人事労務

ファントムストックとは何か?基本的な仕組みをわかりやすく解説

目次

ファントムストックとは何か?基本的な仕組みをわかりやすく解説

ファントムストックの定義と基本概念:実際の株式を使わずに企業価値に連動する報酬制度の仕組みと基本的な特徴

ファントムストックとは、企業が従業員や役員に対して実際の株式を発行せずに株価や業績に連動した報酬を提供する制度です。いわば「幻の株式」を付与する仕組みであり、社員には仮想的な株式数が割り当てられます。一定期間経過後や所定の条件を満たした時点で、その仮想株式に対応する評価額(株価や業績指標に基づく金額)を現金として受け取ることができます。株式を直接与えるストックオプションとは異なり、権利行使の際に社員が自ら株式を購入する必要はなく、会社から直接金銭が支払われる点が特徴です。株式の値上がりによる利益を現金報酬という形で実現するこの基本概念は、上場・非上場を問わず活用できる新しいインセンティブ手法として注目されています。また、日本ではまだ導入企業は多くありませんが、欧米では「Phantom Stock」として以前から用いられており、近年は優秀な人材確保や社員のモチベーション向上策として国内でも関心が高まりつつあります。

架空の株式を付与する独自の仕組みのポイントと、権利確定から現金報酬受け取りまでの一連の流れの詳細について

ファントムストックでは、会社が定めた仮想の株式(架空株式)を従業員に付与します。付与時点で実際の株式は発行されず、あくまで紙上または契約上のポイントのような扱いです。従業員は一定の勤務期間経過や目標達成などの権利確定条件を満たすと、その時点での仮想株式の評価額に応じた現金を受け取る権利を得ます。例えば、付与時に100株分のファントムストックを与え、権利確定時の1株あたり評価額が1,000円であれば100株 × 1,000円=10万円が支給されるイメージです。多くの場合、権利確定時の評価額から付与時の評価額を差し引いた値上がり分を支給する設計(ストックアプリシエーション権に類似)ですが、企業によっては評価額全額を支給対象とするケースもあります。権利行使に際して従業員が自ら資金を用意する必要はなく、会社側が評価額に応じた報酬を直接支払います。このように、付与→権利確定→現金支給という一連の流れによって、株式の価値向上がそのまま社員の金銭的利益につながる仕組みを実現しています。

株式を発行しないため株主構成に影響を与えず、株式価値の希薄化を招かない点がファントムストックならではのメリット

ファントムストック最大の特徴の一つは、実際の株式を発行しないため株主構成に一切影響を与えない点です。通常、ストックオプションで新株を発行すれば既存株主の持ち株比率が希薄化し、1株当たりの価値が低下する恐れがあります。しかしファントムストックでは架空株式の付与に留まり、新たな株式は生まれません。その結果、経営陣や既存株主の持分比率が変動せず、資本政策上の懸念が少ないのがメリットです。株式価値の希薄化(ダイリューション)が起こらないため、株価への直接的な影響もありません。また、社員に実株を渡さないため社員が新たな株主となることもなく、議決権や配当の扱いについて調整する必要もありません。会社にとってはオーナーシップや議決権の分散を気にせずにインセンティブ制度を導入できる利点であり、既存株主にとっても持ち株価値が守られる安心感につながります。

ファントムストック誕生の背景:優秀人材の流出防止や中長期的モチベーション向上策として注目されるに至った経緯

ファントムストックが生まれた背景には、優秀な人材の定着と中長期的な業績向上へのインセンティブが求められる経営課題があります。特に株式上場前の企業やオーナー経営の会社では、株式を容易に譲渡したくない一方で社員のモチベーションを高める手段が必要でした。従業員の流出防止策として、会社の将来的な価値向上に貢献すれば自分にもリターンがある仕組みを用意することで、社員に長くコミットしてもらう狙いがあったのです。また、日本企業でも年功序列型の賃金体系を見直し、成果連動型の報酬を導入する流れが進む中で、ファントムストックが注目され始めました。株式そのものを用いるストックオプションは有効な手段ですが、法的手続きや資本構成変化のハードルがあります。そこで、実株なしで株価上昇の利益だけを共有できる仕組みとしてファントムストックが考案されました。海外では1980年代頃から類似の制度が存在し、日本でも近年になりベンチャー企業や非上場の中堅企業を中心に導入事例が増えてきた経緯があります。

従業員と経営陣の双方に対応した幅広いインセンティブ制度:多様な企業で活用されるファントムストックの導入例

ファントムストックは、一部の経営幹部だけでなく一般従業員から経営陣まで幅広く適用できるインセンティブ制度です。その柔軟性ゆえ、企業の目的に応じて様々な層に導入されています。例えば、大手企業では役員報酬の一環として採用し、経営層に株主価値向上を意識させるケースがあります。一方、成長企業やスタートアップでは全社員に対してファントムストックを付与し、会社の成功を社員全員で分かち合う取り組みも見られます。実際に、金融業のクレディセゾンでは新卒を含む全従業員を対象に、また地方企業のアイザックではパート社員まで含めて仮想株式を付与する制度を導入しました。このように企業規模や業種を問わず活用でき、付与対象者を柔軟に設定できる点もファントムストックの魅力です。役員だけでなくキーパーソンとなる社員や将来の幹部候補生に対しても恩恵を及ぼすことで、組織全体の士気向上と結束強化につなげることができます。

ファントムストックとストックオプションの違いとは何か?仕組みや導入手続きを徹底比較

権利内容の違い:仮想株式を付与するファントムストック制度と実際の株式購入権を付与するストックオプション制度

まず、付与される権利そのものの性質が両者で大きく異なります。ファントムストックでは社員に与えられるのは仮想株式による将来的な金銭受取権です。社員は実際の株式を手にすることはなく、仮想的に割り当てられた株式数に応じて後日現金を受け取る権利を持つだけです。一方、ストックオプションでは社員に一定の価格で会社の株式を購入する権利(新株予約権)が付与されます。オプション権利を行使すれば、社員は実際の株式を取得して株主になることが可能です。この違いにより、ファントムストックでは社員は最後まで株主にならず、報酬は現金支給に留まりますが、ストックオプションでは権利行使後に社員が株主となり得る点が相違します。つまり、ファントムストックは「現金報酬を受け取る権利」であり、ストックオプションは「株式を取得する権利」と言えるでしょう。

権利行使時の資金負担の違い:現金不要で報酬を得られるファントムストックと購入資金が必要なストックオプション

権利行使時に必要となる資金負担にも大きな違いがあります。ファントムストックの場合、社員が権利を行使する際に自分で資金を用意する必要は一切ありません。仮想株式に対応する報酬額は全て会社から現金で支払われ、社員は受け取るだけで済みます。それに対し、ストックオプションでは権利行使の際に社員自身がオプションの行使価格分の現金を支出して株式を購入する必要があります。例えば行使価格1株500円のオプションを1000株分行使する場合、社員は最初に50万円を払い込んで株式を取得しなければなりません。その後、その株式を市場で売却して初めて差額利益を得る仕組みです。したがって、ストックオプションは社員に行使資金の用意というハードルがある一方、ファントムストックは行使時の自己資金負担ゼロで利益を享受できる点で社員にとって手軽な制度と言えます。

報酬受け取り方法とタイミングの違い:現金報酬として支給されるファントムストックと株式売却益として得られるストックオプション

報酬の受け取り方とタイミングにも違いがあります。ファントムストックでは社員が得る報酬は現金であり、権利確定後に会社から直接支給されます。報酬を受け取るタイミングは、予め定められた権利確定時(たとえば数年後の特定日やIPO・M&A時など)です。社員はその時点で自動的に現金報酬を手にします。一方、ストックオプションの場合、社員は権利行使によってまず株式を取得し、その株式を市場で売却して初めて現金を得ます。つまりオプションでは「株式→現金」への転換に社員の売却行動が必要であり、報酬を現金化するタイミングも社員自身の判断に委ねられます。市場価格によっては、権利を行使してもすぐ売却せず株式として保有を続ける選択肢もありますが、その場合は現金利益の実現が先送りになります。ファントムストックは原則として権利確定時に会社から即座に現金支給されるため、社員にとって報酬を受け取るまでのプロセスがシンプルで確実です。

導入に必要な手続き・コストの違い:契約のみで導入できるファントムストックと法定手続きや登記を要するストックオプション

制度導入の際の手続きやコスト面でも両者に違いがあります。ファントムストックは契約上の金銭報酬制度であるため、導入にあたっては社内で制度規程を策定し、対象従業員と同意契約を交わせば比較的簡便に開始できます。新たな株式発行を伴わないため、商業登記や金融商品取引法上の開示など特別な外部手続きは不要です(会社内の取締役会決議等は必要になる場合があります)。これに対しストックオプションは、会社法に基づく新株予約権の発行手続きが必要となります。例えば、株式公開企業では募集事項の決定・公告、発行登録や登記など多くのステップを踏まねばなりません。また、発行株式数に応じた登記費用や専門家への依頼コストも発生します。非上場企業であっても新株予約権の発行には株主総会の特別決議が必要になるなど、社内外の手続き負担が大きいのがストックオプションです。それに比べてファントムストックは制度設計と契約さえ整えれば導入しやすく、手間や初期コストを抑えてインセンティブ制度を開始できる点で優れています。

株式の希薄化・株主への影響の違い:ファントムストックは株主構成に変化なし、一方ストックオプションは新株発行による希薄化が発生

最後に、既存株主や株式価値への影響についても明確な違いがあります。前述のとおりファントムストックは架空の株式を用いるため、新たな株式発行を伴いません。そのため、たとえ多くの従業員にファントムストックを付与しても、既存株主の持ち株比率が希薄化(ダイリューション)することはありません。株主構成の予期せぬ変動は経営に悪影響を及ぼす原因になりかねないため、経営バランスに影響することのない報酬制度だといえるでしょう。一方でストックオプションは、社員が権利を行使して株式を取得すると新株が発行されます。発行済株式総数が増える分、既存株主の持分割合は相対的に低下し、1株当たりの価値もわずかながら減少します。また、オプション行使による潜在株式数は株価に織り込まれる可能性もあり、将来的な株式価値に影響を及ぼす要素となります。要するに、株主への影響という観点ではファントムストックは影響なし、ストックオプションは影響ありと整理できます。株式の希薄化を避けつつインセンティブを与えたい場合、ファントムストックの方が適した選択肢となるでしょう。

ファントムストックと従業員持株会の違いとは何か?それぞれの特徴を比較解説

実際の株式を保有する従業員持株会と架空の株式を付与するファントムストック:所有する資産の性質の違いを比較

まず、社員が手にする資産の内容が根本的に異なります。従業員持株会では社員は自社の実際の株式を購入・保有します。給与天引きなどで拠出した資金により持株会が会社の株式を市場や会社から取得し、それを社員が持分として持ち続ける仕組みです。結果として社員は株主となり、会社の株券(株式)という実物資産を保有します。一方、ファントムストックでは社員は仮想的な株式を与えられるだけで、現物の株式は保有しません。付与されたのは将来の金銭受取権であり、株式そのものや株券が手元に渡るわけではないのです。この違いにより、従業員持株会では社員は現物資産(株式)を所有するのに対し、ファントムストックでは契約上の権利を持つのみで実体資産は持たない点が大きな差となります。言い換えれば、持株会は「社員が株主になる制度」であり、ファントムストックは「社員が将来の金銭報酬を得る制度」と位置付けられます。

従業員の資金拠出の有無:持株会は給与から拠出金で株式を取得、ファントムストックは自己資金不要で報酬を獲得

次に、社員側が自ら資金を拠出するか否かという違いがあります。従業員持株会では社員は給与の一部やボーナスから積み立てる形で自分のお金を拠出して株式を購入します。会社によっては奨励金や補助を出す場合もありますが、基本的に社員が自社株取得のために毎月一定額を負担する仕組みです。一方、ファントムストックでは社員がポケットマネーを出す場面はありません。仮想株式の付与は会社から一方的に行われ、将来の現金報酬も全額会社負担で支給されます。社員は資金を投じることなく権利を受け取り、その成果(会社の業績向上)に応じた報酬を受け取るのみです。このため、持株会は社員が自ら投資を行う制度であり、自腹を切って株主になることでリターンを狙いますが、ファントムストックは社員の金銭的負担ゼロで会社の成長利益を享受できる制度と言えます。

配当・議決権の違い:持株会では配当金受取や株主としての議決権行使が可能、ファントムストックでは現金報酬のみで株主権は発生しない

配当金や議決権など株主としての権利にも差異が生じます。従業員持株会で社員が取得した株式は社員自身の所有資産であるため、その株式に対して配当金が出れば社員に還元されます。また、社員は名義上株主となるため、規模によっては株主総会での議決権行使権も有します(持株会が集約して議決権を行使するケースが多いです)。一方、ファントムストックでは社員は株主ではないため配当金や議決権といった株主権利は一切発生しません。どれだけ会社が利益を上げても配当として受け取ることはなく、あくまで仮想株式に紐づく報酬のみが社員の利益となります。株主総会での議決に参加できない点も含め、ファントムストックは経済的リターンに限定された仕組みであり、持株会とは社員が株主としての待遇を得られるか否かという違いがあります。自社への帰属意識や発言権を求めるなら持株会、純粋に金銭リターンを求めるならファントムストックと、得られるメリットに違いがあるといえるでしょう。

株価下落時のリスク負担の違い:持株会では社員の保有株価値下落リスクが伴うのに対し、ファントムストックは報酬減少に留まり自己資金の損失はない

株価が下落した場合のリスク負担も両制度で異なります。従業員持株会では社員自身が株式を保有しているため、株価が下がれば社員の資産価値が目減りするリスクを直接背負います。極端な場合、購入時より株価が大幅に下落すれば社員は損失を被ることになります。せっかく積み立てたお金が減少し、経済的なダメージを受ける可能性があるのです。一方、ファントムストックでは社員は自己資金を投じていないため、会社の業績不振や株価低迷によって社員自身が金銭的損失を被ることはありません。業績が振るわなければ単に報酬(ファントムストックによる支給額)がゼロまたは少額に終わるだけで、社員の手持ち資産が減ることはないのです。ただし、期待していた報酬が得られない点ではモチベーションに影響する可能性はありますが、持株会のように実費の損失が発生する構造ではありません。このように、下落局面のリスクは持株会では社員が一部負担するのに対し、ファントムストックでは社員は元手を失う心配がない点が安心材料と言えます。

導入企業の形態と目的の違い:上場企業が従業員の株式保有促進に用いる持株会と、非上場企業でも社員に成果還元できるファントムストック

さらに、制度を導入する企業の属性や目的にも違いが見られます。従業員持株会は主に上場企業や株式市場で流通する株を持つ企業で広く採用されています。社員に自社株を持ってもらうことで帰属意識を高め、株主として会社成長に参加させる目的があります。特に安定成長企業で福利厚生の一環として導入され、社員の資産形成と会社へのロイヤリティ向上を図るケースが多いです。一方、ファントムストックは非上場企業や株式を発行できない組織形態(医療法人・合同会社など)でも利用できる柔軟な制度です。上場前のベンチャー企業などでは、実際の株式を配ることなく社員に業績連動の報酬を与えたい場合に選択されています。また、既に多くの株式を発行しておりこれ以上の希薄化を避けたい企業が代替手段として採用する例もあります。このように、持株会は社員に実株主になってもらうことで「社業への参加意識」を醸成する狙いが強く、一方のファントムストックは実株を用いずに「業績貢献への報酬」を柔軟に提供したい企業に適した制度と言えるでしょう。

ファントムストックを導入するメリットとは?企業側・従業員側の利点を詳しく解説

既存株式の希薄化が起こらない:株式発行せずにインセンティブ報酬を提供できるため株主の持分比率に影響を及ぼす心配がない

ファントムストックを導入する最大のメリットの一つは、株式を新規発行しないため既存株主の持ち株比率が希薄化しないことです。通常、従業員インセンティブとして株式を付与したりストックオプションを発行すると、発行済株式数が増えて既存株主の持分が薄まる問題が生じます。株主にとっては自分の持ち株価値が減る懸念となり、資本政策上の慎重な検討が必要です。その点、ファントムストックであれば仮想株式の付与に留まり、会社の株式数には一切変動がありません。結果として、現在の株主構成や1株当たり利益への影響がゼロであり、既存株主の利益を損なうことなく従業員に報いることが可能です。また、市場に新株が出回らないため株価への希薄化圧力も生じません。特にオーナー企業や株主数を増やしたくない企業にとっては、株式の希薄化リスクなく人材へのインセンティブを提供できる点は大きなメリットと言えるでしょう。

固定人件費を増やさず業績連動で報酬を上乗せできる:既存給与体系のまま社員の収入アップを実現できる柔軟性

企業側から見ると、固定の人件費を増やさずに業績に応じた報酬を上乗せできる点もファントムストックのメリットです。景気や業績に関係なく毎月支払う基本給は一度上げると下げにくい固定費ですが、ファントムストックによる報酬は会社の業績次第で支給額が変動するため変動費として扱えます。具体的には、業績が好調な年度には社員に高い報酬を支給し、業績が低迷すれば追加の支給をゼロまたは低額に抑えることが可能です。これにより、企業は従業員の年収アップを実現しつつも、平時の基本給与水準は維持できます。物価高騰や人件費高騰の中でも固定費を膨らませずに済むため、経営の柔軟性が保たれる利点があります。一方、社員側にとっても基本給とは別に成果に応じた収入増が期待できるため、頑張れば報われるという実感につながります。ファントムストックはこのように企業にとってコストコントロールを可能にし、社員にとっては業績アップ分を共有できるウィンウィンの仕組みと言えるでしょう。

社員のモチベーション・エンゲージメント向上効果:業績に応じた公平な評価でやる気と会社へのコミットを促進

ファントムストックの導入は社員のモチベーション向上やエンゲージメント強化に大きく寄与します。社員にとって、自身の努力や業績が会社全体の成長につながり、その成果が将来的に自分の報酬として返ってくると分かれば、日々の仕事への意欲が高まります。「頑張れば頑張った分だけ報われる」という公平な評価制度は、社員のやる気を引き出す強力な動機づけとなります。また、会社の目標達成に向けて社員が一丸となる効果も期待できます。ファントムストックがあると、部署や職種を超えてノウハウを共有したり、互いに協力し合ったりする風土が生まれやすくなります。なぜなら、他の社員の業績向上も含めて会社全体の成果が上がれば、自分自身の報酬にもつながるからです。さらに、自社の株価や業績に関心を持つようになることで、社員のエンゲージメント(組織貢献意欲)も高まります。単なる給与では得られない「会社とともに成長する」という意識を醸成できるのは、ファントムストックならではのメリットと言えるでしょう。

中長期的な視点を社員に持たせ離職防止につながる:将来の報酬を見据えて社員が長期的に貢献し定着しやすくなる

ファントムストックは社員に中長期的な視点を持たせる効果があり、その結果離職防止にもつながります。報酬が数年後の企業価値や株価に連動して支給される仕組みのため、社員は短期的な利益よりも長期的な会社の成長を意識するようになります。「今すぐ転職して目先の年収アップを図るより、数年後に会社が成長した時のリターンを享受したい」という考えが芽生えれば、安易な離職を思い留まる動機付けとなります。また、ファントムストックの権利行使条件に「勤続◯年以上」などを設定すれば、一定期間在籍しなければ報酬が得られないため、社員の定着率向上に寄与します。実際、将来的な報酬への期待があることで社員の会社へのコミットメントは長期化しやすく、腰を据えて業務に取り組む傾向が強まるでしょう。企業側から見ても、大切な人材の流出を防ぎつつ中長期的な計画達成に社員を巻き込める点で、ファントムストックは「社員の長期的なロイヤルティ」を育む有効な施策と言えます。

優秀人材の採用やグローバル人材への訴求にも有利:成果が正当に報われる制度として求職者への訴求力が高まる

ファントムストックの存在は、人材採用における魅力アップにも貢献します。優秀な人材は往々にして、自分の働きが正当に評価され、高い成果には高い報酬が得られる環境を求めています。ファントムストック制度があることを求人時にアピールすれば、「会社の成長に貢献すれば大きなリターンを得られる」という点で他社との差別化になります。特にスタートアップや中小企業が大企業と人材獲得競争をする際には、将来のアップサイドを提示できるファントムストックは有効な武器となるでしょう。また、海外出身の人材を採用する場合にも、ファントムストックは国際的に通用する金銭報酬制度として訴求力があります。国や地域によっては自社株の付与が法規制の対象となるケースがありますが、ファントムストックであれば現地の規制に抵触せずにインセンティブを提供できる可能性があります。こうした柔軟性も相まって、ファントムストックを備える企業は求職者から「成果が正当に報われる会社」と映り、優秀人材やグローバル人材の応募を引き寄せる魅力的なポイントとなるのです。

ファントムストックのデメリットと注意すべきリスクとは?導入前に知っておきたいポイント

将来の現金支出負担のリスク:株価上昇に伴い企業が従業員に支払う金額が予想以上に膨らみキャッシュアウト負担が発生し得る

ファントムストックを導入する上で注意すべきは、将来の大きな現金支出が発生するリスクです。社員に付与した仮想株式の評価額が大きく上昇した場合、会社はその差額利益を現金で支払わねばなりません。例えば、創業時に低い評価額で付与したファントムストックが数年後のIPO時に何倍もの価値になっていた場合、対象社員への支払い総額が莫大になる可能性があります。これは会社にとって予想以上のキャッシュアウト負担となり得ます。事前に資金をプールしておかなければ、一度に多額の現金を準備するのは困難かもしれません。業績が向上し株価連動報酬の支給額が大きく膨らむのは喜ばしいことではありますが、その支払いに耐えられる資金繰りを用意しておかないと、かえって会社の財務を圧迫するリスクがあります。ファントムストック導入企業は将来の高額支払いに備え、利益の一部留保や支給上限の設定など、キャッシュアウト対策を講じておく必要があるでしょう。

株価変動の予測困難による不確実性:将来の株価や業績を正確に見積もることが難しく、企業が必要資金を事前に確保しづらいリスク

ファントムストックで将来支払う金額は、株価や業績といった変動要素に左右されるため予測が難しいという不確実性もあります。数年後の株価がどの程度になっているか、業績がどれほど伸びているかを正確に見積もるのは容易ではありません。そのため、将来的な報酬支払い額を事前に計算して準備していても、実際には想定を上回る額を支払う必要が出てくる可能性があります。逆に、期待したほど業績が伸びず当初見込みより支給額が少なくなるケースもあり得ます。こうした予測困難な要素があるため、企業は毎期の決算でファントムストックの評価額を見直し、将来負担額を適宜修正する必要があります。言い換えれば、ファントムストックは企業にとって将来のコストが不確定な傾向がある制度です。経営計画上、どの程度の報酬支出が発生し得るか常に注意を払っておかないと、想定外の負担が会社の資金計画に影響を与えるリスクがあります。

税務・会計処理の不透明さ:現状では明確な指針が少なく、企業にとって適切な会計処理や税務申告に専門的判断が求められる

ファントムストックは日本ではまだ制度として発展途上であり、税務上・会計上の取り扱いが明確に定まっていない面もデメリットとして挙げられます。現状、多くの企業はファントムストックによる支払いを給与や賞与と同様の扱いで経理処理し、税務申告でもそのように処理しています。しかし、法令上は特別な優遇税制や詳細なルールが整備されておらず、解釈にグレーな部分が残っています。例えば、付与時に費用計上すべきか否か、支給額が決まった時点でどのように課税関係を処理するかについて明文化された指針が少ないのが実情です。そのため、企業は自社の判断で処理を行った後、後日税務当局から指摘を受けるリスクもゼロではありません。会計監査人や税理士と相談しながら慎重に運用する必要があり、ストックオプションのように制度化された枠組みがない分、専門的判断が求められる不透明さがデメリットとなり得ます。

従業員への説明不足によるリスク:制度への理解が不十分なまま導入すると従業員の混乱や期待とのギャップから不満・トラブルが生じる恐れ

導入にあたっては、社員への制度説明を怠ることによるトラブルにも注意が必要です。ファントムストックは一見すると複雑な制度であり、実際の株式を与えない点や支給条件など、社員にとって馴染みが薄い部分があります。もし会社が十分な説明をせず制度を導入した場合、社員が仕組みを誤解したまま期待だけが先行し、後になって「聞いていた話と違う」といった不満が噴出する恐れがあります。たとえば、「権利確定前に退職したら無効になるとは知らなかった」「もっと大きな額がもらえると思っていた」等のギャップが生じる可能性があります。また、報酬制度が分かりにくいと社員のモチベーション向上策として十分機能しないばかりか、不信感を招き逆効果になりかねません。したがって、導入時には社員への丁寧な説明と周知徹底が不可欠です。制度内容やメリット・デメリットを透明性高く共有し、疑問点を解消しておくことで、不要なトラブルや期待外れを防ぐことができるでしょう。

株価低迷時のモチベーション低下:業績連動の報酬ゆえに株価が伸びない場合には従業員の士気向上につながらず報酬ゼロに終わる可能性もある

ファントムストックは業績が上がって初めて効果を発揮しますが、逆に言えば業績低迷時には社員の士気向上につながらないという面もあります。報酬が会社の株価や利益に連動しているため、目標未達や株価低迷の状況では社員に配分される報酬はゼロもしくはごく僅かになってしまいます。社員からすると追加の金銭的リターンがないため、「頑張っても報われない」という感情を抱き、モチベーションの低下につながる恐れがあります。特に、日々の業務で努力していても外部環境や景気の影響で業績が伸びなければ報酬に反映されないため、不公平感を感じる社員も出てくるかもしれません。また、ファントムストック分を見越して基本給を低めに設定していた場合、業績不振で報酬が支給されないと社員の不満要因になり得ます。以上のように、業績連動ゆえの「成果なし=報酬なし」という側面が社員の士気に与える影響はデメリットとして認識しておく必要があります。

従業員に株主権がないことのデメリット:実際の株式ではないため議決権や配当が得られず、社員が株主としての恩恵を受けられない

社員側の視点では、株主としての権利や恩恵を得られない点がデメリットとなり得ます。ファントムストックでは会社の成功に応じた金銭は受け取れますが、社員は最後まで株主にはならないため議決権を持って経営に参画したり、配当金を継続的に受け取ったりといった株主固有のメリットは享受できません。たとえば会社が大きく成長し株価が飛躍的に上がったとしても、社員が得られるのは契約で定められた一定の金銭報酬だけであり、その後も株式を保有し続けてさらなる値上がり益や配当収入を得る、といったことはできません。また、社員の中には自分が株主になることで会社のオーナーシップを実感したいと考える人もいますが、ファントムストックではそうした心理的な満足感は得がたいかもしれません。要するに、ファントムストックは金銭報酬に特化した制度であり、社員に株主としての地位や長期的な資産形成の機会を与えない点は、ストックオプションや持株会と比べた際の見落とせないデメリットです。

ファントムストックの会計処理と税務上の取り扱いについて徹底解説

会計上は負債計上:ファントムストックは現金支給義務が伴うため株価連動の引当金(負債)として計上されるのが一般的

ファントムストックの会計上の扱いですが、基本的に会社はこの報酬を負債として計上することになります。現金での支払い義務が将来発生する可能性があるため、株価連動の賞与引当金のような形でバランスシート上に負債を認識します。ストックオプションなどの株式報酬が資本(自己資本)で処理されるケースがあるのに対し、ファントムストックはキャッシュ支出を伴う「金銭債務」として扱われる点が特徴です。これは、権利行使時に実際の現金払いを行う義務があるためで、経理上は将来の支払い見込額を負債(引当金)として計上し、同時にその分を人件費等の費用として損益計算書に反映させます。なお、国際的な会計基準においても、ファントムストックのような現金決済型の株価連動報酬は負債区分で処理するルールとなっています。要するに、ファントムストックは会計上「株価に連動する負債項目」として処理され、株式報酬というよりは業績連動型の賞与に近い位置付けになるということです。

権利付与時の会計処理:付与時点で将来支払額の見積もりを行い、該当額を報酬費用として引当金に計上する処理

では実際の仕訳はどのようになるか、権利付与時点の会計処理から見てみましょう。ファントムストックの権利を社員に付与した際、企業は将来支払う可能性のある金額を見積もります。例えば、付与時に100株分のファントムストックを与え、1株あたりの想定評価額を500円と見込んだ場合、将来5万円(100株×500円)の支払いが見込まれることになります。その上で、この見積額を報酬費用として計上し、同額を負債(引当金)に計上する処理を行います。実際には、権利が確定するまで複数年にわたる場合には、サービス提供期間に応じて費用を按分計上する方法がとられます。初年度は将来支給額の◯割を費用計上、翌年度に再評価してまた費用計上、という具合です。重要なのは、権利付与時点で会社としては「将来◯円を支払うかもしれない」という債務を認識し始めることです。これにより、ファントムストック付与によるコストが適切に財務諸表に反映されます。

決算期ごとの公正価値見直し:株価や業績指標の変動に応じて負債の見積額を増減調整し、差額を費用または戻入益として処理

ファントムストックの評価額は時間とともに変動しますので、各決算期末ごとに公正価値の見直しを行う必要があります。期末時点で仮想株式1株あたりの評価額や将来支給見込額を再計算し、それまでに計上していた引当金(負債)との差額を調整します。例えば、前期末には将来支給見込額を100万円として引当金を積んでいたところ、株価上昇などで今期末には見込額が150万円に増えた場合、追加の50万円を負債に積み増すと同時にその50万円を当期の報酬費用として計上します。逆に業績悪化で見込額が80万円に減少した場合には、差額20万円分の引当金を取り崩し、同額をマイナスの費用(費用の戻入益)として処理します。このように期末ごとに負債の評価額を増減させ、その増減額を損益計算書に反映することで、ファントムストックの負債と費用を常に最新の状況に更新していきます。株価連動報酬ゆえに各期の業績や株価変動に応じて会社の費用計上額も変動する点に注意が必要です。

権利行使・現金支給時の会計処理:実際の支払額に基づき引当金を取り崩し、過不足分を損益に計上して精算する

最後に、社員がファントムストックを権利行使し現金が支給される時点の会計処理です。実際に報酬額を支払う際には、これまで積み立ててきた引当金(負債)を取り崩し、会社から現金が支出されます。具体的には、権利行使時に確定した支給額分だけ負債を減額し、同額を現預金から支払います。例えば、最終的に社員へ支払う金額が200万円であれば、負債(ファントムストック引当金)を200万円減少させ、現金を200万円支払う仕訳になります。すでに期末評価で200万円の負債を計上済みであれば、追加の費用計上はなく、この時点で債務が解消されます。一方、もし最終支給額が直前の見積額と差異がある場合、その差額分を最終年度の費用または収益として調整します。いずれにせよ、権利行使によって負債がゼロクリアされ、キャッシュアウトが実行されることで、ファントムストックに関する会計処理サイクルが完了します。

従業員側の税務:受け取ったファントムストック報酬は給与所得として課税対象となり、源泉徴収も行われる点に注意

ファントムストックで受け取る報酬に対する社員側の税務上の扱いは、基本的に給与・賞与と同様です。社員が権利行使により得た現金報酬は、その支給時に所得税の源泉徴収が行われ、最終的には給与所得(または賞与)として課税されます。税率は累進課税に従い、他の給与収入と合算して年末調整や確定申告で精算されます。例えば、500万円のファントムストック報酬を受け取った場合、それは追加のボーナスとみなされ、源泉徴収後の手取り額が支給されます。この所得には社会保険料の対象となるケースもあり、高額になると高い税率が適用されます。株式オプションのように株式売却益として分離課税されるわけではなく、一般の給与と同様に課税される点に留意が必要です。社員にとっては、ファントムストック報酬は嬉しい収入ではありますが、その一部が税金で差し引かれるため、手元に残る額は支給額より減少します。会社としても、支給時に適切な源泉徴収と給与支払報告を行う義務があります。

企業側の税務:支払ったファントムストック報酬は損金算入できるが、税務上の扱いが明確でない部分もあり事前に専門家と確認が必要

企業側の税務上の取り扱いとしては、ファントムストックによる支払いは基本的に損金(経費)として認められます。社員に対する給与・賞与と類似の性質であるため、支払った金額はその事業年度の費用として法人税の計算上控除できます。ストックオプションのように支給時に特別な課税が会社に発生したり、損金不算入となる要素はありません。ただし、実際の税務処理においては細部で不明確な点も残ります。例えば、権利付与から支給まで複数年度にまたがる場合、支給前に積み立てた引当金相当額を税務上どう扱うか(基本的には未払賞与引当金として一定要件下で損金算入可能ですが、条件を満たさない場合は支給時まで損金算入が繰り延べられる可能性があります)といった論点があります。税法上ファントムストックに関する明示的な規定が少ないため、具体的な税務処理は専門家と確認しながら進める必要があります。いずれにせよ、最終的に社員へ支払われた金額は法人の経費として計上できるため、会社はその分税負担が軽減される効果が期待できます。

非上場企業におけるファントムストック活用のポイントと留意点を詳しく解説

上場前企業での導入意義:非上場でも株価連動報酬制度を用いて人材のモチベーション維持・強化に役立てる意図

非上場企業や上場準備中の企業にとって、ファントムストックは株式上場前でも株価連動報酬を導入できる貴重な手段です。通常、未上場の会社では株式市場で自由に売買できないため従業員持株会が成立しにくく、ストックオプションも将来の出口が不透明です。また、株主構成の制限やオーナー経営の都合で社員に実株を分配できない場合もあります。そうした上場前企業でも、ファントムストックを使えば仮想的に「株価」を設定して報酬制度を設計でき、上場企業と同様に社員に会社価値向上のインセンティブを与えることが可能となります。IPOやM&Aなど将来的なエグジットを見据えているスタートアップでは、実際の株式を発行せずに社員と成功報酬を共有できるファントムストックは魅力的な制度です。社員にとっても、自社株を直接持てない状況でも会社の成長メリットを享受できるため、上場前から「会社を大きくする楽しみ」を持って働いてもらえる効果が期待できます。このように、上場していなくても株価連動型の報酬で人材のモチベーションを高められる点に、ファントムストック導入の意義があります。

株価評価方法の設定が重要:市場価格がないため企業価値評価の指標や算定方法をあらかじめ明確に定めておく必要がある

非上場企業でファントムストックを導入する場合、仮想株式の評価方法(株価算定方法)を明確に定めることが極めて重要です。上場企業であれば市場株価という客観的な指標がありますが、非上場の場合は市場価格が存在しません。そのため、何をもって「株価」とみなすかをルール化する必要があります。一般的には、自社の評価額を計算するために業績指標(例:1株当たり純資産や利益)を用いたり、類似業種の株価倍率から算出したり、第三者評価機関に株価を算出してもらう方法などが考えられます。例えば、「毎期末に会社の税引後利益×◯倍を企業価値とみなし、発行済株式数で割って仮想株価を算定する」といったルールを決めることもあります。大切なのは、社員にとって納得感のある形で評価方法を事前に提示しておくことです。評価ルールが不明確だと「本当に正当な額が支払われているのか」と疑念を招きかねません。非上場企業におけるファントムストック成功の鍵は、株価評価の算定基準を客観的かつ分かりやすく設定し、透明性を確保することにあります。

権利行使条件とタイミングの工夫:IPOやM&Aといったイベント時に清算する設計や、一定期間ごとに社内評価額で現金化する方法を検討

非上場企業では、ファントムストックの権利行使条件や清算のタイミングを工夫することも重要なポイントです。上場企業であれば市場でいつでも株式売却という形で利益確定できますが、非上場ではそうはいきません。そのため、社員が現金を受け取れるタイミングを明確に決めておく必要があります。一つの方法は、IPOやM&Aといったエグジット時に清算する設計です。会社が上場した時点の株価や、他社に買収された時点での評価額に基づき報酬を支払う形にすれば、実際に会社に資金流入があるタイミングで社員に還元でき、キャッシュ確保の面でも合理的です。もう一つは、上場予定が遠い場合に備えて一定期間ごとに社内評価額で現金化する方法です。例えば「付与後5年経過時に社内算定した仮想株価で一部清算する」「毎年決算時に株価評価を行い、権利が確定した社員にはその評価額で支給する」といった形です。権利行使条件として勤続年数や業績目標達成などを組み合わせることも可能です。いずれにせよ、社員がいつ・どのような条件で報酬を現金化できるかを明示して設計しておくことが、非上場企業でファントムストックを活用する上での成功の秘訣となります。

将来の支払い原資確保が課題:業績好調時に利益の一部を留保するなど、将来の多額支払いに備えたキャッシュ確保策が求められる

非上場企業にとって、将来のファントムストック報酬を支払うための原資(キャッシュ)の確保は大きな課題です。特に上場や外部資金調達の予定がない場合、社員への高額支払いが発生した際には自社の内部資金でまかなう必要があります。業績が上がり仮想株式の評価額が大きく伸びたときに備えて、あらかじめ一定の利益を社内留保しておくなどの対応が欠かせません。例えば、「業績が計画以上に伸びた年は、その一部を将来のファントムストック支払い基金として積み立てる」といった方針をとる企業もあります。また、権利行使時の企業の財務負担が過大とならないよう、報酬支給額に上限を設定することも検討材料です(例:「評価額が当初の5倍を超えた場合でも支給額は最大◯◯円まで」等)。もっとも、上限設定は社員のインセンティブを削ぐ恐れもあるため慎重な判断が必要です。いずれにせよ、非上場企業がファントムストックを継続・拡大するには、将来のキャッシュアウトに耐えられる資金計画を立てておくことが重要です。

社員への説明と期待管理:上場計画や評価方法、清算タイミングを社員に共有し、非上場ゆえの流動性リスクや待ち期間について理解を促す

非上場企業でファントムストックを導入する際は、社員への丁寧な説明と期待値の管理が一層重要になります。上場企業のように株価が日々公表されているわけではないため、社員は自分の仮想株式の価値がどの程度なのか実感しにくく、不安や誤解を抱きやすいからです。まず、制度開始時に「仮想株式とは何か」「いつどのように現金化されるのか」をしっかり説明し、社員の理解を深める必要があります。また、上場の見通しや清算の条件についても率直に共有すべきです。例えば、「当社は3年以内のIPOを目指しており、その際にファントムストックを清算予定です」「上場しない場合でも5年後に一度社内評価で支給を検討します」といった方針を伝えておくと、社員も心積もりができます。さらに、リスクや不確定要素についても説明し、業績次第では報酬が出ない可能性もあることを理解してもらうことが肝心です。透明性の高いコミュニケーションによって社員の納得感を醸成し、長期にわたって制度への信頼を維持することが、非上場企業でファントムストックを運用する上で欠かせません。

株式を発行できない組織での活用:医療法人や合同会社など株式制度を持たない法人でも、ファントムストックを用いて業績連動報酬を導入可能

ファントムストックは、株式会社以外の株式を発行できない組織形態でも活用できる点が注目されています。例えば、医療法人(病院など)や学校法人、合同会社(LLC)といった形態では、そもそも従業員に株式を持たせる制度が存在しません。しかしこれらの法人でも、人材への業績連動報酬ニーズはあります。ファントムストックなら実際の株式発行を伴わないため、組織形態に関係なく導入可能です。実際に、医療法人で理事や従業員に対して仮想株式ポイントを付与し、法人の収益増加に応じて報酬を支給する仕組みを取り入れた例も報告されています。また、合同会社など出資持分制の企業でも、出資持分を動かさずにメンバーにインセンティブを提供できる方法としてファントムストックが有効です。このように、従来株式制度を利用できなかった組織でも仮想株式を用いることで株式型報酬のメリットを享受できる点は、ファントムストックの大きな利点と言えるでしょう。

ファントムストック導入の流れと設計時の注意点【導入ステップと成功の秘訣】

導入目的と対象者の明確化:制度導入の狙い(人材定着・業績向上等)を定め、付与対象となる役職や従業員層を決定

導入の第一ステップは、ファントムストックを導入する目的と付与対象者を明確にすることです。なぜこの制度を導入したいのか(例:優秀人材の流出防止、社員全体の士気向上、経営陣と株主価値の共有など)、経営戦略上の狙いをはっきりさせます。それによって、ファントムストックの設計方針が定まります。同時に、「誰に付与するか」も検討します。経営陣のみを対象にするのか、管理職やキーパーソンも含めるのか、あるいは全社員に広く付与するのかといった範囲を決めます。例えば、離職防止が主目的であれば若手有望社員を対象に含める、業績貢献度に応じた報酬なら営業成績上位者を重点付与する、といったように目的に沿った対象者選定を行います。ここで目的と対象がブレていると、後の設計全体に影響します。経営陣で十分に議論し、「我が社は何のためにファントムストックを導入し、誰を報奨したいのか」を明確化することが、成功への第一歩です。

報酬設計と条件設定:付与する仮想株式数や評価指標、権利確定までの期間、行使条件(勤続年数など)を具体的に策定

次に行うべきは、ファントムストックの具体的な報酬設計と条件設定です。まず、付与する仮想株式の総量や各社員への割当数を決定します。役職や貢献度に応じて持分ポイントを配分するイメージで、「社長1000株分、部長500株分、一般社員100株分」といったように設計します。同時に、評価指標や株価算定方法も確定させます(非上場企業の場合は前述のように利益や純資産を基に株価を定義)。さらに、権利が確定するまでの期間(ベスティング期間)や、行使条件となる勤続年数・業績目標を定めます。例えば、「付与後3年で権利確定」「年間売上◯億円達成が支給条件」「退職時には未確定分は消失」といった具合です。加えて、支給方法(清算のタイミングや分割支給の有無)、上限額や特例事項(著しく株価が上昇した場合の対応等)もルール化しておきます。報酬設計にあたっては、社員のモチベーションが最大化するよう、公平性とインパクトのバランスを考慮することが重要です。細部まで練り込んだ設計図を描くことで、制度導入後のスムーズな運用につながります。

法務面の確認と社内承認:契約書・規程の整備や必要に応じた取締役会決議など、法的手続きと社内合意を経て導入準備

制度設計が固まったら、法務面の確認と社内承認手続きに移ります。まず、作成したファントムストック制度案が現行法規や社内規程に照らして問題ないかを法務担当や専門家にチェックしてもらいます。契約書ひな型や社内規程(報酬規程)の改定が必要であれば、この段階で準備します。例えば、役員に付与する場合は会社法上、株主総会や取締役会での役員報酬決議との整合性を確認する必要があります。また、従業員との契約として「ファントムストック付与契約書」や制度概要の通知文書を作成し、法的に有効な内容になっているかを確認します。次に、社内での正式な承認プロセスを踏みます。取締役会決議や経営会議で制度導入を決定し、必要に応じて株主(オーナー)の了解も得ます。登記や官庁への届出は基本的に不要ですが、社内の決裁プロセスはきちんと経ることが大切です。法務面をクリアし社内の意思決定が完了すれば、いよいよ制度導入の準備が整ったことになります。

従業員への説明と周知:制度の趣旨・仕組み・メリットを丁寧に説明し、社員の理解と納得を得てスムーズに受け入れてもらう

制度導入が決定したら、従業員への説明会や周知徹底を行います。新しい報酬制度は社員にとって分かりにくい点も多いため、丁寧なコミュニケーションが不可欠です。具体的には、全社員を対象に説明会を開催し、ファントムストックの仕組みや目的、メリット・デメリットを分かりやすく説明します。付与される仮想株式数や評価方法、権利確定の条件、支給タイミングなど、社員が知っておくべき情報を網羅的に共有します。また、FAQ資料を用意したり個別質問に答える窓口を設けたりして、不明点を解消できるようにします。可能であれば社員に配布する案内冊子や社内イントラにQ&Aページを作成するのも有効です。さらに、社員から制度導入へのフィードバックや懸念点を聞き取り、必要に応じて制度設計に反映させる柔軟性も大切です。周知の際には、「会社が社員の貢献を正当に評価し還元したい」というメッセージをしっかり伝えることで、社員の制度への理解と受け入れがスムーズになるでしょう。

導入後の運用とモニタリング:定期的な評価額見直しや権利行使状況のチェックを行い、問題発生時には制度を改善する

制度開始後も、適切な運用とモニタリングが欠かせません。まず、毎期の決算や節目ごとに仮想株式の評価額を計算し直し、想定される支給額や引当金を更新します。これは前述した会計処理上も必要なプロセスですが、制度運営上も「現在の仮想株価はいくらか」「社員の持つ権利がどの程度の価値になっているか」を把握するため重要です。また、社員に対しても定期的に「仮想株式評価レポート」を共有し、モチベーション維持につなげます。加えて、権利確定の条件を満たした社員が出た場合には、社内手続きに沿って速やかに支払い処理を行います。運用中に予期せぬ課題が発生することもあります。例えば、制度への理解不足による誤解や、新規入社者への制度説明の必要性、また株価評価方法の見直しなどです。定期的に制度の効果を検証し、社員の声や経営環境の変化に応じて制度を微調整することも検討します。こうした継続的なモニタリングと改善を行うことで、ファントムストック制度を長期的に成功させることができるでしょう。

成功の秘訣:経営陣が積極的に関与し社員とビジョンを共有すること、専門家の助言を活用して適切な設計・運用を行うこと

最後に、ファントムストック導入を成功させる秘訣について触れておきます。まず何より、経営陣のコミットメントが重要です。トップマネジメント自らが制度の意義を理解し、社員と「会社を成長させ成功を分かち合う」というビジョンを共有することで、制度への信頼感が生まれます。経営層が消極的だったり報酬支払いを渋る姿勢が見えると、社員のモチベーション効果は半減してしまいます。次に、公平で納得感のある制度設計を心がけることです。恣意的に特定の人に有利な設定にしない、社内でオープンに議論して透明性を確保するといった姿勢が大切です。また、専門家の助言を活用するのも成功のポイントです。税務・会計処理や法的契約面で不備がないよう、外部のコンサルタントや税理士と連携し最適な仕組みに仕上げます。さらに、導入後も社員の反応や制度の効果を観察し、柔軟に改善を加える姿勢も重要です。一度作って終わりではなく、運用しながらブラッシュアップすることで、より実効性の高い制度となります。これらのポイントを押さえることで、ファントムストック導入の成功率は格段に高まるでしょう。

ファントムストックを導入している企業事例を具体的に紹介

三菱地所(大手不動産):執行役員クラスにファントムストックを導入し、持続的な企業価値向上と株主価値共有を促進

三菱地所株式会社は日本を代表する不動産デベロッパーで、2022年に役員報酬制度を改定し、執行役員クラスを対象にファントムストックを導入しました。従来の固定報酬に加え、企業価値の持続的向上に貢献した経営陣へインセンティブを与える目的です。具体的には、執行役・執行役員・グループ執行役員に対し、仮想株式ポイントを付与し、一定期間後の株価に連動した金銭報酬を支給する仕組みを採用しています。これにより、経営層に中長期の視点で業績向上と株主価値の共有を意識させる狙いがあります。なお、同社のファントムストックは配当相当額の支給はなく、あくまで株価連動報酬として現金を支払う形式をとっています。三菱地所の事例は、大手上場企業が経営陣向けに株価連動型の報酬を取り入れた先進的ケースとして注目されており、同業他社にも広がりを見せています。

クレディセゾン(大手金融):全社員対象のファントムストック制度を導入し、業績向上時に決算賞与の一部を仮想株式として還元

クレディセゾン(株式会社クレディセゾン)は大手金融サービス企業で、全社員を対象としたファントムストック制度を導入したことで知られます。2022年度から2024年度にかけての業績に連動した決算賞与の一部をファントムストックとして付与する仕組みで、役職や勤続年数に関わらず社員全員が対象となりました。具体的には、単体経常利益が期初計画を上回った場合、その超過額の一定割合を決算賞与として支給し、そのうち3分の1をファントムストックとして付与しています(残り2分の1は現金支給)。在籍する全社員に一律で仮想株式ポイントを付与することで、業績向上の成果を社員全員で共有し、企業価値への参画意識を高める狙いがあります。実際、この制度導入によって「自分たちが会社の成長に貢献すれば報酬として返ってくる」という意識が醸成され、社員エンゲージメントの向上につながったとされています。クレディセゾンのケースは、全社員規模で導入した例として非常にユニークであり、ファントムストックを通じた社員士気向上の効果が注目されました。

アイザック(中堅企業):地方企業ながら全従業員にファントムストックを付与し、業績向上分を社員に還元する仕組みを採用

アイザックは富山県に本社を置く中堅企業(環境事業・パッケージ事業を展開)で、ファントムストックを全従業員に付与する制度を導入しました。地域企業ながら社員のモチベーション向上に先進的な取り組みを行っており、正社員だけでなくパート社員に至るまで仮想株式を付与しています。会社の業績向上による利益が社員に還元される仕組みとすることで、社員一人ひとりが挑戦し成長する風土を築くことが目的でした。具体的には、毎期の業績指標に連動して仮想株式の評価額を算出し、一定時期に社員へ報酬として支給する方式を採っています。「自社が伸びれば自分にもリターンがある」という明確なインセンティブが社員の意識改革につながり、地方発の中堅企業ながら優秀な人材の確保・定着に成功しているとのことです。アイザックの事例は、ベンチャーだけでなく地方の中堅企業でもファントムストックが効果を上げた好例として紹介されています。

ぼてぢゅうグループ(外食チェーン):非上場企業として仮想株式を活用したエンゲージメントストック制度を導入し、社員の意欲向上を図る

ぼてぢゅうグループ(大阪発祥のお好み焼きチェーン)でもファントムストックを活用した「エンゲージメントストック」と呼ばれる制度が導入されています。外食産業の老舗企業である同グループは、2020年代に入り全社員のエンゲージメント向上を目的としてこの仮想株式制度を本格導入しました。非上場企業ながら、社員に仮想的な持ち株ポイントを付与し、グループ業績やKPI達成度に応じて現金報酬を支給する仕組みです。店舗スタッフから本部社員まで幅広い層が対象となっており、特に現場スタッフのモチベーションアップと離職防止に効果が出ています。飲食業界では従業員持株会等が難しい中、ファントムストックで従業員に会社成長の利益を還元する同社の取り組みは異色の成功例と言えるでしょう。この制度導入後、ぼてぢゅうグループでは社員の自主的な提案やサービス向上への意欲が増し、顧客満足度の向上や業績改善にも寄与していると報じられています。

ブラザー工業(製造業):株価連動型報酬制度を導入し、役員報酬の一部にファントムストック方式を採用している

ブラザー工業株式会社(精密機器メーカー)では、2020年に株価連動型報酬制度としてファントムストックを導入しました。同社は以前から取締役や執行役員に株式報酬型ストックオプションを付与していましたが、新たに海外在住の外国人執行役員を対象として、ストックオプションに代わる形でファントムストックを採用したものです。毎年の株主総会後に付与対象の執行役員に仮想株式を付与し、退任後一定期間内に権利行使できる設計になっています。権利行使時には付与株数に権利行使日の株価を乗じた金額が支払われ、実際の株式は交付されません。背景には、海外人材に対して現地の規制に左右されずインセンティブを提供する目的や、為替リスクを避けつつグローバルに統一的な報酬制度を運用したい意図があったと考えられます。ブラザー工業のケースは、日本企業が国際的な経営陣報酬の一環としてファントムストックを活用した例として注目され、株式報酬の柔軟な適用モデルとなりました。

どのような企業にファントムストックが向いているか?適した企業の特徴を解説

非上場で株式を用いた制度が難しい企業:持株会やストックオプション導入が困難な未上場企業に適したインセンティブ策

まず、未上場で従業員に実際の株式を持たせる制度が取りにくい企業にファントムストックは向いています。非上場企業では株式市場で自由に売買できないため従業員持株会が成立しにくく、ストックオプションも将来の出口が不透明です。また、医療法人や合同会社など株式そのものを発行できない組織形態では、実株を用いた報酬制度は物理的に不可能です。ファントムストックなら仮想的な株式を使うため、上場していなくても社員に株価連動の報酬を提供できます。実際、上場準備中のスタートアップが従業員に将来の成功報酬を約束する手段や、上場計画のない中小企業が社員の士気向上に活用するケースが増えています。また、ベンチャー企業にとって自社株の時価評価は難題ですが、ファントムストックであれば社内ルールで評価額を定めて運用できる柔軟性があります。株式発行による持株比率変動や株主増加を懸念する企業にとっても、資本構成を維持したままインセンティブを付与できる点で非上場企業に適した制度と言えるでしょう。

株主構成を維持したいオーナー企業:既存株主の持分を守りつつ従業員に報いる必要がある同族会社や中小企業にとって有効

株主構成を崩したくないオーナー企業や同族会社、中小企業にもファントムストックはマッチします。創業家や少数の株主で経営権を握っている企業では、社員に持株を与えて株主の輪を広げることに抵抗がある場合があります。しかし、人材のモチベーションアップは図りたいというニーズもあるでしょう。ファントムストックなら社員を株主にせずに済むため、オーナーシップを維持したまま従業員に成果報酬を提供できます。株式の希薄化を嫌うオーナー経営者にとって、手放したくない株を守りつつ社員のロイヤリティを高められるのは大きな利点です。また、中小企業では株式事務の負担や法的手続きも重荷になりがちですが、ファントムストックなら契約ベースで簡便に導入できる点も魅力です。要するに、支配株主の意向で株式報酬が難しい企業でも、ファントムストックを用いれば経営権に影響を与えず従業員報酬の充実が図れるため、そうした企業のニーズに合致した制度と言えるでしょう。

IPOやM&Aを見据え中長期の成長を狙う企業:上場準備段階で社員の目線を企業価値向上に合わせたいスタートアップ

IPOやM&Aといった将来的な企業価値向上イベントを見据えている成長企業にもファントムストックは適しています。ベンチャー企業やスタートアップでは、中長期で会社の価値を大きく伸ばすことが目標ですが、その果実を従業員と共有する仕組みがないと人材流出のリスクがあります。上場準備段階で自社株を多く発行したくない場合でも、ファントムストックなら疑似的に株価を設定して社員に成功報酬を約束できます。これにより、社員は「会社が成長すれば自分も大きなリターンを得られる」というモチベーションを持って働くことができます。特にIPO前の数年間を社員と乗り切る際に、ファントムストックは強力な絆となります。また、将来M&Aで売却を目指す企業にとっても、売却時に得られる売却益の一部を社員に還元する形で制度設計できるため、社員にエグジットまでコミットしてもらいやすくなります。中長期的な企業価値の最大化に全員でコミットしたい企業にとって、ファントムストックは理想的なインセンティブ手段と言えるでしょう。

安定的な収益基盤を持ち将来の現金支給に耐えられる企業:業績連動報酬による将来の支払い負担を吸収できる財務体力のある企業

比較的安定した収益基盤を持ち、将来の現金支払いに耐えられる財務体力のある企業もファントムストックに向いています。ファントムストックは会社が成功した際に大きな報酬支払いが発生し得る制度です。業績が好調で十分な利益余力やキャッシュを蓄積できる企業であれば、その支払いにも耐えられるでしょう。逆に資金繰りが常に逼迫している企業ですと、社員に約束した報酬を支払う段になって財務を圧迫する恐れがあります。したがって、安定的に黒字を計上しキャッシュフローに余裕がある企業や、IPO等でまとまった資金流入が見込める企業がこの制度を導入するのが望ましいと言えます。また、将来支払いのための引当や準備を計画的に行える経営管理力がある会社ほど、ファントムストックを無理なく運用できるでしょう。自社の財務状況を踏まえ、将来の成功時にしっかり社員に報いる体制を整えられる企業こそ、この制度を活かせる土壌があると考えられます。

グローバル人材や多様な人材を抱える企業:各国の株式報酬規制に左右されにくい制度として海外人材にも訴求できるインセンティブ策を求める企業

海外にも事業展開し多様な人材を抱えるグローバル企業にも、ファントムストックは向いています。国籍や勤務地が異なる社員に株式報酬を与える場合、それぞれの国の証券規制や税制対応が必要で煩雑になりがちです。しかしファントムストックなら、現金報酬として統一的に設計できるため、各国の規制に左右されにくいメリットがあります。実際、ブラザー工業のように海外在住の経営陣に対してファントムストックを適用し、グローバルに整合的な報酬制度を構築した例もあります。また、外資系企業や外国人社員が多い企業では、Phantom Stockという概念自体が国際的に認知されており、馴染みやすいインセンティブ制度となります。さらに、多様なバックグラウンドを持つ人材にとって、「努力が正当に報われる」金銭報酬制度は魅力的で、他国の人材にも訴求しやすいでしょう。海外人材を積極採用する企業や、世界中で通用する報酬体系を求める企業において、ファントムストックはグローバル対応可能なインセンティブとして有力な選択肢となります。

資料請求

RELATED POSTS 関連記事