キッチンカーの事業計画書は、日本政策金融公庫の創業計画書の記入欄に沿って書くと、融資の面談で聞かれる項目を漏れなく押さえられます。店舗の飲食店と違うのは売上の組み方です。客席と店舗の家賃を持たない代わりに、どこへ何日出店できるか、雨の日にどれだけ客が減るか、出店料が売上の何割で取られるかで、月の利益が大きく動きます。
この記事では、出店先ごとの食数から売上を組む方法、気象庁の平年値を使った雨天日の割り引き方、出店料が歩合か定額かで必要売上がどう変わるかを設例で示します。許認可欄に書く飲食店営業(自動車)の許可や車両の登録、イベント出店の届出もまとめました。
まとめ:キッチンカーの事業計画書で押さえる要点
- 公庫へ出すなら、配布されている創業計画書(記入欄1〜10)に沿って書きます。公庫の業種別記入例9件にキッチンカー・移動販売は無いので、飲食業は洋風居酒屋の記入例を参考にします。
- 売上は「出店先ごとの1日の食数×客単価×出店日数」で組みます。そのうえで、ピーク1時間に来る注文数が同じ1時間に提供できる数を超えていないかを確かめます。出店先が決まっていない日は売上に入れません。
- 雨は客数を直接減らします。東京の降水量1mm以上の日は平年で年102.5日(1991〜2020年)あり、本記事の設例では雨の日の客数を半分と置いて売上を約14%割り引きました。
- 出店料が売上の歩合なら、原価と合わせた変動費が売上の半分に達することがあります。設例では歩合15%のとき、元金返済と生活費まで賄うのに月100万円の売上が必要でした。
- 開業直後は売上が計画に届かない前提で手元資金を持ちます。設例では元金返済と生活費を含めて4か月目までに累計46万円が不足しました。この分は事業の運転資金と分けて自己資金で備えます。
- 許認可欄には、車両ごとの飲食店営業(自動車)の許可、仕込み場所、給水タンクの容量を書きます。東京都の許可の有効範囲は都内一円で、都外で出店するなら出店先の自治体での手続きが別に要ります。
キッチンカーの事業計画書に使う公庫の様式と記入項目
個人でキッチンカーを始める場合、資金調達の第一候補は日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。キッチンカー本体と架装は設備資金、食材・容器・出店料などは運転資金に分けて申し込みます。
公庫が各種書式ダウンロードページで配布している創業計画書は、次の10の記入欄で構成されています。業種別の記入例は洋風居酒屋・美容業・中古自動車販売業など9業種で、キッチンカーや移動販売の記入例はありません。
| 記入欄 | キッチンカーで書く中身 |
|---|---|
| 1 創業の動機 | 調理経験と出店予定地の需要 |
| 2 経営者の略歴等 | 調理・販売の経験年数と許認可 |
| 3 取扱商品・サービス | メニュー・単価・売上シェア |
| 4 従業員 | 3か月以上雇用予定の人数 |
| 5 取引先・取引関係等 | 仕入先・出店先と支払条件 |
| 6 関連企業 | 経営中の企業があれば記入 |
| 7 お借入の状況 | 住宅・車・カードなどの残高 |
| 8 必要な資金と調達方法 | 車両・架装・厨房機器と運転資金 |
| 9 事業の見通し(月平均) | 売上・原価・経費・利益と根拠 |
| 10 自由記述欄 | 出店先の確保状況・雨天時の対策 |
様式の冒頭には、この書類に代えて自分で作成した計画書を出してもよい旨が書かれています。WordやExcelで自作する場合も、この10項目が揃っているかを突き合わせると聞き漏れを防げます。A4の1枚に要点を収める書き方は事業計画書を1枚で書く方法、飲食店全般の書き方は飲食店の事業計画書の記事で扱っています。
創業計画書の記入欄ごとの書き方(キッチンカー版)
創業の動機と経営者の略歴:調理経験と試験出店の実績
動機欄には、どこで何を経験し、どの出店先にどんな需要を見つけたのかを1本の筋で書きます。「飲食店の厨房で5年間ランチの仕込みを担当し、平日昼は1日80食を出していた。出店予定のオフィス街は、昼の飲食店が少なく12時台に行列ができる」のように、数字と場所を入れます。
略歴欄は勤務先名だけでなく、担当業務・身につけた技能まで書く欄です。公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業者の81.1%が開業した事業に関連する仕事の経験(斯業経験)を持っていました。キッチンカーの経験がない場合は、イベントへの試験出店で売れた食数や、レンタルのキッチンカーで営業した日の売上記録を添付すると、売上計画の根拠も兼ねられます。
取扱商品とセールスポイント:メニュー構成と給水タンク容量
取扱商品欄には、商品ごとの単価と売上シェアを書く枠が3つあります。「メイン料理」「トッピングや大盛り」「飲料」のように分けると、客単価の内訳を説明しやすくなります。
メニュー構成は売上だけでなく、車両に積む給水タンクの容量にも影響します。東京都の基準では、単一品目・使い捨て容器・温める、揚げる、盛り付けるといった簡易な調理だけなら給水タンクは約40リットルで足ります。一方、複数の工程からなる調理や通常の食器の使用、車内での仕込みをするなら約200リットルが要ります(詳しくは後述の許可の章)。メニューを増やすほど車両に積む設備が大きくなり、設備資金に跳ね返ります。セールスポイント欄には「外はカリッと」のような確かめようがない言葉でなく、提供までの時間や1食の量(グラム)など、審査担当者が検証できる言葉を書きます。
取引先と販売先:仕入先・出店先・キャッシュレスの入金
取引先欄の仕入先には、食材・容器・燃料(プロパンガス)の業者名、取引シェア、締め日・支払日を書きます。キッチンカーで特有なのは出店先です。商業施設やオフィスビルの敷地、イベント主催者、出店先を仲介するサービスと契約するのが一般的で、出店料の条件(定額か売上の歩合か)と支払時期をここに書きます。歩合なら売上を主催者が集めて差し引いた額を後日受け取る形もあるので、入金までの日数を回収条件に書きます。
販売先は現金とキャッシュレス決済に分け、それぞれの売上シェアと回収条件を書きます。公庫の洋風居酒屋の記入例でも、販売先は「一般個人(現金)」と「一般個人(クレジット・電子マネー)」に分けて書かれています。キャッシュレスは決済事業者からの入金サイクル(月何回の締めで何日後に振り込まれるか)を回収条件に書きます。手数料と入金の遅れはキャッシュレス決済のデメリットの記事で整理しています。
必要な資金と調達方法:車両・架装・厨房機器の見積
必要な資金欄は設備資金と運転資金に分け、設備資金には見積書を取った業者名と金額を書きます。キッチンカーの設備資金は、車両本体、架装(厨房の造作・給排水タンク・換気扇)、発電機や追加の厨房機器、決済端末や看板です。中古のキッチンカーを買う場合も、給水タンクの容量が出したいメニューに足りるかを買う前に確かめます。容量が足りなければ、許可の区分を下げるかタンクを載せ替えることになります。
公庫の新規開業実態調査では、開業費用は平均975万円・中央値600万円でした。これは公庫が融資した開業企業の全業種の集計で、キッチンカーの相場ではありません。物件取得費と内装費が無い分、店舗の飲食店より設備資金は小さくなりやすい一方、出店料が経費に加わります。
売上計画の立て方:出店先ごとの食数と雨天の割り引き
出店先の種類で変わる売上式
キッチンカーの売上は、店舗の「客単価×席数×回転数」ではなく、出店先ごとの食数を積み上げて組みます。式の形はどの出店先も同じで、違うのは1日の食数の根拠です。出店先の種類ごとに行を分けて書きます。
| 出店先 | 売上式 | 食数の根拠に使うもの |
|---|---|---|
| 平日のオフィス街ランチ | 客単価×1日の食数×出店日数 | 試験出店の実績・周辺の就業者数 |
| 土日のイベント | 客単価×1日の食数×出店日数 | 主催者が示す来場者数と出店台数 |
| 商業施設・マンション敷地 | 客単価×1日の食数×出店日数 | 同じ枠の過去の出店者の実績 |
イベントは来場者数を出店台数で割った数がそのまま食数にはならないので、主催者に過去の1台あたりの販売数を聞いて根拠欄に書きます。出店先が確定している日と見込みの日を分け、創業当初の見通しには確定分だけを入れると、面談で突っ込まれにくくなります。
ピーク1時間の注文数と提供能力の上限
平日ランチは11時から14時に営業しても、注文は12時台に集中します。1日の食数とは別に、ピーク1時間に来る注文数が、同じ1時間に提供できる数を超えていないかを確かめます。1人で盛り付けから会計までを順番にこなす場合、1時間の提供能力は「3,600秒÷1食の盛り付けと会計にかかる秒数」です。1食に2分かかるなら1時間に30食です。1日60食の計画で12時台に半分の30食が来るなら能力いっぱいで、3分かかるメニューなら20食で頭打ちになります。調理を先に進めておき盛り付けと会計だけを店頭でこなすなど工程を分ける場合は、いちばん時間のかかる工程の1時間あたりの処理数が能力になります。上限を超える計画は、メニューを絞るか、ピーク時だけ人を入れる人件費を経費に足します。
雨天日数と雨の日の客数減少率による売上補正
屋外で売るキッチンカーは、雨の日に客数が落ちます。売上計画に雨の日を織り込まないと、計画との差が毎月出続けます。根拠に使えるのが気象庁の平年値です。東京の日降水量1.0mm以上の日数(1991〜2020年の平年値)と、雨の日の客数を半分と置いたときの割り引き係数は次のとおりです。
| 月 | 降水1mm以上の日数 | 暦日に占める割合 | 割り引き係数 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 4.5日 | 14.5% | 0.93 |
| 2月 | 5.2日 | 18.6% | 0.91 |
| 3月 | 9.2日 | 29.7% | 0.85 |
| 4月 | 9.5日 | 31.7% | 0.84 |
| 5月 | 10.1日 | 32.6% | 0.84 |
| 6月 | 11.6日 | 38.7% | 0.81 |
| 7月 | 10.5日 | 33.9% | 0.83 |
| 8月 | 7.9日 | 25.5% | 0.87 |
| 9月 | 11.0日 | 36.7% | 0.82 |
| 10月 | 10.5日 | 33.9% | 0.83 |
| 11月 | 7.4日 | 24.7% | 0.88 |
| 12月 | 5.2日 | 16.8% | 0.92 |
| 年 | 102.5日 | 28.1% | 0.86 |
割り引き係数は「1−雨の日の割合×0.5」で計算しました。0.5は「雨の日は客数が半分」と置いた設例の仮定で、試験出店で雨の日の実績が取れたら置き換えます。係数を掛けるのは晴天時の食数で組んだ売上だけです。雨の日を含めた平均の販売実績を食数の根拠にした場合は、すでに雨の影響が入っているので係数を掛けません。降水日数は1日(0〜24時)の合計で数えるので、営業時間外だけ降った日も含みます。東京の6月と9月は係数が0.81〜0.82まで下がり、1月・12月は0.92〜0.93です。出店する地域の観測地点を選び直せば、同じ方法で係数を作れます。月平均で書く事業の見通し欄には年の係数(0.86)を使います。開業月から暦月ごとの資金繰り表を作るときは月ごとの係数を使うと、梅雨時の資金不足を事前に読めます(後述の設例の表は売上の立ち上がりだけを示したもので、暦月の補正は入れていません)。
出店料が歩合か定額かで変わる必要売上
出店料の条件は出店先との契約で決まり、売上の一定割合を払う歩合と、1日あたりの金額を払う定額があります。どちらを選ぶかで、損益分岐点と、返済・生活費まで賄うのに必要な売上が変わります。歩合の出店料は売上に比例するので変動費、定額は固定費として扱います(固定費と変動費の分け方は変動費とはの記事を参照)。
次の表は、後述の設例(原価率35%、出店料以外の固定費月20万円、元金返済月5万円、生活費月25万円)で、歩合15%と定額1日3,000円(月22日で6.6万円)を比べたものです。税金と社会保険料は含めていません。
| 項目 | 歩合15% | 定額1日3,000円 |
|---|---|---|
| 変動費率 | 50%(原価35%+出店料15%) | 35%(原価のみ) |
| 固定費(月) | 20万円 | 26.6万円 |
| 損益分岐点売上(月) | 40万円 | 約41万円 |
| 返済と生活費まで賄う売上(月) | 100万円 | 約87万円 |
計算は「(固定費+元金返済+生活費)÷(1−変動費率)」です。歩合なら(20+5+25)÷0.5=100万円、定額なら(26.6+5+25)÷0.65≒87万円になります。損益分岐点はほぼ同じでも、目標の売上では13万円の差が開きます。月の売上が44万円(定額の6.6万円=売上の15%になる額)を超えると、定額の方が支払う出店料は少なくなります。
ただし、定額は雨で客が来ない日も同じ額を払います。立ち上がり期で売上が読めないうちは歩合の出店先で実績を作り、食数の見通しが立った出店先から定額に切り替える、という順番が資金繰りの面では安全です。計画書の取引先欄と根拠欄には、出店先ごとの条件を書き分けます。損益分岐点の式そのものは損益分岐点の計算方法で詳しく扱っています。
設例:事業の見通し欄の数字と立ち上がり期の資金不足
事業の見通し:創業当初と1年後の数字
個人で1台のキッチンカーを営業し、平日はオフィス街のランチ(月18日)、土日はイベント(月4日)に出店する設例です。客単価は1,000円、出店料は売上の15%(歩合)、原価率は食材と容器で35%と置きました。数字はすべて説明用の仮定なので、自分の見積と実績で置き換えてください。
- 創業当初:平日40食×18日+イベント120食×2日=960食。96万円×雨天係数0.86≒83万円。
- 1年後:平日60食×18日+イベント120食×4日=1,560食。156万円×0.86≒134万円。
| 項目(月平均) | 創業当初 | 1年後 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 83万円 | 134万円 | 上記の食数×1,000円×0.86 |
| 売上原価 | 29万円 | 47万円 | 売上×35% |
| 人件費 | 0万円 | 4万円 | イベント日に時給1,300円×8時間×4日(約4.2万円) |
| 家賃 | 5万円 | 5万円 | 仕込み場所の賃料 |
| 支払利息 | 1万円 | 1万円 | 借入400万円の概算 |
| その他 | 22万円 | 30万円 | 出店料12万・20万+固定10万 |
| 利益 | 26万円 | 47万円 | 売上−原価−経費 |
その他の固定10万円は、駐車場2万円・燃料3万円・車両保険1万円・ガスと発電機燃料2万円・雑費2万円の合計です。個人営業の場合、人件費に事業主本人の分は入れません。所得税などの税金と借入金の元金返済は利益から払う、というのが公庫の記入例の注記です。設例では元金返済(月5万円)と生活費(月25万円)の合計30万円に対し、創業当初の利益26万円では月4万円足りず、1年後の47万円で賄えます。
開業から6か月の資金繰り
事業の見通し欄は月平均なので、開業直後の数か月の落ち込みは見えません。売上が60万円から134万円まで段階的に伸びる想定で、毎月の手残り(売上×50%−固定費20万円−元金5万円−生活費25万円)を並べると次のようになります。固定費は1年後の水準(アルバイトの人件費4万円を含む)で置きました。売上と支払いは同じ月に現金で動く前提で、キャッシュレスや主催者経由の入金の遅れ、仕入れの掛け払いは入れていません。実際の入金・支払の時期で計算し直すと、不足額は前後します。
| 月 | 売上 | 手残り | 累計 |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 60万円 | −20万円 | −20万円 |
| 2か月目 | 70万円 | −15万円 | −35万円 |
| 3か月目 | 83万円 | −8.5万円 | −43.5万円 |
| 4か月目 | 95万円 | −2.5万円 | −46万円 |
| 5か月目 | 110万円 | +5万円 | −41万円 |
| 6か月目 | 134万円 | +17万円 | −24万円 |
累計の不足は4か月目に46万円で底を打ちます。46万円は元金返済と生活費を含めた手元資金の不足額なので、創業計画書の事業の運転資金とは分け、自己資金から別に残しておきます。これが無いと、生活費か仕入れのどちらかが止まります。開業月が6月や9月に重なるなら、雨天係数が0.81〜0.82まで下がるので不足はさらに膨らみます。設例の事業資金は、設備資金400万円(中古のキッチンカー架装込み350万円・発電機と追加の厨房機器40万円・決済端末と看板10万円)と運転資金54万円(初回の食材と容器15万円・修理や車検の予備39万円)の合計454万円です。調達は公庫400万円(元金5万円×80回)と事業に充てる自己資金54万円で、別に自己資金46万円を立ち上がり期の不足への備えとして残す計画にしました。月ごとの資金繰り表の作り方は資金繰りとはの記事にまとめています。
キッチンカーの許可と登録:許認可欄と設備資金に書くこと
飲食店営業(自動車)の許可と給水タンクの容量
キッチンカーで調理して売るには、車両を営業施設とする飲食店営業の許可が要ります。食品衛生法施行規則の別表は、自動車で調理する場合の給排水の貯水設備を、簡易な営業で約40リットル、比較的大量の水を要しない営業で約80リットル、比較的大量の水を要する営業で約200リットルと定めています。東京都の自動車関係営業許可申請等の手引は、この区分を取扱いの内容で示しています。
| 給水タンクの容量 | 食品・食器の取扱い(東京都の基準) |
|---|---|
| 約40リットル | 簡易な調理のみ・単一品目・使い捨て容器 |
| 約80リットル | 2工程程度までの調理・複数品目・使い捨て容器 |
| 約200リットル | 複数工程の調理・通常の食器・仕込みを行う |
同じ手引の申請書記入例では、既製品のカレーを使い車内で炊飯と盛り付けだけをする営業が約40リットル・単一品目の例になっています。容器包装に入った食品を仕入れてそのまま売るだけなら営業許可は要りませんが、営業届出が必要です。ただし、常温で長期間保存しても品質が劣化しない包装食品の販売だけなら、厚生労働省の営業届出制度の案内で届出不要とされています。許可を受けた施設は、HACCPに沿った衛生管理計画を作って記録を残すことも求められます(HACCPとはの記事を参照)。施設ごとに食品衛生責任者を置く必要もあり、略歴欄の資格に書きます。
許可の有効範囲と仕込み場所
許可を出すのは都道府県や保健所設置市などの自治体です。東京都の手引には、自動車による営業許可の有効範囲は都内一円に限られると明記されています。神奈川や埼玉のイベントにも出るなら、出店先の自治体で許可や届出がどう扱われるかを、計画を立てる段階で保健所に確認します。出店先の候補を広げるほど許可の手続きと費用が増えるので、売上計画に入れる出店エリアと許可を取るエリアは一致させます。
東京都の手引では、申請先の保健所は仕込み場所の所在地で決まり、仕込み場所が都内に無ければ自動車の保管場所などで決まります。仕込み場所とは、食品の調理や包装、器具の洗浄、給水タンクへの給水、食品や容器の保管をする施設です。申請書の「営業の大要」には、給水だけをする場合でも仕込み場所を書く欄があります。自宅の台所は営業許可を受けた施設ではないため、シェアキッチンや飲食店の厨房を借りるなら、その賃料を事業の見通しの家賃に入れます。
車両の登録(8ナンバー)と営業場所
キッチンカーを特種用途自動車(自家用の普通・小型車なら8で始まる分類番号、いわゆる8ナンバー)として登録するには、国土交通省の自動車の用途等の区分の要件を満たす必要があります。特種な設備の占有面積が1平方メートル(軽自動車は0.6平方メートル)以上で、かつ客室・物品積載設備の床面積との合計の2分の1を超えることが条件です。車体の形状ごとに構造要件も決まっていて、例えば「販売車」には商品を並べる棚やショーケース、走行中に動かないための仕切り、照明などが求められます。登録区分は保健所の許可とは別の、道路運送車両法上の手続きです。架装後の構造がどの車体の形状の要件に当てはまるかを架装業者と確認し、要件を満たさない場合の登録区分も含めて、見積書の車両代に登録費用まで入れます。
営業場所の前提も計画書に書きます。警視庁は、道路で場所を移動せずに露店や屋台を出す行為を道路使用許可の対象とし、許可するのは原則としてこれまで慣習上出店してきた場所に限るとしています。新規のキッチンカーの売上は、商業施設の敷地やイベント会場など、出店契約を結べる私有地の出店先で積み上げます。
イベント出店時の消火器と消防署への届出
祭礼や花火大会などの人が多く集まる催しでガスや電気の調理器具を使う場合、東京消防庁の火災予防条例では、消火器の準備と、露店等を開設する際の消防署への届出が義務になっています。2013年の京都府福知山市の花火大会火災を受けた条例改正で、他の自治体にも同様の規定があります。消火器は設備資金、イベントごとの届出の手間は出店計画に入れておきます。
飲食設備の利用と持ち帰り販売の消費税率
消費税率も売上の書き方に関わります。国税庁の軽減税率Q&A(個別事例編)問51は、屋台やフードイベントでテーブル・椅子・カウンター等の飲食設備で飲食させる場合は軽減税率の対象外(10%)としています。自分で設置していなくても、主催者などの設備設置者から使用の許可を受けて客に使わせている場合も同じです。一方、飲食設備が無い場合や、公園の公共のベンチを特段の許可なく客が使う程度なら、持ち帰りとして8%です。イベントで主催者が飲食スペースを用意している出店先では税率が変わることがあるので、価格表示と売上の税込・税抜を出店先ごとに確認します。
審査で指摘されやすいキッチンカーの計画書の失敗パターン
- 出店先が決まっていないのに毎日の売上を入れている:月22日の出店を前提にするなら、出店先の候補と契約・内諾の状況を自由記述欄に書きます。決まっていない日を創業当初の見通しに入れると、根拠を聞かれて答えに詰まります。
- 雨の日がゼロの計画になっている:晴天前提の食数で売上を組むと、梅雨や秋雨の月に計画との差が出続けます。気象庁の平年値で割り引いた根拠を書くと、数字の甘さを指摘されにくくなります。
- 出店料が経費に無い、または定額と歩合を混ぜて計算している:出店料は経費の中で原価の次に大きくなることがあります。出店先ごとに条件を書き分け、歩合は売上に比例させます。
- メニューと給水タンクの容量が合っていない:複数品目で通常の食器を使う計画なのに約40リットルのタンクの車を買う見積だと、許可の区分と矛盾します。
- 仕込み場所の費用が無い:自宅の台所で仕込む前提の計画は、許可の段階で成り立ちません。借りる厨房の賃料を家賃に入れます。
同じ公庫の様式で書く業種別の例として、たこ焼き屋の事業計画書は鉄板の生産能力から売上の上限を出す方法を、弁当屋の事業計画書は原価率と販売食数の組み方を扱っています。キッチンカーで同じ商品を売る場合の参考になります。
よくある質問
キッチンカーの開業に日本政策金融公庫の融資は使えますか?
使えます。新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、車両と架装は設備資金(返済期間20年以内)、食材や出店料は運転資金(同10年以内)として申し込めます。審査では、出店先の確保状況と売上の根拠が問われます。
移動販売の事業計画書にテンプレートや記入例はありますか?
公庫の創業計画書の業種別記入例9件に、キッチンカー・移動販売はありません。飲食業の書き方は洋風居酒屋の記入例が参考になります。売上の根拠欄は、本記事の「出店先ごとの食数×客単価×出店日数×雨天係数」の式に置き換えて書きます。
キッチンカーの売上予測はどう立てればよいですか?
出店先の種類ごとに晴天時の1日の食数を出し、客単価と出店日数を掛けて積み上げます。ピーク1時間の注文数が同じ1時間の提供能力を超えないかを別に確かめ、晴天前提の売上は気象庁の平年値で雨の日を割り引きます。東京の場合、降水量1mm以上の日は年102.5日で、雨の日の客数を半分と置くと売上は約14%減ります。雨の日を含む平均実績を根拠にするなら、割り引きは不要です。
キッチンカーに必要な許可と資格は何ですか?
調理して売るなら、車両ごとに保健所の飲食店営業(自動車)の許可が要り、施設ごとに食品衛生責任者を置きます。給水タンクは取り扱う品目と調理の工程で約40・80・200リットルの区分があります。東京都の許可の有効範囲は都内一円なので、都外で出店する場合は出店先の自治体での手続きを確認します。調理師免許は許可の要件ではありません。
キッチンカーにテーブルや椅子を置くと消費税率は変わりますか?
変わります。国税庁の軽減税率Q&A(個別事例編)問51では、屋台やフードイベントでテーブル・椅子等の飲食設備で飲食させる場合は10%です。主催者が設置した飲食スペースでも、使用の許可を受けて客に使わせているなら同じです。飲食設備が無く持ち帰りで売る場合は8%です。