仮払金とは、出張の交通費や取引先との会食費のように、使い道や金額が確定する前に会社が社員へ概算で渡しておくお金を記録する勘定科目です。この記事では、仮払金が費用ではなく資産として扱われる理由、立替金・前払金・前払費用との違い、10万円の出張仮払いで残金を返してもらう場合と追加で払う場合の仕訳例を整理しました。後半では、消費税をいつ計上するか、精算しないまま渡し切りにした旅費が給与として課税される条件、決算で残った仮払金の処理と役員への仮払金の注意点、そして経費精算システムで仮払金の残高を残さない運用まで扱います。
まとめ:仮払金は精算までの仮の資産、期限と残高一覧で決算前に必ず消す
仮払金は、渡した時点では「何に使ったか」が決まっていないため、費用ではなく資産の勘定科目で記録します。精算書と領収書を受け取った時点で、旅費交通費や交際費など本来の費用科目へ振り替え、仮払金の残高をゼロに戻します。
運用で守ることは2つです。1つは、精算期限を規程に書き、期限を過ぎた仮払金を一覧で追えるようにすること。もう1つは、決算日までに全件を精算し、仮払金を貸借対照表に残さないことです。残高が残ると、内訳書に相手先ごとの金額を書く手間が生じ、役員への仮払金なら貸付金や役員給与と見られるおそれも出てきます。
仮払いの件数が月に数件なら、Excelの管理台帳で足ります。月に数十件を超え、精算漏れの督促が毎月発生している会社は、仮払申請と精算を経費精算システムで紐付けるか、仮払制度そのものをやめて事後精算と法人カードへ移るほうが手間が減ります。
仮払金の意味と勘定科目、使い道と金額が決まる前に渡すお金の扱い
仮払金は「とりあえず渡しておく」お金の記録です。どんな場面で使い、帳簿と決算書でどう扱うかを先に押さえます。
仮払金とは使途と金額が未確定の前渡し、出張旅費や接待費で使う典型場面
仮払金を使うのは、支払いが発生することは分かっているのに、正確な金額が後でしか確定しない場面です。代表例は出張です。新幹線の運賃や宿泊費、現地での交通費は出張が終わるまで確定しませんが、社員に全額を立て替えさせると負担が大きくなります。そこで会社が10万円などの概算額を先に渡し、帰ってから精算します。
ほかにも、取引先との会食費、展示会の現地で買う備品、引っ越しを伴う転勤の費用などで使われます。共通するのは、お金が会社の外へ出たのに、どの費用科目に計上するかを決める材料(領収書と使い道)がまだ手元にないことです。
仮払金は資産で費用ではない、貸借対照表の流動資産に載る理由と表示
仮払金は資産の勘定科目です。社員に渡したお金は、精算されるまでは「使った報告を受けるか、残金を返してもらう権利」として会社に残っているからです。増えたら借方、減ったら貸方に記録します。
決算書では、短期間で精算される前提なので流動資産の区分に載ります。金額が小さければ「その他」にまとめて表示されることも多い科目です。帳簿の勘定科目と決算書の表示科目の関係は、勘定科目の5分類と補助科目・表示科目の違いを整理した記事で詳しく扱っています。
注意したいのは、仮払金のまま期末を迎えると、実際には使い終わった費用が資産として残り、その期の利益が実態より大きく見えることです。精算を急ぐ理由はここにあります。
立替金・前払金・前払費用との違い、誰が負担し何が確定済みかで分ける
仮払金と名前や使い方が似た科目は3つあります。違いは「最終的に誰が負担するか」と「支払いの時点で何が確定しているか」で見分けます。
| 勘定科目 | 最終的な負担者 | 支払時点で確定していること | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 会社 | 金額も使い道も未確定 | 出張前の概算払い |
| 立替金 | 取引先・社員など他人 | 金額は確定 | 社員の私的な費用を会社が一時負担 |
| 前払金(前渡金) | 会社 | 取引先と品目が確定 | 商品の発注時に払う手付金 |
| 前払費用 | 会社 | 契約と期間が確定 | 1年分の保険料や家賃の先払い |
実務で取り違えやすいのは立替金です。立替金は本来ほかの誰かが払うべきお金を会社が一時的に出したもので、後で相手から回収します。仮払金は会社自身の費用になる見込みのお金なので、精算すれば会社の費用になります。立替金の仕訳と回収の管理は、別の記事で扱う予定です。反対に、給与から天引きした住民税や社会保険料のように会社が一時的に預かるお金は、資産の仮払金ではなく負債の預り金で処理します。預り金の仕訳と納付期限は給与天引きの預り金の仕訳と納付期限を整理した記事で解説しています。
仮払金の仕訳例、10万円の出張仮払いで残金返却と追加支給の3場面
ここでは、営業部の社員に出張費として10万円を普通預金から振り込んだ例で仕訳を示します。精算の結果が「余った場合」と「足りなかった場合」の両方を扱います。
支給時と精算時の仕訳、残金2万円の返却と1万5,000円の追加支給
11月5日に10万円を振り込んだときは、借方に仮払金、貸方に普通預金を10万円ずつ計上します。精算の仕訳は、実費が仮払額より少ないか多いかで次のように変わります。
| 場面 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 支給時(11月5日) | 仮払金 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |
| 精算・残金返却(実費8万円) | 旅費交通費 | 80,000 | 仮払金 | 100,000 |
| 現金 | 20,000 | |||
| 精算・追加支給(実費11万5,000円) | 旅費交通費 | 95,000 | 仮払金 | 100,000 |
| 交際費 | 20,000 | 普通預金 | 15,000 |
残金返却の例では、使った8万円を旅費交通費に振り替え、返してもらった2万円を現金で受け入れて、仮払金10万円を消します。追加支給の例では、宿泊と交通の9万5,000円と会食の2万円を科目ごとに分け、足りなかった1万5,000円を振り込みます。どちらも精算の仕訳で仮払金の残高がゼロに戻ることを確かめてください。ゼロにならなければ、記帳か精算書のどちらかに誤りがあります。
消費税は精算時に課税仕入れ、仮払いの時点で税額を計上しない根拠
仮払いの仕訳には消費税を付けません。消費税法基本通達11-3-1は、仕入税額控除の基準になる「課税仕入れを行った日」を、資産の譲受けや役務の提供を受けた日と定めています。社員に現金を渡しただけの時点では、新幹線にもホテルにもまだ乗っておらず泊まってもいないので、課税仕入れは発生していません。
消費税を計上するのは、精算で旅費交通費や交際費に振り替えるときです。税抜経理の会社なら、このときに仮払消費税等を借方に立てます。仮払金を支給した時点で税額を計上していると、精算月がずれた場合に課税期間をまたいで控除がずれるので、経費精算システムや会計ソフトの税区分は「仮払金=対象外」に設定しておくのが安全です。
小口現金から仮払いした場合の貸方科目、仮払金と小口現金の照合の分担
金額が数千円から数万円の仮払いを、部署の小口現金から渡す会社もあります。この場合の仕訳は、借方に仮払金、貸方に小口現金です。精算で残金が戻ったら、その分を小口現金に戻して記録します。
気をつけたいのは月末の照合です。小口現金から仮払いした分は金庫から現金が減っているので、金庫の現金と領収書だけを足しても前渡し額に届きません。仮払い中の金額を照合表に1行設け、「現金+領収書+仮払い中」で前渡し額と一致するかを見ます。小口現金の補充方法と照合の手順は、定額資金前渡制と現金過不足の処理を扱った小口現金の記事にまとめています。
仮払金の精算の流れ、申請から支給・精算・振替までの工程と期限の決め方
仮払金が残高として残るかどうかは、仕訳ではなく精算の運用で決まります。工程と期限、やってはいけない運用を順に示します。
仮払申請から精算までの5工程と、各工程で担当者が残す記録の内容
一般的な仮払いは、次の5工程で進みます。
- 社員が仮払申請書に用途・概算額・精算予定日を書いて提出する
- 上長が用途と金額を承認する
- 経理が仮払金を支給し、仮払金の仕訳を起こす
- 社員が用途の完了後に精算書と領収書を提出する
- 経理が費用科目へ振り替え、差額の返金または追加支給を処理する
記録で外せないのは、1の申請番号を5の精算まで引き継ぐことです。申請と精算が別々の紙やファイルで管理されていると、どの仮払いが未精算なのかを経理が突き合わせられません。出張に限った申請から精算までの流れと日当の扱いは仮払と事後精算の流れを整理した旅費精算の記事で、承認経路をワークフローに組む設計は出張申請・仮払・事後精算の承認経路を扱った記事で解説しています。
精算期限は用途の完了から1週間、規程に書く期限と督促を始める基準
仮払金の精算期限は法令では決まっていません。会社が経理規程か旅費規程で定めます。目安は、出張なら帰着日から1週間、会食や備品購入なら支払日から1週間です。月末をまたぐと月次決算の締めに間に合わなくなるため、遅くとも翌月の第3営業日までには精算を終える線を引いてください。
規程には期限と合わせて、期限を過ぎたときの扱いも書きます。たとえば「期限から1週間を過ぎた仮払金は上長に通知し、1か月を過ぎたら次の仮払いを受け付けない」と決めておくと、督促が経理担当者の個人的な声かけに頼らなくなります。
仮払いを渡し切りにしてはいけない理由、精算しない旅費が給与課税される条件
「毎回の精算が面倒なので、出張1回につき一定額を渡し切りにする」という運用は避けてください。旅費が非課税になる範囲を定めた所得税基本通達9-3は、その旅行に通常必要とされる費用に充てられると認められる範囲の金品だけを非課税としています。続く9-4は、その範囲を超えて支給した部分を、出張なら給与所得の収入に加えると定めています。
精算しない渡し切りは、実際にかかった費用との差額が説明できません。差額が通常必要な範囲を超えていると判断されれば、その分は給与として源泉徴収の対象になります。定額で支給したいなら、仮払金ではなく旅費規程で日当や宿泊費の定額を定め、役員と社員を通じて同じ基準で支給する形に切り替えるのが筋です。
決算で仮払金の残高を残さない処理、未精算の確定と役員への仮払金の扱い
期中に精算漏れがあっても、決算日までに解消すれば決算書には影響しません。ここでは期末の作業と、残ってしまった場合の扱いを示します。
期末に未精算の仮払金を棚卸しする手順、内容が判明したものの振り替え
決算の前に、仮払金の補助元帳から期末日時点の残高を相手先ごとに抜き出します。1件ずつ本人に確認し、次の3つに振り分けてください。
- 用途が完了していて精算書が出ていないもの:精算書と領収書を提出させ、期末日付で費用科目に振り替える
- 用途がまだ完了していないもの(翌期の出張の前渡しなど):仮払金のまま残し、翌期に精算する
- 使途の説明がつかないもの:本人から返金を受けるか、個別に扱いを判断する
1つ目の振り替えは、期末に行う決算整理仕訳の1つとして処理します。ほかの項目と合わせた手順は決算整理仕訳の主な9項目を一覧にした記事で確認できる内容です。精算書と領収書は法人税法上の帳簿書類として、国税庁のNo.5930 帳簿書類等の保存期間が示すとおり、確定申告書の提出期限の翌日から7年保存します。
決算後も残る仮払金と勘定科目内訳明細書、相手先ごとの残高と摘要の記載
期末に仮払金の残高が残ると、法人税の申告で提出する勘定科目内訳明細書のうち「仮払金(前渡金)の内訳書」に、相手先ごとの期末残高を書くことになります。国税庁の勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化の資料では、この内訳書の「取引の内容」欄が「摘要」欄に変わり、自由記載になったと説明されています。
自由記載とはいえ、摘要が空欄のまま社員や役員の名前と金額だけが並ぶ内訳書は、税務調査で中身を尋ねられやすい書類です。翌期の出張の前渡しのように理由が説明できる残高だけを残し、摘要に用途と精算予定時期を書ける状態にしてから申告を迎えてください。
役員への仮払金が長く残る危険、貸付金や役員給与と扱われる場合
中小企業で最も問題になりやすいのが、社長や役員への仮払金が何期も残り続けるケースです。使途の説明がつかない役員への仮払金は、会社から役員への貸付金と扱われることがあります。貸付金なら、役員から利息を受け取っていない分が問題になります。
返済の見込みもないと判断されれば、役員への給与として扱われるおそれがあります。法人税法第34条は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも当たらない役員給与は、損金に算入しないという定めです。臨時に渡したお金が給与とされれば、会社は損金にできず、役員側では源泉所得税の問題が残ります。役員への仮払いは社員と同じ申請・精算の手順に乗せ、期末に1円も残さないことを原則にしてください。
仮払金の管理を経費精算・会計システムで仕組み化する判断と移行の範囲
仮払金の残高を残さない運用は、件数が少ないうちは人の注意で回ります。件数が増えたときに、どこで仕組みに切り替えるかを条件で示します。
Excelの仮払管理台帳で回る条件、月の仮払件数が10件程度までの会社
月の仮払いが10件程度までで、仮払いを受けるのが決まった数人に限られるなら、Excelの管理台帳で十分です。列は、申請番号、申請日、氏名、用途、仮払額、支給日、精算期限、精算日、実費、差額の10列で足ります。
運用のコツは、月末に台帳の「精算日が空欄の行」の合計と、会計ソフトの仮払金の残高が一致するかを毎月確かめることです。一致しない月があれば、台帳への記入漏れか、仮払金を通さずに直接費用で計上した仕訳が混ざっています。この照合を毎月続けられる規模なら、システムを入れる理由はまだありません。
経費精算システムで仮払申請と精算を紐付ける条件、未精算アラートと残高一覧
次のどれかに当てはまる会社は、台帳をやめて経費精算システムで仮払いを管理してください。
- 月の仮払いが30件を超え、台帳と会計の残高照合に半日以上かかる
- 拠点や部署ごとに仮払いを出しており、経理が全件を把握できない
- 精算期限を過ぎた仮払金の督促が毎月10件以上発生している
経費精算システムでは、仮払申請を承認するとその番号が精算書に引き継がれ、精算されるまで「未精算」の一覧に残ります。期限を過ぎた申請者と上長へ自動で通知を出し、未精算のまま次の仮払申請を出せないように制御できる製品も選択肢です。出張や立替など精算の型ごとに向くシステムのタイプは、精算パターン別に推奨タイプを決める経費精算システムの記事で選び分けています。
仮払制度をやめて事後精算と法人カードへ移る判断、仮払いを残す業務
仮払金の管理そのものを減らす方法もあります。出張の交通費と宿泊費を法人カードや出張手配サービスの会社請求にし、残りを社員の立替と事後精算にすれば、仮払いを出す場面はほとんどなくなります。仮払金の残高照合も督促も不要です。法人カード連携や自動仕訳で精算の工数を減らす手段は、経費精算を効率化する4つの手段をまとめた記事で比較しています。
ただし、仮払いを残すべき業務もあります。海外出張で現地通貨の現金が必要な場合、社員の立替額が1回で10万円を超える長期出張、法人カードを持たせられないパートや協力会社の作業員に経費を預ける場合です。これらは仮払いを残し、精算の紐付けだけをシステムで管理する運用です。仮払申請と精算を既存の会計システムの仕訳に自動でつなぐ仕組みや、部署ごとの未精算残高の一覧を自社の運用に合わせて組みたい場合は、当社の会計・経理システム開発でご相談いただけます。精算フローの見直しから、経費精算と会計の連携の開発まで請け負っています。
よくある質問
仮払金について寄せられる質問を5つ取り上げます。
仮払金と仮払消費税の違いは何ですか?
名前は似ていますが、まったく別の科目です。仮払金は、使い道が確定する前に社員などへ渡したお金を資産の科目として記録します。仮払消費税(仮払消費税等)は、税抜経理の会社が、仕入れや経費の支払いに含まれる消費税額を分けて記録する科目です。決算で仮受消費税と相殺し、差額を未払消費税として納めます。出張の仮払いでは、精算で費用に振り替えるときに初めて仮払消費税が出てきます。
仮払金と仮受金の違いは何ですか?
お金の向きが逆です。仮払金は会社が先にお金を出し、内容が確定していない状態を資産として記録します。仮受金は、会社に入金があったのに、誰から何の代金として受け取ったかが確定していない状態を記録する負債です。たとえば、取引先名の分からない振込が口座に入ったときに仮受金で受けておき、内容が分かった時点で売掛金などへ振り替えます。どちらも決算までに解消すべき仮の科目である点は共通しています。
仮払金の残高がマイナスになるのはどんなときですか?
資産の科目なので、本来マイナスにはなりません。マイナスになっていれば記帳の誤りです。よくある原因は、仮払いの支給を仮払金ではなく旅費交通費などで直接計上したのに、精算時に仮払金を貸方に立てたケースです。精算の差額を二重に計上した場合や、別の社員の仮払金を消した場合にも起こります。補助科目で相手先ごとに残高を見れば、どの精算で誤ったかを特定しやすくなります。
仮払金の精算で領収書がない場合はどうしますか?
電車やバスの運賃のように領収書が出ない支払いは、社員に日付・区間・金額・用途を書いた出金伝票や精算書を作らせ、それを証憑として保存します。領収書をなくした場合も同じく、支払先・日付・金額・用途を記録し、上長の確認を受けてから精算します。ただし、出金伝票で処理できる範囲は社内規程で金額の上限を決めておくべきです。上限を超える支払いで領収書がないものを精算すると、使途の説明がつかない支出として扱われるおそれがあります。
個人事業主も仮払金の勘定科目を使いますか?
事業主本人が支払うだけなら使う場面はありません。事業用の現金や口座から払い、その場で費用科目に計上すれば足ります。従業員を雇っていて、出張費などを事前に渡す場合は、法人と同じく仮払金で記録し、精算時に費用へ振り替えます。事業主本人が事業用の口座から私用のお金を引き出した場合は仮払金ではなく事業主貸で処理する点を取り違えないようにしてください。
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