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償却前経常利益とは?計算式とEBITDAとの違い、融資審査の債務償還年数での使われ方【2026年版】

償却前経常利益とは?計算式とEBITDAとの違い、融資審査の債務償還年数での使われ方【2026年版】

償却前経常利益とは、経常利益に減価償却費を足し戻した利益です。減価償却費は現金が出ていかない費用なので、足し戻すと「利息を払ったあとに、毎年どれだけの現金を本業と財務活動から生み出せるか」の目安になります。この記事では、売上高3億円の数値例で計算式と決算書から数字を拾う場所を示し、EBITDAとの違いを支払利息の扱いから整理します。後半は、銀行や公的支援が使う債務償還年数の算式、中小企業活性化協議会が再生計画に求める「有利子負債の対キャッシュフロー比率10倍以下」の正式な計算方法、毎月この数字を出すための会計データの設計までを扱う構成です。経常利益そのものの定義と営業外損益の科目は経常利益の計算式と営業外損益の科目を解説した記事で詳しく説明しています。

まとめ:償却前経常利益の計算式と、債務償還年数で返済力を測るときの使い方

償却前経常利益は「経常利益+減価償却費」で求めます。損益計算書に載る段階利益ではないため、自分で計算する数字です。減価償却費は販管費だけでなく製造原価にも入っているので、両方を合計してから足し戻します。

EBITDAとの違いは、支払利息を差し引いたあとの数字かどうかです。借入の返済に回せるお金を見たいときは、利息を払い終えた償却前経常利益のほうが実態に近くなります。

使い道の中心は、借入金を何年で返せるかを示す債務償還年数です。中小企業活性化協議会の再生支援実施要領は、再生計画の終了年度に有利子負債の対キャッシュフロー比率を概ね10倍以下にするよう求めており、10年が一つの節目になります。毎月この数字を追うなら、減価償却費を月割りで集約する科目設計と、借入残高を会計に取り込む仕組みを先に整えてください。

償却前経常利益の意味と、経常利益に減価償却費を足し戻す計算式と数値例

計算は足し算1回です。数字がずれる原因は、足し戻す減価償却費の拾い方にあります。

経常利益+減価償却費という計算式と、現金が出ていかない費用を戻す理由

償却前経常利益=経常利益+減価償却費

経常利益は、会社計算規則(平成18年法務省令第13号)の第91条が定める「営業利益+営業外収益−営業外費用」の段階利益です。支払利息はこの段階で差し引かれています。

減価償却費は、過去に買った設備や建物の代金を耐用年数にわたって費用に配る処理です。代金を払ったのは購入した年で、償却費を計上する年には現金が出ていきません。償却費を足し戻すと、会計上の費用配分の影響が消え、その年に手元へ残る資金の大きさに近づきます。償却の仕組みと耐用年数の決まり方は減価償却の仕組みと計算方法を解説した記事にまとめています。

同じ理由で、償却方法を定額法から定率法に変えても償却前経常利益は変わりません。償却費が増えたぶん経常利益が減り、足し戻すと元に戻るからです。設備の多い会社どうしを比べるとき、償却方法の差で数字が動かないことが、この指標を使う一番の理由です。

売上高3億円の数値例で求める償却前経常利益と、決算書から数字を拾う場所

売上高3億円の製造業の会社で計算してみます。

項目 金額 決算書で拾う場所
営業利益 1,500万円 損益計算書
受取利息・配当金 60万円 損益計算書の営業外収益
支払利息 360万円 損益計算書の営業外費用
経常利益 1,200万円 損益計算書
減価償却費(製造原価) 1,100万円 製造原価報告書
減価償却費(販管費) 700万円 販管費の内訳
償却前経常利益 3,000万円 自分で計算

1,200万円に減価償却費の合計1,800万円を足すと、償却前経常利益は3,000万円です。経常利益だけを見ると売上高の4%ですが、償却前で見ると10%の資金を生んでいます。設備の多い会社ほど、両者の差は大きくなります。

製造原価報告書の減価償却費を拾い漏らすと償却前経常利益が小さく出る問題

計算で最も多い誤りは、販管費の減価償却費だけを足し戻すことです。工場の機械や建物の償却費は売上原価の中に入っており、損益計算書を上から眺めても見えません。先の例で販管費の700万円だけを足すと償却前経常利益は1,900万円となり、実際より1,100万円小さく出ます。

経済産業省のローカルベンチマークの財務分析シートも、減価償却費の欄には製造原価と販管費などに計上された償却費の合計を入れるよう注記しています。決算書に製造原価報告書が付いていない会社は、法人税申告書の別表十六で事業年度の償却額の合計を確かめると漏れを防げます。

足し戻す償却費と戻さない償却費、減損損失・のれん償却・リース料の扱い

何を減価償却費として足し戻すかで、数字は変わります。実務上の扱いは次のとおりです。

  • 有形固定資産とソフトウエアの償却費:足し戻す
  • リース資産(所有権移転外ファイナンス・リース)の償却費:足し戻す
  • のれん償却費:販管費に入っていれば足し戻す扱いが多い
  • 減損損失:特別損失なので経常利益に含まれておらず、足し戻さない
  • オペレーティング・リースの支払リース料:現金が出ていく費用なので足し戻さない

迷ったら「その年に現金が出ていったか」で判断します。M&Aの文脈では、減価償却費ではなく、のれん償却費だけを足し戻した利益を「償却前」と呼ぶこともあります。他社の数字と比べるときは、どの償却費を戻したのかを必ず確かめてください。

償却前経常利益とEBITDA・営業キャッシュフローの違い、支払利息を引くかの差

似た指標が多く、名前だけで選ぶと判断を誤ります。違いは、どの費用を引いた状態から出発するかです。

EBITDAとの違いは支払利息と受取利息、返済原資の見方と企業価値の見方

EBITDAの簡便式「営業利益+減価償却費」で先の例を計算すると3,300万円です。償却前経常利益3,000万円との差300万円は、支払利息360万円から受取利息・配当金60万円を引いた純支払利息にあたります。

指標 計算式 数値例 向いている問い
EBITDA 営業利益+減価償却費 3,300万円 借入の多寡と無関係に事業の稼ぐ力を比べる
償却前経常利益 経常利益+減価償却費 3,000万円 利息を払ったあとに返済へ回せる資金を見る

EBITDAは利息を払う前の数字なので、借入の多い会社と無借金の会社を同じ土俵で比べたり、買収価格を見積もったりする場面に向きます。一方で、すでに借りている会社の返済力を見るなら、利息は毎年確実に出ていく現金です。利息負担が重い会社ほど、EBITDAで見ると返済力を過大に評価します。EBITDAの4通りの計算式と企業価値での使い方はEBITDAの計算式4通りと平均マージンを解説した記事で比較しています。

償却前経常利益と営業キャッシュフローがずれる運転資金と法人税の影響

償却前経常利益は、キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローとは一致しません。差を生む要因は2つあります。

1つ目は法人税等です。償却前経常利益は税金を払う前の数字なので、返済に回せる額はここから法人税等を引いた残りになります。2つ目は運転資金です。売上が伸びて売掛金や在庫が増えると、利益は出ていても現金は売掛金と在庫に寝てしまいます。

償却前経常利益は損益計算書と製造原価報告書から足し算1回で出せますが、営業キャッシュフローはキャッシュフロー計算書がなければ出せません。キャッシュフロー計算書は会社法の計算書類に含まれず、作成が義務づけられるのは有価証券報告書を出す会社などに限られるため、中小企業の返済力を見る場面では償却前の利益が簡便な代用として使われます。売掛金の回収が遅れている会社では、償却前経常利益は実際の資金より大きく見える点に注意してください。

銀行融資と公的制度で償却前経常利益が使われる場面、債務償還年数と10倍基準

償却前経常利益が最も使われるのは、借入金の返済にかかる年数を測る場面です。

債務償還年数の計算式と、分子・分母の取り方で年数が2年近く変わる例

債務償還年数は「借入金を毎年の返済原資で割った年数」です。今の借入を、利益から出る資金だけで返し切るのに何年かかるかを示します。ただし分子と分母の取り方は、金融機関や制度によって異なるものです。先の会社に、有利子負債2億4,000万円、現預金4,000万円、運転資金(売掛金4,500万円+棚卸資産2,000万円−買掛金2,500万円)4,000万円、法人税等400万円があり、配当と引当金の増減はないものとして、3つの算式で計算します。

算式 分子 分母 年数
単純式 有利子負債 2億4,000万円 償却前経常利益 3,000万円 8.0年
現預金控除 有利子負債−現預金 2億円 償却前経常利益 3,000万円 約6.7年
協議会の算式 有利子負債−現預金−運転資金 1億6,000万円 経常利益−法人税等+減価償却費 2,600万円 約6.2年

同じ決算でも、算式によって8.0年から約6.2年まで1.8年の差が出ます。取引銀行から「債務償還年数が長い」と言われたら、まずどの算式で計算したのかを聞いてください。現預金を厚く持っている会社や、運転資金の大きい卸売業は、算式の違いで評価が大きく変わります。

中小企業活性化協議会の再生計画が求める有利子負債の対キャッシュフロー比率10倍以下

公的な基準として明文化されているのが、中小企業活性化協議会の再生支援です。2026年3月31日改定の再生支援実施要領(実施基本要領 別冊2)は、再生計画の数値基準として次の3つを置いています。

  • 実質的な債務超過は、計画成立後最初の事業年度開始日から5年以内を目処に解消する
  • 経常利益が赤字なら、概ね3年以内を目処に黒字に転換する
  • 計画の終了年度に、有利子負債の対キャッシュフロー比率を概ね10倍以下にする

このキャッシュフローの正式な算式は、同じ改定の再生支援実施要領Q&AのQ26に書かれています。分子は有利子負債から現預金・信用度の高い有価証券・運転資金を引いた額、分母は「留保利益+減価償却費+前事業年度からの引当金の増減額」です。留保利益は経常利益から法人税等と配当などの社外流出を引いた額と定義されているため、分母は償却前経常利益から税金と配当を除いた数字になります。賞与引当金と退職給付引当金、特別損益で動かす引当金は増減に含めません。業種特性などの合理的な理由があれば10倍超も許容されると明記されており、一律の線ではない点も押さえておいてください。

優良産廃処理業者認定で直前3年の経常利益+減価償却費の平均がプラスを求める基準

許認可の審査にも、償却前経常利益は登場します。環境省が公開している優良産廃処理業者認定制度の証明書様式は、直前3年の各事業年度について経常利益金額と減価償却費を並べ、その和の3年平均が零を超えていることを証明させる形式です。

この様式から読み取れるのは、単年度の経常赤字があっても、償却前で3年平均がプラスなら財務の健全性の基準を満たしうるという点です。焼却炉や車両など設備の重い業種では、償却費が大きいため経常利益は赤字でも、償却前では資金を生んでいることが珍しくありません。設備投資の直後で償却費が膨らむ期を含む3年は、償却前で見た数字を先に計算しておくと、認定申請の可否を早く判断できます。

約定返済額と償却前経常利益を比べ、借換えや返済条件の見直しが要る状態の判断

債務償還年数は長期の目安です。足元の資金繰りで見るべきなのは、毎年の約定返済額との比較です。

先の会社の償却前経常利益は3,000万円、法人税等を引いた返済原資は2,600万円です。複数の借入の元金返済が年2,800万円あるとすると、毎年200万円が足りず、現預金を取り崩して返している状態になります。この状態が2期続くなら、借換えで返済期間を延ばすか、返済条件の見直しを銀行に相談する段階です。返済原資が約定返済額を上回っていれば、償還年数が10年を少し超えていても、急いで条件変更を頼む必要はありません。月ごとの返済予定と入出金を並べる方法は資金繰り表の作り方と入金予定日の計算式を解説した記事で扱っています。

償却前経常利益を毎月出す会計データの設計と、システム化を検討する条件

年1回の決算で計算するだけなら、表計算で足ります。毎月追う場合に詰まる箇所は決まっています。

減価償却費を製造原価と販管費から集約する勘定科目マスタの属性設計

月次で償却前経常利益を出すには、製造原価と販管費に分かれた減価償却費を1つの数字にまとめる必要があります。勘定科目マスタに「償却費フラグ」という属性を持たせ、製造原価の減価償却費、販管費の減価償却費、リース資産の償却費、販管費ののれん償却費に印を付けておくのが確実です。

フラグがあれば、償却前経常利益は「経常利益+フラグ付き科目の合計」で自動集計できます。科目名で拾う方法は、部門別に「減価償却費(工場)」のような補助科目を増やしたときに漏れます。月次で償却費を計上していない会社は、年間の償却見込み額を12で割って毎月計上する月次償却の仕訳を先に入れてください。決算月にまとめて計上すると、11か月間は経常利益が大きく見え、償却前経常利益との差も読めません。月割りの仕訳例は減価償却の期末・月次の仕訳例を解説した記事にあります。

固定資産台帳と借入明細を会計に連携し、債務償還年数を月次で出す運用

債務償還年数を毎月出すには、償却費に加えて、有利子負債の残高と現預金・運転資金の残高が月末時点でそろっている必要があります。償却費は固定資産台帳から、借入残高は借入明細から、売掛金と在庫は販売管理と在庫管理から来るため、元のデータが4か所に分かれているのが普通です。

借入が数本で固定資産も少ないなら、会計ソフトの月次試算表と表計算で十分に回ります。個別の仕組みを検討するのは、固定資産が数百件あって台帳を別システムで持っている場合や、借入が10本を超えて残高の集計に毎月半日かかっている場合です。固定資産台帳・借入明細・会計をつなぎ、償却前経常利益と債務償還年数を月次の経営資料に自動で載せる段階では、会計・経理システム開発のように既存の台帳との連携設計から相談できる開発会社に頼むと、科目の属性設計から帳票まで一貫して組めます。

それ以前の段階なら、開発は見送るのが妥当です。償却費フラグと月次償却の仕訳を整えるだけで、償却前経常利益は毎月正しく出せるようになります。

よくある質問

償却前経常利益の計算や使い方について、よく挙がる質問に答えます。

償却前経常利益と償却前営業利益の違いは何ですか?

出発点の利益が違います。償却前営業利益は「営業利益+減価償却費」で、支払利息や受取配当金を含みません。日本ではEBITDAの簡便式として使われることが多い数字です。償却前経常利益は経常利益から出発するため、利息の支払いを済ませたあとの数字になります。先の例では償却前営業利益3,300万円、償却前経常利益3,000万円で、差の300万円が純支払利息です。返済力を見るなら償却前経常利益、事業そのものの稼ぐ力を比べるなら償却前営業利益を使います。

償却前経常利益がマイナスのときは何を意味しますか?

減価償却費を足し戻しても赤字なので、本業と財務活動から現金が流出している状態です。経常利益だけがマイナスの場合は、償却費が大きいだけで資金は回っていることがありますが、償却前でもマイナスなら手元資金か新たな借入で穴を埋めていることになります。債務償還年数は計算できず、金融機関からの評価も厳しくなる状態です。経常赤字の原因を営業損失と営業外費用に分ける手順は経常損失の原因を2つに分ける手順を解説した記事で説明しています。

債務償還年数は何年以内なら良いとされますか?

法令で決まった基準はありません。公的に明文化されているのは、中小企業活性化協議会の再生計画が求める「有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下」で、10年が一つの節目です。ただし同じ要領は、業種特性などの合理的な理由があれば10倍超も許容すると書いています。不動産賃貸業のように長期の借入で資産を持つ業種は年数が長く出やすいため、同業他社や自社の過去の推移と比べて判断してください。

減価償却費を多く計上すれば償却前経常利益は増えますか?

増えません。償却費を増やすと経常利益が同じ額だけ減り、足し戻すと元の金額に戻ります。定額法から定率法に変えても、特別償却を使っても、償却前経常利益は同じです。変わるのは法人税等の金額で、償却費が多い年は税金が減るため、税引後の返済原資はその年だけ増えます。協議会の算式のように法人税等を引いた数字で比べる場合は、償却費の計上額が間接的に影響する点に注意してください。

償却前経常利益は決算書のどこに書かれていますか?

決算書には載っていません。損益計算書で経常利益を確認し、製造原価報告書の減価償却費と販管費の内訳にある減価償却費を足して自分で計算します。製造原価報告書や販管費の内訳が付いていない場合は、法人税申告書の別表十六に記載された償却額の合計でも確認が可能です。金融機関に提出する事業計画書に書くときは、どの償却費を足し戻したかを注記しておくと、銀行側の計算との食い違いを防げます。

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