中華料理店の事業計画書は、日本政策金融公庫の創業計画書の記入欄に沿って書くと、融資の面談で聞かれる項目をひととおり押さえられます。「事業の見通し」欄には、売上・原価・経費の計算根拠と、利益から借入を返済できる見通しを示します。昼と夜で客単価が倍以上違い、持ち帰りの餃子も売る中華料理店では、売上を1本の式で済ませると根拠が説明できません。
この記事では、公庫の売上の計算方法を昼・夜・持ち帰りに分けて当てはめ、公庫の2025年度経営指標(中華料理店)で検算する手順を設例で示します。事業主の生活費と借入の返済まで賄える売上の出し方、火力と油を多く使う厨房ならではの初期投資と維持費、餃子を持ち帰りで売るときの許可の考え方もまとめました。
まとめ:中華料理店の事業計画書で押さえる要点
- 日本政策金融公庫へ出すなら、配布されている創業計画書の記入欄(1〜10)に沿って書きます。自分で作った計画書を代わりに出すこともできます。
- 月の売上は、昼・夜それぞれの「客単価×席数×1日当たりの回転数×営業日数」と、持ち帰りの「1件当たり単価×1日当たりの件数×営業日数」を合計します。
- 公庫の2025年度経営指標で、中華料理店(中華そば店・ぎょうざ店を含む)109社の売上高総利益率は平均65.0%(原価率に直すと約35%)、店舗面積3.3㎡当たりの年間売上高は平均2,660千円・中央値2,248千円でした。出した月商はこの数字で検算します。
- 同じ調査で損益分岐点比率は平均102.6%、営業利益率は平均-1.0%です。調査対象企業の平均では役員報酬等を含む経費控除後の営業利益率が低いため、平均より低い原価率や人件費率を置く場合は、自店の仕入条件や人員体制で説明します。
- 目標にするのは損益分岐点ではなく、返済元金と生活費まで賄える売上です。設例では月約221万円が必要で、夜の回転数が0.8から0.6に落ちると届かなくなりました。
- 強い火力の厨房は排気設備とダクト清掃、油を含む排水の処理に費用がかかります。見積書を取って設備資金に入れ、清掃費は毎月の経費に入れます。
- 店で調理した餃子を、購入後すぐ食べる前提で持ち帰り販売するなら、飲食店営業の許可の範囲で扱える場合があります。生餃子や冷凍して日持ちさせる商品、卸売は別の許可が必要になることがあるので、計画の段階で保健所に確認します。
以下、創業計画書の記入欄から順に、数字の組み立て方を説明します。
中華料理店の事業計画書と公庫の創業計画書の記入欄
個人や小さな会社で中華料理店を開く場合、資金調達の第一候補は日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。公庫が各種書式ダウンロードページで配布している創業計画書には「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」とあります。自作するときも、次の記入欄と同じ項目を入れておくと面談で照合しやすくなります。
| 記入欄 | 中華料理店で書く中身 |
|---|---|
| 1 創業の動機 | 修業経験から見えた需要と立地 |
| 2 経営者の略歴等 | 勤務先・年数・担当した持ち場 |
| 3 取扱商品・サービス | 昼・夜・持ち帰りの単価と売上シェア |
| 4 従業員 | 3か月以上雇用予定の人数 |
| 5 取引先・取引関係等 | 食材・製麺所・酒販店と支払条件 |
| 6 関連企業 | 本人・法人代表者・配偶者の経営企業 |
| 7 お借入の状況 | 住宅・車・カードなどの残高 |
| 8 必要な資金と調達方法 | 設備資金・運転資金と調達先 |
| 9 事業の見通し(月平均) | 売上・原価・経費・利益と根拠 |
| 10 自由記述欄 | 許可の取得予定日・アピール点 |
公庫の創業計画書の記入例は飲食店では洋風居酒屋の1件だけで、中華料理店の例はありません。ただ、事業の見通し欄の書き方はそのまま使えます。記入例では売上を「昼900円×25席×0.8回転×26日=46万円」「夜(月〜木)4,500円×25席×0.6回転×18日=121万円」のように時間帯と曜日で分け、原価率35%の根拠を「勤務時の経験から」と書いています。必要資金は合計1,260万円(設備資金970万円・運転資金290万円)、調達は自己資金360万円・親族からの借入200万円・公庫700万円という組み立てです。
創業の動機・経営者の略歴と修業先・担当した持ち場
公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業者のうち現在の事業に関連する仕事の経験(斯業経験)がある人は81.1%で、経験年数の平均は15.3年でした。中華料理店の略歴欄では「中華料理店で何年」だけでなく、鍋場(炒め物)・点心・仕込み・発注のどこを担当したかまで書きます。様式にも「担当業務や役職、身につけた技能等についても記載してください」と指示があります。
原価率や1日に出せる皿数は、この経験の裏付けになります。たとえば「ランチ帯に鍋場1人で1時間に何食を出していたか」が書ければ、昼の回転数を1.5回転と置く根拠になります。逆に、ホール担当だけの経験で本格中華を開くなら、調理を担う人の経歴も従業員欄と合わせて示します。
取扱商品欄の業態設定:町中華・ラーメン餃子店・本格中華
同じ中華料理店でも、業態で計画の前提が変わります。定食と麺類を低単価で回す町中華は昼の回転数、ラーメンと餃子に絞る店は1人で回せる提供速度と持ち帰りの比率、コースや紹興酒を出す本格中華は夜の客単価とドリンク比率が売上を決めます。
取扱商品欄の売上シェアは、この業態設定と矛盾しない配分にします。昼の売上シェアを5割と置くなら、昼の客数を厨房の人数と火口の数でさばけるか、メニュー別の原価を売上シェアで加重平均して予定の原価率に収まるかを確かめます。ここで出した客単価と営業日数を、次の章の売上の式にそのまま使います。
中華料理店の業界数値:公庫の経営指標で見る原価率・人件費・坪売上
売上や原価率が妥当かは、公庫の小企業の経営指標調査(2025年度・飲食店,宿泊業)で確かめます。「中華料理店」の区分には「中華そば店、ぎょうざ店を含む」と注記があり、ラーメン店や餃子店もこの数字で比べられます。
| 指標(中華料理店・109社) | 平均値 | 中央値 |
|---|---|---|
| 売上高総利益率 | 65.0% | 65.8% |
| 人件費対売上高比率 | 33.6% | 33.7% |
| 諸経費対売上高比率 | 29.7% | 28.4% |
| 売上高営業利益率 | -1.0% | 0.3% |
| 損益分岐点比率 | 102.6% | 100.3% |
| 店舗面積3.3㎡当たり売上高(年) | 2,660千円 | 2,248千円 |
| 1企業当たり店舗面積 | 118.8㎡ | 97.3㎡ |
使う前に、調査の前提を3つ押さえておきます。利用の手引きによると、対象は公庫が2025年4〜12月に融資した法人企業(決算期2024年7月以降)で、個人事業は入っていません。人件費には役員報酬・退職金・福利厚生費が含まれます。店舗面積は事務所・倉庫・車庫・厨房などを除いた面積です。
つまり、個人で開業する計画の人件費率(事業主の分を含めない)をこの33.6%とそのまま比べると、低く見えて当然です。比べるときは事業主の生活費分を足します。坪売上で検算するときも、物件の契約面積ではなく客席部分の面積で割ります。
従業者規模別の数値:1〜4人の店と5〜9人の店の差
同じ調査には従業者規模別の表もあります。従業者数には代表者と、3か月以上雇用するパート・アルバイトも数えます。夫婦2人とパート2人なら「1〜4人」が比較相手です。パートが3人以上で従業者数が5人以上になる場合は、該当する人数区分を使います。
| 指標(平均値) | 1〜4人(25社) | 5〜9人(42社) |
|---|---|---|
| 売上高総利益率 | 65.6% | 64.2% |
| 人件費対売上高比率 | 34.8% | 32.7% |
| 諸経費対売上高比率 | 33.6% | 28.5% |
| 売上高営業利益率 | -3.6% | -0.1% |
| 損益分岐点比率 | 106.5% | 101.4% |
| 店舗面積3.3㎡当たり売上高(年) | 1,977千円 | 2,692千円 |
| 1企業当たり店舗面積 | 58.6㎡ | 111.7㎡ |
1〜4人の店は坪売上が低く、家賃や光熱費などの諸経費の比率が5ポイント高くなっています。小さな店で全体平均の坪売上2,660千円を使う場合は、1〜4人の平均1,977千円を上回る理由を、立地・客単価・客数などから説明する必要があります。1〜4人の区分は25社と標本が少ないので、平均値は目安として扱い、全体の中央値とあわせて見るのが安全です。
中華料理店の売上予測:昼・夜・持ち帰り別の客単価×席数×回転数
公庫の売上高等の計算方法は、飲食店営業を含むサービス業の売上を「客単価×設備単位数(席数)×回転数」で求めるとしています。中華料理店では昼と夜で客単価も回転数も違うので、時間帯ごとに式を分けます。持ち帰りは席を使わないので、件数×単価の別の行にします。
以下は、契約面積20坪(客席部分約43㎡)・24席・月26日営業・従業者4人(事業主、配偶者、パート2人)の設例です。
| 区分 | 計算式 | 月の売上 |
|---|---|---|
| 昼(定食・麺) | 1,000円×24席×1.5回転×26日 | 93.6万円 |
| 夜(一品・酒) | 2,200円×24席×0.8回転×26日 | 109.8万円 |
| 持ち帰り(餃子等) | 900円×15件×26日 | 35.1万円 |
| 合計 | 238.5万円 |
1日の客数にすると、昼36人・夜約19人・持ち帰り15件です。回転数と件数には、それぞれ根拠を添えます。昼の1.5回転は「近隣のオフィスの昼休みに合わせ、提供時間を何分にするか」、夜の0.8回転は「競合店の夜の入り」、持ち帰り15件は「修業先での持ち帰り件数」など、数えられる事実で説明します。
坪売上と規模別数値による月商の検算
設例の月商238.5万円を年に直すと約2,862万円、客席部分43㎡(約13.0区画分の3.3㎡)で割ると、3.3㎡当たり約2,197千円です。全体の中央値2,248千円とほぼ同じですが、比較相手の1〜4人の平均1,977千円より約1割高くなっています。
参考までに、持ち帰り売上35.1万円を除いた店内の売上だけで計算すると、3.3㎡当たり約1,873千円です。ただし公庫の比較値は店内売上だけに限った指標ではないため、平均との差を持ち帰り販売だけで説明することはできません。坪売上は総売上同士で比較し、店内客数と持ち帰り件数の根拠を別々に示します。持ち帰り15件を確保できる需要と、店内営業と同時に調理できる体制まで説明できるようにします。
原価率・人件費・経費の組み方と返済まで賄える売上
売上原価は「売上高×原価率」で出します。設例の原価率は、経営指標の総利益率65.0%から逆算した35%です。メニュー別に原価を計算し、取扱商品欄の売上シェアで加重平均した値がこれに近いことを確かめておきます。人件費は、公庫の計算方法にある通り、個人営業では事業主の分を含めず、家族従業員の分は含めます。
| 項目(月平均) | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 売上高 | 238.5万円 | 昼・夜・持ち帰りの合計 |
| 売上原価 | 83.5万円 | 売上×原価率35% |
| 人件費 | 41.2万円 | 専従者10万円+パート2人 |
| 家賃 | 24.0万円 | 契約書の賃料 |
| 水道光熱費 | 18.0万円 | ガス・電気・水道の見積り |
| その他経費 | 20.0万円 | 消耗品・広告・決済手数料・清掃 |
| 支払利息 | 2.1万円 | 1,000万円×年2.5%÷12 |
| 利益 | 49.7万円 | 事業主の生活費と返済元金の原資 |
パートの人件費は時給1,200円×1日5時間×26日×2人で31.2万円、配偶者の専従者給与を10万円としました。支払利息は、公庫の計算方法にある「借入金残高×金利(年利)÷12か月」で、借入1,000万円・年2.5%と仮定しています。実際の利率は融資の決定時に確認します。
業界値と並べると、人件費41.2万円に事業主の生活費30万円を足した比率は約30%で、経営指標の33.6%を下回ります。家賃・光熱費・その他経費の合計62万円は売上の26.0%で、諸経費の33.6%(1〜4人)より低い計画です。どちらも業界より有利な数字なので、賃料の安い理由や家族で回す体制を、計画書の根拠欄で説明できるようにしておきます。
返済元金と生活費から逆算する必要売上
計画書の利益は、所得税などの税金と借入の返済元金を払う前の金額で、個人営業では事業主の生活費もここから出ます。設例では、公庫借入1,000万円を据置期間なし・元金均等返済で10年(120回)かけて返すと仮定し、返済元金を月約8.3万円とします。生活費と税金・社会保険料に月30万円かかるとすると、利益は月38.3万円以上必要です。
必要な売上は「(経費+必要な利益)÷総利益率」で、(105.3万円+38.3万円)÷65%=約220.9万円です。設例の238.5万円との差は約17.6万円で、売上が7%強減るだけで届かなくなります。
| 夜の回転数 | 月の売上 | 利益 | 必要額38.3万円との差 |
|---|---|---|---|
| 0.8回転(計画) | 238.5万円 | 49.7万円 | +11.4万円 |
| 0.7回転 | 224.8万円 | 40.8万円 | +2.5万円 |
| 0.6回転 | 211.1万円 | 31.9万円 | -6.4万円 |
夜の回転数が0.8から0.6に落ちるだけで、返済と生活費を賄えなくなります。公庫の新規開業実態調査では、予想月商を達成した開業者は約6割(100〜125%未満が24.5%、125%以上が34.2%)で、残りの約4割は届いていません。計画の段階で、このように回転数を下げた表を作っておくと、面談で「売上が計画を下回ったらどうするか」と聞かれたときに数字で答えられます。月ごとの入出金まで落とし込むなら資金繰り表の作り方:エクセルで組む5手順と入金予定日の計算式、自動化の判断【2026年版】の手順が使えます。
業界の損益分岐点比率102.6%との比べ方
公庫の経営指標の損益分岐点比率は「(営業経費+支払利息)÷売上高総利益率」を売上高で割った値です。設例の経費105.3万円で計算すると、損益分岐点は約162.0万円、比率は約68%になり、業界平均の102.6%よりずっと低く見えます。
差の一因は役員報酬の扱いですが、経費率や減価償却費などの計上条件も確認が必要です。生活費と返済元金まで賄う必要売上220.9万円は計画売上の約93%ですが、これは資金繰り上の必要売上比率であり、公庫の損益分岐点比率とは直接比較できません。個人の計画では、会計上の損益分岐点に加えて、生活費・税金・社会保険料・返済元金を賄えるかを別途確認します。約93%は今回の設例の結果であり、個人店全般に当てはまる目安ではありません。比率の意味と月次での追い方は損益分岐点比率とは?計算式と業種別の目安、安全余裕率の見方と月次で追う方法【2026年版】で解説しています。
中華厨房の初期投資と維持費:火力・排気・油を含む排水
中華料理店の必要資金で他の飲食店より膨らみやすいのは、強い火力のレンジと、その熱と油煙を外へ出す排気設備です。設例の必要資金は次の通りです。金額は設例で、計画書には見積書の数字を書きます。
| 区分 | 内訳(設例) | 金額 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 店舗内外装工事 | 500万円 |
| 設備資金 | 厨房機器(レンジ・茹で麺機・餃子焼き器・冷凍冷蔵庫) | 350万円 |
| 設備資金 | 排気設備(天蓋・ダクト・換気扇)とグリストラップ | 150万円 |
| 設備資金 | 什器・備品・レジ | 60万円 |
| 設備資金 | 保証金 | 120万円 |
| 運転資金 | 仕入・経費の支払い(月の支出の約1.3か月分) | 250万円 |
| 合計 | 自己資金330万円・親族からの贈与100万円・公庫1,000万円 | 1,430万円 |
公庫の2025年度新規開業実態調査では、全業種の開業費用は平均975万円、中央値600万円で、資金調達額の平均1,219万円のうち自己資金は279万円(22.9%)でした。設例の1,430万円はこれより多いので、厨房と排気の見積書を添えて、金額の理由を示します。
居抜き物件で確かめる排気・ガス・排水の能力
居抜き物件は内装工事費を抑えられますが、前の店が中華以外なら、排気量・ガスの供給量・排水の油の処理が足りないことがあります。中華のレンジを置く前提で、次の点を設備業者とガス会社に確認し、増設が要るなら見積もりを設備資金に入れます。
- 天蓋と排気ダクト、換気扇の能力が、置くレンジの火力に見合うか
- ガスのメーターと配管の容量が、レンジと茹で麺機を同時に使える大きさか
- 油を含む排水を受けるグリストラップがあり、清掃できる位置と容量か
確認結果は機器の型番・入力値、既存設備の仕様、追加工事の見積額として残します。東京都では火災予防条例第3条の2第1項第2号ニが十分な排気能力を求めているため、既存設備をそのまま使えると決めつけず、契約前に設備業者へ確認します。
火災予防条例の厨房設備の基準と排気ダクトの清掃費
厨房設備の基準は市町村の火災予防条例で決まっています。東京都の火災予防条例では、油脂を含む蒸気が出る厨房設備の排気ダクトの取入口にグリス除去装置を設け、火炎伝送防止装置として原則自動消火装置を設けるよう定めています(第3条の2第1項第3号。天蓋から直接屋外へ排気する構造や、防火ダンパー等を適切に設けた場合などは例外)。入力の合計が120kW以上の厨房設備を設置・変更するときは、工事に着手する日の7日前までに消防署長へ届け出ます(第57条第1項第3号)。火口の多いレンジや茹で麺機を並べる中華の厨房は入力の合計が大きくなりやすいので、機器の入力値を厨房業者から受け取り、届出と工期を開業日程に入れておきます。他の地域でも、所轄の消防署に基準を確認します。
維持管理については、同じ条例の第3条の2第1項第5号が、天蓋、天蓋と接続する排気ダクト内、グリス除去装置などを清掃し、火災予防上支障のないよう維持管理することを求めています。東京消防庁の飲食店の厨房設備等に係る火災予防対策ガイドラインは、天蓋やグリス除去装置は日常的に、外から見えにくい排気ダクト内部はおおむね1年ごとに点検する目安を示しています。ダクト内にたまった油脂は、火が入ると延焼の通り道になるからです。
油煙の多い中華料理店では、フィルターの交換・洗浄、ダクトの専門清掃、グリストラップの清掃が定期的な支出になります。設例の「その他経費」20万円にはこの清掃費を含めています。年1回の清掃費は月平均の収支計画では12分の1を経費に織り込み、月別の資金繰り表では実際の支払月に全額を計上します。
中華料理店の許認可と、餃子の持ち帰り・冷凍販売の扱い
中華料理店の開業で必ず要るのは、保健所の飲食店営業の許可と、店ごとに1人置く食品衛生責任者です。HACCPに沿った衛生管理の計画と記録も求められます(要件はHACCP義務化はいつから?2021年6月完全施行後の対象範囲と記録保存の実務要件)。飲食店を含む建物では、原則として建物全体の収容人員が30人以上の場合、各管理権原者に防火管理者の選任・届出が必要です。店舗単独では30人未満でも対象になり得るため、建物全体の用途と収容人員を消防署に確認します。許可の申請予定日と取得予定日は、自由記述欄に書いておきます。
餃子の持ち帰り販売:飲食店営業の範囲と別の許可が要る場合
厚生労働省の営業許可制度の見直しに関するQ&Aは、飲食店営業の「調理」に、短期間のうちに消費されることを前提とした加工も含むとしています。判断の目安は、調理した人から消費者へ直接売るか、食品表示法で表示が免除される対面販売かどうかです。同じQ&Aは、ラーメン店が自家製麺を店で使う場合や、短期間で消費される前提でテイクアウト用に売る場合は、麺類製造業の許可を追加で取らなくてよいと答えています。店で調理した餃子の持ち帰り販売は、購入後短期間で消費されることなどを前提に、飲食店営業の範囲で扱える場合があります。生餃子についても、製造工程・保存方法・消費までの期間・販売方法を保健所に示し、許可の範囲を確認します。
一方、冷凍して日持ちさせる餃子をまとめて作り、無人販売所や他店へ卸す計画は、短期間で消費される前提から外れます。食品衛生法施行令第35条は、そうざい製造業の対象となる食品を製造し、その冷凍品を作る営業を冷凍食品製造業(第27号)としており、冷凍餃子の製造はこれに当たり得ます。別の許可とそれに合う施設が必要になる場合があり、包装して売るなら食品表示も要ります。持ち帰りや冷凍販売の売上を計画に入れるなら、売り方と施設の図面を持って管轄の保健所に事前に相談し、追加の許可と設備の費用を必要資金に入れておきます。
面談で突っ込まれる中華料理店の計画の弱点
面談に備え、客単価・原価率・提供能力・自己資金の根拠を確認します。次のような計画は、数字や説明の組み直しが必要です。
- 客単価をメニューの平均単価で出している。昼は定食1品、夜は一品料理と酒の組み合わせで決まるので、注文の内訳から積み上げます。
- 原価率を経営指標より大きく下げて利益を出している。中華料理店の原価率は約35%で、黒字かつ自己資本がプラスの企業の平均でも総利益率は65.5%(原価率約35%)です。
- 厨房の能力を超える客数を置いている。鍋場の人数と火口の数で、ピークの1時間に出せる皿数を示します。
- 自己資金の出どころが説明できない。新規開業・スタートアップ支援資金では2024年度に「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という要件がなくなりましたが(公庫の2024年4月1日公表資料)、自己資金の額と貯め方は今も確認されます。
飲食店全般で計画書のどこが見られるかは飲食店の事業計画書が創業融資の審査結果を大きく左右する具体的な理由、表計算で数字をつなげる作り方はエクセルで事業計画書を作成する具体的な手順と必要シートの全体像にまとめています。
よくある質問
中華料理店の原価率の目安はどのくらいですか?
公庫の2025年度経営指標の中華料理店では、売上高総利益率が平均65.0%で、原価率に直すと約35%です。中央値は総利益率65.8%(原価率約34%)でした。メニュー別の原価を売上シェアで加重平均し、この水準と比べます。
ラーメン店や餃子店の事業計画書にも中華料理店の数値は使えますか?
使えます。公庫の経営指標の「中華料理店」には「中華そば店、ぎょうざ店を含む」と注記があります。ただし持ち帰りの比率が高い餃子店は、店内の売上と持ち帰りの売上を分けて坪売上を検算します。
中華料理店の開業資金はいくら必要ですか?
物件と厨房設備で大きく変わります。公庫の2025年度新規開業実態調査では全業種の開業費用は平均975万円・中央値600万円で、公庫の洋風居酒屋の記入例は1,260万円でした。中華料理店は排気設備と厨房機器の見積書をもとに積み上げます。
自己資金がなくても公庫の創業融資は受けられますか?
新規開業・スタートアップ支援資金には、2024年度から自己資金の割合の要件がありません。ただし新規開業実態調査では、開業時の資金調達額の22.9%(平均279万円)が自己資金で、審査では自己資金の額と準備の経緯も見られます。
事業計画書は公庫の様式で出さないといけませんか?
公庫の創業計画書の様式には、自分で作った計画書を代わりに出してもよいと書かれています。自作する場合も、記入欄1〜10と同じ項目を入れ、事業の見通し欄の数字の根拠を添えます。