ROA(総資産利益率)は、会社が持つ資産全体でどれだけ利益を生んだかを示す指標です。目安は「5%」とよく言われますが、この数字は分子に何の利益を使うかで意味が変わります。財務省の法人企業統計では、2024年度の全産業平均が経常利益ベースで5.1%、当期純利益ベースに直すと約4%でした。つまり経常利益で計算した5%は「平均並み」、当期純利益で計算した5%は「平均をやや上回る」水準です。この記事では、公的統計から業種別のROAを算出した表を示し、計算式・ROEとの違い・上げ方までを順に解説します。
まとめ:ROAの目安と読み方
- 計算式はROA=利益÷総資産×100。分子に当期純利益・経常利益・営業利益のどれを使うかで値が変わるため、比べる相手と分子を揃える。
- 公的統計の平均は経常利益ベース5.1%(法人企業統計・2024年度・全産業)。製造業6.8%、非製造業4.5%。当期純利益ベースの概算は約4%。
- 業種差が大きい。中小企業の令和6年度決算から算出すると、情報通信業6.7%、建設業6.1%に対し、不動産業・物品賃貸業は3.2%。自社の業種平均と比べる。
- ROAは「売上高利益率×総資産回転率」に分解できる。利益率が低いのか、資産が重いのかで打ち手が変わる。
- ROEとの違いは分母。分子を当期純利益に揃え、資産・自己資本の集計時点を統一すれば、ROE=ROA×財務レバレッジとなる。自己資本が正で、当期純利益ベースのROAが同じ正の値を保つなら、財務レバレッジの上昇に伴いROEは上がる。中小企業はまずROAを見る。
ROA(総資産利益率)の意味:資産1円あたりの利益を測る収益性指標
ROAはReturn On Assetsの略で、日本語では総資産利益率、または総資本利益率と呼ばれます。貸借対照表の左側(資産合計)と右側(負債+純資産=総資本)は同じ金額なので、どちらで呼んでも分母は同じです。財務省財務総合政策研究所の財務指標の解説(総資本経常利益率)も、総資本利益率は総資産利益率とも言われ、一般にROAと呼ばれると説明しています。
分母には自己資本だけでなく負債で調達した資金に対応する資産も含まれるため、資産全体の使い方の巧拙が数字に出ます。総資産10億円で5,000万円の利益を出す会社と、総資産5億円で同じ5,000万円を出す会社では、後者のROAが2倍です。経営者は資産の効率を、金融機関は返済原資を生む力を、投資家は事業の稼ぐ力を確かめるために使います。
ROAの計算式と求め方:基本式・計算例・分子の選び方
基本式と決算書からの求め方(期中平均を使う計算例)
基本式は次のとおりです。分子は損益計算書の利益、分母は貸借対照表の資産合計(総資産)から取ります。
| 指標 | 計算式 |
|---|---|
| ROA(%) | 利益 ÷ 総資産 × 100 |
| 総資産の期中平均 | (期首の総資産+期末の総資産)÷ 2 |
利益は1年間の累計、総資産は決算日1日の残高です。期中に資産が大きく動いた会社では、期末の値だけで割るとROAがゆがみます。財務省の法人企業統計も、財務指標の計算式で総資本を「期首・期末平均」と定め、前期末と当期末の平均を使っています。
当期純利益3,000万円、期首の総資産5億円、期末の総資産7億円の会社で計算します。期末だけで割ると3,000万円÷7億円×100=4.3%、期中平均6億円で割ると3,000万円÷6億円×100=5.0%です。期末に借入で設備を買った会社では、期首・期末平均を使うと期末残高だけで割る偏りを抑えられます。ただし、期末直前の増加も半期分保有したように反映されるため、社内分析では月次平均も検討します。
分子に使う利益の違い:当期純利益・経常利益・営業利益
同じ「ROA」でも、分子の利益によって3通りの値が出ます。公的統計がROAとして公表しているのは経常利益ベースと営業利益ベースです。
| 種類 | 分子 | 向いている用途 | 2024年度 全産業平均 |
|---|---|---|---|
| 当期純利益ベース | 当期純利益 | ROEとつなげて読む | 約4%(概算) |
| 総資本経常利益率 | 経常利益 | 業種比較・中小企業 | 5.1% |
| 総資本営業利益率 | 営業利益 | 本業だけの資産効率 | 3.8% |
経常利益ベースは本業の利益に受取利息や支払利息などの財務活動を加えた「通常の経営活動の実力」を見る指標で、固定資産の売却益などの特別損益に振り回されません。営業利益ベースの値は財務総研の総資本営業利益率の解説によるものです。他社や業界平均と比べるときは、まず分子を揃えてください。当期純利益ベースの自社値と経常利益ベースの業界平均では、税金に加えて特別損益の扱いも異なるため、そのままでは収益性を比較できません。
ROAの目安:経常利益ベースの5%と全産業平均との比較
公的統計の平均値:経常利益ベース5.1%・営業利益ベース3.8%(2024年度)
財務総研の解説によると、2024年度の総資本経常利益率(全産業・全規模)は5.1%、製造業6.8%、非製造業4.5%でした。総資本営業利益率は全産業3.8%、製造業4.3%、非製造業3.6%です。法人企業統計の全産業には金融業・保険業が含まれていません(令和6年度 年次別法人企業統計調査の表注)。金融業・保険業の水準は、事業会社の目安とは別に見る必要があります(理由は後述)。
2025年度分は令和7年度 年次別法人企業統計調査として2026年9月1日に公表され、全産業の売上高経常利益率は2024年度の6.8%から7.3%に上がりました。ROAの形の解説資料は執筆時点で2024年度版のため、この記事では2024年度の5.1%を基準にしています。
当期純利益ベースに直すと約4%:ROE9.6%×自己資本比率42.1%の概算
当期純利益ベースのROAは公表されていませんが、ROEと自己資本比率から概算できます。2024年度の全産業のROE(自己資本当期純利益率)は財務総研の解説で9.6%、自己資本比率は法人企業統計の第12表で42.1%です。ROA=ROE×自己資本比率なので、9.6%×0.421≒4.0%になります。ROEの分母は期首・期末平均、自己資本比率は期末の値なので、あくまで目安です。
当期純利益ベースのROA5%は、ここで算出した全産業の概算値約4%を約1ポイント上回ります。ただし、平均超えだけを根拠に「優良」とは判定できません。経常利益ベースの5%は全産業平均とほぼ同じで、製造業なら平均を下回ります。
| 経常利益ベースのROA | 全産業平均(5.1%)との比較 |
|---|---|
| 3%未満 | 大きく下回る。業種平均と比べ原因を分解する |
| 3%以上5%未満 | 全産業平均を下回る |
| 5%以上7%未満 | 平均並み〜上回る。製造業平均は6.8% |
| 7%以上 | 多くの業種で平均を上回る |
この表は全産業平均を物差しにした本記事の整理です。業種によって平均が倍近く違うため、最終的な判断は次の業種別の表で行ってください。
業種別のROA平均:中小企業実態基本調査(令和6年度決算)からの算出値
中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和7年確報・令和6年度決算実績、2026年6月29日公開)の第10-1表は、中小企業(法人)の売上高経常利益率と総資本回転率を業種別に公表しています。ROA(経常利益ベース)=売上高経常利益率×総資本回転率なので、2つを掛けると業種別のROAが出ます。
| 業種 | 売上高経常利益率 | 総資本回転率 | ROA(算出値) |
|---|---|---|---|
| 法人企業合計 | 4.4% | 1.07回 | 4.7% |
| 情報通信業 | 6.3% | 1.07回 | 6.7% |
| 建設業 | 5.7% | 1.08回 | 6.1% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 13.0% | 0.43回 | 5.6% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 5.6% | 0.94回 | 5.2% |
| 卸売業 | 2.7% | 1.87回 | 5.1% |
| 製造業 | 5.0% | 0.96回 | 4.8% |
| 小売業 | 2.6% | 1.79回 | 4.7% |
| 運輸業、郵便業 | 4.1% | 1.14回 | 4.6% |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 4.3% | 0.96回 | 4.1% |
| 不動産業、物品賃貸業 | 9.0% | 0.36回 | 3.2% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 2.8% | 1.00回 | 2.8% |
ROAは丸め前の公表値(小数第3位まで)を掛けて小数第1位に丸めたもので、表中の表示値の積とは一致しない場合があります。この調査の総資本回転率は期末の総資本で割っているため、期首・期末平均を使う法人企業統計とは定義が少し違います。中小法人の合計4.7%は、各社の利益と資産の合算値から求めた比率で、各社ROAの単純平均ではありません。また、法人企業統計の5.1%とは対象企業と分母の時点が異なるため、差を企業規模だけの影響とは解釈できません。規模による差は売上高経常利益率に強く出ており、2025年度の法人企業統計では、売上高経常利益率は資本金10億円以上が12.0%、1,000万円以上1億円未満が4.3%でした。
ROAの構成要素:卸売業・専門サービス業等・不動産業等の比較
表の卸売業と学術研究、専門・技術サービス業は、ROAが5.1%と5.6%で近い水準です。ところが中身は正反対で、卸売業は利益率2.7%を回転率1.87回で稼ぐ回転率型、学術研究、専門・技術サービス業は利益率13.0%で回転率0.43回の重さを補う利益率型です。不動産業・物品賃貸業は利益率が9.0%と高いのに、回転率0.36回で資産が重く、ROAは3.2%にとどまります。
ROAが平均を下回ったとき、卸売業が学術研究、専門・技術サービス業の利益率13.0%をそのまま目標にするのは避けます。比べる相手は同じ業種の平均です。自社の業種がどちらの型かを見て、伸ばせる側の要素から手を付けます。ROEまで3つに分ける分析はデュポン分解の計算式と分析事例で、総資産回転率の業種平均は総資産回転率の計算式と業種別平均で詳しく扱っています。
ROAとROEの違い:分母と財務レバレッジによる読み分け
ROE(自己資本利益率)は当期純利益を自己資本で割った指標です。両者の分母の比が財務レバレッジ(総資産÷自己資本)です。分子を当期純利益に、分母の集計時点を同じ基準に揃えると、次の関係が成り立ちます。
| 指標 | 分子 | 分母 | 主に見る人 |
|---|---|---|---|
| ROA | 利益 | 総資産(負債+純資産) | 経営者・金融機関 |
| ROE | 当期純利益 | 自己資本 | 株主・投資家 |
| 関係式 | ROE = ROA(当期純利益ベース)× 財務レバレッジ | ||
借入で資産を増やすと財務レバレッジが上がり、当期純利益ベースのROAがプラスのまま変わらなければ、ROEは高くなります。中小企業実態基本調査の令和6年度決算では、中小法人のROEは10.9%、財務レバレッジは2.23倍でした。ROEだけを見ると借入依存の高さを「収益力」と読み違えるため、借入の多い会社ほどROAを先に確かめます。
上場企業の目標は別の物差しで語られます。伊藤レポート(2014年)は、グローバルな投資家との対話における最低ラインとして8%を上回るROEを求め、その数字の文脈は伊藤レポートの原典とROE8%の意味で整理しています。東京証券取引所が2023年3月31日に公表した資本コストや株価を意識した経営の要請も、WACCと比べる指標にROIC、株主資本コストと比べる指標にROEを例示しており、ROAは挙げていません。投下資本で見る指標はROIC(投下資本利益率)の計算式と目安を、3指標の使い分けはROICとROE・ROAの比較を参照してください。
ROAの改善策:総資産回転率と売上高利益率の打ち手
ROAは「売上高利益率×総資産回転率」に分けられます。財務総研の解説も、総資本利益率はこの2つの構成要素に分解できると書いています。打ち手は2系統です。
- 総資産回転率を上げる(資産を軽くする):使っていない土地・建物や遊休設備の売却、滞留在庫の圧縮、売掛金の回収期間短縮、事業に使わない余剰現金での借入返済。売却や回収だけでは資産が現預金に変わるため、総資産が減るとは限りません。得た資金を借入返済などに充て、利益を維持できればROAは上がります。
- 売上高利益率を上げる:値上げ、原価率の改善、販管費の見直し。効果は大きいが、取引先との交渉や業務の作り直しを伴い時間がかかる。
遊休資産や滞留在庫がある中小企業は、まず資産の保有状況を点検します。社内で着手できますが、売却や回収条件の変更には相手方との調整が必要です。余剰資産がなく利益率が低い会社は、採算の改善を優先します。売掛金と在庫の滞留は、決算書の残高だけでなく、債権の期日別明細や在庫の保有期間で確認します。売掛金の回収期間の延びを月次で捉える方法は売掛金回転期間の計算式と業種別の目安にまとめています。
ROAを年1回の決算で眺めるだけでは、どの事業・どの資産が足を引っ張っているかまでは分かりません。部門別の利益と資産を月次で集計できると、回転率と利益率のどちらが動いたかを毎月追えます。会計データからこうした指標を自動で出す仕組みは、会計・経理システム開発として支援しています。
ROAで判断を誤る場面:簿価・リース会計・特別利益・金融業
ROAが高い・低いという結果だけで評価を決めると、次の4つの場面で判断を誤ります。
古い設備で総資産が小さい会社は、減価償却が進んで簿価が下がっているだけでROAが高く出ます。借入などで設備を更新し、利益の増加に先行して総資産が増えると、ROAが下がる場合があります。現預金での購入は資産内の振替でもあるため、設備更新だけで総資産が必ず増えるわけではありません。借入で設備投資をした直後は、ROAが一時的に下がる前提で計画を立ててください。
新リース会計基準(企業会計基準第34号、ASBJが2024年9月13日に公表)の適用で、店舗や倉庫などのリースが使用権資産として貸借対照表に載り、総資産が増えます。強制適用は2027年4月1日以後開始する事業年度の期首からで、早期適用した会社と適用前の会社のROAは単純に比べられません。どの指標がどれだけ動くかは新リース会計基準による財務指標の変化で設例の数値を使って解説しています。
特別利益が出た年は、当期純利益ベースのROAだけが跳ね上がります。固定資産や投資有価証券の売却益が入った年は、経常利益ベースと並べて確認してください。
金融業・保険業は預金や保険契約の負債で資産が膨らむため、ROAは事業会社より大幅に低く出ます。法人企業統計も全産業の集計から金融業・保険業を除いています。銀行のROAを事業会社の目安と比べて「低い」と評価するのは誤りです。
よくある質問
ROAの目安は何%ですか?
一般に5%がよく挙がりますが、公的統計の平均は分子によって違います。法人企業統計の2024年度・全産業は経常利益ベースで5.1%(製造業6.8%、非製造業4.5%)、当期純利益ベースの概算は約4%です。経常利益で計算した5%は平均並み、当期純利益で計算した5%は平均をやや上回る水準と読めます。業種差が大きいため、最終的には同じ業種の平均と比べてください。
ROAとROEはどちらが重要ですか?
目的で使い分けます。資産全体の稼ぐ力を見るならROA、株主の資本に対するリターンを見るならROEです。当期純利益ベースのROAを使い、資産・自己資本の集計時点を揃えると、ROE=ROA×財務レバレッジとなります。自己資本が正で、当期純利益ベースのROAが同じ正の値を保つ場合、財務レバレッジの上昇に伴いROEも上がります。借入の多い会社や中小企業はROAを先に見て、上場企業が投資家に示す目標としてはROEやROICが使われます。
ROAの計算式(求め方)は?
ROA=利益÷総資産×100です。利益は損益計算書の当期純利益(または経常利益・営業利益)、総資産は貸借対照表の資産合計を使います。期中に資産が大きく増減した会社は、期首と期末の総資産を平均して割ると実態に近くなります。他社と比べるときは、分子の利益の種類と分母の取り方を揃えてください。
ROAが低いとどうなりますか?
資産に対する利益の割合が低い状態です。ただし、ROAだけでは借入の返済能力は判断できないため、営業キャッシュフロー、手元資金、返済予定も確認します。まず売上高利益率と総資産回転率に分けて、利益率が低いのか資産が重いのかを確かめます。遊休資産の売却や売掛金の回収で得た資金を借入返済などに充てれば、総資産を圧縮できます。売却損や在庫処分損が出る場合は、利益への影響も併せて確認します。
ROAの業界平均はどこで確認できますか?
大企業を含む全体の水準は、財務省財務総合政策研究所の法人企業統計調査(財務指標の解説ページ)で確認できます。中小企業は中小企業庁の中小企業実態基本調査が業種別に売上高経常利益率と総資本回転率を公表しており、両者を掛けると経常利益ベースのROAになります。いずれも年1回更新されるため、最新年度の値を使ってください。