部門別原価計算は、費目別計算で把握した原価要素を原価部門ごとに分類・集計する手続です。本記事では、製造間接費を部門別に集計して製品へ配賦する例を扱います。原価計算基準では一五〜一八に定めがあり、費目別計算・製品別計算にはさまれた「第二次の計算段階」に位置づけられています(出典:企業会計審議会「原価計算基準」(企業会計基準委員会掲載))。
この記事では、5部門の工場という1つの設例を、第1次集計から製品への配賦まで同じ数字で通します。直接配賦法・階梯式配賦法・相互配賦法の結果も同じデータで並べるため、どの選択が製品原価をどれだけ動かすのかを数値で比べられます。簿記検定で問われる部門費振替表の書き方と、製造間接費から仕掛品までの仕訳も同じ数字で示します。
まとめ:部門別原価計算の要点
- 部門別計算は、費目別計算で把握した原価要素を原価部門別に分類集計する手続で、原価計算の第二次の計算段階です(基準一五)。
- 原価部門は製造部門と補助部門に分け、補助部門はさらに補助経営部門(動力部・修繕部など)と工場管理部門(材料部・工場事務部など)に分けます(一六)。
- 第1次集計では、部門で発生したと直接認識できる部門個別費は賦課し、部門共通費は配賦基準で配賦します。適当な配賦基準が得がたい工場全般の費用は一般費として補助部門費扱いにできます(一七)。
- 第2次集計では、補助部門費を直接配賦法・階梯式配賦法・相互配賦法などで製造部門に配賦します(一八(二))。設例では方式の違いによる製造部門費の差は約21千円で、連立方程式法の部門費に対して切削部は約0.35%、組立部は約0.51%でした。
- この設例では、補助部門費の配賦方式の違いより、部門別の配賦基準を使うか工場一括の基準を使うかの違いが製品への配賦額を大きく動かしました。工場全体の一括配賦率で計算すると、製品Aへの製造間接費配賦額が部門別計算より約39%小さく出ました。
- 部門費振替表は、補助部門費を製造部門へ振り替える過程を1枚にまとめた表です。仕訳は「製造間接費→各部門費」「補助部門費→製造部門費」「製造部門費→仕掛品」の3段階で、設例の直接配賦法では切削部費5,906.67千円・組立部費4,093.33千円が仕掛品へ振り替わります。
- 「部門費配分表」「部門費振替表」「単一基準配賦法」「複数基準配賦法」は、いずれも原価計算基準の条文には出てこない教科書・検定の用語です。
原価計算の3段階と部門別計算の位置づけ(基準一五)
原価計算基準は、実際原価の計算を費目別計算・部門別計算・製品別計算の順に進めます。一五は部門別計算を「費目別計算においては握された原価要素を、原価部門別に分類集計する手続」と定義し、「原価計算における第二次の計算段階である」としています。
部門別計算は、個別原価計算や総合原価計算と並ぶ別の計算方式ではありません。どちらの方式でも、製品別計算の手前で間接費を部門ごとに集める段階として入ります。個別原価計算については、三三(一)が「個別原価計算における間接費は、原則として部門間接費として各指図書に配賦する」と定めており、部門を設けない工場全体一括の配賦は原則から外れた簡便な運用になります。
部門に集める原価要素の範囲は一律ではありません。一八(一)は、個別原価計算では製造間接費のほか直接労務費も製造部門に集計することがあり、総合原価計算ではすべての製造原価要素又は加工費を製造部門に集計することがあると例示しています。
原価部門の設定:製造部門と補助部門の区分(一六)
一六は、原価部門を「原価の発生を機能別、責任区分別に管理するとともに、製品原価の計算を正確にするために、原価要素を分類集計する計算組織上の区分」と定めます。組織図上の部署と一致させる必要はなく、配賦基準のデータが取れる単位で切るのが実務上の前提になります。
| 区分 | 内容 | 基準の例示 |
|---|---|---|
| 製造部門 | 直接製造作業を行う部門 | 鋳造・鍛造・機械加工・組立 |
| 補助経営部門 | 製品の生産に直接関与せず用役を提供 | 動力部・修繕部・運搬部・工具製作部・検査部 |
| 工場管理部門 | 管理的機能を行う部門 | 材料部・労務部・企画部・試験研究部・工場事務部 |
区分の判断で迷いやすいのは次の3点です。部門設定は一六、細分した単位への集計範囲は一八(三)に定めがあります。
- 副産物の加工や包装品の製造を行う副経営は、製造部門として扱います。
- 工具製作・修繕・動力などの補助経営部門が相当の規模になった場合は、独立の経営単位とし、計算上は製造部門として扱います。
- 製造部門は、必要があれば機械設備の種類や作業区分によって小工程・作業単位に細分します。細分した単位に集計するのは、その単位で管理可能な原価要素又は直接労務費だけで、それ以外は共通費・他部門配賦費とします(一八(三))。
第1次集計:部門個別費の賦課と部門共通費の配賦(一七・一八(一))
第1次集計では、原価要素を各製造部門と補助部門に割り当てます。一七は、その部門で発生したことが直接的に認識できるかどうかで、部門個別費と部門共通費に分けるよう定めています。
部門共通費の配賦基準の例
部門個別費は発生額をそのまま当該部門に賦課(直課ともいいます)し、部門共通費は適当な配賦基準で関係部門に配賦します。基準は具体的な配賦基準を列挙していないため、費用の発生と連動する物量を選びます。教科書や実務でよく使われる組み合わせは次のとおりです。
| 部門共通費 | 配賦基準の例 |
|---|---|
| 建物減価償却費・固定資産税・火災保険料 | 占有床面積 |
| 福利厚生費・厚生施設費 | 従業員数 |
| 電力料(部門別メーター未設置分) | 電力消費量・機械馬力×運転時間 |
| 機械保険料 | 機械帳簿価額 |
部門共通費のうち、工場全般に関して発生し適当な配賦基準が得がたいものは、一般費として補助部門費として処理できます(一七)。一般費は第1次集計で補助部門費に含め、第2次集計で他の補助部門費と同じく製造部門へ配賦します。
設例:5部門の工場の第1次集計
以下、製造部門2つ(切削部・組立部)と補助部門3つ(動力部・修繕部・工場事務部)を持つ工場で、月間の製造間接費10,000千円を集計します。部門個別費は計7,000千円、部門共通費は建物減価償却費2,000千円(床面積で配賦)と福利厚生費1,000千円(従業員数で配賦)です。
| 項目(千円) | 切削部 | 組立部 | 動力部 | 修繕部 | 工場事務部 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 部門個別費 | 3,000 | 2,000 | 900 | 600 | 500 | 7,000 |
| 床面積(m²) | 400 | 300 | 100 | 100 | 100 | 1,000 |
| 建物減価償却費 | 800 | 600 | 200 | 200 | 200 | 2,000 |
| 従業員数(人) | 20 | 20 | 4 | 4 | 2 | 50 |
| 福利厚生費 | 400 | 400 | 80 | 80 | 40 | 1,000 |
| 第1次集計額 | 4,200 | 3,000 | 1,180 | 880 | 740 | 10,000 |
教科書ではこの集計表を「部門費配分表」と呼びますが、原価計算基準にこの語はありません。様式は自由なので、社内では部門別の列と費目別の行が追えれば足ります。表計算ソフトで集計表を組む場合の列と計算式の設計はエクセルで原価計算する方法|原価率・売上原価の計算式と崩れない表の設計で扱っています。なお一八(一)は、必要があれば各部門の原価要素を変動費と固定費、又は管理可能費と管理不能費に区分するとしています。後述の複数基準配賦法や部門別の予算管理を行うなら、この段階で固定・変動を分けておきます。
第2次集計:補助部門費の製造部門への配賦(一八(二))
補助部門は製品を直接加工しないため、補助部門に集めた原価は製造部門へ配賦し直します。一八(二)は方法として「直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦法等」を挙げ、適当な配賦基準によって各製造部門に配賦し、製造部門費を計算すると定めています。方法は3つに限定されておらず、「等」が付いています。
設例の用役提供割合
設例の3補助部門は、次の量の用役を他部門に提供しています。工場事務部は他部門から用役を受けていません。
| 提供元(配賦基準) | 切削部 | 組立部 | 動力部 | 修繕部 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 動力部(kWh) | 600 | 300 | - | 100 | 1,000 |
| 修繕部(修繕時間) | 50 | 30 | 20 | - | 100 |
| 工場事務部(従業員数) | 20 | 20 | 4 | 4 | 48 |
補助部門費の配賦3方式・4計算の手順と結果
直接配賦法は、補助部門どうしの用役授受を無視し、製造部門の受入量の比だけで配賦します。動力部1,180千円は切削部と組立部に600:300で配賦するため、修繕部への100kWhは配賦比率の分母から除かれますが、動力部費1,180千円の全額は製造部門に配賦されます。
階梯式配賦法は、補助部門に順位を付け、上位の部門から下位の補助部門と製造部門へ順に配賦します。下位から上位への逆流は無視します。設例では他の補助部門への用役提供先が多い工場事務部を1位、提供先が同数の動力部と修繕部は第1次集計額が大きい動力部を2位としました。順位の付け方の判断基準は配賦とは?読み方・按分との違いと配賦基準の選び方、階梯式配賦法の計算例で詳しく扱っています。
相互配賦法には2通りの計算があります。簡便法は、第1次配賦で補助部門間の用役授受も含めて全部門へ配賦し、第2次配賦で補助部門が受け取った分だけを直接配賦法で製造部門へ配賦します。連立方程式法は、補助部門どうしのやり取りをすべて反映した各補助部門の配賦総額を方程式で求めます。
| 方式(千円) | 切削部 | 組立部 | 連立方程式法との差(切削部) |
|---|---|---|---|
| 直接配賦法 | 5,907 | 4,093 | -21 |
| 階梯式配賦法 | 5,919 | 4,081 | -9 |
| 相互配賦法(簡便法) | 5,927 | 4,073 | -1 |
| 相互配賦法(連立方程式法) | 5,928 | 4,072 | 0 |
連立方程式法では、動力部の配賦総額をX、修繕部をY、工場事務部をZとして次の3式を解きます。
X = 1,180 + 0.2 × Y + (4 / 48) × Z ← 動力部:修繕部の20%と工場事務部の4/48を受け入れる
Y = 880 + 0.1 × X + (4 / 48) × Z ← 修繕部:動力部の10%と工場事務部の4/48を受け入れる
Z = 740 ← 工場事務部:他部門から用役を受けない
解:X = 1,430 / 0.98 = 1,459.18 Y = 1,087.59 Z = 740
X・Y・Zを求めたら、それぞれを自部門以外の全部門へ用役の比で配賦し、製造部門の受入額を合計します。補助部門間の用役授受が複雑で手計算の負担が大きい場合は、表計算ソフトで係数行列の逆行列を掛けるか(Excelなら MINVERSE と MMULT)、原価管理システムの配賦機能に任せます。
部門費振替表の書き方:直接配賦法と相互配賦法(簡便法)
部門費振替表は、第1次集計額を1行目に置き、補助部門費を製造部門へ振り替える行を足して、最終行で製造部門費を出す表です。日商簿記2級の範囲は直接配賦法と相互配賦法(簡便法)なので、設例の数字でこの2つを示します。金額は千円で、端数処理前の値で計算し、表示時に小数第3位を四捨五入しています。そのため、表示額を足した結果と合計欄には0.01千円の差が生じる箇所があります(簡便法の切削部の列、第2次配賦の動力部費の行など)。
| 直接配賦法(千円) | 配賦基準 | 合計 | 切削部 | 組立部 | 動力部 | 修繕部 | 工場事務部 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 部門費 | 10,000.00 | 4,200.00 | 3,000.00 | 1,180.00 | 880.00 | 740.00 | |
| 動力部費 | kWh 600:300 | 1,180.00 | 786.67 | 393.33 | |||
| 修繕部費 | 修繕時間 50:30 | 880.00 | 550.00 | 330.00 | |||
| 工場事務部費 | 従業員数 20:20 | 740.00 | 370.00 | 370.00 | |||
| 製造部門費 | 10,000.00 | 5,906.67 | 4,093.33 |
直接配賦法の振替表では、補助部門の列は1行目の部門費だけが埋まり、配賦の行は製造部門の列にしか金額が入りません。
| 相互配賦法・簡便法(千円) | 合計 | 切削部 | 組立部 | 動力部 | 修繕部 | 工場事務部 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 部門費 | 10,000.00 | 4,200.00 | 3,000.00 | 1,180.00 | 880.00 | 740.00 |
| 第1次配賦 動力部費 | 1,180.00 | 708.00 | 354.00 | 118.00 | ||
| 第1次配賦 修繕部費 | 880.00 | 440.00 | 264.00 | 176.00 | ||
| 第1次配賦 工場事務部費 | 740.00 | 308.33 | 308.33 | 61.67 | 61.67 | |
| 第2次配賦の対象 | 417.33 | 237.67 | 179.67 | |||
| 第2次配賦 動力部費 | 237.67 | 158.44 | 79.22 | |||
| 第2次配賦 修繕部費 | 179.67 | 112.29 | 67.38 | |||
| 製造部門費 | 10,000.00 | 5,927.07 | 4,072.93 |
簡便法の第1次配賦は、他の補助部門への提供分も含めて提供先の列に金額を入れ、自部門の列は空けます。動力部に戻ってきた237.67千円と修繕部に戻ってきた179.67千円だけを、第2次配賦で直接配賦法と同じ比率で製造部門へ配賦します。工場事務部は他部門から用役を受けないので、第2次配賦の行はありません。
単一基準配賦法と複数基準配賦法、実際配賦と予定配賦
ここまでの設例は、補助部門費を固定費・変動費の区別なく1つの基準で配賦する単一基準配賦法です。複数基準配賦法は、補助部門費を固定費と変動費に分け、固定費は関係部門がその補助部門の用役を消費する能力の割合で、変動費は実際に消費した割合で配賦します。固定費は補助部門の供給能力を維持するために、実際の供給量と無関係に発生するからです。用役を使わなかった月でも製造部門が設備を確保させた分の固定費を負担するため、補助部門の能力の確保を求めた責任が配賦額に反映されます。
補助部門費を実際発生額のまま配賦すると、動力部の無駄遣いや修繕部の段取りの悪さがそのまま製造部門の原価に流れ込み、製造部門の責任者は自分で管理できない数字で評価されます。補助部門費を予定配賦率で配賦すれば、実際発生額との差額は補助部門側に配賦差異として残り、責任の所在が分かれます。部門別計算を原価管理に使うなら、ここまで設計しておく必要があります。
一部の補助部門費は、必要があれば製造部門を経由せず直接に製品へ配賦できます(一八(二)後段)。個別原価計算でこの扱いをとる場合は、そのおのおのにつき適当な基準を定めて指図書へ配賦します(三三(七))。特定の製品だけが使う検査や金型保守などが該当します。
製造部門費の製品への配賦と部門別の予定配賦率
第2次集計が終わると、製造部門費を製品へ配賦します。部門ごとに配賦基準を変えられるのが部門別計算の要点です。設例では、機械加工が中心の切削部は機械運転時間、手作業が中心の組立部は直接作業時間を使います。
設例:製品A・Bへの配賦と工場一括配賦との比較
製品Aは切削部で機械を300時間使い組立部で100時間作業し、製品Bは切削部で機械を100時間使い組立部で300時間作業したとします。切削部の直接作業時間はA・Bとも100時間です。連立方程式法の製造部門費を使うと、配賦率は切削部が5,928千円÷400時間=14.82千円/時間、組立部が4,072千円÷400時間=10.18千円/時間になります。
| 計算方法(千円) | 製品A | 製品B |
|---|---|---|
| 部門別(直接配賦法) | 5,453 | 4,547 |
| 部門別(階梯式配賦法) | 5,460 | 4,540 |
| 部門別(連立方程式法) | 5,464 | 4,536 |
| 工場一括(直接作業時間600時間) | 3,333 | 6,667 |
工場全体の10,000千円を直接作業時間の合計600時間で割ると配賦率は約16.67千円/時間になり、直接作業時間が200時間しかない製品Aには3,333千円しか配賦されません。製品Aは機械を多く使い、機械の減価償却費や動力費が集まる切削部の負担が大きい製品です。この設例の一括配賦では、部門別配賦と比べて製品Aへの製造間接費配賦額が約39%少なく、製品Bへの配賦額が約47%多くなります。この配賦額をそのまま原価積上げ型の値付けに使うと、部門別配賦を使う場合よりAの価格を低く、Bの価格を高く設定する方向に働きます。
部門別の予定配賦率と操業度
個別原価計算では、間接費は原則として予定配賦率で各指図書に配賦します(三三(二))。三三(三)は、部門間接費の予定配賦率を各部門の間接費予定額(又は固定費予定額と変動費予定額)を同期間の当該部門の予定配賦基準で除して算定するとし、三三(五)は「操業度は、原則としてこれを各部門に区分して測定表示する」と定めています。切削部は機械運転時間、組立部は直接作業時間というように、部門ごとに操業度の物差しを変えてよいということです。予定配賦と実際発生額の差から生じる配賦差異の仕訳と期末処理は個別原価計算とは?受注生産の原価集計・仕訳と総合原価計算との違いで数値例を使って扱っています。
部門別計算の勘定連絡と仕訳:製造間接費から仕掛品まで
部門別計算を帳簿に載せるときは、製造部門と補助部門ごとに「切削部費」「動力部費」などの部門費勘定を設け、製造間接費勘定から順に振り替えます。設例を直接配賦法・実際配賦で仕訳すると次の3本になります(千円)。
① 第1次集計(製造間接費 → 各部門費)
(借)切削部費 4,200.00 (貸)製造間接費 10,000.00
組立部費 3,000.00
動力部費 1,180.00
修繕部費 880.00
工場事務部費 740.00
② 第2次集計(補助部門費 → 製造部門費・直接配賦法)
(借)切削部費 1,706.67 (貸)動力部費 1,180.00
組立部費 1,093.33 修繕部費 880.00
工場事務部費 740.00
③ 製品への配賦(製造部門費 → 仕掛品)
(借)仕掛品 10,000.00 (貸)切削部費 5,906.67
組立部費 4,093.33
②は部門費振替表の配賦行を写した仕訳で、切削部費の1,706.67千円は動力部費786.67千円・修繕部費550.00千円・工場事務部費370.00千円の合計です。③まで終えると、補助部門費の勘定も製造部門費の勘定も残高がゼロになります。
簿記2級の出題範囲には予定配賦も含まれるため、③を予定配賦率で処理する場合も確認します。その場合、③の金額は「部門別の予定配賦率×実際の配賦基準量」になり、②までで集計した実際の製造部門費との差を部門ごとの配賦差異(教科書では製造部門費配賦差異などの勘定)へ振り替えます。指図書への予定配賦の仕訳と配賦差異の期末処理は個別原価計算とは?受注生産の原価集計・仕訳と総合原価計算との違いで数値例を使って扱っています。
部門別計算のメリットと課題:部門区分と配賦方式の選び方
メリット:製品別の配賦額の精度と部門ごとの責任管理
一六が原価部門の目的に挙げるのは、原価の発生を機能別・責任区分別に管理することと、製品原価の計算を正確にすることの2つです。精度の面では、設例で部門別の配賦基準(切削部は機械運転時間、組立部は直接作業時間)を使うか、工場一括で直接作業時間を使うかで、製品Aへの製造間接費配賦額が2,131千円変わりました。この差は、部門を分けたことと配賦基準を変えたことの両方から生じています。
管理の面では、動力部費・修繕部費が部門ごとに集計されるので、補助部門の予算と実績を部門単位で比べられます。
効果が大きいのは、製品ごとに使う工程が大きく違う工場です。製品A・Bのように機械中心の製品と手作業中心の製品が混在する工場ほど、一括配賦のゆがみは大きくなります。製品ごとに工程の組み合わせが変わる多品種少量生産の工場は、この条件に当てはまりやすい業態です。
課題:配賦基準データの取得負担と細かすぎる部門設定
設例では、直接配賦法と連立方程式法の差は切削部で21千円、切削部費の0.4%未満でした。部門の切り方と配賦基準を先に決め、配賦方式はその後で試算して決める順番が手戻りを減らします。方式の差を判断する際は、補助部門間の用役授受の割合に加え、補助部門費の金額と製造部門への用役提供割合を確認します。設例で修繕部が動力部に提供していた修繕時間は全体の20%でした。この割合が大きい工場ほど、直接配賦法で無視される用役が増えます。相互配賦法との製品別配賦額の差が社内の許容範囲に収まれば、計算の複雑化より配賦基準のデータ取得を優先できます。
部門を細かく切りすぎる失敗もあります。避けるべきなのは次のような部門設定です。
- 配賦基準の実績データ(機械運転時間・kWh・修繕時間)を毎月取れない部門を作る。根拠の乏しい推測値を毎月使うと、部門を分けても配賦精度の改善を期待できません。
- 製造部門が1つという理由だけで、補助部門別の原価管理の必要性を判断する。全補助部門費を唯一の製造部門に集め、同じ基準で製品へ配賦する場合には方式差が製品別配賦額に現れませんが、補助部門別の予算管理には集計の意味があります。
- 担当体制に対して細かすぎる粒度にする。月次決算の締め日までに実績を集計できず、根拠を確認しないまま前月の配賦比率を流用する運用は避けます。
部門数や補助部門間の授受が増え、配賦基準の実績を複数の現場システムから手作業で集める運用では、収集・照合にかかる時間が月次決算の締め日を圧迫することがあります。配賦基準の取得元や配賦の順序が自社固有でパッケージの配賦機能に合わない場合は、原価管理システム開発で配賦ロジックを業務に合わせて組む方法もあります。部門別でも消えないゆがみ(段取り回数や設計変更の多さなど、時間と比例しない費用)が問題になる段階では、活動基準原価計算(ABC)が検討対象に入ります。原価計算の結果を原価低減や予算管理にどうつなげるかは原価管理とは?目的・進め方4ステップと差異分析からシステム化の判断まで解説で扱っています。
よくある質問
部門別原価計算とは簡単にいうと何ですか?
費目別計算で把握した原価要素を部門ごとに分類・集計する手続です。集計対象は製造間接費に限りません。原価計算基準一五では、費目別計算と製品別計算の間にある第二次の計算段階と位置づけられています。工場全体に共通の配賦率を使う場合と比べ、部門ごとの費用発生に合った配賦基準を選ぶことで、製品ごとの工程の使い方の違いを原価に反映できます。
補助部門費とは何ですか?
動力部・修繕部・運搬部・検査部などの補助経営部門と、材料部・労務部・工場事務部などの工場管理部門に集計された原価です(一六)。補助部門は製品を直接加工しないため、第2次集計で直接配賦法・階梯式配賦法・相互配賦法などにより製造部門へ配賦し直します(一八(二))。
直接配賦法と相互配賦法はどちらを使えばよいですか?
直接配賦法と相互配賦法を試算し、製品別配賦額の差が社内の許容範囲に収まるなら、直接配賦法を選べます。この記事の設例では、直接配賦法と連立方程式法との差は、連立方程式法の部門費に対して切削部で約0.35%、組立部で約0.51%でした。補助部門間のやり取りを無視した場合の製品別配賦額への影響が許容範囲を超える工場では、相互配賦法を選びます。
部門別計算は簿記検定の何級で出題されますか?
商工会議所の簿記検定試験出題区分表(2022年度適用版。2026年度試験まで適用され、2026年7月31日に確定した2027年度適用版でも工業簿記・原価計算の区分は変更なし)では、部門費計算のうち直接配賦法・相互配賦法(純粋の相互配賦法を除く簡便法)・実際配賦と予定配賦が2級、純粋の相互配賦法(連立方程式法)・階梯式配賦法・複数基準配賦法が1級に区分されています。受験年度の範囲は商工会議所の検定試験サイトで出題区分表を確認してください。
総合原価計算でも部門別計算を行いますか?
行います。原価計算基準一八(一)は、総合原価計算ではすべての製造原価要素又は加工費を製造部門に集計することがあると例示しています。工程別総合原価計算では、工程が製造部門の役割を果たします。