一括償却資産は、取得価額が20万円未満の減価償却資産をまとめて3年で費用にできる選択制の制度です。この記事では、法人と個人事業主で異なる計算方法、取得時と決算時の仕訳と勘定科目、途中で除却や売却をしても3年償却を続けるという国税庁の取扱いを、条文と設例で確認します。少額減価償却資産の特例や通常の減価償却との違い、償却資産税の申告対象外になる点も比べたうえで、どの資産をどの処理に回すかの判断と、固定資産台帳での持ち方まで整理しました。
まとめ:一括償却資産は20万円未満を3年で費用化する選択制と先に押さえる要点
一括償却資産の判断は、次の4点を押さえれば実務で迷いません。
- 対象は取得価額20万円未満の減価償却資産で、法人も個人事業主も、青色申告でなくても選べる。リース資産と、主要な事業でない貸付けに使う資産は対象外
- 耐用年数は関係なく、3年で均等に費用にする。法人は「対象額÷36×事業年度の月数」、個人事業主は「対象額÷3」で、取得した月による月割はしない
- 途中で除却・売却しても残額を一度に落とせず、3年間の償却をそのまま続ける
- 償却資産税(固定資産税)の申告対象から外れる。少額減価償却資産の特例を使った資産は申告対象に残る
選び方の結論は単純です。資本金1億円超や従業員400人超で少額特例を使えない会社は、10万円以上20万円未満の資産を原則として一括償却に回します。少額特例を使える中小企業は、償却資産の課税標準額が免税点の150万円を超えるかどうかで分けてください。超えるなら一括償却、超えないなら少額特例で即時に損金にする方が有利です。
一括償却資産とは何か:取得価額10万円以上20万円未満を3年で落とす制度
一括償却資産は、法人税と所得税の両方に置かれた制度です。10万円未満の資産は使い始めた期に全額を費用にでき、20万円以上の資産は耐用年数に沿って償却します。その中間の帯を、個別に管理せず3年でまとめて落とせるようにしたものです。
法人税法施行令133条の2と所得税法施行令139条が定める対象と除外資産
法人の根拠は法人税法施行令第133条の2で、「取得価額が二十万円未満である」減価償却資産の「全部又は特定の一部を一括したもの」を対象にしています。個人事業主は所得税法施行令第139条が同じ構造で定めています。10万円未満の資産も条文上は対象に入りますが、即時に全額を費用にできるため、実務で一括償却に回すのは10万円以上20万円未満の資産です。
対象から外れる資産は2種類あります。1つは所有権移転外リース取引のリース資産で、施行令は償却方法の規定(第48条第1項第6号など)を引いて除外しています。もう1つは貸付けに使う資産です。国税庁タックスアンサーNo.5403は、令和4年4月1日以後に取得して貸付けに使った資産を除くとし、主要な事業として行う貸付けは除外しないと明記しています。
青色申告の要件はありません。白色申告の個人事業主も使えます。
取得価額の判定単位と税抜経理・税込経理で20万円の線が動くケース
20万円未満かどうかは、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。No.5403は応接セットなら1組、カーテンなら部屋ごとの合計で判定する例を挙げています。パソコン本体とモニターを別々に買っても、セットで使うなら合算で見るかを検討してください。
消費税の扱いでも線が動きます。国税庁No.2100のとおり、税抜経理なら税抜額、税込経理なら税込額で判定します。税抜18万5,000円のパソコンは、税抜経理なら一括償却資産です。免税事業者など税込経理の事業者では税込20万3,500円となり、20万円を超えるため一括償却を選べません。
一括償却資産と少額減価償却資産・通常償却の違いを4区分の比較表で整理
取得価額の帯ごとに選べる処理を並べると、一括償却資産の位置がはっきりします。
10万円未満・20万円未満・40万円未満・40万円以上の処理と対象者の比較
| 取得価額 | 選べる処理 | 対象者 | 償却資産税 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額を即時に費用 | 全事業者 | 申告不要 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却・少額特例・通常償却 | 一括償却は全事業者 | 一括償却なら申告不要 |
| 20万円以上40万円未満 | 少額特例・通常償却 | 少額特例は中小企業者等 | 申告対象 |
| 40万円以上 | 通常償却 | 全事業者 | 申告対象 |
少額特例の40万円は、2026年4月1日以後に取得した資産の基準です(それ以前の取得分は30万円未満)。国税庁No.5408によると、対象は青色申告で常時使用する従業員が400人以下の中小企業者等に限られ、年300万円が上限です。要件と改正時期の詳細は少額減価償却資産の40万円特例と10万円・20万円の使い分けで解説しています。
一括償却資産は償却資産税の申告対象外で少額特例の資産は対象という差
国税の処理は同じ「早く費用にする制度」でも、地方税の償却資産税では扱いが分かれます。広島市の償却資産FAQは、取得価額20万円未満で3年間の一括償却をしている資産を申告不要とし、中小企業者等の少額資産の特例を使った資産は申告対象としています。即時に全額を損金にしたのに、償却資産税では毎年の課税対象に残るわけです。
ここが3区分の選び分けを左右します。償却資産税の仕組みと申告書の書き方は償却資産の対象資産と申告書の書き方にまとめています。
一括償却資産の計算方法:法人は月数÷36、個人事業主は3分の1の均等額
通常の減価償却は使い始めた月から月割で計算しますが、一括償却資産は取得月を見ません。法人と個人では式の形も違います。定額法・定率法の計算手順は減価償却の計算方法と償却率表で扱っています。
12か月決算の法人は取得月にかかわらず3分の1で月割しない理由
法人の損金算入限度額は「一括償却対象額÷36×当該事業年度の月数」です。施行令133条の2第1項の月数は事業年度の月数で、資産を使い始めた月からの月数ではありません。
3月決算の法人が2月に15万円のパソコンを4台買い、合計60万円を一括償却資産にした例で見ます。使ったのは2か月でも、1期目の限度額は60万円÷36×12=20万円です。2期目と3期目も20万円ずつで、3期で60万円を落とし終えます。期末直前に買うほど通常償却より早く費用にできる計算です。
設立初年度など事業年度が12か月未満のときは4期以上にわたる計算例
事業年度が12か月に満たないと、償却は3期で終わりません。月数は暦に従って数え、1か月未満の端数は1か月とします(施行令133条の2第6項)。
10月設立・3月決算で初年度が6か月の法人が、18万円の複合機を一括償却資産にした場合はこうなります。1期目は18万円÷36×6=3万円です。2期目と3期目は12か月で6万円ずつ。4期目に残りの3万円を落とし、合計36か月分で18万円になります。決算期を変更した年も同じ考え方で、変更年度の月数で按分します。
個人事業主は年の途中で買っても3分の1で青色・白色を問わず使える
個人事業主の式はもっと単純です。所得税法施行令139条は、一括償却対象額を「三で除して計算した金額」を業務に使い始めた年以後3年間の各年の必要経費にすると定めています。月数の概念がないため、12月に買っても1月に買っても、その年に3分の1を経費にできます。
適用するには、使い始めた年の確定申告書に一括償却対象額を記載した書類を添付し、計算書類を保存しておく必要があります(同条第2項)。年の途中で開業した場合も月割はしません。
一括償却資産の仕訳と勘定科目:取得時・決算時・3年目までの記帳例
一括償却資産は、取得時に資産として計上し、決算ごとに3分の1ずつ費用に振り替えるのが基本の記帳です。通常の減価償却の仕訳例は減価償却の仕訳例と勘定科目にまとめています。
取得時は一括償却資産勘定、決算時は減価償却費で直接減額する仕訳例
先ほどの3月決算・パソコン4台60万円の例で、普通預金から支払ったときの仕訳を並べます。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 2月の取得時 | 一括償却資産 600,000 | 普通預金 600,000 |
| 1期目の決算 | 減価償却費 200,000 | 一括償却資産 200,000 |
| 2期目の決算 | 減価償却費 200,000 | 一括償却資産 200,000 |
| 3期目の決算 | 減価償却費 200,000 | 一括償却資産 200,000 |
勘定科目は「一括償却資産」を立てるのが一般的で、貸借対照表では投資その他の資産か、有形固定資産の末尾に置く例が多く見られます。減価償却累計額は使わず、資産から直接減らす直接法で記帳するのが通例です。3期目の決算で残高はゼロになります。
会計上で全額を費用にした場合の損金不算入額と翌期以後の認容の流れ
経理の手間を省こうと、取得時に60万円を消耗品費で落としてしまう例があります。この場合、損金経理額60万円のうち限度額20万円を超える40万円は1期目の損金になりません。法人税申告書の別表四で40万円を加算します。
超えた40万円は消えません。施行令133条の2第9項は、前期以前の損金経理額のうち損金にならなかった金額を後の期の損金経理額に含めるとしています。2期目と3期目に20万円ずつを別表四で減算し、3期で帳尻が合います。各期の計算は別表十六(八)「一括償却資産の損金算入に関する明細書」に記載し、確定申告書に添付します(同条第12項)。
一括償却資産を途中で売却・除却したときも3年償却を続けるという原則
一括償却資産で最も誤りが多いのが、3年の途中で資産がなくなった場合の処理です。通常の減価償却資産なら除却時に帳簿の残額を除却損にできますが、一括償却資産ではできません。
国税庁質疑応答のパソコン10台の例:3台除却しても限度額は50万円のまま
国税庁の質疑応答事例「一括償却資産を除却した場合の取扱い」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)が具体例を示しています。前期に1台15万円のパソコンを10台買って一括償却資産にした法人が、今期に3台を除却しました。照会者は、除却した3台の未償却分30万円と残り7台分の35万円で、65万円を損金にできるかを尋ねています。
回答は否です。損金算入額は10台分の限度額50万円(15万円×10台×1/3)に達するまでで、除却損相当の30万円を当期に一度に落とすことは認められません。根拠は法人税基本通達7-1-13で、制度の趣旨が20万円未満の資産を個別管理する事務負担に配慮したものだからと説明されています。全部を除却した場合も、全部または一部を譲渡した場合も同じ扱いです。
売却代金は収益に計上し、帳簿の残額は一括償却の枠で落とし続ける処理
一括償却資産の一部を売ったときは、売却代金を全額、雑収入などの収益に計上します。帳簿の残額は個別に減らさず、残りの期で3分の1ずつ落とし続けてください。売却で帳簿価額を取り崩す通常の処理とは逆なので、会計ソフトの固定資産モジュールで「売却」処理をすると残額が一度に消えることがあります。
個別管理をしない代わりに、途中の増減も追わない。一括償却資産はこの割り切りの上に成り立つ制度です。除却や売却が多い業態では、この割り切りが不利に働く点を選択時に織り込んでください。
一括償却か少額特例か通常償却か:償却資産税と300万円枠から決める判断
10万円以上20万円未満の資産は、3つの処理のどれにも回せます。判断軸は「早く損金にしたいか」「償却資産税を払うか」「少額特例の年300万円枠をどこに使うか」の3つで、会社の条件によって答えは決まります。
一括償却を選ぶべき会社:資本金1億円超・従業員400人超・償却資産が多い会社
少額特例を使えない会社は、迷わず一括償却です。No.5408の中小企業者等は、資本金1億円以下などの中小企業者で、常時使用する従業員が400人以下(2026年4月1日以後の取得分)の法人に限られます。この要件を外れる会社にとって、10万円以上20万円未満の資産の選択肢は一括償却か通常償却の2つです。パソコンの法定耐用年数は4年なので、3年で落とせて償却資産税もかからない一括償却が両面で上回ります。
中小企業でも、償却資産の課税標準額がすでに免税点を超えている会社は一括償却を選びます。少額特例で即時に損金にした資産は償却資産税の申告対象に残り、標準税率1.4%で毎年課税されるためです。15万円のパソコン1台を少額特例で落とすと、翌年度の評価額は15万円×(1−0.438÷2)=11万7,150円、税額は概算1,640円です。1台では小さくても、店舗やオフィスで数十台を入れ替える会社では年に数万円の差になり、耐用年数の4年間続きます。
一括償却を選ばない方がよい場面:償却資産の課税標準額が免税点150万円未満
反対に、一括償却を選ぶ理由が薄い会社もあります。地方税法第351条は、同じ市町村内の償却資産の課税標準額が150万円に満たないとき、固定資産税を課すことができないと定めています。設備の少ない小規模事業者やIT企業は、パソコンを少額特例で申告対象に含めても150万円に届かないことが多く、償却資産税の差は生じません。
この条件に当てはまり、青色申告で中小企業者等に該当する黒字の会社は、10万円以上20万円未満の資産も少額特例に回して取得した期に全額を損金にしてください。3年待つ理由がありません。免税点未満でも償却資産の申告自体は求められる点は変わらないので、少額特例分を申告書に載せることは忘れないようにします。
少額特例の年300万円枠を先に20万円以上へ配り、残りで20万円未満を決める順序
少額特例の年300万円枠が足りない期は、配る順番で結果が変わります。20万円以上40万円未満の資産は一括償却を使えないので、枠はこちらに優先して当てます。20万円未満の資産は、枠が残れば少額特例、残らなければ一括償却という順で振り分けてください。
赤字の期は扱いが変わります。即時に損金にしても繰越欠損金が増えるだけで、償却資産税だけが残ります。赤字が続く見込みなら、20万円未満の資産は一括償却にして費用を後の期へ回し、償却資産税も避ける方が合理的です。
一括償却資産を固定資産台帳でどう持つか:事業年度ごとのグループ管理
一括償却資産は個別に償却しない一方、パソコンや複合機としての実物は社内に残ります。会計の単位と実物の単位が食い違い、台帳の設計を誤ると申告と棚卸の両方で不一致が起きる点に注意が必要です。固定資産台帳の基本項目は固定資産台帳の書き方と取得・除却時の更新手順で解説しています。
台帳は供用年度ごとに1行の集計と個品明細の2層にして除却しても行を消さない
一括償却資産の会計上の単位は「事業年度ごとの一括したもの」です。台帳では、供用した事業年度ごとに集計行を1行立て、一括償却対象額・当期の月数・損金算入額・期末残高を持たせます。その下に、資産名・取得日・取得価額・設置場所を個品ごとに並べた明細を付ける2層の形にしてください。
個品を除却しても、集計行の金額は変えません。明細には除却日だけを記録し、償却は集計行で3年分を最後まで回します。除却時に集計行ごと削除する運用は、残りの期の損金算入が漏れる典型的な失敗です。
別表十六(八)・償却資産申告・IT資産管理の3つに同じ区分を流す設計
台帳から出す帳票は3つあります。別表十六(八)は集計行から作り、事業年度の古い順に並べます。償却資産申告は「一括償却」の区分の資産を除外して作成してください。IT資産管理は個品明細から作り、除却日のない資産だけを在庫として数えます。
この3つを別々の表で管理すると、少額特例と一括償却の取り違えが起きます。少額特例の資産を一括償却として償却資産申告から外せば申告漏れ、逆なら過大申告です。台帳の1行に「処理区分(即時・一括・少額特例・通常)」の項目を持ち、3つの帳票を同じ区分から出すのが確実です。
Excel管理で足りる条件と会計システムに区分判定を組み込む判断の分かれ目
一括償却資産が年に数件で、拠点が1か所なら、Excelの台帳で足ります。供用年度ごとのシートに集計行と明細を置けば、別表十六(八)の転記も数分で済みます。
拠点が複数あり、パソコンや端末を年に数十台入れ替える会社では、手作業の区分判定が追いつかなくなります。取得価額・税抜税込・中小企業者等の該当・年300万円枠の残額から処理区分を自動で振り分け、償却資産申告とIT資産管理へ同じ区分を流す仕組みは、会計システムの固定資産機能か周辺の個別開発で作ることが可能です。全体像は固定資産管理システムの機能と固定資産台帳・減価償却の関係で整理しています。既存の会計ソフトに足りない判定や連携を補う開発は、会計・経理システム開発で相談を受け付けています。
よくある質問
一括償却資産について、検索の多い質問に答えます。
一括償却資産の耐用年数は何年ですか?
一括償却資産には耐用年数を当てはめません。法定耐用年数が4年のパソコンでも、15年の金属製の家具でも、一律に3年で費用にします。法人は「一括償却対象額÷36×事業年度の月数」、個人事業主は「一括償却対象額÷3」で計算するため、12か月決算の法人なら毎期3分の1です。20万円以上の資産は耐用年数で償却する必要があり、年数の調べ方は減価償却の耐用年数の調べ方で扱っています。
個人事業主は一括償却資産を確定申告書のどこに書きますか?
青色申告なら青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に、白色申告なら収支内訳書の同じ欄に、一括償却資産として合計額と本年分の必要経費算入額を記載します。所得税法施行令139条第2項は、使い始めた年の確定申告書に一括償却対象額を記載した書類を添付し、計算書類を保存することを適用の条件にしています。2年目と3年目も同じ欄に、残りの3分の1ずつを記載してください。
ソフトウェアも一括償却資産にできますか?
できます。一括償却資産の対象は「減価償却資産」なので、無形固定資産のソフトウェアも取得価額が20万円未満なら対象です。15万円の業務パッケージを買った場合、自社利用ソフトウェアの耐用年数5年で償却する代わりに、3年で費用にできます。サブスクリプション型で毎月料金を払うサービスは資産ではなく費用なので、一括償却資産の論点にはなりません。減価償却の対象資産の全体像は減価償却の仕組みと対象資産で確認できます。
一括償却資産を選んだあと、通常の減価償却に変えられますか?
変えられません。一括償却は、資産を使い始めた事業年度の確定申告書に一括償却対象額を記載することで適用される選択で(法人税法施行令133条の2第11項)、選んだ後に個別の償却へ切り替える定めはありません。翌期以降に除却や売却があっても3年償却を続けるのはこのためです。選ぶかどうかは事業年度ごと・資産ごとに決められるので、迷う資産は取得した期の決算までに区分を決めてください。
中古品やリース資産も一括償却資産になりますか?
中古品は対象です。取得価額が20万円未満であれば、新品と同じく一括償却資産にできます。一方、所有権移転外リース取引のリース資産は、施行令が対象から除いているため一括償却資産になりません。リース料総額が20万円未満の少額リースは、別の規定で賃貸借として処理できる場合があります。貸付けに使う資産も、主要な事業として行う貸付けでない限り対象外です。
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