未払費用は、借入金の利息や締め日の後に働いた分の給与のように、継続して受けたサービスの対価のうち、期末にまだ支払っていない部分を負債に置く勘定科目です。この記事では、半年ごとに後払いする借入金利息と20日締めの給与を設例に、決算での計上・翌期首の再振替・支払時の仕訳を並べ、未払金との違いを整理します。あわせて、法人税の債務確定の3要件と未払賞与の損金算入、消費税の課税仕入れの時期を通達で確認し、計上を省いてよい場面と、契約台帳から毎月自動で計上する設計まで示します。
まとめ:未払費用は受け終えた役務の対価を期末に負債へ置く経過勘定
未払費用の処理で押さえる点は、次の4つです。
- 対象は、契約に基づいて継続して受けているサービスのうち、期末までに受けた分で、支払日がまだ来ていない対価。請求書が届いて金額が確定した単発の支払いは未払金で処理する
- 決算では「費用/未払費用」で当期分を計上し、翌期首に逆仕訳で戻す。戻し忘れると翌期の費用が二重に載る
- 税務で損金になるのは、期末までに債務が成立し、給付の原因となる事実が発生し、金額を合理的に算定できるもの。賞与は通知と1か月以内の支払いなど別の要件がある
- 毎期ほぼ同額で金額の小さいものは、企業会計原則注解1の重要性の原則により計上を省ける。借入金利息と締め日後の給与は金額が大きく、省かない
判断の結論を先に書きます。年1回の決算だけを締める小規模な会社は、借入金利息と締め日後の給与の2つを決算で計上すれば足ります。月次決算で予算と実績を比べている会社は、同じ2つを毎月末に計上し、翌月初に戻す処理を会計システムに組み込んでください。
未払費用とは何か:継続して受けた役務のうち期末に支払日が来ていない対価
未払費用は、サービスを受けた時期と代金を払う時期のずれを調整する経過勘定の1つです。前払費用・未収収益・前受収益と合わせて4種類あり、未払費用はその中で負債に分類されます。
企業会計原則注解5と財務諸表等規則48条が示す未払費用の定義と典型例
企業会計原則注解5は、未払費用を「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないもの」と定義し、役務提供契約以外の契約による未払金とは区別するよう求めています。要素は3つです。契約があること、役務が継続して提供されること、期末までに受けた役務の対価を払い終えていないこと。
実務で未払費用になりやすいのは、次の5つです。
- 借入金や社債の利息で、利払日が期末の後に来るもの(未払利息)
- 給与の締め日から期末までに働いた分の給与(未払給与)
- 月の途中で締める外注の保守・清掃・警備の委託料
- 後払いの家賃・地代で、期末までに使用した分
- 検針日と期末がずれる電気・ガス・水道料金
表示の根拠は財務諸表等規則です。第48条が「未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする」と定めています。科目の立て方は勘定科目の5分類と科目マスタの作り方を参照し、補助科目で「未払利息」「未払給与」と分けておくと、決算時に内訳を追えます。
未払金・買掛金・前払費用・未収収益との違いを継続性と確定の有無で比べた表
名前の似た科目は、取引が継続か単発か、対価が確定しているかで区別できます。
| 科目 | 区分 | 対象 | 例 |
|---|---|---|---|
| 未払費用 | 流動負債 | 継続的な役務のうち受けた分の未払い | 3月分の借入金利息 |
| 未払金 | 流動負債 | 本業以外の取引で確定した未払い | 備品の購入代金 |
| 買掛金 | 流動負債 | 本業の仕入れで確定した未払い | 商品の仕入代金 |
| 前払費用 | 流動資産 | 継続的な役務のうち未提供分の先払い | 翌期分の保険料 |
| 未収収益 | 流動資産 | 継続的な役務のうち提供した分の未収 | 貸付金の未収利息 |
財務諸表等規則第47条は、買掛金を「通常の取引に基づいて発生した営業上の未払金」とし、未払金は「一般の取引慣行として発生後短期間に支払われるもの」として流動負債に挙げています。未払費用だけが第48条で別に規定されているのは、時間の経過に応じて生じる点が他と違うからです。未払金との線引きは買掛金と未払金の違い、資産側の2科目は前払費用の仕訳と短期前払費用の特例と未収入金と未収収益の違いで扱っています。
未払費用の仕訳:3月決算の借入金利息と給与で見る計上・再振替・支払
未払費用の仕訳は、決算で当期分の費用を計上し、翌期首に逆仕訳で戻し、支払時に通常どおり費用を計上する流れです。1行の書き方の基本は仕訳の書き方の5手順にまとめています。
借入金3,000万円の利息を5月末と11月末に払う会社の3月末の未払利息
3月決算の会社が、年利2.4%で借りた3,000万円の利息を、毎年5月末と11月末に直前6か月分ずつ後払いしている例です。3月31日時点で、12月1日から3月31日までの4か月分の利息がまだ払われていません。金額は3,000万円×2.4%×4/12で24万円です。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 3月31日の決算整理 | 支払利息 240,000 | 未払費用 240,000 |
| 4月1日の再振替 | 未払費用 240,000 | 支払利息 240,000 |
| 5月31日の利払い | 支払利息 360,000 | 普通預金 360,000 |
翌期の支払利息は、5月の36万円から再振替の24万円を引いた12万円です。これは4月と5月の2か月分にあたり、期間と費用が一致します。
20日締め当月25日払いの給与で21日から月末の11日分を未払費用にする設例
給与は締め日で科目が変わります。20日締め当月25日払いの会社では、3月21日から31日までの11日分は4月25日に払う給与に含まれ、期末時点では締めておらず金額も確定していません。この11日分が未払費用です。
月給の総額が600万円なら、暦日の日割りで600万円×11/31=約212.9万円を「給料手当/未払費用」で計上します。日割りを暦日で行うか所定労働日数で行うかは、毎期同じ方法にそろえてください。残業代は3月21日以降の実績が4月に入ってから確定するので、勤怠データの締め前の集計値か前月実績で見積もり、確定後に差額を確かめます。
月末締め翌月25日払いの会社は事情が違います。3月分は3月31日に締まり、4月初めには金額が確定するため、未払金で処理するのが筋です。どちらも流動負債なので決算書の合計は変わりません。科目を毎期そろえることを優先してください。
翌期首の再振替仕訳と仕訳の入れ忘れで翌期の費用が二重に載る仕組み
再振替仕訳は、決算で計上した未払費用を翌期首に逆仕訳で消す処理です。利息の例では、4月1日に「未払費用 240,000/支払利息 240,000」を入れると、5月の利払いで計上する36万円と相殺され、翌期の利息が12万円になります。
入れ忘れると、翌期の支払利息は36万円のまま残ります。前期に計上済みの24万円が翌期にも費用として載り、同じ利息を2期で二重に計上する結果です。貸借対照表には未払費用24万円が残り続けるので、翌期末に未払費用の残高を前期末と比べれば漏れを見つけられます。経過勘定4種類の決算整理の順番は決算整理仕訳の主な9項目で確認できます。
再振替を使わず、支払時に「未払費用 240,000/支払利息 120,000/普通預金 360,000」と未払費用を直接取り崩す方法でも結果は同じです。担当者が変わっても迷わないのは再振替の方です。支払いのたびに前期末の残高を確かめる手順が要らず、期首に一括で処理できます。
決算で未払費用を計上する範囲:法人税の債務確定と消費税の仕入税額控除
会計上は発生した費用を計上しますが、税務上の損金や消費税の控除は、それぞれの通達が定める時期で判定します。
法人税基本通達2-2-12の債務確定3要件と見積りの未払費用が否認される場面
法人税法第22条第3項は、販売費・一般管理費のうち償却費以外のものは、期末までに債務が確定したものに限って損金に算入するとしています。その判定基準が法人税基本通達2-2-12で、次の3つをすべて満たすことを求めます。
- 期末までに、その費用に係る債務が成立していること
- 期末までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
- 期末までに、その金額を合理的に算定できること
借入金の利息と締め日後の給与は、役務を受け終えており、契約や給与規程から金額を計算できるため、3要件を満たします。否認されやすいのは、修繕や点検をまだ受けていないのに予定額を計上したものです。役務を受けていなければ2つ目の要件を欠き、そもそも未払費用ではなく引当金の領域になります。
未払賞与を損金にする通知と1か月以内の支払い:タックスアンサーNo.5350
決算をまたぐ賞与は、債務確定の一般原則ではなく、法人税法施行令第72条の3が定める時期で損金に算入します。タックスアンサーNo.5350(令和8年4月1日現在法令等)は、次の要件をすべて満たせば、支給額を通知した日の属する事業年度の損金になると説明しています。
- 支給額を各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人に通知していること(支給日に在職する者だけに払う定めがある場合の通知は該当しない)
- 通知した金額を、通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること
- 通知した日の属する事業年度に、その支給額を損金経理していること
この要件を満たす未払賞与は、確定した債務として未払費用(または未払金)で計上します。金額が見積りの段階なら賞与引当金で、税務上は損金になりません。両者の区別と仕訳は賞与引当金と未払賞与の区別で詳しく扱っています。
消費税は役務の提供を受けた日に課税仕入れ:消費税法基本通達11-3-1
消費税法基本通達11-3-1は、課税仕入れを行った日を「役務の提供を受けた日」としています。未払費用で計上した事業用の家賃や保守委託料は、支払いが翌期でも、役務を受けた当期の課税仕入れです。控除には適格請求書などの保存が要るため、決算で見積り計上した分は、請求書が届いた時点で金額と税率を照合してください。
一方、未払費用の代表である借入金の利息は非課税、給与は課税の対象外で、どちらも仕入税額控除に関係しません。未払費用の補助科目ごとに消費税区分を固定しておくと、利息や給与に誤って税額を付ける入力ミスを防げます。
未払費用を計上する会社と省く会社の分かれ目:重要性の原則と月次決算
未払費用は、発生したものをすべて計上しなければならないわけではありません。計上の手間と、決算数値への影響の大きさで線を引きます。
企業会計原則注解1の重要性の原則で計上を省ける未払費用と省けないもの
企業会計原則注解1は、重要性の原則の適用例として、前払費用・未収収益・未払費用・前受収益のうち重要性の乏しいものは経過勘定項目として処理しないことができるとしています。毎月ほぼ同額が発生し、1か月分を計上しなくても年間の費用総額がほとんど変わらないものが該当します。
実務の線引きは次のとおりです。電気・水道料金や通信費のように、検針日のずれが毎期同じで、金額も小さいものは計上を省いてかまいません。借入金利息と締め日後の給与は省きません。金額が大きいうえ、利払日が年2回だと決算期によって費用が数か月分ずれ、期間損益が大きく動くからです。
省く場合も、毎期同じ扱いにすることが前提です。ある期だけ計上を省くと、その期と翌期の利益が動き、税務調査で期ずれを指摘される原因になります。
月次決算で未払費用を毎月計上する会社と年1回の決算整理で足りる会社
月次で予算と実績を比べている会社は、未払費用を毎月計上してください。利払日が5月と11月の借入金なら、計上しない月は利息が0円、利払月だけ6か月分が載ります。これでは月次の営業利益が利払月だけ落ち込み、予実差異の説明に毎回時間を取られます。月次の締め手順は月次決算を5営業日で締める手順を参照してください。
年1回の決算だけを締め、銀行にも決算書しか出していない会社は、決算整理で年1回計上すれば足ります。月次の試算表を融資先に提出している会社は、月次で計上する側に入ります。
未払費用の計上を会計システムで自動化する契約台帳と請求書の突合
毎月の計上を手作業で続けると、利率の改定や締め日の変更を反映し忘れます。契約単位の台帳から仕訳を作る形にすると、計上と戻しの漏れが構造的に起きなくなります。
契約ごとに持たせる7項目と月末の計上仕訳・翌月初の戻し仕訳の自動生成
未払費用の台帳には、契約ごとに次の7項目を持たせます。
- 契約ID と取引先
- 費用科目と補助科目(支払利息・給料手当・支払手数料など)
- 計上方法(元本×利率の日割り、月額の日割り、前月実績)
- 計算の基礎となる元本・月額・利率
- 締め日・支払日・利払日
- 消費税区分(課税・非課税・対象外)
- 契約の開始日と終了日
月末になったら、台帳から「直近の支払日の翌日から月末までの経過日数×日額」を計算し、「費用/未払費用」を部門別に起票します。翌月1日には同額の逆仕訳を自動で起票し、支払時の仕訳は請求書や引落データから通常どおり入れる手順です。利息なら借入契約の利率変更を台帳に入れた時点で翌月の計上額が変わり、仕訳の計算をやり直す作業がなくなります。
Excel管理で足りる条件と会計システムに組み込む判断の分かれ目
Excelで足りるのは、未払費用の対象が借入1〜2本と給与だけで、年1回の決算でしか計上しない会社です。年に1度、利息と給与の日割りを計算して手で仕訳を入れれば済みます。
次のいずれかに当てはまったら、会計システム側に台帳と自動起票を組み込む段階です。月次決算で毎月計上している、借入や委託契約が10本を超える、拠点や部門ごとに費用を配賦している、のどれかです。特に月次の場合、計上と戻しで毎月2本ずつ仕訳が増え、Excelから転記する作業がそのまま締めの遅れになります。
既存の会計ソフトに台帳機能が無い場合は、契約台帳を別に持ち、仕訳をAPIやCSVで連携する構成が現実的です。台帳の設計から連携までは会計・経理システム開発で個別に対応しています。
未払費用のよくある質問:未払金との使い分け・消費税・表示区分
未払費用について、検索の多い質問に短く答えます。
未払費用は負債ですか、それとも費用ですか?
負債です。貸借対照表の流動負債に表示し、財務諸表等規則第48条も未払費用を流動負債に属するものとしています。名前に「費用」と付きますが、費用そのものは「支払利息」「給料手当」などの科目で損益計算書に載ります。未払費用は、その費用のうち支払いが済んでいない分を、翌期に払う義務として負債の側に置く科目です。翌期首の再振替と翌期の支払いで残高は消えます。
請求書が届いている場合は未払費用と未払金のどちらを使いますか?
期末までに請求書が届き、支払額が確定しているなら未払金を使うのが一般的です。未払費用は、継続的な契約のうち期末時点で締めや請求が済んでおらず、時間の経過で発生した分を計上する科目です。たとえば3月分の保守料の請求書が3月中に届いていれば未払金、4月に届く予定で金額を契約から計算するなら未払費用になります。どちらも流動負債なので、会社として基準を決め、毎期そろえることを優先してください。
未払費用を計上した外注費の消費税はいつ控除しますか?
役務の提供を受けた日の属する課税期間に控除します。消費税法基本通達11-3-1が課税仕入れの日を役務の提供を受けた日としているため、支払いや請求書の到着が翌期でも、当期に受けた外注サービスは当期の課税仕入れです。控除には適格請求書などの保存が必要なので、申告までに請求書を受け取り、見積り計上した金額と照合しておきます。借入金の利息は非課税、給与は課税対象外のため控除の対象になりません。
未払法人税等や未払消費税は未払費用に含まれますか?
含まれません。財務諸表等規則は、未払法人税等を未払費用とは別の科目として流動負債に掲げています。未払法人税等は決算で確定した法人税・住民税・事業税のうち未納の額、未払消費税は税抜経理で仮受消費税と仮払消費税を相殺した後の納付額で、いずれも継続的な役務の対価ではありません。決算書でも未払費用と分けて表示し、補助科目に混ぜないでください。
再振替仕訳をしなくても未払費用を処理できますか?
できます。支払時に、前期末の未払費用を直接取り崩す方法です。借入金利息の例なら、5月31日に「未払費用 240,000/支払利息 120,000/普通預金 360,000」と入れれば、翌期の利息は12万円になり、再振替と同じ結果です。ただし支払いのたびに前期末の残高を確かめる必要があり、担当者の交代で漏れやすくなります。対象が多い会社や月次で計上する会社は、翌期首の再振替を標準にしてください。
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