漁業の事業計画書は、出す先によって名前も様式も変わります。漁業権の免許を申請するなら、事業計画書の添付が漁業法施行規則で義務づけられています。日本政策金融公庫の漁業経営改善支援資金を借りるなら、漁業経営改善計画の認定が先です。どちらも都道府県や水産庁が様式を配っているので、白紙から書く必要はありません。
この記事では、提出先ごとに様式と審査の軸を整理し、漁業権の免許をすべき者を決める基準(漁業法73条)を計画書の章立てに落とします。後半では、農林水産省の統計にある漁労所得を使って、収支計画が現実的かどうかを検算する方法を設例で示します。
まとめ:漁業の事業計画書で押さえる要点
- 漁業権の免許申請では、事業計画書が法定の添付書類です(漁業法施行規則25条2項3号)。和歌山県の様式では、5年分の生産量・生産額と、生産の増大・所得の向上・就業機会の確保に向けた取組を書きます。
- 同じ漁業権に申請が重なる場合、漁業法73条2項1号の既存漁業権者への免許の条件に該当しなければ、知事は「地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者」に免許します(同項2号)。計画書はこの比較の材料になります。
- 公庫の漁業経営改善支援資金は、漁業経営改善計画の認定を受けた人が対象です。経営開始3年未満なら「新規就業者型」で、5年後の減価償却前利益が地域の同じ漁業種類の平均以上になる計画が求められます。
- 沿岸漁船漁家の漁労所得は令和6年で平均223万円、海面養殖漁家は1,705万円です。この全国平均は参考値とし、地域・漁業種類・経営規模が近い実績と比較します。家計費と返済をまかなえるかは、減価償却費の足し戻しや借入元金の返済を反映した資金繰りで点検します。
- 漁業権の存続期間は、定置漁業権と大半の区画漁業権が5年、共同漁業権と真珠養殖などの区画漁業権が10年です。計画期間をこれに合わせます。
漁業の事業計画書を出す場面と様式
最初に、自分の計画がどの手続きに乗るのかを決めます。以下では、事業計画書を使う4つの場面と、陸上養殖の開始届出を比較します。必要書類と対象期間は手続きごとに異なります。
| 場面 | 根拠 | 様式の入手先 | 計画期間 |
|---|---|---|---|
| 漁業権の免許申請 | 漁業法69条・施行規則25条 | 都道府県の水産担当課 | 存続期間(5年または10年) |
| 漁業経営改善計画の認定 | 漁特法4条 | 水産庁のサイト | 3〜5年(類型による) |
| 公庫などの融資 | 各資金の要件 | 公庫の支店・漁協 | 返済期間に合わせる |
| 長期研修(独立型の実践型) | 経営体育成総合支援事業 | 研修の実施団体 | 研修2年目以降の最長2年 |
| 陸上養殖の開始 | 内水面漁業振興法28条 | 都道府県の水産担当課 | 計画書でなく届出 |
漁業権のない海域で許可漁業だけを営む場合や、漁協の組合員として漁協の漁業権の範囲で操業する場合は、漁業権の免許申請そのものは自分では行いません。その場合に事業計画書が必要になるのは、主に融資と補助事業の場面です。権利の仕組みは次の章で整理します。
個人の新規参入なら、日本政策金融公庫の創業計画書の記入欄(創業の動機・取扱商品・必要な資金と調達方法・事業の見通し)に沿って書く方法もあります。業種をまたいだ記入欄の書き方は、新規就農を目指す方が農業の事業計画書を融資審査前に整える理由や、同じ一次産業の畜産業の事業計画書の書き方|肥育期間20.7か月から組む運転資金と融資・補助金の要件【2026年版】が参考になります。
漁業権・許可・組合員行使権:計画書の前提になる権利
漁業の計画書では、まず「どの権利に基づいて操業するのか」を明記します。漁業法は、漁業を営む権利を大きく3つの経路で定めています。
| 経路 | 誰が与えるか | 主な対象 |
|---|---|---|
| 漁業権の免許 | 都道府県知事(69条) | 定置・区画(養殖)・共同漁業 |
| 漁業の許可 | 農林水産大臣(36条)・知事(57条) | まき網・底びき網など船舶で行う漁業 |
| 組合員行使権 | 漁協の漁業権行使規則(105条) | 漁協が持つ団体漁業権の範囲内の漁業 |
漁業権の種類と存続期間:区画漁業権も原則5年
漁業権は、定置漁業権・区画漁業権・共同漁業権の3種類です(漁業法60条)。存続期間は75条で、共同漁業権と一部の区画漁業権が10年、それ以外が5年と定められています。10年になる区画漁業権は、施行規則27条で真珠養殖業・築堤式養殖業・網仕切り式養殖業に限られます。
つまり、ブリやマダイの小割式養殖、カキやホタテの垂下式養殖を内容とする区画漁業権は5年です。漁業権の存続期間と設備の減価償却期間は別です。免許申請の計画期間は漁業権の存続期間を確認して設定し、減価償却費は資産ごとの耐用年数などに基づいて計算します。知事は海区漁場計画でこれより短い期間を定めることもできるので(75条2項)、公示された漁場計画で実際の期間を確かめてから計画を組みます。
漁協の組合員資格:年90〜120日の範囲で定款が定める日数
沿岸で刺網や一本釣り、採貝・採藻を営む人の多くは、漁協が免許を受けた共同漁業権や区画漁業権の範囲内で、組合員として操業しています。この権利が組合員行使権で、漁協が定める漁業権行使規則の資格に当てはまる組合員が持ちます(漁業法105条)。
組合員になる資格は水産業協同組合法18条1項1号が定めています。組合の地区内に住所があり、漁業を営むか漁業に従事する日数が、1年に90日から120日までの範囲で定款が定める日数を超える漁民です。日数は漁協ごとに違うため、加入したい漁協の定款を見て、研修や乗り子としての従事日数がいつ要件を満たすかを計画書のスケジュールに書き込みます。
海区漁業調整委員会:免許の前に意見を聴かれる機関
漁業権の免許申請があると、知事は海区漁業調整委員会の意見を聴かなければなりません(漁業法70条)。委員は、漁業に関する識見を持つ人のうちから知事が議会の同意を得て任命し、定数は原則15人です。委員の過半数は、年90日以上漁船を使って漁業を営むか従事する漁業者・漁業従事者でなければなりません(138条)。
計画書を読むのは行政の担当者だけではなく、その海区で操業している漁業者でもあるということです。漁場の位置、漁具の数と配置、操業時期を、地元の漁業者が自分の操業と重ならないか判断できる粒度で書きます。
漁業権の免許申請に添付する事業計画書の書き方
漁業権の免許を受けたい人は、知事が海区漁場計画を公示した後の申請期間内に申請します。漁業法施行規則25条2項は、申請書に添付する書類として、住民票の写し(法人は定款と登記事項証明書)、事業計画書、暴力団員等に当たらないことの誓約書などを挙げています。事業計画書は省略できない書類です。
免許をすべき者の決定基準(漁業法73条2項)
同じ漁業権に申請が1件なら、欠格事由などに当たらない限り知事は免許をしなければなりません(73条1項)。申請が複数あると、73条2項で次のように決まります。
- 1号:存続期間が満了する漁業権とおおむね同じ内容で設定される漁業権に、満了する漁業権を持っていた人が申請し、その人が漁場を「適切かつ有効に活用している」と認められれば、その人に免許する。
- 2号:それ以外の場合は、漁業生産の増大、漁業所得の向上、就業機会の確保その他の地域の水産業の発展に「最も寄与すると認められる者」に免許する。
水産庁の漁業権の免許に関する技術的助言は、2号の審査基準を都道府県があらかじめ定めて公表し、既存の漁業権者の同意の有無で判断するものにしないよう求めています。審査では、事業計画書に漁業生産の増大・漁業所得の向上・就業機会の確保の計画を書かせ、書類で判断しにくければヒアリングを併用する運用が示されています。
新規参入者が既存の漁業権者と競うとき、既存の権利者が漁場を適切に使っている限り1号で既存者が優先されます。新規参入の余地があるのは、新しく設定される漁業権や、既存の漁場が使われていない場合で、そこでは2号の比較になります。2号の3要素(生産・所得・就業)は、そのまま計画書の章立てとして使えます。
県の様式で書く項目:和歌山県の区画漁業の例
和歌山県が公表している漁業の免許をすべき者の判断基準(令和7年12月24日)は、新規の区画漁業権について、添付の事業計画書(様式8-3)と必要に応じたヒアリングで審査すると定めています。様式8-3の構成は次のとおりです。
| 章 | 書く内容 | 審査の観点 |
|---|---|---|
| 1 漁業生産の増大 | 1〜5年目の生産量・生産額、施設の規格と台数 | 存続期間中の安定生産 |
| 2 漁業所得の向上 | 経費削減・販路拡大・衛生管理 | 実現可能性 |
| 3 就業機会の確保 | 雇用の人数と時期 | 地域の就業 |
| 4 その他の取組 | 地元漁業者・流通加工業者との関係 | 調和的な発展 |
北海道も、共同漁業権・区画漁業権(団体・個別)・定置漁業権ごとに事業計画書の参考様式を北海道漁業等の免許の申請に関する規則のページで公開しています。様式は都道府県ごとに違うので、申請する海区の様式を使い、生産量は施設の規格(筏の寸法、延縄の長さと本数)から積み上げた数字にします。「生産量◯トン」とだけ書くのではなく、施設の規模や単位施設当たりの生産量を示し、計算の根拠を説明します。
免許を受けた後の報告と計画の見直し
漁業権者は、資源管理の状況や漁場の活用の状況を知事に報告しなければなりません(漁業法90条1項)。知事は、正当な理由なく漁場の一部を使っていない漁業権者を指導し、従わなければ勧告できます(91条)。計画書に書いた施設台数や生産量は、免許後の報告で照合される数字になるので、達成できない数字を書くと次の更新で不利に働きます。
漁業経営改善計画の書き方と認定で使える資金
設備投資の資金を公庫から借りる場合、入口になるのが漁業経営改善制度(水産庁)です。漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法(漁特法)4条にもとづき、漁業経営の改善に関する計画をつくり、知事または農林水産大臣の認定を受けます。計画には、改善の目標、経営の向上の程度を示す指標、改善の内容と実施時期、必要な資金の額と調達方法の4つを書きます(4条2項)。
漁業経営改善計画の3類型と認定目標
水産庁の資料「漁業経営改善制度(令和6年4月)」によると、目標の立て方は次の3類型です。指標に使う減価償却前利益は、営業利益と減価償却費の合計です。
| 類型 | 計画期間 | 目標 |
|---|---|---|
| 一般型 | 5年 | 減価償却前利益などの伸び率15%以上(特定の取組で5%以上) |
| 地域連携型 | 3〜5年 | 浜プラン等の所得向上目標の伸び率以上 |
| 新規就業者型 | 5年 | 終了時に地域の同じ漁業種類の平均値以上 |
新規就業者型を使えるのは、新たに漁業経営を始めてから3年未満で、一定の漁労の知識と技術があると認められる人です。伸び率で測る一般型と違い、5年後の水準が地域平均に届くかで判断されます。基準値が5%になる「特定の取組」には、加工・販売施設や飲食店の運営などの新規事業、スマート水産技術の導入、養殖の給餌・投薬記録の電子化、新たな販路の開拓などが挙がっています。
漁業経営改善計画の申請書類と提出経路
漁業者が申請するときの書類は、改善計画認定申請書(省令様式第1号)に、改善に関する計画・実施計画・経営計画・貸借対照表・資金計画・設備投資計画の各別紙と意見書を付けます。新規就業者型では推薦書も必要です。申請は原則として所属する漁協や漁業者団体の意見書を付け、これらを経由して出します。添付書類として、漁業なら資源管理、養殖業なら漁場改善に取り組んでいることを示す書類も原則必要です。
認定後は、認定から2度目の事業年度の終了日と、計画の最終事業年度の終了日から3か月以内に、実績を行政庁へ報告します。計画書は借りるための書類で終わらず、途中で達成度を問われる書類です。
漁業経営改善支援資金の限度額と返済期間
認定を受けると、日本政策金融公庫の漁業経営改善支援資金を設備資金と長期運転資金に使えます。沿岸漁業者(総トン数20トン以上の漁船を使う者、または漁労体を構成する漁船の合計総トン数が20トン以上の漁業を営む者以外)の限度額は「融資額」と「負担額×80%」の低い方で、主な融資額は次のとおりです。
| 使いみち | 1経営体当たりの融資額 |
|---|---|
| 漁船(10トン未満・個人) | 3,000万円 |
| 漁船(10トン未満・法人) | 6,000万円 |
| 漁具(一般) | 3,000万円(1漁労体1,000万円) |
| 長期運転資金等(養殖業) | 4億円 |
| 長期運転資金等(定置漁業) | 2億円 |
| 施設(養殖業を営む法人) | 3億円 |
返済期間は18年以内(うち据置期間3年以内)で、公庫の金利情報では令和8年9月18日現在の金利が年3.30%または3.45%です。認定を受けた人は、国の補助事業による利子助成や保証料助成の対象にもなります。認定するのは、遠洋かつお・まぐろ漁業や遠洋底びき網漁業などを除き、都道府県知事です。
研修から認定までの順序:独立型研修と新規就業者型
未経験から独立する場合、国の経営体育成総合支援事業による長期研修が入口になることが多いです。水産庁の令和8年度予算の概要では、長期研修の支援は次のとおりです(支援は指導漁業者を経由)。
| 研修の型 | 目指す就業 | 期間と支援額 |
|---|---|---|
| 雇用型 | 漁業経営体への就業 | 最長1年・最大14.1万円/月 |
| 幹部養成型 | 沖合・遠洋漁業の幹部 | 最長2年・最大18.8万円/月 |
| 独立型 | 独立・自営 | 最長3年・最大28.2万円/月 |
| 実践型 | 水揚目標等を定めた経営計画の実証 | 研修2年目以降・最長2年・最大12.5万円/月 |
表の研修期間には延長措置があり、就業準備資金の交付期間が1年以下の場合は長期研修を最長1年間延長できます。就業前には就業準備資金(最大165万円・最長2年)もあります。実践型研修で水揚目標を置いた経営計画を実際に回しておくと、その実績が独立後の計画書の根拠になります。独立後3年未満のうちに新規就業者型の改善計画の認定を受ければ、漁船や漁具の取得に漁業経営改善支援資金を使えます。研修・組合員資格・認定の時期を1本の年表にして計画書に付けると、審査する側が順序の無理を確かめやすくなります。
統計で検算する漁業の収支計画
漁業の収支計画は、漁獲量と魚価の見込みが楽観に寄りやすい計画です。自分の数字を、公的な統計と、返済と家計費から逆算した必要額の両方と突き合わせます。
漁労所得の水準:沿岸漁船漁家223万円・海面養殖漁家1,705万円
水産庁が漁業経営統計調査をもとにまとめた沿岸漁家の漁労所得は次のとおりです(単位:万円)。
| 区分 | 平成30年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 |
|---|---|---|---|---|
| 沿岸漁家平均 | 309 | 378 | 413 | 447 |
| 沿岸漁船漁家 | 208 | 252 | 219 | 223 |
| 海面養殖漁家 | 883 | 1,062 | 1,533 | 1,705 |
沿岸漁船漁家は、個人経営体のうち10トン未満の漁船漁業を再集計した値です。平成30年から令和6年の沿岸漁船漁家の漁労所得は196万〜252万円で推移しており、令和6年の海面養殖漁家の漁労所得は沿岸漁船漁家の約7.6倍です。漁労所得は漁労収入から減価償却費を含む漁労支出を引いた額なので、減価償却費を足し戻すと減価償却前利益に近い数字になります。
設例:中古漁船で独立する沿岸漁業の必要利益
次の条件で、借入の返済と家計費をまかなうのに必要な減価償却前利益を逆算します(数値は設例の仮定です)。
- 中古漁船(10トン未満)と漁具の取得費1,500万円、自己資金300万円、借入1,200万円(負担額1,500万円×80%)
- 漁業経営改善支援資金を返済期間18年・据置3年で借り、据置後15年で元金を均等に返す
- 家計費は年300万円
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 元金返済(1,200万円÷15年) | 80万円 |
| 家計費 | 300万円 |
| 必要な減価償却前利益(利息・税金・社会保険料を除く) | 380万円 |
この設例では、利息と税金を払う前の段階で年380万円の減価償却前利益が要ります。沿岸漁船漁家の漁労所得の平均223万円に減価償却費を足しても、この水準に届くかは操業日数と漁場次第です。平均を大きく上回る計画を出すなら、漁獲量×魚価の根拠(研修先での水揚げ実績、漁協の販売単価)を数字で添えます。届かない場合の打ち手は、借入額を減らす(漁船の取得費を下げる)、加工・直販で単価を上げる、養殖など所得水準の高い漁業種類を組み合わせる、のいずれかです。
損益分岐点の計算そのものは損益分岐点の計算方法:5つの計算式と決算書からの求め方、エクセルの式と複数商品の計算例【2026年版】で、月ごとの入出金の管理は資金繰りとは?意味と資金繰り表の見方、会計データで3か月先を見える化する方法【2026年版】で詳しく扱っています。漁期の偏りで月ごとの収入が大きく振れる漁業では、年額の収支だけでなく月別の資金繰り表を付けると、運転資金の必要額を説明しやすくなります。
魚価10%下落・燃油価格20%上昇時の利益感応度
設例の計画を、漁労収入900万円、収入に比例する費用(販売手数料・箱代など)を収入の10%、燃油費を年120万円、その他の費用(減価償却費・支払利息を除く)を年290万円と仮定します。基準となる減価償却前利益は900万円−90万円−120万円−290万円=400万円です。漁獲量とその他の費用を一定として、魚価と燃油の変動を当てます。
| ケース | 漁労収入 | 減価償却前利益の変化 | 減価償却前利益 |
|---|---|---|---|
| 計画どおり | 900万円 | なし | 400万円 |
| 魚価10%下落 | 810万円 | −81万円 | 319万円 |
| 燃油20%上昇 | 900万円 | −24万円 | 376万円 |
| 両方が同時に起きる | 810万円 | −105万円 | 295万円 |
魚価10%の下落は、収入比例費が減る9万円を差し引いても81万円の減益です。380万円は利息・税金・社会保険料を除いた必要額なので、計画どおりの400万円でも資金が足りるとは限りません。各年の実際の支払額を加えて不足額を計算し、漁業共済の補償対象・補償額や、運転資金の積立財源を確認して対策を計画書に書きます。下振れのケースと対策を並べると、収入が減った場合の不足額と返済原資を説明できます。
陸上養殖で参入する場合の届出
海面の漁業権を使わず、陸上の水槽で養殖を始める参入も増えています。2023年4月1日から、内水面漁業の振興に関する法律施行令2条で、陸地で営む養殖業のうち、食用の水産動植物(うなぎを除く)を養殖し、海水や水質を変えた水を使うか、餌などで生じた物質を除去しないまま排水するものが届出養殖業になりました。
- 養殖を始める日の1か月前までに、養殖場ごとに届け出る(同法28条1項)
- 毎年、養殖場ごとの実績報告書を出す(29条)。神奈川県の案内では、4月1日から翌年3月31日までの実績を4月30日までに提出
- 届出をしない、または虚偽の届出をした場合は10万円以下の罰金(38条)
法律上の届出先は農林水産大臣で、神奈川県の案内では県の水産課が受け付けています。うなぎ養殖業は届出でなく許可が必要な指定養殖業です(施行令1条)。陸上養殖の事業計画書は漁業権の審査を受けない分、融資や補助の審査で設備費と電気代の根拠が重く見られます。種苗の調達先と1尾当たりの単価、飼育密度、水槽の数と体積から生産量を積み上げます。
差し戻されやすい漁業の事業計画書の欠陥
免許申請・改善計画・融資のいずれでも、次の欠陥は指摘を受けやすい箇所です。
- 操業の権利が書かれていない:免許を受けるのか、許可を受けるのか、漁協の組合員として行使するのかが不明。組合員になる時期が、定款の従事日数要件と合っていない。
- 生産量が施設や操業日数とつながっていない:筏の台数、延縄の本数、出漁日数から積み上げていない。
- 計画期間が漁業権の存続期間とずれている:5年の区画漁業権で、免許期間後も操業できると無条件に見込み、再免許を受けられない場合の返済や設備処分を検討していない。
- 家計費と返済を引くと赤字になる:漁労所得の地域平均を大きく上回る前提を、根拠なしに置いている。
- 地元との調整が空欄:漁場が隣接する漁業者や漁協との協議の状況、販売先(漁協の共販か、直販か)が書かれていない。
税金の見込みも落としやすい項目です。個人事業税では、10トン未満の動力漁船などで行う小規模な採捕の事業は課税対象の水産業から除かれます(地方税法72条の2第9項・施行令11条の2。定置漁業は除外の対象外)。対象になる業種の一覧は個人事業税がかからない業種は?法定70業種の一覧と税率3〜5%・290万円控除の計算で確認できます。
よくある質問
漁業の事業計画書の様式はどこで入手できますか?
漁業権の免許申請に使う様式は、申請する海区の都道府県の水産担当課が配っています(北海道や和歌山県はサイトで公開)。漁業経営改善計画の申請様式は水産庁の漁業経営改善制度のページからダウンロードできます。融資用の提出書類や様式は資金・金融機関によって異なるため、申込先に確認します。公庫の創業計画書は、事業内容や必要資金を整理する参考として使えます。
個人でも漁業権の免許を受けられますか?
受けられます。定置漁業権や区画漁業権のうち個別漁業権は、漁業法72条1項の欠格事由(暴力団員等であることなど)に当たらなければ個人も法人も申請できます。一方、漁協が免許を受ける団体漁業権の範囲で操業する場合は、免許でなく漁協の組合員として組合員行使権を持つ形になります。
漁協の組合員になるには何日漁業に従事すればよいですか?
水産業協同組合法18条1項1号により、1年に90日から120日までの範囲で、各漁協の定款が定める日数を超えて漁業を営むか従事する必要があります。地区内に住所があることも条件です。具体的な日数は加入したい漁協の定款で確認します。
漁業法の改正で漁業権の免許はどう変わりましたか?
2018年の改正法(2020年12月1日施行)で、免許をすべき者は73条2項の基準で決めることになりました。満了する漁業権の持ち主が漁場を適切かつ有効に活用していればその人に、それ以外は地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者に免許します。漁業権者には資源管理の状況などの報告義務(90条)も課されました。
漁業の事業計画書は何年分の数字を作ればよいですか?
漁業権の免許申請なら存続期間(5年または10年)に合わせ、和歌山県の区画漁業の様式は5年分の生産量・生産額を求めています。漁業経営改善計画は一般型と新規就業者型が5年、地域連携型が3〜5年です。融資では返済期間を通して返済できるかを見られるので、少なくとも据置期間が終わった後の年まで収支を示します。