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Web制作会社の事業計画書の書き方|制作・保守の売上式と運転資金、同業の経営指標【2026年版】

Web制作会社の事業計画書の書き方|制作・保守の売上式と運転資金、同業の経営指標【2026年版】

Web制作会社の事業計画書で数字の根拠を問われるのは、主に3点です。制作案件をいくらで何件受けるのか、納品後の保守・運用でどれだけ売上を積み上げるのか、検収から入金までの間の外注費と固定費をどう払うのか。この記事では、日本政策金融公庫の書式と「小企業の経営指標調査」を使って、Web制作会社の売上計画と運転資金を設例で組み立てます。受託開発・SES・SaaSなど他のIT業態との違いはIT企業の事業計画書の書き方で比べています。

まとめ:Web制作会社の事業計画書で押さえる要点

  • 公庫の創業計画書の記入例は9業種あり、Web制作の例はありません。数字の置き方はソフトウェア開発業の記入例を参照し、月ごとの売上の凸凹は月別収支計画書で示します。
  • 売上は制作(案件単価×件数)と保守・運用(月額×契約数)に分けて積み上げます。検収の月に一括で計上する契約なら制作は検収まで売上が立たず、保守は保守を契約した顧客の数だけ増えます。
  • 同業比較には公庫の経営指標を使います。プログラム設計を伴うホームページ作成は日本標準産業分類で受託開発ソフトウェア業に入るため、受託開発ソフトウェア業・商業デザイン業・広告制作業のうち事業内容が近い行と比べます。
  • 開業月に着手し、制作2か月・検収の翌月末払いで受ける設例では、最初の入金は3か月目の末です。支払いが入金より先に出る前提で、入金直前の最大不足は着手金なしで240万円、着手金30%で150万円になります。
  • 外注先のデザイナーやコーダーへの支払いには、取適法やフリーランス法の60日ルールがかかる場合があります。顧客からの入金より先に外注費が出ていく前提で運転資金を見積もります。

公庫の書式でWeb制作会社が参照する記入例と添付資料

日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードページに載っている創業計画書の記入例は、洋風居酒屋・美容業・中古自動車販売業・婦人服・子供服小売業・ソフトウェア開発業・内装工事業・学習塾・歯科診療所・介護サービスの9業種です。Web制作やWebデザインの記入例はありません。案件を受注して外注を使いながら納品する点が近いのはソフトウェア開発業の記入例で、売上を「単価×件数(受注契約書あり)」、原価を外注費の原価率で組んでいます。記入例の数字の読み方はシステム開発会社の事業計画書の書き方で詳しく扱っています。

創業計画書の「事業の見通し」は月平均で書く欄です。検収の月に一括で売上を計上する計画では、開業直後に売上が計上されない月もあり、月平均だけでは資金の動きが伝わりません。同じページにある月別収支計画書(記入例)は、事業の見通しを月ごとに書くときに使う書式で、売上高・売上原価・経費・利益・借入金返済額を12か月分並べます。開業から数か月の赤字と、それをどの資金で埋めるかをこの書式で示します。

書類 Web制作会社が書く中身
創業計画書 経歴・制作実績、提供範囲、取引先、月平均の収支
月別収支計画書 検収月の売上、保守契約の増え方、赤字月
補足資料 制作実績、見積書・内諾書、取引条件

制作案件と保守・運用に分けた売上の式

公庫の売上高等の計算方法は、業種の特性に合う算式を選び、他の方法も合わせて検討するよう求めています。Web制作会社は制作と保守で売上の立ち方が違うので、算式を2本に分けます。

制作売上:案件単価×件数と検収月

この記事の設例では、制作売上を「案件単価×月の検収件数」で計算し、単価50万円の案件を月2件検収すると100万円になります。単価は、ページ数・CMS構築の有無・デザインの作り込みで大きく変わるため、想定する案件の型を1つか2つに絞り、その型の見積書を根拠にします。相場の幅はホームページ制作費用の相場で確認できますが、計画書では相場より自社の見積もりと過去の受注実績を優先して示します。

収益認識には、検収などの一時点で計上する場合と、作業の進み具合に応じて一定の期間にわたり計上する場合があり、どちらになるかは契約内容と会計処理で決まります。この記事の設例は、検収の月に一括で計上する前提です。その場合、顧客の原稿や写真の提出が遅れると検収も後ろにずれるため、制作期間は顧客側の作業待ちを含めて置きます。納品と検収の扱いは納品と検収の違いで整理しています。

保守・運用売上:月額×契約数の積み上げ

保守・運用は「月額×契約数」で、納品した顧客のうち保守を契約する割合が増え方を決めます。下の表は、毎月2件着手・制作期間2か月(着手した翌月末に検収)・単価50万円(税抜)・検収した2件のうち1件が月額2万円の保守を契約する、という前提の設例です。保守は検収した月から満額で計上し、解約はないものとしています。

時点 制作売上 保守契約数 保守売上 月の売上
1か月目 0円 0件 0円 0円
2か月目 100万円 1件 2万円 102万円
12か月目 100万円 11件 22万円 122万円
24か月目 100万円 23件 46万円 146万円

1年目の売上は、制作が100万円×11か月で1,100万円、保守が2万円×(1+2+…+11件)で132万円、合計1,232万円です。この設例では保守売上が徐々に積み上がるため、創業当初は制作代金の入金から外注費・固定費などを支払った後の資金で返済できるかを確認します。保守の月額は、提供範囲(更新作業の回数・サーバー管理・障害対応の時間帯)を決めた見積書で示します。契約率は過去の制作顧客に対する保守契約実績や見込み顧客の契約意向で裏付け、実績がなければ仮定と明記します。

公庫の経営指標による売上・利益率の照合

計画の数字が妥当かは、同業の小企業の決算と比べると説明しやすくなります。まず自社がどの業種に当たるかを決めます。e-Statの日本標準産業分類「デザイン業」の説明では、プログラムの設計を行う事業所はデザイン業に含めず、不適合事例に「ホームページ作成業(プログラム設計を伴うもの)[3911]」が挙がっています。CMS構築やシステム連携まで受ける会社は受託開発ソフトウェア業、デザインが中心の会社はデザイン業の側、広告の企画・制作が中心なら広告制作業が近い行です。

公庫の小企業の経営指標調査(サービス業)と同(情報通信業)は2025年度調査で、2026年8月に公表されました。業種は原則として2002年10月適用の産業分類で集計しているため、現行分類のデザイン業に近い行は「商業デザイン業」です。

業種(公庫の区分) 社数 1人当たり売上(中央値) 総利益率(平均) 人件費比率(平均) 営業利益率(中央値)
受託開発ソフトウェア業 607社 1,065万円 73.2% 45.7% 0.9%
商業デザイン業 123社 1,095万円 76.7% 39.6% 0.4%
広告制作業 139社 1,184万円 68.1% 35.5% 0.2%

対象は公庫が融資した従業者50人未満の法人で、従業者には代表者と常勤役員を含みます。売上高は原則として消費税込みです。設例の1年目の売上1,232万円は税抜なので、税込では約1,355万円です。代表者1人の会社なら3業種の中央値(1,065万〜1,184万円)を上回るため、外注を使って1人で回せる件数であることを、外注先の体制と合わせて説明します。売上原価を制作の外注費(制作売上の30%・年330万円)だけとし、保守のサーバー費などを含めない場合、保守を含めた総利益率は約73%となり、3業種の平均の幅(68.1〜76.7%)に収まります。

営業利益率の中央値は3業種とも1%未満で、調査対象企業の半数は営業利益率がこの中央値以下です。計画で利益率を高く置くなら、単価が高い理由か外注費が低い理由を書き添えます。

着手金の有無で比べる運転資金の設例

Web制作会社の運転資金は、着手から入金までの月数と、外注費・固定費の支払日の差で決まります。次の前提で、開業から4か月の資金の動きを比べます。

  • 開業月から毎月2件着手、単価50万円、制作期間2か月(着手した翌月末に検収)
  • 外注費は1件15万円(30%)。外注先は着手した月の末に納品し、その翌月末に支払う
  • 固定費は役員報酬を含めて月60万円。保守売上と消費税は含めない
  • 着手金は毎月の契約時に月末の支払いより先に受領し、それ以外の入金・支払いは月末とする。同じ月末では支払いが入金より先に出る
  • A:着手金なし、検収月の末締め・翌月末に全額入金
  • B:契約時に着手金30%、残り70%は検収の翌月末に入金
月末 支払累計 A 入金前 A 入金後 B 入金前 B 入金後
1か月目 60万円 -60万円 -60万円 -30万円 -30万円
2か月目 150万円 -150万円 -150万円 -90万円 -90万円
3か月目 240万円 -240万円 -140万円 -150万円 -80万円
4か月目 330万円 -230万円 -130万円 -140万円 -70万円

表の「入金前」は、その月末の支払いを済ませて入金を受け取る前の累計の差引です。Aは最初の入金が3か月目の末で、その直前に240万円の不足になります。Bは着手金が契約時に入るため、同じ時点の不足は150万円です。この設例の入出金だけなら、どちらも4か月目以降は月10万円ずつ改善します。実際の借入計画では、借入元金の返済や税金など表に含めていない支出を加え、月末残高が不足しないか確認します。

借入額は、入金が遅れた場合も計算に入れて決めます。最初の検収が1か月遅れて入金が4か月目の末にずれ、外注費と固定費の支払いが予定どおり続くと、入金直前の不足はAで330万円、Bで210万円に広がります。運転資金は、このような遅延の場合の最大不足から自己資金で埋められる額を引いて見積もります。

着手金を取れるかは顧客との交渉次第ですが、計画書には「着手金の有無」と「検収から入金までの日数」を取引条件として書き、資金繰りの前提と一致させます。月ごとの入出金を組む手順は資金繰り表の作り方で解説しています。

外注と受注の取引条件:取適法・フリーランス法・著作権

外注先への支払期日:取適法とフリーランス法の60日

外注先のデザイナーやコーダーが、従業員を使用しない個人事業主や、代表者1人以外に役員がおらず従業員を使用しない法人であれば、フリーランス法の特定受託事業者に当たります。公正取引委員会の解説のとおり、発注後ただちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメールなどで示す義務があり、従業員を使用する事業者など特定業務委託事業者は、給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定めます。顧客から受けた案件の再委託で、再委託である旨・元委託者の名称・元委託の支払期日を示した場合は、元委託の支払期日から30日以内とする特例があります(同Q&A)。

外注先が個人か法人かにかかわらず、発注側と受注側の資本金か従業員数の組み合わせが基準に当てはまれば、取適法(2026年1月1日施行)もかかります。取適法の中小受託事業者には個人も含まれます。顧客から請け負ったWebサイトの作成の全部か一部を他の事業者に委託する取引は、公取委の資料で情報成果物作成委託に当たるとされています。資本金と従業員数の基準はプログラム作成を伴うかどうかで変わり、判定の手順は下請法の資本金区分と取適法の従業員基準で確認できます。対象取引では、受領日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、手形払いはできません。フリーランス法と取適法の両方がかかり得る取引では、再委託の特例だけで判断せず、それぞれの支払期日の定めを確かめます。

受注する側として:自社サイトの直接受注と代理店経由の下請け

取適法は、受注する側のWeb制作会社を守る場面もあります。広告代理店や大手の制作会社から、顧客の案件の一部を下請けとして受ける場合は、基準に当てはまれば元請に60日以内の支払義務がかかります。一方、事業会社が自社の宣伝用ホームページを外注する場合について、公取委のQ&Aは、自社で作成する能力がない部分の外注は情報成果物作成委託に当たらないとしています。ただし、これは取適法の扱いです。自社が従業員を使用しない一人法人などで特定受託事業者に当たれば、事業会社から直接受ける案件でも、発注側が従業員を使用する事業者などであればフリーランス法の60日ルールがかかります。直接受注か下請けかだけで判断せず、どの法律がかかるかを確かめたうえで、着手金と支払サイトを見積書の段階で示しておきます。

成果物の著作権を顧客に譲渡するか、自社に残して利用を許諾するかも、保守契約の範囲と一緒に契約書で決めておきます。論点はWebデザインの著作権と制作契約にまとめています。

公庫の新規開業・スタートアップ支援資金と審査で示す根拠

創業期のWeb制作会社がまず検討するのは、公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。対象は新たに事業を始める方か事業開始後おおむね7年以内の方で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内で、どちらも据置期間は5年以内です。

パソコンとソフトウェア程度で開業し設備資金が小さい場合は、借入の中心が運転資金になります。審査で根拠として出せるのは、制作実績(公開サイトのURLと担当範囲)、受注の内諾や見積書、保守の提供範囲と月額、外注先との取引条件です。前職の取引先から受ける予定なら、その割合と、残りをどこから取るかも書きます。提供範囲をサービスページの形で整理しておくと、創業計画書の取扱商品・サービスの欄にそのまま使えます。構成の例として、当社のコーポレートサイト制作のページも参考にしてください。

審査で突かれやすい計画と見直しの条件

次のどれかに当てはまる計画は、数字を直すか、根拠の説明を足してから提出します。

  • 開業月から制作売上を立てている:設例のように制作期間が2か月なら、最初の検収は2か月目です。開業月に制作売上を置くなら、その月に検収できる案件の契約書と工程表を添えます。開業後に受注して月内に検収する短期案件や、一定の期間にわたり収益を認識する案件は、この記事の設例とは分けて計画します。
  • 保守を全顧客が契約する前提で積んでいる:保守を契約しない顧客や、他社への乗り換えによる解約が出ます。契約率を下げた場合と解約を入れた場合の売上も計算しておきます。
  • 単価を前職の請求額のまま置いている:前職の単価は会社の実績と体制込みの金額です。自社名義の見積書で示します。
  • 外注費を入金後に払う前提にしている:外注先への支払期日は受領日から数えるため、顧客の入金より先に来ることがあります。
  • 売上の大半が1社の代理店からの下請け:取引が止まると売上がなくなります。直接受注の営業先と件数を併記します。

よくある質問

Web制作会社の事業計画書にテンプレートはありますか?

公庫の書式ダウンロードページに創業計画書と月別収支計画書の様式があります。Web制作の記入例はないので、受注と外注の構造が近いソフトウェア開発業の記入例で欄の書き方を参照します。記入例の数字は流用せず、売上の算式を制作と保守の2本にしたうえで、外注費の比率、人員、取引条件も自社の見積書と契約に合わせて置きます。

Web制作会社は業種を何と書けばよいですか?

日本標準産業分類では、プログラム設計を伴うホームページ作成業は受託開発ソフトウェア業(3911)に入り、デザイン中心の事業はデザイン業に入ります。自社の売上の中心がCMS構築やシステム連携か、デザインかで決め、同業比較もその業種の行で行います。

個人のWebデザイナーとして開業する場合も同じ書き方でよいですか?

売上の式と運転資金の考え方は同じです。違うのは人件費で、公庫の売上高等の計算方法では、個人営業の場合は経費の人件費に事業主の分を含めません(家族の分は含めます)。事業主の生活費は利益から出す前提で返済計画を組みます。

自己資金はいくら必要ですか?

新規開業・スタートアップ支援資金には、2024年度から自己資金の割合の要件がありません(公庫の2024年4月1日公表資料)。ただし自己資金が少ないほど借入と毎月の返済が増えるので、設例のような開業初期の資金不足を自己資金でどこまで埋められるかを示します。

事業計画書は何年分作ればよいですか?

公庫の創業計画書は、事業の見通しを「創業当初」と「軌道に乗った後」の月平均で書きます。Web制作会社は保守の積み上げが2年目以降に効くため、月別収支計画書で最初の12か月を月ごとに示し、軌道に乗った後の欄に保守契約数の想定を書き添えます。

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