。青色申告をしていれば翌年以降3年間の繰越しもできます。青色申告者の赤字の繰越しも3年間で、いずれも損失が生じた年分について72条の55の申告をし、その後の年分も連続して申告していることが条件です。被災事業用資産の損失だけは白色申告でも3年繰り越せます。

事業専従者控除の額は所得税と同じで、青色申告なら届け出た範囲の給与支払額、白色申告なら配偶者86万円・その他の親族1人50万円が上限です(72条の49の12第2項・3項)。東京都主税局の計算欄も、所得税の事業専従者給与(控除)額を加算したうえで事業税の事業専従者給与(控除)額を減算する形になっています。

年の途中で開業・廃業した場合の月割計算

事業を行った期間が1年に満たないときは、事業主控除290万円を月割りします。290万円に事業を行った月数を掛けて12で割った額が控除額で、1か月に満たない端数は1か月として数えます(72条の49の14第2項・3項)。東京都主税局の月割表では1か月242,000円からとなっており、10月に開業した年は3か月分の725,000円が控除額です。

廃業した場合は納期を待たずに課税されます。72条の51第3項により廃業後直ちに課税され(1月1日から3月31日までの廃業なら3月31日後)、申告期限は72条の55第1項が定める廃止の日から1か月以内、納税義務者が亡くなったときは4か月以内です。

確定申告書への附記で完結する申告手続きと8月・11月の納付

72条の55の2は、前年分の所得税の確定申告書または住民税の申告書を提出した場合、その提出日に事業税の申告がされたものとみなすと定めています。確定申告をしていれば、都道府県への申告書を別途出す必要はありません。事業税だけの申告が必要になるのは、確定申告も住民税申告もしていない場合です。その場合の期限は3月15日で、対象は所得が事業主控除額を超える方に限られます(72条の55第1項)。

納期は8月と11月の年2回の範囲で各都道府県の条例が定めます(72条の51第1項)。東京都の納期限は8月31日と11月30日です。税額が条例で定める金額以下のときは、どちらか一方の納期にまとめて徴収されます(同2項)。徴収方法は普通徴収に限られるため(72条の49の18)、納税通知書が届いてから納める流れになり、確定申告の時期に納付手続きは発生しません。

所得290万円以下なのに納税通知書が届く3つの原因

確定申告書の所得が290万円以下なのに通知が届く場合、原因はほぼ次の3つです。第一に青色申告特別控除の足し戻しで、控除後285万円でも65万円を戻せば350万円になり、60万円が課税標準として残ります。第二に開業・廃業した年の月割りで、10月開業なら控除額は725,000円しかなく、所得200万円でも課税されます。第三に課税対象が前年の所得である点です(72条の49の11)。今年の業績が落ちていても、通知の中身は前年の所得で決まります。加えて事業税では不動産所得と事業所得しか通算しないため(同12第5項)、所得税で他の所得と損益通算して圧縮した金額よりも大きくなることがあります。

申告漏れの過料10万円と延滞金の年9.1%

72条の57は、正当な理由なく申告や報告をしなかった場合に10万円以下の過料を科す規定を条例で設けられるとしています。虚偽の申告や報告をしたときは1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(72条の56)。金額を偽る行為は過料ではなく刑罰の対象になります。

納期限に遅れた場合の延滞金は、令和8年1月1日から12月31日までの期間について、納期限の翌日から1か月を経過する日までが年2.8%、それ以降は年9.1%です。55,000円の税額を半年放置しても延滞金は2,000円程度にとどまりますが、率は市中金利より高く、放置して得はありません。

納めた事業税の必要経費算入と廃業年の見込控除

個人事業税で見落とされやすいのが、所得税を計算するときの扱いです。所得税法45条1項は必要経費に算入できないものを列挙しており、2号に所得税、4号に道府県民税及び市町村民税、5号に地方税の延滞金や加算金を挙げています。この列挙に個人事業税はありません。つまり個人事業税は必要経費に算入できます。同じ地方税でも住民税は算入できず、事業税と扱いが逆になります。

算入できる年分と延滞金の扱い

算入するのは、所得税基本通達37-6により「その年12月31日までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したもの」です。個人事業税は賦課決定なので、通常は納税通知書を受け取った年の必要経費になります。先ほどの55,000円の例なら、所得税と住民税の合計税率が20%の方で11,000円が戻り、実効負担は44,000円です。効果は税額の2割程度と大きくはありませんが、1回の仕訳で毎年確実に取れます。事業税をどの勘定科目で処理するかについては個人事業主の経費と控除の違い|1万円で減る税金と令和8年分の所得控除16種で経費と所得控除の効き幅の差を比較しています。

なお、同じ45条1項5号が地方税の延滞金を不算入としているため、納付が遅れて発生した延滞金は経費になりません。本税は経費、延滞金は経費外という線引きです。

廃業した年に使える2つのルート

廃業年には別の扱いがあります。事業税は前年の所得に対して翌年課されるため、廃業後に通知が届いてもその時点では計上先の事業所得がありません。そこで所得税基本通達37-7が、廃業した年分の所得に課される事業税について「当該事業税の課税見込額を当該年分の当該事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入することができる」として、賦課決定を待たない見込控除を認めています。見込額は、見込控除前のその年分の所得金額(A)、事業税の課税標準の計算上Aに加減算する金額(B)、税率(R)を用いた算式で求めます。

見込控除を使わなかった場合でも取り戻せます。37-7の(注)は、この取扱いによらない場合には賦課決定があった時に所得税法63条と152条の適用があるとしています。63条は廃止した日の属する年分(その年に総収入金額が無ければ総収入金額があった最近の年分)またはその前年分の必要経費に算入する規定、152条は更正の請求の特例です。ただし152条の期限は「当該事実が生じた日の翌日から二月以内」しかありません。廃業後に届いた納税通知書を放置すると、この2か月で機会を失います。

よくある質問

開業した年から個人事業税はかかりますか?

かかりません。課税標準は前年中の事業の所得なので、開業1年目に通知は届かず、最初の納税通知書は翌年の8月です。開業年の所得に対する事業主控除は月割りになるため、10月開業なら3か月分の725,000円しか引けません。開業初年度の税務全般は個人事業主の確定申告のやり方|令和8年分の期限と基礎控除104万円で扱っています。

赤字でも個人事業税はかかりますか?

事業の所得が赤字なら課税されません。ただし青色申告特別控除を足し戻した結果、事業税の計算上は黒字になることがあります。赤字を翌年以降3年間繰り越せるのは青色申告者に限られ、損失が生じた年から連続して申告していることが条件です。

エンジニアやライターに個人事業税はかかりますか?

法定70業種に文筆業やシステム開発業は含まれないため、原則としてかかりません。判断されるのは職業名ではなく契約と業務の実態で、成果物の完成を約束する請負契約が中心なら第一種の請負業として5%を課される可能性があります。契約形態に不安があれば都道府県税事務所への事前確認が確実です。

所得600万円・800万円だと個人事業税はいくらですか?

青色申告特別控除を足し戻した所得が600万円の第一種事業なら、(600万円−290万円)×5%で155,000円です。800万円なら(800万円−290万円)×5%で255,000円になります。第三種の28業種も同じ5%、第二種は4%、あん摩等と装蹄師業は3%で計算します。所得税・住民税・国民健康保険料まで含めた手取りは年収400万円の個人事業主の税金はいくら?手取り303万円と会社員との14万円差で内訳を出しています。

確定申告とは別に事業税の申告が必要ですか?

不要です。確定申告書または住民税申告書を提出した日に、事業税の申告がされたものとみなされます(72条の55の2第1項)。ただし同条3項により、申告書には事業税の賦課徴収に必要な事項を附記することが求められています。譲渡損失の控除や損失の繰越しは、原則としてこの附記を含む申告がないと受けられません(道府県知事がやむを得ない事情を認め、納税通知書が届くまでに申告した場合を除きます)。

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