RFP(Request for Proposal)とは、システム開発やWebサイト構築などを外部へ発注する際に、発注側が「この課題をこう解決する提案をしてほしい」という要求をまとめてベンダーへ渡す文書で、日本語では提案依頼書と訳されます。読み方はそのまま「アールエフピー」です。この記事では、RFPという言葉の意味とビジネスでの使われ方、RFI・RFQとの位置関係、作成する目的とメリット、記載すべき項目、そのままなぞれる目次テンプレート、配布からベンダー選定までの流れを発注者視点で整理しました。あわせて、IPAや デジタル庁が公開している公的資料のどこをRFP作成で参照できるかも示します。そのうえで、どんな案件ならRFPを作り込むべきで、どんな案件なら簡易版で足りるのかという判断基準と、RFPを書いても失敗する典型パターンまで踏み込みます。
まとめ:RFP(提案依頼書)の意味と発注を成功させる使い方の要点
RFPは、発注側の課題・要求・条件を1つの文書に明文化し、複数のベンダーから同じ土俵で提案を受け取るための書類です。役割は大きく2つあります。1つは、各社の提案と見積もりを同一条件で比較できるようにし、ベンダー選定を価格だけでなく提案内容で判断できるようにすること。もう1つは、発注側の要求を作成の過程で棚卸しし、開発が始まってからの「言った・言わない」や手戻りを減らすことです。情報収集段階のRFI(情報提供依頼書)、見積依頼のRFQ(見積依頼書)とは目的が異なり、RFPはベンダー選定の中核に位置します。
実務でまず押さえるべきは、RFPの完成度がそのまま提案の質を決めるという因果関係です。背景・目的・現状の課題、依頼したい範囲、予算とスケジュール、契約条件を具体的に書くほど、各社の提案は比較しやすくなり、逆に曖昧なRFPからは曖昧な提案しか返ってきません。文書の骨格は本記事の目次テンプレート章にそのまま置いてあるので、白紙から考えずに章を埋める作り方ができます。契約形態や非機能の要求は、IPA(情報処理推進機構)が公開しているモデル契約や非機能要求グレードを下敷きにすると、独力で書くより抜けが減ります。
ただし、すべての発注でフル仕様のRFPが要るわけではなく、基幹システムの刷新や複数社コンペでは必須、数十万円規模の小規模改修では過剰というのが本記事の結論です。この線引きは本文の判断章で条件付きで言い切ります。ホームページ制作やサイトリニューアルの発注でRFPを書く場合は、記載項目もコンペの進め方も別の作法になるため、ホームページ制作のRFPの記載項目とコンペの進め方の解説もあわせて確認してください。
RFPとは何かという提案依頼書の意味とビジネスでの役割・位置づけ
まず言葉の定義と、誰がどんな場面で使う書類なのかを押さえます。混同されやすいRFI・RFQとの位置関係もここで整理します。
RFP(Request for Proposal)の定義と提案依頼書という日本語の意味
RFPはRequest for Proposalの頭文字で、直訳すると「提案の依頼」、定訳は提案依頼書です。発注側企業が、システム開発会社やSIerなどの受注候補に対して、自社の課題・実現したいこと・条件を提示し、それに対する解決策の提案と見積もりを求める文書を指します。ビジネス用語としてのRFPは、IT業界のシステム開発発注で使われる場面が最も多く、ほかに広告・Web制作・コンサルティングの委託先選定でも同じ意味で使われています。似た響きの言葉に提案書がありますが、方向が逆です。提案依頼書(RFP)は発注側からベンダーへ渡すもの、提案書はそれを受けてベンダーから発注側へ返ってくるものという関係になります。
システム開発の発注でRFPが使われる場面と作成する側・受け取る側
RFPを作成するのは発注側で、典型的には情報システム部門やDX推進部門、あるいは業務部門の発注担当者です。使われるのは、基幹システムの刷新、業務システムの新規開発、パッケージ・SaaSの導入、Webサイトのリニューアルなど、複数の候補会社から提案を受けて委託先を決める場面が中心になります。受け取ったベンダー側は、RFPの記載内容をもとに提案書と概算見積もりを作成し、プレゼンテーションで説明するのが通例です。1社との随意契約でもRFPを渡す意味はあります。要求が文書で残るため、口頭のやり取りだけで進めた場合に起きがちな認識のずれを、契約前の段階で検出できるからです。
RFI・RFQとの違いとベンダー選定プロセスでの位置関係の整理
RFPとセットで登場する書類に、RFI(Request for Information:情報提供依頼書)とRFQ(Request for Quotation:見積依頼書)があります。RFIは候補会社の実績・製品情報・サービス概要を広く集める一次選考用の書類で、RFPより前の段階で使うものです。RFQは仕様が確定した後に価格の見積もりだけを求める書類で、RFPより後、または仕様が固まっている調達で使われます。順番としてはRFI→RFP→RFQの流れが基本形です。3つの書類それぞれの記載内容と発行の流れはRFI・RFP・RFQの違いの解説で詳しく比較しているため、本記事ではRFPがベンダー選定の中核、RFIはその前捌き、RFQは価格確認という位置関係だけ押さえれば足ります。
RFP(提案依頼書)を作成する目的と発注側・ベンダー双方のメリット
RFPの作成には相応の工数がかかります。それでも作る価値がどこにあるのかを、選定・品質・社内整理の3つの面から見ていきます。
複数ベンダーの提案を同じ条件で比較できるようになる選定上の利点
RFPの最大の目的は、ベンダー選定の公平な物差しを作ることです。各社に同じ課題・同じ条件を提示するため、返ってくる提案書は前提が揃い、機能の実現方法・体制・金額を横並びで比較できます。RFPなしで各社と個別に会話しながら見積もりを集めると、A社は保守費込み、B社は開発費のみといった前提のずれが生じ、金額の大小だけでは判断できません。システム開発の見積もりの見方と相見積もりの比較でも扱っているとおり、比較が成立するかどうかは見積書の様式ではなく、依頼した条件が揃っているかで決まります。提示条件が揃っていれば、単価の安さではなく提案内容の質で選ぶ判断がしやすくなり、選定理由を社内の決裁者へ説明する根拠資料にもなるでしょう。コンペを実施する場合、RFPは事実上の競技ルールブックとして機能します。
要求の明文化による認識齟齬と手戻りの防止という開発品質への効果
2つ目の目的は、開発が始まってからのトラブル予防です。システム開発の紛争で繰り返し争点になるのは「その機能は依頼範囲に入っていたか」という認識のずれで、口頭ベースの発注ほどこのリスクが高い領域です。RFPに背景・課題・依頼範囲・前提条件を書き残しておけば、提案書・契約書と合わせて「何を頼んだか」の証跡が文書で残り、言った・言わないの水掛け論を避けられます。ベンダー側にとっても、要求が明文化されているほど見積もりの精度が上がり、想定外の追加要求を織り込むためのバッファを積む必要が減るため、結果として発注側の金額にも跳ね返ります。要求の曖昧さは、そのまま見積もりのリスク料になるという関係です。
社内の課題整理が進み要件定義の精度が上がるという副次的な効果
3つ目は、RFPを書く過程そのものの効果です。背景と課題を文章にするには、現状業務のどこに問題があり、何を解決したいのかを社内で棚卸しする必要があり、この作業を通じて部門間で認識がばらついていた要求が契約前に表面化します。ここで整理した課題と要求は、発注後に行う要件定義の入力情報になるため、RFPの完成度が高いほど要件定義の立ち上がりが速く、精度も上がります。逆にRFPを省略した発注では、要件定義の場で初めて要求の洗い出しを始めることになり、その分だけ上流工程が延びがちです。RFPは選定のためだけでなく、開発準備の前倒しという意味を持ちます。課題の棚卸し自体が社内だけでは進まない場合は、発注計画づくりから伴走する要件定義・RFP作成・PMO支援のような外部支援を、RFP作成の前段に置く選択肢もあります。
RFP(提案依頼書)に記載する項目と各項目で書くべき内容の勘所
RFPの構成に法令上の決まりはありませんが、実務では「前提情報」「提案依頼事項」「調達条件」の3パートに整理すると漏れなく書けます。各パートの主な項目は次のとおりです。
| パート | 主な項目 | 書く内容の要点 |
|---|---|---|
| 前提情報 | 背景・目的・現状課題 | なぜ発注するかの事情 |
| 前提情報 | 会社・業務・既存システム概要 | 提案に要る自社の情報 |
| 提案依頼事項 | 機能要求・技術要求 | 実現したいことと制約 |
| 提案依頼事項 | 運用要求・提案してほしい範囲 | 公開後の体制も含む |
| 調達条件 | 予算・スケジュール | 上限と必須期日を明示 |
| 調達条件 | 契約条件・選定方法 | 契約形態と評価の進め方 |
以下のh3で、各パートの書き方の勘所を順に見ます。なお、章立てのサンプルやテンプレートを使った作成手順の詳細は、RFPの書き方と章立てサンプルの解説で扱います。
プロジェクトの背景・目的・課題という前提情報パートの記載内容
前提情報パートで書くべきは、ベンダーが提案を組み立てるための材料です。具体的には、発注に至った背景(例:既存システムの保守期限、業務量の増加)、達成したい目的(例:受注処理の工数を半減させたい)、現状の課題と業務フロー、既存システムの構成、想定ユーザー数などを記載します。勘所は、解決策ではなく課題を書くことです。「〇〇というパッケージを入れたい」と手段まで指定してしまうと、各社の提案がその枠に縛られ、より適した別の方式が提案される余地が消えます。課題と目的を示し、手段の選択はベンダーの提案力を測る問いとして残すのが、比較選定を機能させる書き方です。前提情報の材料集めには、発注前の整理用に作るヒアリングシートの項目立てがそのまま使えます。
機能要求・技術要求・運用要求という提案依頼事項パートの書き方
提案依頼事項パートには、提案してほしい範囲と要求条件を書きます。機能要求は「誰が・何を・どうできるようにしたいか」の粒度で列挙し、必須の要求と希望レベルの要求を分けて優先度を付けてください。技術要求には、社内標準のOS・データベース・クラウド環境、既存システムとの連携、セキュリティ上の制約など、守ってもらう前提条件を記載します。見落とされやすいのが運用要求です。公開後の保守体制、障害時の対応時間、運用移行の支援範囲まで依頼範囲に含めるかを明示しておかないと、提案書ごとに保守の扱いがばらつき、比較が崩れます。性能・可用性・運用保守といった非機能側の観点は、機能要件と非機能要件の違いを先に押さえてから項目を立てると抜けにくくなります。この段階の要求はベンダーを選ぶための粒度で足り、確定仕様まで書き込む必要はありません。詳細化は発注後の要件定義工程の仕事です。
予算・スケジュール・契約条件という調達条件パートで示す範囲と注意
調達条件パートには、予算の上限または想定レンジ、稼働開始の必須期日、提案書の提出期限、選定方法とスケジュール、契約形態を記載します。予算を書くと足元を見られると考えて伏せる例がありますが、実務では逆効果になりがちです。予算感のないRFPには規模感の読めない提案が集まり、桁の合わない見積もりの往復で選定期間だけが延びます。レンジ提示でよいので示すほうが、双方の時間を無駄にしません。レンジの根拠が持てないときは、システム開発の費用相場と内訳で規模別の目安を確認し、幅を広めに取って提示する手があります。契約形態は、要件定義などの上流工程を準委任、開発工程を請負とする多段階契約がIPA(情報処理推進機構)の情報システム・モデル取引・契約書(第二版)でも示されている型で、どの工程をどちらの契約で頼むかにより責任範囲が変わる点に注意が必要です。準委任契約と請負の違いを押さえたうえで、RFPの段階で想定する契約形態を明示しておくと、提案条件のずれを防げます。
RFPの目次テンプレートと提案依頼書の記載例を実物の形で確認する
記載項目を眺めても、いざ白紙のファイルを開くと手が止まります。ここでは、そのまま章番号ごと写して埋められる目次テンプレートと、機能要求の記載例を実物の形で置きます。案件に不要な章は削り、必要な章を足す前提の骨格です。
RFPの目次テンプレートに並べる6章の構成と各章に書く分量の目安
下は、システム開発の発注で使う標準的な目次です。テキストエディタやワープロにそのまま貼り付け、各見出しの下に自社の情報を書き足していけばRFPの初稿になります。
1. はじめに
1.1 提案依頼の趣旨
1.2 発注元の概要と担当窓口
2. プロジェクトの前提
2.1 背景と解決したい課題
2.2 目的と達成したい状態
2.3 現行業務と既存システムの概要
2.4 想定ユーザー数と利用環境
3. 提案依頼事項
3.1 依頼する範囲(対象業務・対象システム)
3.2 機能要求(必須・希望の別を明記)
3.3 技術要求(環境・既存連携・セキュリティ)
3.4 運用要求(保守・障害対応・移行支援)
3.5 実施体制と主要担当者の経験
4. 調達条件
4.1 予算の上限または想定レンジ
4.2 スケジュールと稼働開始の必須期日
4.3 契約形態(工程ごとの請負・準委任の別)
4.4 提案書の様式・提出期限・提出方法
5. 選定の進め方
5.1 評価項目と配点
5.2 質問の受付期間と回答共有の方法
5.3 選定スケジュールと結果の通知方法
6. 添付資料
6.1 業務フロー図
6.2 現行システム構成図
6.3 画面・帳票の一覧
分量の目安は、1章と6章が各1ページ以内、2章が2〜4ページ、3章が全体の半分程度、4章と5章で2〜3ページというバランスです。全体像の作り方をもう一段細かく追いたい場合はRFPの書き方と章立てサンプルを、発注後に作る文書との書き分けは要件定義書の書き方を参照してください。
サンプル文で見る機能要求の書き方と手段を指定しない表現への直し方
機能要求は、書きぶりひとつで返ってくる提案の幅が変わります。悪い例と直した例を並べます。悪い例は「在庫管理機能を実装すること」。主語も粒度も欠けており、各社が別々の解釈で見積もるため比較が崩れます。直した例は「倉庫担当者が、入出庫の実績を当日中に登録し、翌朝の時点で拠点別の在庫数を一覧で確認できること(必須)」。誰が・何を・どこまでできればよいかが読み取れ、実現手段はベンダー側の提案に委ねられます。手段を指定してしまう典型は「〇〇というパッケージを導入すること」で、これは要求ではなく調達条件です。技術的な制約として本当に外せないなら3.3の技術要求へ、そうでないなら要求から外して各社の方式提案を比べたほうが、選定の情報量は増えます。優先度は必須・希望の2段階で足り、3段階以上に細分すると採点時に差が出にくくなります。
RFP作成からベンダー選定・発注までの流れと進め方の実務手順
RFPは書いて終わりではなく、配布・質疑・評価・選定までの一連のプロセスの起点です。標準的な流れを準備・配布・評価の3段階で示します。
情報収集とRFI発行から始めるRFP作成前の準備段階の進め方
RFPを書き始める前に、材料集めの段階があります。社内では、対象業務の現状フローと課題を関係部門にヒアリングし、要求の候補を洗い出します。社外に対しては、候補会社の目星がついていなければRFIを発行して各社の実績・製品・概算感の情報を集め、RFPを送る先を3〜5社程度に絞り込むのが通例です。配布先が多すぎると、質疑対応と提案評価の工数が発注側に跳ね返ります。RFIを挟むかどうかは案件規模によりますが、初めての領域の発注で相場観がない場合は、RFI段階で得た情報がRFPの予算・スケジュール欄の精度を引き上げてくれます。準備段階の目安は、社内ヒアリングからRFP完成まで1〜3か月程度を見込む例が多く、ここを急ぐほど後工程の質疑が増えがちです。
RFP配布から提案書の受領・プレゼン評価・契約までの標準的な工程
RFP完成後の工程は、おおむね次の順で進みます。
- 候補ベンダーへRFPを配布し、必要に応じて説明会を開く
- 質問受付期間を設け、質疑応答の回答を全社へ共有する
- 提案書・概算見積もりを受領する(配布から3〜4週間程度が目安)
- プレゼンテーションとデモを実施し、評価表で採点する
- 優先交渉先を決定し、条件交渉を経て契約を締結する
運用上の勘所は2番の質疑共有です。ある会社からの質問と回答を質問者だけに返すと、各社が持つ前提情報に差が生じ、提案の比較可能性が崩れます。回答は質問者名を伏せて全配布先へ共有するのが公平な運営です。また、選定結果は落選した会社にも理由を添えて通知しておくと、次回以降の発注で協力を得やすくなります。
提案書を評価する採点基準の作り方と価格以外で見るべき比較観点
提案の評価は、RFP配布前に評価表を作っておき、受領後に項目ごとに採点する方式が実務の型です。観点は、課題理解の深さ(自社の課題を言い換えて捉え直せているか)、提案内容の具体性と実現性、体制と担当者の経験、類似案件の実績、保守・運用の提案、そして金額です。金額は総合点の一要素に留め、配点を先に決めておくことで、最安値に引きずられる選定を防げます。総合評価落札方式で調達する場合の価格点と技術点の配分は、総合評価落札方式の解説を参照してください。見積もりの評価では、金額の絶対値よりも内訳の透明性を見ます。工程ごとの工数と単価が読める見積もりは交渉と増減の管理がしやすく、一式表記が多い見積もりは開発中の追加請求の火種になりがちです。プレゼンでは資料の完成度より、質問への回答の速さと具体性に担当チームの実力が表れます。
RFP作成で参照できる公的ガイドラインと標準文書の実務での使い方
RFPを白紙から書き起こすと、契約や非機能の要求で抜けが出ます。国内には、発注側が下敷きにできる公開資料がいくつもあります。どの文書をどの章で参照するかを整理しました。
| 文書 | 発行元 | RFPで参照する章 |
|---|---|---|
| モデル取引・契約書(第二版) | IPA・経済産業省 | 契約形態と工程分け |
| 非機能要求グレード2018 | IPA | 運用要求・性能要求 |
| 要求策定ガイド(重要情報) | IPA | セキュリティ要求 |
| IT化の原理原則17ヶ条 | IPA | 前提情報の書きぶり |
| デジタル社会推進標準ガイドライン | デジタル庁 | 公共調達の書式 |
IPAの情報システム・モデル取引・契約書で契約形態を決める手順
調達条件パートの契約形態は、IPAが2020年12月22日に公開した情報システム・モデル取引・契約書(第二版)を下敷きにするのが実務的です。第二版は2020年4月施行の改正民法に対応した版で、受託開発(一部企画を含む)・保守運用向けと、パッケージやSaaS・ASPを使う場合向けの2系統が公開されています。工程を分けて契約する多段階契約の考え方や、プロジェクトマネジメント義務と協力義務の整理も収められており、RFPの段階で「どの工程を準委任、どの工程を請負として想定しているか」を書く根拠になります。ここを空欄にしたままRFPを配ると、A社は一括請負、B社は工程分割という前提の違う提案が並び、金額比較が成立しません。
IPAの非機能要求グレードを使って運用・性能要求の抜けを埋める
運用要求と性能要求は、発注側の言葉だけで書こうとすると「安定して動くこと」といった採点不能な記述になりがちです。IPAの非機能要求グレードは、可用性・性能拡張性・運用保守性・移行性・セキュリティ・システム環境の6分類で要求項目を並べたもので、2018年4月に改訂された非機能要求グレード2018では全体で236のメトリクスが整理されています。RFPでこれをすべて埋める必要はなく、社会的影響が限定されるシステムか、停止が許されないシステムかというモデルシステムの当てはめから入り、自社に効く項目だけを抜き出して3.4の運用要求に転記する使い方が現実的です。セキュリティ要求まで踏み込む場合は、IPAが公開する重要情報を扱うシステムの要求策定ガイドが、守るべき情報から要求を導く手順を示しています。
超上流の原理原則17ヶ条とデジタル庁の標準ガイドラインの参照点
前提情報パートの書きぶりに迷うときは、IPAが公開している実務に活かすIT化の原理原則17ヶ条が参考になります。企画・要件定義といった超上流工程で発注側と受注側が守るべき原則を格言の形で並べた資料で、「ユーザとベンダの想いは相反する」といった前提から、要求を出す側が何を明文化すべきかを逆算するための手掛かりです。公共案件や自治体案件の調達仕様書を書く立場なら、デジタル庁のデジタル社会推進標準ガイドライン群が、調達計画からRFI・調達仕様書までの様式と手順を定めています。民間企業の発注でも、記載項目の網羅性を確認するチェックリストとして読む価値があります。いずれの資料も改訂されるため、参照する際は版と公開時点を確認してから引用してください。
RFPを作り込むべき案件と簡易版で済ませてよい案件の判断基準
ここからが本記事の結論です。RFPの作成には1〜3か月級の工数がかかる以上、すべての発注で同じ厚さの文書を作るのは合理的ではありません。条件付きで言い切ります。
フル仕様のRFPが必須になる基幹システム刷新や相見積もりの条件
フル仕様のRFPを作るべきなのは、次のいずれかに当てはまる案件です。第一に、複数社から提案を受けて比較するコンペ形式の発注。比較の前提を揃える書類がRFPそのものなので、省略すると選定が成立しません。第二に、基幹システム開発や全社業務システムの刷新のように、影響範囲が複数部門に及び、失敗したときの業務停止リスクが大きい案件。要求の漏れが後工程で高くつくため、前提情報と要求の明文化に工数を掛ける価値があります。第三に、社内決裁で選定理由の説明責任を負う案件です。評価表とRFPのセットが、決裁者への説明と監査対応の根拠資料になります。目安として、開発規模が数千万円級以上、または関係部門が3つ以上に跨がるなら、フル仕様のRFPを前提に計画するのが安全です。
簡易なRFPや口頭ベースで足りる小規模改修・保守委託の見極め
逆に、フル仕様のRFPが過剰になる場面も条件で示せます。既存システムの小規模改修や画面追加のように、依頼範囲が明確で数十万〜数百万円規模に収まる案件は、背景・依頼内容・期日・予算を1〜2ページにまとめた簡易版で十分です。既に取引実績のある会社への継続発注や保守委託も、過去のやり取りで前提情報が共有済みのため、差分の要求だけ文書化すれば成立します。判断を誤りやすいのは「小さく見えて影響範囲が広い」案件です。金額が小さくても、基幹データベースの構造変更や複数システム連携に触れる改修は、簡易版ではなく前提情報を含むRFPに寄せてください。文書の厚さは金額ではなく、要求のずれが起きたときの被害範囲で決めるのが判断の軸です。
RFPを書いても失敗する典型パターンと丸投げを避ける社内体制
RFPを作っても発注が失敗する典型は3つあります。1つ目は、要求の網羅に固執して「あれもこれも必須」と書き並べるパターンで、優先度のないRFPからは総花的で高額な提案しか返りません。要求には必須・希望の2段階以上の優先度を必ず付けます。2つ目は、RFP作成をコンサルタントや特定ベンダーへ丸投げするパターンです。書類の体裁は整いますが、課題の棚卸しという社内でしか担えない工程が抜け、提案評価の判断軸も持てなくなります。外部の支援を受けるとしても、課題と目的のパートは自社の言葉で書くのが原則です。3つ目は、RFPの記載と契約書の内容を突き合わせないまま契約するパターンで、RFPに書いた運用支援が契約範囲から落ちていた、といった食い違いは検収段階で発覚します。提案書とRFPの対応関係を契約前に確認する担当を、社内体制に組み込んでください。
よくある質問
RFP(提案依頼書)について、検討段階でよく出る質問へ簡潔に答えます。
RFPとは何の略で、どういう意味のビジネス用語ですか?
RFPはRequest for Proposalの略で、日本語では提案依頼書と訳されます。システム開発やWeb制作などを外部へ発注する際に、発注側が課題・要求・条件をまとめ、ベンダーへ解決策の提案と見積もりを依頼する文書です。ビジネスの場では主にIT調達の文脈で使われ、複数社から同じ条件で提案を集めて比較するための書類として機能します。
RFP(提案依頼書)と要件定義書はどう違いますか?
作る時期と目的が異なります。RFPは発注前にベンダーを選ぶための書類で、課題と要求を提案が可能な粒度で示します。要件定義書は発注後の上流工程で作る開発の設計入力で、実装できる粒度まで仕様を確定させた成果物です。RFPの要求がそのまま要件になるわけではなく、要件定義の工程で精査・詳細化されます。順番はRFPが先、要件定義書が後です。どこまでをRFPに書き、何を要件定義に残すかの線引きはRFPと要件定義の違いと書き分ける範囲の解説で扱っています。
RFPは誰が書くものですか?作成を外部に依頼できますか?
発注側の担当部門(情報システム部門や業務部門)が書くのが原則です。ITコンサルタントなど外部の支援を受けて作成する例も多くありますが、背景・課題・目的のパートは社内でしか書けません。ここを丸投げすると、提案を評価する判断軸も外部任せになり、選定が形骸化します。外部支援は構成の整理や技術要求の翻訳に限定するのが実務的な使い方です。
RFPのテンプレートや無料のフォーマットはどこで入手できますか?
本記事の目次テンプレート章に、そのまま貼り付けて使える6章構成の骨格を置いてあります。公的資料を下敷きにしたい場合は、契約形態の記載でIPAの情報システム・モデル取引・契約書、運用要求の記載で非機能要求グレード、公共調達の様式でデジタル庁のデジタル社会推進標準ガイドラインがそれぞれ公開されています。ベンダーが配布している雛形をそのまま使うと、その会社の得意分野に沿った項目立てになっていることがあるため、自社の課題を書く章だけは雛形の文言を消して書き直してください。
RFPを作らずにシステム開発を発注するとどうなりますか?
発注が不可能になるわけではありませんが、リスクが上がります。各社の見積もり前提が揃わず価格比較が成立しない、口頭の要求が証跡に残らず開発中に依頼範囲の認識ずれが起きる、要件定義の場で要求の洗い出しを一から始めることになり上流工程が延びる、という3点が典型です。小規模で範囲が明確な案件を除き、簡易版でも文書化する価値があります。
RFPに予算を書くと足元を見られませんか?
予算欄を伏せた場合の損失のほうが大きい、というのが実務での答えです。上限が読めないRFPには、規模感の合わない提案と桁の違う見積もりが並び、再提案の往復で選定期間が延びます。金額を1点で書く必要はなく、「初期費用5,000万円以内、年間保守は別途」といった上限やレンジの形で十分です。予算に対して要求が過大なら、その旨を指摘して優先度の高い要求から段階導入する提案が返ってくるはずで、そうした反応があるかどうかも提案の質を測る材料になります。
RFPの分量はどのくらいで、作成にどれくらい期間がかかりますか?
案件規模により、簡易版なら1〜2ページ、基幹システム刷新級なら数十ページに及びます。作成期間は、社内ヒアリングと課題整理を含めて1〜3か月程度を見込む例が多く、配布から提案受領までにさらに3〜4週間程度かかります。選定までの全体日程から逆算し、RFP作成の期間を短く見積もりすぎないことが、進め方の勘所です。
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